セルシン注射液(静注・筋注)の効果とは?

アイコン 2015.9.19 セルシン・ホリゾン

セルシンは、古くからある抗不安薬です。その作用は幅広く、抗不安作用・筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用があります。使い勝手のよいお薬としてよく使われたので、剤形も様々なものが発売されています。

セルシンには注射液が発売されていますが、これは日本で使える唯一の抗不安薬の注射になります。このため、いろいろな場面でセルシンの注射が使われています。

セルシンの注射にはどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、セルシンの注射の効果と実際の使い方について、お伝えしていきたいと思います。

 

1.セルシンの3つの注射方法

セルシンは、筋注や静注されることが多いです。点滴静注はすすめられません。

セルシンの注射は、3つの方法で行われることがあります。

いずれの投与方法も、普通に口からお薬を服用するよりも効果が早いです。経口投与の場合、

口→胃→小腸→門脈→肝臓→血管→臓器(脳)

と、お薬が目的にたどり着くまでに長い経路が必要です。しかも肝臓を通ると、お薬が分解されてしまいます。このため、経口投与は100%の効果を期待できません。このことを初回通過効果といいます。この3つの方法は肝臓を通らずに作用するので、効果が早くて強いのです。

 

このうち、点滴静注は行うべきではありません。詳しくは後述しますが、セルシンは脂にとけやすいので、うまく有効成分が血液中に吸収されないためです。

筋肉注射は、薬を飲めない方に有効です。いろいろな状況でお薬が飲めないことがあります。そんな時に筋肉注射は効果的です。セルシンの場合は、思ったほど効きがよくありません。お薬が体脂肪に吸収されてしまうのでしょう。

静脈注射は、直接血管にお薬が入っていくので効果がもっとも強力です。ただ、ゆっくりと静注をしなければいけません。少なくとも2分以上かけて、ゆっくりと注入していきます。効果が強すぎて呼吸が止まってしまうことがあるからです。注入しながら酸素の状態(SpO)を確認して、ゆっくりと使っていきます。

 

昔は、注腸という方法がありました。注射器でセルシン注射液を吸って、お尻に注入します。直腸粘膜から吸収されて、効果が早く出てきます。現在は、ダイアップ坐薬が発売されているのでこちらを使います。

 

2.セルシンの注射はどういう時に使うの?

薬を飲める状況じゃないとき、けいれん発作が治まらないとき、薬物離脱症状がみられたときに使われます。

お薬は内服できるならば、それにこしたことはありません。消化管を通して吸収されるので、もっとも安全性が高いです。セルシンの注射をしなければいけない時は、いずれも「薬を飲める状態でない時」です。大きく分けると3つのケースがあります。

不安や興奮があまりにも強いときには、注射薬が使われます。興奮が強くて、お薬を冷静に飲めないことがあります。そういう時には筋注をすることがあります。あまりにも興奮が強い場合に静脈注射をすることもありますが、同じベンゾジアゼピン系のロヒプノールを使うことの方が多いでしょう。

精神科の症状には、緊張病症状というものがあります。これは、あまりに意欲がなくなってしまって固まって何もできない状態です。こんな時にはお薬も飲めないので、セルシンの筋肉注射が効果をみせることがあります。

 

セルシンの注射がよくつかわれるのは、けいれん発作のときと薬物離脱症状がみられているときです。

けいれん発作をとめるために、セルシンやリボトリールなど抗けいれん作用のある抗不安薬が効果的です。リボトリールには注射液がないのでセルシン注射液がよく使われます。まずはしっかりと酸素を確保して、その後にけいれんを止める方法を考えます。血管がうまく確保できたら、ゆっくりと静注をしていきます。難しい時は同じ成分の坐薬(ダイアップ坐薬)から使ってみます。

また、アルコール依存症の離脱症状にもセルシンは効果が期待できます。服薬できる状況でなかったら、興奮の程度によって筋注か静注を行っていきます。

 

セルシンの効果について詳しく知りたい方は、
セルシン錠の効果と強さ
をお読みください。

 

3.セルシン筋注とは?

セルシンの筋注は、「どうしても内服ができない状況で抗不安薬を使いたいとき」に行います。

筋肉注射は、その名前の通り筋肉に注射します。肩(三角筋)やおしり(中殿筋)に注射します。お尻といっても上の方なので、ズボンを全部おろす必要はありません。お尻の方が痛みが少ないことが多いです。

まずは一般的な筋肉注射の特徴を整理してみましょう。

<メリット>

<デメリット>

筋注すると、筋肉にたくさんある毛細血管から血中に取り込まれていきます。筋肉→血管→臓器(脳)と、すぐに血管にたどりつけます。肝臓を通過しないので分解されないで済みます。また、内服よりも早い効果が期待できます。

注射ですから、患者さんがお薬を拒否したり、服用できない状態でも使えます。精神科の治療では、患者さんが正しく自分の状態を判断できないことがあります。そのような時は、意に沿わない形で筋注することもあります。また、緊張病状態でお薬を服用できないこともあります。そのような時には筋注をします。

