リーマス錠の効果と特徴

アイコン 2015.12.4 リーマス

リーマス錠は、1980年に発売された気分安定薬です。

気分安定薬には、大きく3つの効果があります。気分を鎮める抗躁効果、気分を持ち上げる抗うつ効果、気分の波を少なくする再発予防効果になります。気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬です。

リーマスは、金属元素であるリチウムをお薬にしたものです。リチウムは通常、ごく微量にしか体内には存在しません。このため必須ミネラルですらないのですが、経験的にリチウムには気分安定作用があることがわかっています。

リーマスは3つの効果のすべてを持ち合わせていて、とくに気分の波を少なくする再発予防効果に優れているお薬です。このため、双極性障害の治療薬としてファーストチョイスで使われることが多いお薬です。

ここでは、リーマス錠の効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。

 

1.リーマスの効果と特徴

気分安定薬には、3つの効果が期待されています。リーマスでの3つの効果の強さは以下のようになります。

これを踏まえて、まずはリーマスの特徴をメリットとデメリットに分けてまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

 

1-1.リーマスのメリット

リーマスは3つの効果のすべてを持ち合わせているのが特徴的で、その中でも気分の波を少なくする再発予防効果に優れています。双極性障害の再発率は、実に5年で80~90%ともいわれています。維持期の再発予防治療としては、リーマスがすべてのガイドラインで第一選択にあげられています。

また、抗躁効果も期待できます。リーマスの効果はゆっくりと出てくるので、軽躁状態の方で興奮が強くない方に向いています。それだけでなく、抗うつ効果も認められます。再発予防も見据えてじっくりと治療していける時には、リーマスはすべてに効果が期待できるお薬になります。

このためリーマスは、気分の波を小さくして、その波が起こるのを少なくしてくれるお薬といえます。

 

また、リーマスは唯一、自殺の予防効果がしっかりと示されているお薬です。リーマスの穏やかな鎮静作用や再発予防効果が関係していると思われます。双極性障害は非常に苦悩の大きな病気で自殺率も高いため、リーマスの自殺予防効果は重要です。

そしてリーマスは古くからある薬なので、これまで多くの研究が積み重ねられてきました。このため、エビデンスが豊富なお薬です。また、薬価もとても安くなっています。

 

1-2.リーマスのデメリット

リーマスのデメリットは、大きく2つあります。

リーマスは効果が出てくるのがゆっくりで、少なくとも1週間以上たってから認められます。また、有効血中濃度まで使わなければ、効果がしっかりと認められません。このため、時間がかかってしまいます。じっくりと治療ができる時はよいのですが、すぐに何とかしない時には向きません。

リチウムは治療濃度と中毒濃度が近いお薬です。リーマスを過量服薬してしまうと、ときに急性中毒で死に至ることもあります。また、リーマスは腎臓で排泄されるお薬なので、腎臓の機能が低下するとリチウムが身体に少しずつたまっていきます。このようになると、ジワジワと過量のリチウムが浸透して慢性中毒となってしまいます。

このようなお薬のため、定期的に血中濃度を測りながら使っていきます。腎臓に負担の大きいお薬である解熱鎮痛剤のロキソニンなどのNSAIDs、脱水を引き起こす利尿剤や降圧剤などは注意して使う必要があります。腎機能が低下しやすい高齢者も注意が必要です。

 

リーマスの副作用として多いのは、手指の振戦(ふるえ)が多いです。中毒濃度に近づくにつれてひどくなっていきますので、ふるえが認められた場合はリーマスの血中濃度を測る必要があります。それ以外にも腎臓での濃縮力が低下して多尿になる方が多いです。

ときに甲状腺に影響して、甲状腺ホルモンの分泌を低下させてしまうことがあります。甲状腺機能低下症は、抑うつ状態の原因にもなります。カルシウム代謝のバランスをとっている副甲状腺ホルモンの分泌を増加させてしまうことがあります。このため、年に1回は血液検査で甲状腺ホルモンとCa濃度をチェックする必要があります。

また、リーマスには催奇形性があります。エブスタイン奇形という心臓の奇形が増加するという報告があります。特に妊娠初期ではリーマスは避けた方がよいでしょう。

 

