デパスの頓服としての有効性

アイコン 2015.9.17 デパス

デパスは抗不安薬や安定剤とよばれていて、不安や緊張を和らげる効果があります。

デパスは即効性があるので、症状が出てきたときに服用するという飲み方ができます。デパスは強力な抗不安効果と筋弛緩効果があるので、このような「頓服」としてよく使われています。

ここでは、デパスの頓服としての効果と、治療の中での位置づけをお伝えしていきたいと思います。

 

1.頓服とは?

調子が悪いときに、即効性を期待して使うお薬です。

頓服とは、調子が悪いとき、悪くなりそうなときに使うお薬です。本当につらい症状が出てきたときに、一時しのぎで使うお薬です。

このようなお薬ですので、

という2つの条件があります。

効果がすぐに期待できなければ、効果が出てくるまで耐えていなければいけませんね。効果がでてくるまでのスピードは、お薬の最高血中濃度到達時間をみれば推測ができます。血中濃度がピークになるまでの時間が短ければ、効果が出てくるのも早いのです。効果が出てくるまで、せいぜい30分くらいまでのお薬になるでしょう。

また、効果が実感できなくては意味がありません。「のんだけど効いているのかな?」というお薬は頓服としては意味がありません。ある程度、ちゃんとした効果が期待できることが必要です。「楽になった」という実感が大切なのです。

 

このように頓服とは一時しのぎのお薬にすぎません。そういう意味では、根本治療として使うお薬ではないことが多いのです。それでは意味がないのか?というとそういうわけではありません。

とくに精神科では、頓服はよく使われます。症状を感じることなく平穏に生活をしていくこと自体が治療につながることも多いのです。その意味については、後述していきます。

 

2.デパスの頓服とは?

早くて強い効果が期待できる頓服で、不安時や不穏時に使われることがあります。

それでは、デパスの頓服について考えてみましょう。

デパスの効果の特徴をみてみましょう。

最高血中濃度到達時間が3時間、半減期が6時間

 

まずはデパスを頓服した時の効果の出方からみていきましょう。

デパスは血中濃度のピークになるまでが3時間となっていますが、最初の1時間で急激に血中濃度があがります。このため、即効性が期待できます。20~30分くらいで効果が出てきて、3時間後がピークです。半減期とは血中濃度が半分になるまでにかかる時間ですが、これが6時間と比較的短いです。デパス頓服の効果時間は4~6時間ほどになります。

 

デパスの頓服の効果をみてみましょう。

デパスは抗不安作用や筋弛緩作用が強いことが特徴です。このため、不安が強い時や落ち着かない時に使われることが多いです。このためお薬の袋には、「デパス 1錠 不安時頓用」「デパス 1錠 不穏時頓用」などと書いてあります。不安と不穏ってよくわかりませんよね?とくに明確な区別があるわけではなく、曖昧に使われていることが多いです。

ざっくりと言ってしまえば、

として使い分けてください。もう少し正確にいうと、不安時とは「不安が強くてつらい症状がある時」、不穏時とは「自分の感情がコントロールできなくなって落ち着かない状態になっている時」に使っていきます。症状と状態の違いがあります。

 

他の抗不安薬と比較しながら、デパスの頓服を考えていきたいと思います。デパスは即効性が期待できて抗不安作用も強いので、頓服向きのお薬です。

効果の早さという点では、最高血中濃度到達時間が3時間と遅いので多少はおくれてきます。

なので、効果がでてくるのは少し遅いでしょう。ただ、最初の1時間ほどで急激に血中濃度が上がるので大きな差はありません。

効果の持続という点では、半減期が6時間と短いので切れ味がよいです。

なので、これらと比較しても効果時間が短いです。ピンチをしのぐ頓服としては効果の実感が大きい薬です。

抗不安効果を比較しても、デパスは強いです。筋弛緩作用もあるので、不安による緊張感が強い方には向いています。声が震えたり、手足が震えてしまう方にはとても有効です。

 

デパスの頓服では、眠気に注意しなければいけません。デパスは服用後もしばらく効果が持続します。不安や緊張が強い時は交感神経が優位になっているので、眠気を感じることがありません。しばらくして症状が落ち着いてくると、急に眠気が強くなることがあります。また、1日に何回も服用すると、効果が積み重なって眠気が強くなってしまいます。

 

デパスの効果について詳しく知りたい方は、
デパスの効果と効能の強さ
をお読みください。

 

