アスピリンの副作用と安全性について

アイコン 2017.2.14 アスピリン/バイアスピリン

アスピリン(一般名:アセチルサリチル酸)は、もともとは初のNSAIDsの薬として解熱鎮痛薬として使用されてきました。現在は、抗血小板作用を利用して血をサラサラにする必要がある川崎病に対して使用されることが多いです。

アスピリンなどのNSAIDsは副作用として、胃腸障害が問題になります。また妊娠後期の方含めて、使用することができない人もいます。

ここでは、アスピリンにどのような副作用があり、どのような方が使えないのかお伝えしていきます。

 

1.アスピリンの副作用は?

アスピリンの副作用として気を付けるべきものとして、胃腸障害と腎障害があります。

アスピリンは1897年に登場した非常に古い薬です。そのため細かい副作用の頻度は示されていません。またアスピリンは高用量として使用すると解熱鎮痛作用、低用量として使用すると抗血小板と量を変えることで、作用が変わる面白い薬です。

そのため、どの疾患に対してどのような効果を期待して使用するかで投与量が全然変わります。投与量が変わると副作用の頻度も変わるため、一概に数値で出すのは難しいお薬です。ただしアスピリン含めて、NSAIDsの副作用は大部分が共通しています。

一番多いのは、消化器症状などの胃腸障害です。これは、アスピリンがアラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。

アスピリンは痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護するCOX-1も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。このことが結果として、腹痛や嘔気につながります。この副作用はアスピリンに特徴的というよりは、アスピリン含めてNSAIDsに特徴的な副作用です。

副作用の対策について詳しく知りたい方は、「ロキソニンの副作用と安全性」を一読してみてください。

これに加えてアスピリン独自の特徴として、出血するリスクがあります。特に低用量で抗血小板の効果を期待して使用している場合は要注意です。血をサラサラにすることで血の塊(血栓)を防ぐため、出血すると血が止まりづらい可能性があります。低用量アスピリンを内服中に、

などを念頭に置いておきましょう。

 

2.アスピリンが使用できない疾患は?

アスピリンは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある人には使用できません。また、アスピリン喘息の方は使用できません。

アスピリンの添付文章では禁忌の方は、

  1. 消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍が悪化することがある。]
  2. 重篤な血液の異常のある患者[血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがある。]
  3. 重篤な肝障害のある患者[副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある。]
  4. 重篤な腎障害のある患者[急性腎不全、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある。]
  5. 重篤な心機能不全のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
  6. 重篤な高血圧症のある患者[血圧を更に上昇させるおそれがある。]
  7. 本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
  8. アスピリン喘息[喘息発作を誘発することがある。]
  9. 妊娠後期の婦人

となっています。この中で注意が必要なのは、

の2つです。

②~⑥は、「重篤な」という一言がついています。基本的にどの疾患にしろ重篤な状態であれば、入院で加療することがほとんどです。特に上記にあげられる病態は、命に関わることが多いです。そのためこれらの②~⑥でアスピリンの使用に注意するのは、患者さん側ではなく処方する医師側になります。

また現在アスピリンに最もよく使用される川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気です。その中でも心臓の

そのため患者さんにとって気を付けるとするならば、消化性潰瘍とアスピリン喘息の2つになります。

アスピリンは副作用で説明したように、痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護する物質も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。ここで大切なことは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と知らずにアスピリンを連用してしまうことです。

アスピリン=万能薬と考えている人は、お腹の痛みに対してもアスピリンを飲んでしまう人が多いです。しかしそのお腹の痛みの原因が胃潰瘍や十二指腸潰瘍であれば、逆にアスピリンを飲んだせいで病状が悪化してしてしまいます。そのため腹痛の人は、絶対にアスピリンを安易に飲まないようにしましょう。

またアスピリン喘息は、喘息の中でもかなり特殊な病態です。喘息は、もともとは気道の慢性炎症によって気管支が狭くなる病気です。一般的には、Ⅰ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーは、好酸球やIgEが関与するアレルギー疾患で、他には花粉症や蕁麻疹などが挙げられます。

しかし最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。アスピリン喘息は、この非アレルギー性の喘息のひとつになります。

注意が必要なのはアスピリンとついているからアスピリン以外のNSAIDsは良いのでは?と考えてしまいますが、これは大間違いです。

アスピリンはNSAIDsで最も古い薬のため、アスピリンを内服すると喘息が悪化すると最初に気が付いたきっかけになったためアスピリン喘息となっています。その後他のNSAIDsである、

などよく使うお薬でも喘息が悪化します。またNSAIDsの内服に限らず、

でも悪化するため、絶対に使用してはいけません。さらに近年アスピリン喘息に比較的安全と言われていたカロナールでも、アスピリン喘息が悪化することが証明されました。

アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。

そのためアスピリン喘息の方はアスピリンだけ避ければよいわけではないので注意ししましょう。

 

3.アスピリンで注意するべき状態は?

