カルバマゼピン錠の効果と特徴

アイコン 2016.1.4 テグレトール

カルバマゼピン錠は、1966年に発売された抗てんかん薬テグレトールのジェネリックです。ジェネリックは、1978年から発売となっています。

その作用機序ははっきりとしていませんが、カルバマゼピンには脳の活動を抑える働きがあって、さまざまな病気に使われています。脳の異常な興奮である「てんかん」、顔にピリッとした痛みが走る「三叉神経痛」などといった身体の病気だけでなく、気分安定薬としての効果も認められます。

気分安定薬には、大きく3つの効果があります。気分を鎮める抗躁効果、気分を持ち上げる抗うつ効果、気分の波を少なくする再発予防効果になります。気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬です。

カルバマゼピンは抗躁効果が強い気分安定薬です。双極性障害の治療に限らず、気持ちを落ち着けるお薬として広く使われているお薬です。

ここでは、気分安定薬としてのカルバマゼピン錠の効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。

 

1.カルバマゼピンの効果と特徴

気分安定薬には、3つの効果が期待されています。カルバマゼピンでの3つの効果の強さは以下のようになります。

これを踏まえて、まずはカルバマゼピンの特徴をメリットとデメリットに分けてまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

 

1-1.カルバマゼピンのメリット

カルバマゼピンは抗躁効果に優れているお薬です。リーマスやデパケンよりもガッチリと抑える印象のあるお薬です。これらの2剤で効果がなかった患者さんに効くこともあります。

カルバマゼピンでは、再発予防効果も確認されています。第一選択となるリーマスとの効果に差はないという報告もありますが、副作用の多さから、ガイドラインでは第二選択となっているものがほとんどです。

抗てんかん薬は一般的に妊娠への悪影響がある薬が多いです。カルバマゼピンは比較的安全と考えられていて、葉酸を服用しながらできるだけ少量にすれば、問題ないことが多いといわれています。授乳に関しても、カルバマゼピンは母乳への移行が少ないので、妊婦さんには比較的優しい薬と言えます。

カルバマゼピンの薬価は、古くからある薬なのでかなり安価になっています。経済的にも負担の少ないお薬になっています。

 

1-2.カルバマゼピンのデメリット

カルバマゼピンは抗躁効果が強いのですが、効果がやや遅いというデメリットがあります。気分安定薬のリーマスよりは早いものの、即効性では抗精神病薬よりも劣ります。あまりにも著しい躁状態の患者さんには向きません。

また、カルバマゼピンは抗うつ効果が弱いです。うつ状態では、カルバマゼピンはガイドラインでもすすめられていません。実際に使っているとある程度は抗うつ効果はあるように感じるのですが、有効性を示した論文が少ないのが現状です。

カルバマゼピンは、他の気分安定薬と比較しても副作用が多いのが難点です。めまいやふらつき、吐き気や頭痛などが認められることがあります。また、皮疹ができることが多く、重症化するリスクも高いです。無顆粒球症という血液細胞が作られなくなってしまう病気になってしまうことがあります。どちらも、時に死に至ることもある病気です。

カルバマゼピンの特徴的な副作用としては、「すべての音が半音下がって聞こえる」という聴覚変化があります。絶対音感のある患者さんでは不快感が強い症状です。

カルバマゼピンは他の薬との相互作用が大きなお薬です。CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4という肝臓の酵素の働きを強めます。多くの薬がこれらの肝臓の酵素で分解されていくので、カルバマゼピンは併用薬の分解を早めて効果を減弱してしまいます。

グレープフルーツジュースは、薬を吸収する小腸でのCYP3A4という酵素の働きを邪魔する作用があります。カルバマゼピンはこの酵素の影響を大きく受けるため、本来は分解されて吸収されないはずの薬の成分が吸収されて、カルバマゼピンの血中濃度が上昇してしまいます。

このように、カルバマゼピンは血中濃度が安定しにくいお薬なのです。

 

カルバマゼピンの副作用について詳しく知りたい方は、
カルバマゼピンの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.カルバマゼピンの作用の仕組み(作用機序)

カルバマゼピンは、神経細胞膜を安定させる作用が関係していると考えられています。

双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、気分の浮き沈みを繰り返す病気です。何らかの脳の機能的な異常があると考えられていますが、どうしてこのような異常が引き起こされるのかは定かではありません。

カルバマゼピンには、以下の3つの効果が期待されています。

カルバマゼピンは、気分の浮き沈みの波を小さくし、波が生じるのを少なくするお薬といえます。カルバマゼピンがどうしてこのような効果があるのかは、現在でも完全にはわかっていません。

現在考えられているカルバマゼピンの作用機序は、神経細胞膜の安定作用によるものです。

これにはナトリウムイオンが関係しています。通常の神経細胞では、内側がマイナスで外側がプラスの電位差があります。ナトリウムはプラスイオンですから、ナトリウムイオンが細胞内に入ってくると神経細胞が興奮(脱分極)します。

カルバマゼピンは、このナトリウムイオンの通り道であるイオンチャネルをブロックします。するとプラスイオンが細胞内に入れなくなり、細胞が興奮しにくくなります。このため、神経細胞膜を安定させる作用があるのです。

 