リーマスの副作用について詳しく知りたい方は、
リーマスの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.リーマスの作用の仕組み(作用機序)

リーマスがどうして効果があるのか、はっきりと分かっていません。経験的に効果があることが分かっています。

双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、気分の浮き沈みを繰り返す病気です。何らかの脳の機能的な異常があると考えられていますが、どうしてこのような異常が引き起こされるのかは定かではありません。

リーマスには、以下の3つの効果があります。

つまりリーマスは、気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬といえます。どうしてこのような効果があるのでしょうか?結論から申し上げると、正確な理由は分かっていません。経験的に効果があることが分かっているのです。

リーマスの成分であるリチウムは、1817年に金属元素として見つけられました。その後、気分の安定に効果のあると言われてきたものにはリチウムが多量に含まれていることがわかり、1800年代の後半ごろから精神安定作用のあるリチウム入り健康水なども販売されていました。

このように経験的に効果があることがわかっていましたが、医療の世界に取り入れられたのは1950年代になります。1949年、動物実験でリーマスに鎮静作用があることが分かり、抗躁効果があることがわかりました。これをうけて精神科治療に導入され、次第に抗うつ効果や再発予防効果がわかってきました。

 

リーマスがどうしてこのような効果があるのかは、現在でもわかっていません。いくつか仮説があるのでご紹介していきます。

リーマスは他のお薬と違って、受容体に作用するわけではありません。細胞膜にあるチャネルを通って細胞内に取り込まれて、直接作用すると考えられています。

リーマスはIMPase(イノシトールモノ脱リン酸化酵素)の働きをブロックすることで、イノシトール3リン酸による細胞内の情報伝達を邪魔します。刺激がうまく細胞内で伝わらなくなるので、細胞での活動が低下します。このようにして、脳細胞での興奮が静まり、抗躁効果が発揮されるのだろうと考えられています。

抗うつ効果や再発予防効果に対しては、リーマスの神経保護作用が関係していると考えられています。リーマスではどのようにして神経保護作用が認められるかも分かっていません。リーマスはGSK-3βという酵素の働きをブロックし、神経細胞の脱落を防ぐことが推測されています。実際にリーマスによって、BDNF(脳由来神経栄養因子)やBcl-2(抗アポトーシス分子)といった神経保護に関係する物質の増加が報告されています。

 

3.リーマスの効果時間・血中濃度と使い方

リーマスは最高血中濃度到達時間が2.6時間、半減期が18時間の気分安定薬です。400~600mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度まで使っていきます。

リーマスを服用すると、2.6時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、18時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

リーマスは作用時間がそこまで長くはないので、1日2~3回に分けて服用することが一般的です。毎日服用していると、およそ5日で血中濃度が安定します。このため、少なくとも1週間は様子をみながら効果をみていきます。

 

リーマスは治療域と中毒域が近いこともあり、血中濃度を測りながら用量を決めていきます。リーマスは腎機能低下や脱水の影響をうけやすいので、患者さんごとに用量が異なります。

リーマスの開始用量は400~600mgとなることが多いです。高齢者や腎機能低下が明らかな場合は、200~300mgから始めていくこともあります。血中濃度を測定しながら、有効血中濃度となるように量を調整します。

有効血中濃度は0.4~1.0mEq/Lが目安です。1.5mEq/Lを超えてくると中毒症状が出てくるため、せいぜい1.2mEq/Lに抑えます。抗躁効果を期待するときは高用量が必要で、1.0mEq/L前後にします。

維持療法のときは、患者さんの状態に応じて低用量(0.4~0.6mEq/L)か高用量(0.8~1.0mEq/L)で様子を見ていきます。高用量の方が再発予防効果は高いですが、副作用が強まります。維持療法では低用量となることもあるので、服用回数を1日1回に減らせることもあります。

 

4.リーマスとその他の気分安定薬の位置づけ

気分安定薬としては、大きく3つのタイプがあります。

薬の効きの早さをみると、炭酸リチウムと抗てんかん薬は効果がゆっくりで、抗精神病薬は効果が早いです。双極性障害の治療目的によって、それぞれの薬を使い分けていきます。治療目的にわけて、気分安定薬の位置づけを見ていきましょう。

