デパケン錠・デパケンR錠の効果と特徴

アイコン 2015.12.6 デパケン

抗てんかん薬のデパケン錠は1975年に発売されていましたが、作用時間の短さと湿度への弱さがネックになっていました。

これを改良するべく、1991年に徐放製剤であるデパケンR錠が発売されました。現在はデパケン錠はあまり使われておらず、デパケンR錠がよく使われています。

デパケンR錠の作用機序ははっきりとしていませんが、脳の活動を抑える働きがあって、さまざまな病気に使われています。脳の異常な興奮である「てんかん」「片頭痛」といった身体の病気だけでなく、気分安定薬としての効果も認められます。

気分安定薬には、大きく3つの効果があります。気分を鎮める抗躁効果、気分を持ち上げる抗うつ効果、気分の波を少なくする再発予防効果になります。気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬です。

デパケンR錠は抗躁効果が強く、再発予防効果も認められます。双極性障害の治療に限らず、気持ちを落ち着けるお薬として広く使われているお薬です。

ここでは、気分安定薬としてのデパケンR錠の効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。

 

1.デパケン錠とデパケンR錠の違い

デパケンR錠の方が湿度に強く、作用時間が長いので1日1回でも服用ができます。現在はほとんどがデパケンR錠で処方されています。

日本でデパケン錠が発売されたのは1975年のことです。抗てんかん薬として発売されましたが、実際に使われていくうちに2つの問題が目立ってきました。

デパケン錠は湿気に弱く、すぐに形が変化してしまうので保管がしにくいお薬でした。錠剤が変わってしまうと成分がきっちりと服用できません。また、患者さんも服用しても大丈夫なのか、不安になってしまいます。

また、デパケン錠は作用時間が短いので1日に2~3回服用する必要があります。てんかんの患者さんでは、効果が1日中持続している必要があります。飲み忘れなどで血中濃度が不安定になってしまうと、てんかん発作が起こってしまいます。このため、作用時間が長くて効果の持続するお薬が望まれました。

これらを解決するために作られたのが、徐放製剤のデパケンR錠です。「R」はretard(遅らせる)の略になります。吸湿性を改善するためにシュガーコーティングが施され、少しずつ薬が溶け出てくるように工夫がされています。

 

2.デパケン錠・デパケンR錠の効果と特徴

気分安定薬には、3つの効果が期待されています。デパケンでの3つの効果の強さは以下のようになります。

ここではよく使われるデパケンR錠の特徴を、メリットとデメリットに分けてまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

 

2-1.デパケンのメリット

デパケンは抗躁効果に優れているお薬です。躁状態の治療としては、多くのガイドラインでも第一選択のひとつにあげられています。また、再発予防効果がしっかりとしていて、リーマスよりは劣るという報告もありますが、ほとんど同等という報告もあります。再発予防効果は十分期待できるお薬です。

また、比較的安全性が高いのも特徴です。リーマスのように腎臓だけで排泄するお薬ではないので、リーマスほど血中濃度の変化にシビアにならなくても大丈夫です。他の気分安定薬と比較すると、全体的に副作用も少ないです。

デパケンはさまざまな病気につかわれています。てんかんでは子供でも使われるお薬なので、飲みやすいように様々な剤形が発売されています。錠剤、徐放錠剤、細粒、シロップなどがあります。飲みやすい剤形を選ぶことができます。

デパケン錠は使われなくなってきており、徐放製剤のデパケンR錠が使われることが多いです。デパケンR錠は徐放製剤なので、作用時間がデパケン錠よりも長いです。1日1回の服用でも効果が持続するので、飲みやすい時間帯に服用できます。

薬価に関しても古くからある薬なので、かなり安価になっています。デパケン錠と比較しても、ほとんど薬価はかわりません。経済的にも負担の少ないお薬になっています。

 

2-2.デパケンのデメリット

デパケンは抗躁効果が強いのですが、効果がやや遅いというデメリットがあります。気分安定薬のリーマスよりは早いものの、即効性は抗精神病薬には負けます。あまりにも著しい躁状態の患者さんには向きません。

また、デパケンは抗うつ効果が弱いです。同じ気分安定薬のラミクタールでは抗うつ効果が期待できるのですが、デパケンと併用するとラミクタールの効果が急激に増強され、半減期が2倍以上に延長します。併用にあたっては少量ゆっくりと増量していかなければいけません。