手術前や抜歯前などは必ずアスピリンを飲んでることを伝えてください。

上記の状態の方は、添付文章上では使用してはいけないとされている方です。ただし上記以外の方でも、添付文章には以下の疾患の方は気を付けるように記載されています。

  1. 消化性潰瘍の既往歴のある患者[潰瘍を再発させることがある。]
  2. 血液の異常又はその既往歴のある患者[溶血性貧血等の‌副作用が起こりやすくなる。]
  3. 肝障害又はその既往歴のある患者[肝障害を悪化又は再発させることがある。]
  4. 腎障害又はその既往歴のある患者[浮腫、蛋白尿、血清‌クレアチニン上昇、高カリウム血症等の副作用が起こることがある。]
  5. 心機能異常のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
  6. 高血圧症のある患者[血圧をさらに上昇させるおそれがある。]
  7. 過敏症の既往歴のある患者
  8. 気管支喘息の患者[病態を悪化させることがある。]
  9. 潰瘍性大腸炎の患者[病態を悪化させることがある。]
  10. クローン病の患者[病態を悪化させることがある。]
  11. 出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがある ため]
  12. 手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者 [手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加さ せるおそれがある]

上記であげた疾患のうち、血液・肝臓・腎臓・心臓は重篤ではなくとも悪化することがあるため、注意が必要となっています。しかし、これらの疾患はアスピリンの副作用でも悪くなるし、風邪などの病気でも悪くなることは多々あります。

また、一度でもアスピリンで腎臓や肝臓などが悪化したことがあれば、その旨を医師に伝えることが重要になるので覚えておきましょう。

ここでも最も問題になるのは、手術や抜歯などの際です。処置によってはアスピリンを中止して1週間程度あけて、血が出やすい状態から元に戻して処置する必要があります。

抜歯などの一部の処置は、アスピリンを止める必要がないとガイドラインでは記載されています。しかし血が止まりづらいことを知らずに処置をすると、処置に思わぬトラブルがつきものになります。

手術予定日当日にアスピリンを飲んでいたことがわかって、手術が延期になったということもあります。必ずアスピリンを飲んでいる方は、手術や抜歯など出血するリスクのある処置を受ける前に伝えるようにしてください。

 

4.アスピリンと併用してはいけない薬はないの?

アスピリンは、併用するのに注意が必要なお薬もあります。特に血をサラサラにする薬の併用は気を付けましょう。

アスピリンの添付文章では、特に併用してはいけない薬はありません。ただし、他にも併用するのに注意が必要なお薬はあります。

  1. ワルファリン(抗凝血作用を増強するおそれがあるため)
  2. 炭酸リチウム(血中リチウム濃度を上昇させる恐れがあるため)
  3. チアジド系利尿薬 (利尿・降圧作用を減弱するため)
  4. 降圧薬(アンジオテンシン阻害薬など)(降圧作用が減弱するため)
  5. メトトレキサート(メトトレキサートの血中濃度が上昇するため)
  6. スルホニル尿素系血糖降下剤(血糖降下作用が増強するため)
  7. ジゴキシン(ジゴキシンの効果が半減するため)
  8. 他のNSAIDs(インドメタシン 、ジクロフェナク ナトリウム)(出血リスク高めるため)
  9. ドネペジル塩酸塩(消化性潰瘍を 起こすことが ある)

特にワルファリンとの抗凝固作用があるお薬との併用は注意が必要です。これらのお薬は併用することは多々ありますが、出血傾向に傾きすぎないように厳密にコントロールする必要があります。注意が必要なのは、別々の医師がアスピリンとワルファリンを処方した場合です。

お互い知らずに出してしまうと、出血するリスクが大幅に上がります。そのためアスピリンを内服している場合は、必ずその旨を医師に伝えましょう。

 

5.アスピリンは、高齢者・小児・妊婦には使用できるの?

アスピリンは、高齢者には慎重に投与するように記載されています。アスピリンは小さな乳幼児に対して使用実績のあるお薬です。妊娠後期の妊婦の方は使用できないので、注意が必要です。

まずご高齢の方ですが、アスピリンは高齢者に対しては慎重に投与するように記載されています。理由としては副作用が出やすいためとあります。特に上の文章をもう一度見て欲しいのですが、

と記載されています。高齢者の方は今まで指摘されてなくても上記のどこかしら悪いことが多いです。またアスピリンは、熱を出してる原因を治療するものではありません。どうしても若年者よりも免疫機能も落ちているため、アスピリンで様子を見ていたらあっという間に状態が悪くなったということが多々あります。

また小児に関しては、アスピリンが最もよく使われる川崎病へ適応があります。アスピリンは非常に古いお薬のため小児に対して数多くの実績があります。ただし、乳幼児の川崎病に使用した場合絶対に安全とは言い切れません。

川崎病自体命に関わる病気のため、定期的に採血や心臓のエコーなどの検査を受ける必要があります。また川崎病でアスピリンを内服している小児の方は、出血しやすい状態ということをご両親は念頭に置いておきましょう。

妊婦の方は、アスピリンはかなり注意が必要です。アスピリンはお腹の赤ちゃんへ血液を介して移行するため、「動脈管閉塞」が生じることが報告されています。

お腹の中にいる赤ちゃんは羊水の中にいるために、自分自身で息を吸ったり吐いたりすることができません。そのため赤ちゃんは、お母さんが吸った酸素をもらって体に酸素行き渡らせます。その酸素を運ぶ血液の経路ですが、心臓から出た血液の大半は動脈管を介して大動脈に流入して全身に行きます。

つまり心臓と体を結ぶ大切な血管が動脈管なのです。そこが閉塞すると、心臓から流出する血液が体に行き渡らなくなってしまい、非常に重篤な状態になります。アスピリンはこの動脈管を塞いでしまいます。動脈管の働きが重要になるのが妊娠後期です。

そのため妊娠後半には、絶対にアスピリンを飲まないでください。添付文章では具体的に妊娠予定日から12週以内は避けるように記載されていますが、それ以前の安全が保障されているわけではないため注意が必要です。

また添付文章には、産後にお母さんがアスピリンを飲んだ際は、授乳は避けるようにと書かれています。赤ちゃんにアスピリンの成分が移行するからです。しかしこれも医師の考え方によってまちまちで、一定の見解は得られていません。

 

まとめ 

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