バルビツール酸系睡眠薬とは?効果と副作用

アイコン 2015.9.1 睡眠薬のまとめ
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バルビツール酸系の成分は、1864年に発見されました。睡眠薬として実用されはじめたのは1900年に入ってすぐからです。

強力な催眠作用がありましたが、量を使いすぎると致死的になります。また、使い続けていくうちにすぐに効かなくなってしまい、薬の量がどんどんと増えてしまう依存性が非常に高い睡眠薬です。このような安全性の低さから、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が開発されると、使われることは一気に減りました。

私は絶対につかわないようにしていますが、どうしても不眠が改善しない方に処方されることがあります。ここでは、バルビツール酸系睡眠薬の効果と副作用についてお伝えしていきたいと思います。

 

1.バルビツール酸系睡眠薬の作用機序

GABAの働きを強めたり、直接Clチャネルを開くことで、脳の活動を抑えます。

バルビツール酸系睡眠薬の効果はどのようにしてでてくるのでしょうか?このお薬の効果は、GABAが関係しています。「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。

GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。神経伝達物質にはいろいろなものがありますが、GABAは脳内で2番目に多いです。1番目はグルタミンという興奮に関係する物質ですので、GABAは脳の活動を抑制する物質としては1番多いのです。

 

GABAがどのようにして脳の活動を抑制するのでしょうか?これにはClが関係しています。GABA受容体はClの通り道(イオンチャネル)にくっついています。GABAがGABA受容体にくっつくと、Clチャネルが開いて神経細胞の中にClが入っていきます。マイナスのイオンが入ってきますので、細胞の中が電気的にマイナスになります。神経細胞の興奮は、細胞の中が電気的にプラスになることで起こります。このため、Clが入ってくると興奮しにくくなるのです。

それでは、バルビツール酸はこのGABAやClチャネルとどのような関係があるのでしょうか?

GABA受容体を図にしたものです。役に立つ薬の情報HP様からの厚意で使わせていただきました。

こちらの図は、「役に立つ薬の情報」ホームページのご厚意で転載させていただきました。

GABA受容体が結合するClチャネルの別のところに、バルビツール酸受容体が存在します。ここにバルビツール酸系睡眠薬がくっつくと、GABAの作用が大幅に増強されます。Clチャネルの開口時間が大幅に延長して、Clイオンを一気に流入させます。バルビツール酸系睡眠薬が高用量になると、GABAとは関係なしにClチャネルを直接開くようになります。このようにして、バルビツール酸系は脳の活動を抑えることができるのです。

 

現在主流のベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも、同じGABA受容体に作用します。ですが、バルビツール酸系のような直接的な作用はなく、GABA受容体にGABAをくっつきやすくするだけです。このため、GABAがなくなれば効果が消失します。

 

2.バルビツール酸系睡眠薬の効果と特徴

バルビツール酸系睡眠薬では、脳の活動を強力に抑えることで睡眠をもたらします。効果は非常に強いですが依存性が高く、安全性が低い睡眠薬です。メリットとデメリットに分けてみていきましょう。

 

2-1.バルビツール酸系睡眠薬のメリット

睡眠薬の中でジワジワと効いてくる薬もありますが、バルビツール酸系睡眠薬には即効性があります。ですから、服用するとすぐに効果が期待できます。

バルビツール酸系睡眠薬のメリットは、なんといっても効果の強さです。Clチャネルをガッツリと開くので、脳の興奮が強く抑えられます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同じGABAが関係しますが、効果はより強力です。

また、バルビツール酸系睡眠薬ではレム睡眠を大幅に抑制する作用があります。レム睡眠は夢をみている睡眠ですから、薬を飲んだら夢をみずに朝を迎えることができます。悪夢で悩まされている方にはメリットといえるでしょう。

バルビツール酸系は睡眠薬としては、安全性の低さから使われることも減ってきています。ですが、抗けいれん作用や麻酔作用があるので、てんかん発作や手術の静脈麻酔薬などとしては使われています。脳の興奮を抑える効果が強力なので、けいれん発作がどうしても止まらない時は、バルビツール酸系はとても有用です。また、静脈麻酔薬のチペンタールは現在でも使われています。

 

2-2.バルビツール酸系睡眠薬のデメリット

バルビツール酸系睡眠薬は効果が強いため、副作用も強くなります。睡眠作用が眠っている間だけに働いてくれればいいのですが、日中に残ってしまうと眠気やだるさにつながります。また、筋弛緩作用が強いのでふらつきも強いです。

さらに依存性が非常に高い睡眠薬です。飲み始めは強力に効く睡眠薬です。ですが使い続けているとすぐに身体に慣れてしまって(耐性)、次第に効かなくなってしまいます。効果の実感も強い薬なので、「もっと増やしたい」という気持ちがまさってしまって、どんどんと量が増えて依存してしまいます。

このように量が増えていってしまう危険性に加えて、バルビツール酸系睡眠薬は安全性も低いです。薬を使いすぎてしまうと呼吸抑制がかかってしまい、死に至ることもある睡眠薬なのです。ですから私は、バルビツール酸系睡眠薬は絶対に使わないようにしています。