 

躁の治療では、症状の程度によって異なります。

軽躁状態であればじっくりと治療ができるので、リーマスかデパケンの単剤が最も推奨されています。抗躁作用だけを比較するならば、テグレトール>デパケン>リーマス>>ラミクタールという印象です。後述する再発予防効果や副作用を考慮すると、日本のガイドラインではリーマスが第一選択となっています。

中等度以上の躁状態では、治療のスピードが求められます。抗精神病薬単剤か抗精神病薬の併用が推奨されています。抗精神病薬での抗躁作用を比較すると、リスパダール≧ジプレキサ≧エビリファイ>セロクエルという印象です。リスパダールではうつ転してしまうこともあります。再発予防も意識して、リーマスと併用していくことも多いです。この場合では躁状態が落ち着いてきたら、できるだけ抗精神病薬は減薬していきます。

 

うつの治療では、使える薬が限られてきます。双極性障害のうつ状態に効果がある薬としては、リーマス、セロクエル、ジプレキサ、ラミクタールの4つがあげられます。

この中でも、セロクエルでの抗うつ効果が示されていて、ガイドラインでも推奨されています。リーマスやラミクタール、ジプレキサでも効果があるといわれていますが、効果が不十分となってしまうこともあります。リーマスとラミクタールの併用も推奨されています。これらの薬で効果がハッキリしない場合は、リフレックス/レメロンなどの抗うつ剤を使うこともあります。

 

再発予防効果としては、リーマスが最も推奨されています。ラミクタールやデパケンといった抗てんかん薬、ジプレキサやセロクエルやエビリファイといった抗精神病薬でも再発予防効果が認められています。経過をみながらリーマスとラミクタールといった形で、これらの薬を併用していくこともあります。再発予防の観点からは、抗うつ剤を使った場合、状態が落ち着いたら中止していくことが望ましいです。

 

5.リーマスの適応疾患とは?

<適応>

<適応外>

リーマスは、添付文章上の適応疾患としては、双極性障害の躁状態のみとなっています。しかしながら、リーマスの一番の強みは再発予防効果にあります。ですから、双極性障害のどのような状態でも使われることがあります。

また、抗うつ剤の増強療法として使われることがあります。抗うつ剤をつかっていて効果があと一歩の時に、100~200mgのリーマスを追加することで抗うつ効果が増強されます。このような増強療法(augmentation)としても使われることがあります。

 

6.リーマスが向いている人とは?

リーマスの特徴は、「再発予防効果がしっかりとしているが効き始めがゆっくりなお薬」でした。この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

他の気分安定薬と比較しても、リーマスは再発予防効果の強いお薬です。はじめから再発予防効果を意識して使っていくことも多いです。他の気分安定薬を使っていて気分の波が目立つ方では、リーマスを併用することが多いです。

また、リーマスは効き始めがゆっくりです。このため、衝動性や攻撃性が強く、興奮が強い躁状態の方には向きません。じっくりと治療ができるような方に使われることが多いです。興奮が強い方でも再発予防効果を意識して、抗精神病薬と併用されることはあります。

 

リーマスの効果は、ピュアな躁状態に効果が期待できます。気分が爽快になって活動性が高まっているような方には、薬の効果が認められやすいです。反対に、以下のような患者さんはリーマスの効果がよくありません。

 

リーマスのもうひとつの特徴として、「治療域と中毒域が近くて安全性が低い」ことがあげられます。

このため、血中濃度を測定しながら効果をみていかなければいけません。ですから、毎日きっちりとお薬を服用しないと、効果が安定しません。リーマスは1日2~3回の服用となることが多いので、

リーマスは腎臓で排泄されるお薬でもあります。ですから、脱水や腎機能の影響を強く受けます。

このような患者さんは注意が必要です。一方で、リーマスは肝臓への影響が少ないお薬です。肝臓に負担をかけたくない方には向いているといえます。

 

まとめ

リーマスは、「再発予防効果がしっかりとしているが効き始めがゆっくりなお薬」です。「治療域と安全域が近く、安全性が低いお薬」でもあります。

リーマスのメリットとしては、

リーマスのデメリットとしては、

リーマスが向いている方は、