 

デパケンは肝臓への負担が大きいお薬です。また、アンモニアが蓄積してしまって高アンモニア血症となり、意識障害が生じることがあります。いずれの場合も、少量のデパケンしか使っていなくても認められることがあります。

デパケンの一般的な副作用として、眠気がやや多いです。デパケンは脳の興奮を抑えるため、眠気がどうしても認められてしまいます。また、デパケンには催奇形性が報告されています。神経管欠損や顔面奇形などが増加するという報告があります。特に妊娠初期ではデパケンは避けた方がよいと考えられています。

デパケンR錠は、とても錠剤が大きいです。噛み砕いてしまうと徐放剤としての機能が失われてしまいます。高齢者などには使いにくくなってしまいます。

 

デパケンの副作用について詳しく知りたい方は、
デパケンの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.デパケンの作用の仕組み(作用機序)

デパケンがどうして効果があるのか、はっきりと分かっていません。GABAの働きを強め、神経細胞膜を安定させる作用が関係していると考えられています。

双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、気分の浮き沈みを繰り返す病気です。何らかの脳の機能的な異常があると考えられていますが、どうしてこのような異常が引き起こされるのかは定かではありません。

デパケンには、以下の3つの効果が期待されています。

つまりデパケンは、気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬といえます。

デパケンは、1882年には合成されていて、当時は脂っぽい物質を溶かす実験用溶媒として使われていました。デパケンの抗てんかん作用がわかったのは1962年のことで、他のお薬の溶媒としてデパケンを使って動物実験をしていく中で、まったくの偶然で発見されました。

その後、抗てんかん薬として発売され、片頭痛予防薬や気分安定薬としての効果がわかっていきました。

 

デパケンがどうしてこのような効果があるのかは、現在でもわかっていません。いくつか推測されている作用機序があるのでご紹介していきます。

現在考えられているデパケンの主な作用は2つになります。

「GABAって聞いたことある」という方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があ ります。

デパケンは、2つのメカニズムでGABAの働きを強めます。1つ目は、GABAを分解する酵素のGABAトランスアミラーゼの働きを邪魔するのです。これによりGABAの分解ができなくなるので、GABAの作用が強くなります。2つ目は、グルタミン酸をGABAに変えるGAD(グルタメート・デカルボキシラーゼ)という酵素の働きを強めます。グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質ですから、抑制性のGABAに変わるのです。

 

デパケンには、神経細胞の膜を安定させる作用もあります。これはナトリウムとカルシウムという2つのイオンが関係しています。通常の神経細胞は、内側がマイナスで外側がプラスの電位差があります。ナトリウムやカルシウムはプラスイオンですから、これらのイオンが細胞内に入ってくると神経細胞が興奮(脱分極)します。

デパケンは、これらのナトリウムやカルシウムのイオンチャネルという通り道をブロックします。これによってプラスイオンが細胞内に入れなくなり、細胞が興奮しにくくなります。このため、神経細胞膜を安定させる作用があるのです。

 

4.デパケンR錠の効果時間・血中濃度と使い方

デパケンR錠は最高血中濃度到達時間が10.26時間(食後は8.95時間)、半減期が12.92時間の気分安定薬です。200~400mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度まで使っていきます。

デパケンR錠を服用すると、10.26時間(食後は8.95時間)で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、12.92時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

デパケンR錠は作用時間が長く、1日1回の服用でも効果が持続します。さらに副作用を軽減するために、1日2回で服用することもあります。毎日服用していると、およそ6~7日で血中濃度が安定します。このため、少なくとも1週間は様子をみながら効果をみていきます。

 

デパケンR錠の開始用量は200~400mgとなることが多いです。月に1回血中濃度を測定しながら、有効血中濃度となるように量を調整します。有効血中濃度は50~100μg/mLが目安です。抗躁効果を期待するときは高用量が必要で、70~120μg/mLを目標にします。

デパケンR錠の添付文章をみると、以下の用量になっています。

 