このような薬ですので、第2種向精神薬という指定をうけています。処方数の制限がされていて、14日以上の処方ができません。

 

3.バルビツール酸系睡眠薬の副作用

バルビツール酸系睡眠薬で注意するべき副作用について、みていきましょう。

 

3-1.眠気

眠気は多いですが、慣れていくことも多いです。できれば他の睡眠薬に変更しましょう。

睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。

「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。

 

バルビツール酸系は身体から抜けにくいものが多く、少しずつ身体に薬がたまっていきます。睡眠効果も強いので、眠気の副作用は多いです。

眠気の副作用は飲み始めにみられることが多いですが、使い続けていくと慣れていくことも多いです。というのも、バルビツール酸系睡眠薬が身体にすぐに慣れてしまって、効かなくなるからです。これは決していいことではありません。「寝れるようになった」と安心していても、次第にまた不眠に逆戻りしてしまいます。

 

バルビツール酸系を使って眠気が出てきている方は、減量していくか他の睡眠薬への切り替えを検討していきます。

減量すると作用時間も短くなり、効果もマイルドになります。他の睡眠薬への切り替えは、バルビツール酸系を使わざるを得ない状況まで追い込まれているということなので、困難なことが多いです。できるならば、他に効果が期待できるものがないか再検討しましょう。異なる作用機序の睡眠薬を組み合わせれば、うまくいくこともあります。

 

3-2.ふらつき

ふらつきは多いです。

バルビツール酸系睡眠薬は睡眠作用だけでなく、筋弛緩作用も働いてしまいます。緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時はむしろプラスの作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。トイレで夜中に目が覚めた時に、眠気も相まって転倒して骨折してしまうようなこともあります。

バルビツール酸系睡眠薬は、身体に薬がたまっていくものが多いです。このため、ふらつきの副作用が日中に持続してしまうこともあります。眠気と同様に慣れていくことも多いですが、これは決していいことではありません。

できるならば、他に効果が期待できる睡眠薬がないか、再検討した方がよいです。それが難しければ、減量しましょう。

 

4.バルビツール酸系睡眠薬の依存性

非常に依存しやすい睡眠薬です。依存には細心の注意が必要です。

バルビツール酸系睡眠薬は、とても依存しやすいです。やめようと思っても止められなくなってしまったり、快感が出てきて乱用につながることがあります。ですから、極力使わないようにしなければいけません。少なくとも、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが求められます。

 

依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。

身体依存とは、薬が身体からなくなっていくと離脱症状が起こることです。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体の依存です。睡眠薬を急にやめてしまうと、むしろひどい不眠(反跳性不眠)におそわれることがあります。

精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心の依存です。不眠は非常につらいですから、睡眠薬には頼ってしまうようになります。

耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ眠れなくなってしまう時は耐性が形成されています。

 

バルビツール酸系睡眠薬は、身体依存や耐性が形成されやすい睡眠薬です。さらに効果の実感も強いので、精神依存も強いです。この3つが悪循環となって、どんどんと量が増えていってしまうのです。

また、「薬を飲むと気が大きくなる」「うきうきする」などといった快感がでてくることがあります。このために乱用されることもあります。ここまでになると脳の機能にも影響が出てきて、知能も低下してしまいます。現実を正しく判断することができなくなり、乱用に拍車をかけてしまいます。

 

バルビツール酸系睡眠薬は非常に依存性の高い、リスクのある睡眠薬なのです。できるだけ使わない意識が必要です。特に衝動的になりやすいなどの依存になりやすい傾向のある方には絶対につかうべきではありません。

 

5.バルビツール酸系睡眠薬と致死量

バルビツール酸系睡眠薬は呼吸抑制により致死的になる睡眠薬で、安全性が低いです。

バルビツール酸系睡眠薬は、依存性が高く、乱用されるリスクも高い睡眠薬であることをお伝えしました。さらに怖いことに、この薬は致死量が近く、安全性の低い睡眠薬なのです。

バルビツール酸系睡眠薬の効果は強力です。このため大量に服薬すると、脳の機能を一気に落としてしまいます。中脳が抑制されると意識消失します。さらに脳幹の延髄が抑制されると、命に関わることになります。延髄には呼吸中枢や血管運動中枢があります。これらが抑制されるので、呼吸が止まってしまい、血圧が一気に下がってしまいます。亡くなってしまうケースでは、呼吸抑制が原因のことが多いです。

 

このような中毒症状は、用量の5~10倍でみられます。例えば、バルビツール酸系睡眠薬のラボナでの推定致死量は、1.5~7.5gと考えられています。ラボナ錠50mgにして30~150錠になります。ラボナ錠は50mg~100mgが用量ですから、100mg使っている方でしたら15錠でも致死的になる可能性があります。このため、第2種向精神薬に指定されていて、処方は14日までとされています。

 

まとめ

GABAの働きを強めたり、直接Clチャネルを開くことで、脳の活動を抑えます。

メリットとしては、

デメリットとしては、

バルビツール酸系睡眠薬は呼吸抑制により致死的になる睡眠薬で、安全性が低いです。