3.カルバマゼピン錠の効果時間・血中濃度と使い方

カルバマゼピン錠は最高血中濃度到達時間が4~24時間、半減期が36時間の気分安定薬です。服用を続けていると作用時間が短くなっていきます。100~200mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度まで使っていきます。

カルバマゼピン錠を服用すると、4~24時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、36時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

カルバマゼピンは、肝臓の酵素の働きを強めて自分自身の分解を早める作用があります。このため服用を続けていると、作用時間が延びていきます。最高血中濃度到達時間は4~8時間、半減期は16~24時間となります。

このようにカルバマゼピンは作用時間が不安定になりやすいので、1日2~3回に分けて服用することが一般的です。

 

カルバマゼピンの開始用量は100~200mgとなることが多いです。肝機能が低下している高齢者では、50mgから始めることもあります。月に1回血中濃度を測定しながら、有効血中濃度となるように量を調整します。有効血中濃度は4~12μg/mLが目安です。これよりも低用量で効果が認められることもあります。

カルバマゼピンの添付文章をみると、以下の用量になっています。

 

4.カルバマゼピンとその他の気分安定薬の位置づけ

気分安定薬としては、大きく3つのタイプがあります。

薬の効きの早さをみると、炭酸リチウムと抗てんかん薬は効果がゆっくりで、抗精神病薬は効果が早いです。双極性障害の治療目的によって、それぞれの薬を使い分けていきます。治療目的にわけて、気分安定薬の位置づけを見ていきましょう。

 

躁の治療では、症状の程度によって異なります。

軽躁状態であればじっくりと治療ができるので、リーマスかデパケンの単剤が最も推奨されています。抗躁作用だけを比較するならば、カルバマゼピン>デパケン>リーマス>>ラミクタールという印象です。後述する再発予防効果や副作用を考慮すると、日本のガイドラインではリーマスが第一選択となっています。

中等度以上の躁状態では、治療のスピードが求められます。抗精神病薬単剤か抗精神病薬の併用が推奨されています。抗精神病薬での抗躁作用を比較すると、リスパダール≧ジプレキサ≧エビリファイ>セロクエルという印象です。リスパダールではうつ転してしまうこともあります。再発予防も意識して、リーマスやデパケンと併用していくことも多いです。躁状態が落ち着いてきたら、できるだけ抗精神病薬は減薬していきます。

 

うつの治療では、使える薬が限られてきます。双極性障害のうつ状態に効果がある薬としては、リーマス、セロクエル、ジプレキサ、ラミクタールの4つがあげられます。

この中でも、セロクエルでの抗うつ効果が示されていて、ガイドラインでも推奨されています。リーマスやラミクタール、ジプレキサでも効果があるといわれていますが、効果が不十分となってしまうこともあります。リーマスとラミクタールの併用も推奨されています。これらの薬で効果がハッキリしない場合は、リフレックス/レメロンなどの抗うつ剤を使うこともあります。

 

再発予防効果としては、リーマスが最も推奨されています。ラミクタールやデパケンといった抗てんかん薬、ジプレキサやセロクエルやエビリファイといった抗精神病薬でも再発予防効果が認められています。カルバマゼピンでもリーマスと同等の再発予防効果の報告もありますが、副作用が多いのがネックになります。

経過をみながらリーマスとラミクタールといった形で、これらの薬を併用していくこともあります。再発予防の観点からは、抗うつ剤を使った場合、状態が落ち着いたら中止していくことが望ましいです。

 

5.カルバマゼピンの適応疾患とは?

<適応>

<適応外>

カルバマゼピンは、添付文章では3つの適応疾患があります。

双極性障害の適応としては、躁状態のみとなっています。カルバマゼピンは、リーマスやデパケンに次いで再発予防効果を期待して使うこともあります。また、統合失調症の興奮が強い時にも効果が期待できます。

また、脳の異常な興奮であるてんかんにも使われます。脳の一部の興奮からてんかんが生じる部分発作では、カルバマゼピンは第一選択となっています。さまざまな種類のてんかんで有効性が確認されています。

カルバマゼピンは神経細胞の興奮を抑えるため、鎮痛作用も期待できます。顔の感覚をうけとる三叉神経が異常に興奮してしまう三叉神経痛の治療に使われます。

 

カルバマゼピンは適応外として、これ以外にもさまざまな疾患で使われます。カルバマゼピンは気持ちを鎮める鎮静作用があるので、不安や興奮が高まっている時に有効です。知的障害や発達障害、認知症やパーソナリティ障害など、さまざまな病気で使われることがあります。

 

6.カルバマゼピンが向いている人とは?

カルバマゼピンの特徴は、「抗躁効果が強いものの、副作用が多い気分安定薬」でした。この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

抗精神病薬に比べると、カルバマゼピンの効き始めはゆっくりです。このため、衝動性や攻撃性が強く、興奮が強い躁状態の方には向きません。治療に時間をかけられる方に使われることが多いです。

カルバマゼピンは副作用が目立つので、リーマスやデパケンを使っても効果が不十分な時に使われることが多いです。カルバマゼピンが有効な患者さんの特徴としては、

また、30歳未満の若くして発症された方には効果的といわれています。

 

まとめ

カルバマゼピンは、「抗躁効果が強いものの、副作用が目立つ気分安定薬」です。

カルバマゼピンのメリットとしては、

カルバマゼピンのデメリットとしては、

カルバマゼピンが向いている方は、

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