5.デパケンとその他の気分安定薬の位置づけ

気分安定薬としては、大きく3つのタイプがあります。

薬の効きの早さをみると、炭酸リチウムと抗てんかん薬は効果がゆっくりで、抗精神病薬は効果が早いです。双極性障害の治療目的によって、それぞれの薬を使い分けていきます。治療目的にわけて、気分安定薬の位置づけを見ていきましょう。

 

躁の治療では、症状の程度によって異なります。

軽躁状態であればじっくりと治療ができるので、リーマスかデパケンの単剤が最も推奨されています。抗躁作用だけを比較するならば、テグレトール>デパケン>リーマス>>ラミクタールという印象です。後述する再発予防効果や副作用を考慮すると、日本のガイドラインではリーマスが第一選択となっています。

中等度以上の躁状態では、治療のスピードが求められます。抗精神病薬単剤か抗精神病薬の併用が推奨されています。抗精神病薬での抗躁作用を比較すると、リスパダール≧ジプレキサ≧エビリファイ>セロクエルという印象です。リスパダールではうつ転してしまうこともあります。再発予防も意識して、リーマスやデパケンと併用していくことも多いです。この場合では躁状態が落ち着いてきたら、できるだけ抗精神病薬は減薬していきます。

 

うつの治療では、使える薬が限られてきます。双極性障害のうつ状態に効果がある薬としては、リーマス、セロクエル、ジプレキサ、ラミクタールの4つがあげられます。

この中でも、セロクエルでの抗うつ効果が示されていて、ガイドラインでも推奨されています。リーマスやラミクタール、ジプレキサでも効果があるといわれていますが、効果が不十分となってしまうこともあります。リーマスとラミクタールの併用も推奨されています。これらの薬で効果がハッキリしない場合は、リフレックス/レメロンなどの抗うつ剤を使うこともあります。

 

再発予防効果としては、リーマスが最も推奨されています。ラミクタールやデパケンといった抗てんかん薬、ジプレキサやセロクエルやエビリファイといった抗精神病薬でも再発予防効果が認められています。経過をみながらリーマスとラミクタールといった形で、これらの薬を併用していくこともあります。再発予防の観点からは、抗うつ剤を使った場合、状態が落ち着いたら中止していくことが望ましいです。

 

6.デパケンの適応疾患とは?

<適応>

<適応外>

デパケンは、添付文章では3つの適応疾患があります。

双極性障害の適応としては、躁状態のみとなっています。しかしながらデパケンは、再発予防効果を期待して使うこともあります。ですから、双極性障害のどのような状態でも使われることがあります。

また、脳の異常な興奮であるてんかんにも使われます。意識消失をしてしまうような全般性てんかんでは、デパケンは第一選択となっています。さまざまな種類のてんかんで有効性が確認されています。デパケン錠からデパケンになったことで、血中濃度が安定するようになりました。効果の持続が重要なてんかん治療には、デパケンはとても有用です。

片頭痛の予防薬としても使われます。片頭痛では、血中濃度が50μg/mL未満でも有効性が確認されたので、低用量で使っていきます。

 

デパケンは適応外として、これ以外にもさまざまな疾患で使われます。デパケンは気持ちを鎮める鎮静作用があるので、不安や興奮が高まっている時に有効です。知的障害や発達障害、統合失調症や認知症、パーソナリティ障害など、さまざまな病気で使われます。うつ病の補助として使われることもあります。

 

7.デパケンが向いている人とは?

デパケンの特徴は、「抗躁効果に優れ、再発予防効果も期待できる気分安定薬」でした。この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

デパケンは再発予防効果が期待できるお薬です。はじめから再発予防効果を意識して使っていくことも多いです。他の気分安定薬を使っていて気分の波が目立つ方では、デパケンを併用することもあります。

また、デパケンは効き始めがゆっくりです。このため、衝動性や攻撃性が強く、興奮が強い躁状態の方には向きません。じっくりと治療ができるような方に使われることが多いです。興奮が強い方でも再発予防効果を意識して、抗精神病薬と併用されることはあります。

 

デパケンの効果は、複雑な躁状態に効果が期待できます。

ピュアな躁状態に効果的なリーマスとは対照的です。

 

まとめ

デパケンは、「抗躁効果に優れ、再発予防効果も期待できる気分安定薬」です。

デパケンのメリットとしては、

デパケンのデメリットとしては、

デパケンが向いている方は、