ですが、何回も筋肉注射をすると筋肉が線維化してしまいます。筋肉が固まってしまって、伸びなくなってしまいます。また、筋注したときに誤って神経を傷つけてしまうリスクもあります。

 

それでは、セルシンの筋注について考えていきましょう。セルシンの筋注は、残念ながら思ったほど効果がありません。通常は筋注すると効果が早くなりますが、セルシンでは時間がかかります。内服の方が早いと感じることもあります。また、効果自体もそこまで強くありません。おそらく、セルシンが脂に溶けやすいのが原因でしょう。まわりの体脂肪にお薬が吸収されてしまうのだと思います。

また、セルシンの薬剤は濃い(浸透圧が高い)ので、注射すると非常に痛いです。ですから、「どうしても内服ができない状況で抗不安薬を使いたいとき」にセルシンの筋注をします。

 

4.セルシン静注とは?

けいれん発作を止めるために使われることがほとんどです。興奮状態を鎮めるために使うこともありますが、その場合はロヒプノール/サイレースを使うことの方が多いです。

静脈注射は、採血や点滴と同じ要領で血管に針をいれて、そこからお薬を注入していきます。

まずは一般的な静脈注射の特徴を整理してみましょう。

<メリット>

<デメリット>

血管に直接お薬を入れていきます。このため、血管→臓器(脳)とダイレクトに作用します。このため、すべてのお薬の投与方法の中で、もっとも早くて強い効果が期待できます。もちろん肝臓を経由しないので、分解されることもありません。

患者さんがお薬を拒否したり、服用できない状態でも使えます。静注するときは急速な効果を期待したいときなので、状態が悪くてどうしようもない時に、何とか注射することが多いです。

薬の作用が急激にきてしまうので、副作用や中毒症状も起こりやすいです。重大な副作用や事故にもつながることがあります。

 

それでは、セルシンの静注について考えていきましょう。セルシンを静注するときは、大きく2つのケースがあります。

セルシンには抗けいれん作用があります。てんかんや熱性けいれんなどによって、けいれん発作が止まらないときに使われます。静脈が確保できれば、セルシンを静注すると即効性が期待できます。まずは坐薬(ダイアップ坐薬)から使って、効果がないときに静注することが多いです。

興奮が強くて強くて暴れているときにも使われることがあります。通常は同じベンゾジアゼピン系のロヒプノール/サイレースを使うことが多いです。睡眠薬に分類されているお薬なので、眠気とともに興奮を鎮めてくれます。セルシンも効果がありますが、催眠作用はロヒプノール/サイレースには劣ります。

静注するときは、時間をかけてゆっくりと注入する必要があります。少なくとも2分以上かけて、ゆっくりと注入していきます。これはセルシンの効果が強すぎて、呼吸が止まってしまうことがあるからです。呼吸状態や酸素の状態(SpO)を確認しながら、ゆっくりと使っていきます。呼吸抑制がかかり過ぎてしまった場合は、アネキセートがセルシンの効果を帳消しにしてくれます。

長くベンゾジアゼピン系のお薬を服用していて、耐性(身体に薬が慣れること)ができていて全然効かない方がいます。その時は、ラボナなどのバルビツール系を慎重につかっていきます。

 

5.セルシン点滴静注とは?

効果が不安定でリスクも伴うので、行うべきではありません。

ときおり、セルシンが点滴されていることがあります。ですが、セルシンの点滴静注はするべきではありません。

セルシンは非常に脂に溶けやすいお薬(分配係数が高い)です。脂に溶けやすいということは水を嫌うので、ほとんど水に溶けません。薬の成分がまとまってコロイドを形成していると考えられます。コロイドとは、水を嫌う部分を内側に、水と相性のいい部分だけを外に出して固まっている小さな塊です。このような状態で血中にはいっていくので、効果が不安定になってしまいます。

また、セルシンはPh(酸性-アルカリ性)の変化で溶けやすさが大きく変わります。酸性になると溶解度が下がって、薬が出てきてしまいます。他のお薬の影響で酸性になると、セルシンが沈殿してしまいます。生理食塩水のようにNaが入っている点滴にいれると、セルシンと反応して沈殿ができてしまいます。このように、他の成分の影響がでてしまいます。

さらにセルシンは、プラスチックの素材に吸着しやすいです。点滴バックやチューブに吸着してしまうことで、実際の投与量が減ってしまいます。

 

添付文章をみると、点滴静注の用法は記載されていません。「白濁・沈殿を生じるため、他の注射液と混合又は希釈して使用しないこと」と書かれています。点滴については触れられていませんが、製薬会社としても想定していないと思われます。

このため、点滴静注は行わない方がよいです。

 

まとめ

セルシンには3つの注射方法があります。

セルシンは、筋注や静注されることが多いです。点滴静注は効果が不安定でリスクがあるので、行わない方がよいです。

セルシンを筋注するのは、以下のケースです。

セルシン静注は、けいれん発作のときに使われることがほとんどです。