3.デパス頓服の使い方と、治療の中での意味

0.5mgか1mgを使っていくことが多いです。様々な病気で使われますが、不安障害では自信をつけていくためのサポートとして使います。

デパスの頓服はどのようにして使っていくのでしょうか?治療の中での意味とは何でしょうか?考えていきましょう。

デパスの頓服の使い方からみていきましょう。デパスは錠剤として、0.25mg・0.5mg・1mgが発売されています。デパスの頓服として使う量は、0.5mgか1mgとなることが多いです。

頓服の量の決め方としては、まずは少量から試してみます。0.5mgから始めていくことが多いですが、高齢者や体格の小さな女性では0.25mgから試していきます。効果が不十分でしたら、1mgまで使っていきます。デパスは1日3mgまで使えますが、1回の量は1mgまでしか使いません。眠気やふらつきなどの副作用が強く出てしまうためです。

 

それでは、デパスの頓服は治療の中でどのような意味があるのかを考えていきましょう。

精神科では、症状を感じることなく平穏に生活をしていくこと自体が治療につながることも多いのです。

うつ病の方では、不安や焦りが発作的に強くなることがあります。これを取り除いてあげることで、ゆっくりと休養して回復につなげていくことができます。不安障害の方では、頓服で不安をコントロールできることで自信をつけていけます。「どうにもならない」から「何とかなるんだ」というように認知を変えて、もっとチャレンジしてみようと行動を変えていきます。

なかには、病気が慢性化してしまっている方もいらっしゃいます。頓服によって不安と上手く付き合えることで、少しずつ社会生活に近づけていくことができます。

 

このように、いろいろな病気でデパスの頓服が使われます。もっともよく使われる不安障害について、具体的に見ていきましょう。

不安障害では、薬の治療と同時に認知行動療法をすすめていくことが多いです。認知行動療法とは、誤解を恐れずにいうと「自信をつけていく」ことです。自転車にはじめて乗る時のようなもので、最初は怖くてとても乗れませんね。まずは補助輪をつけて、自転車に乗ることへの自信をつけていきます。この補助輪が抗不安薬の頓服です。いずれ補助輪なしでも自転車に乗れるようになっていきますね。

頓服は、苦手なイベントの前につかいます。

まずは、「この薬を飲んでいたら大丈夫」という自信をつけます。それができたら、できそうなことから少しずつ薬を減らしたり、飲まないでチャレンジをしていきます。うまくいったら自分にご褒美をあげてください。このようにして成功体験を積み重ねながら、少しずつ自信をつけていきます。最終的には頓服はお守りとしてもっている形になれば理想です。

 

4.頓服とプラセボ効果

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。

精神科のお薬では、効果が期待できないお薬をあえて使うということもあります。「詐欺じゃないか!」と思われる方もいらっしゃいますが、これは患者さんを思ってのことです。

明らかに身体に異常がある内科などの病気とは違って、精神科の病気では「薬を飲んだという安心感」で精神的に落ち着くことが多いのです。患者さんのためを考えると、できるだけ薬は少なくしたいのです。このため、あえて効果のない薬や弱い薬を使うことがあります。

 

このような「薬を飲んだという安心感」を、「プラセボ効果」といいます。

どのお薬も、発売されるまでに臨床試験を行います。その試験では、偽物の薬と本物の薬をわからないようにしてデータをとります。その上でちゃんと差が出たら、科学的に間違いなく効果があったと分かるのです。

このような試験をすると、偽物の薬でも3割くらいの方には効果がでてきます。お薬を飲んでいるという安心感が、気持ちの安定につながるのでしょう。

 

ちゃんと効くお薬だと思って服用しないと意味がありませんから、患者さんには「よく効く薬」といって処方します。ですが今の世の中は情報化社会です。インターネットで薬の名前を調べてしまえばすぐにわかってしまいます。また、病院と薬局は分業しています。プラセボ効果を期待して薬を処方しても、薬局ではその意図をくみ取ってくれないこともあります。ですから、入院中の患者さんや認知機能の衰えたご高齢の方に使うことがほとんどでしょう。

このように、プラセボを使ってくれる医者は良心的だと思うのですが、ヤブ医者と呼ばれてしまうかもしれません。

私は頓服としてプラセボを使う時は、粉薬ならば乳糖(その名の通り糖)、錠剤ならばガスコン(腸のガスを減らすお薬)かムコスタ(胃薬)を処方しています。私の患者さんでこれらのお薬が処方されていた方は、良心だと受け取ってもらいたいものです。

 

まとめ

頓服とは、調子が悪いときに即効性を期待して使うお薬です。

デパスは早くて強い効果が期待できる頓服で、不安時や不穏時に使われることがあります。

0.5mgか1mgを使っていくことが多いです。様々な病気で使われますが、不安障害では自信をつけていくためのサポートとして使います。

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。