残っているお薬は飲んでも大丈夫?残薬を家族や友人にあげてもいい?

アイコン 2016.9.12 薬の取り扱いについて
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忙しい合間をぬって病院へ行き、せっかく出してもらった薬だけど、飲み忘れたり、症状が治ってしまったりして、余ってしまった…

そんなとき、すぐさま捨ててしまう人はほとんどいないと思います。

「なんとなくもったいない」
「また使えるかも」

そう思って、取っておく場合が多いのではないでしょうか。このように、なんらかの事情で余ってしまった薬を「残薬」といいます。

しばらく時間がたってから、同じ症状の時に残薬を使っても大丈夫でしょうか?友人や家族にあげても問題ないのでしょうか?

ここでは、「残薬」が患者さんご自身の生活や、今後の医療にどう影響するのか、考えてみましょう。

 

1.残薬はいつまで大丈夫?お薬の期限について

薬は適切な保管状態でなければ効果がなくなってしまいます。温度・湿度・光に注意しましょう。

残薬といえども期限があります。多くの薬では、3年間ほどの長期保存試験を行っています。長期保存しても有効成分が失われずに薬として効果が期待できるように安定していることが確認されています。

しかしながらこれは、それは常識的・理想的な保管状態において効果が保証できる期間です。食べ物の賞味期限と同じで、ひどい保存状況ではすぐに傷んでしまいます。

たとえば、インスリン製剤などの注射薬はほとんどのものは、冷所保存が基本です。冷所とは1~10℃。つまり、凍らせても温めてもいけないということです。いくら期限内でも、温度を変えてしまってはいけないのです。なぜかというと、インスリンはアミノ酸がつながったタンパク質から成りますので、温かくなると酵素によって分解されてしまうからなのです。

また、目薬や座薬、2種以上の軟膏やクリームを混合した塗り薬、整腸剤のなかにも、冷所保存しなければ品質を保てないものがありますので注意してください。

それ以外のお薬は室温保存が基本ですが、ひとくちに室温といっても、最高30℃までと考えたほうがよいでしょう。真夏の日当たりの良い場所や車内など、高温になりやすい場所に置いておくのはやめたほうが無難です。

また、光や湿度も影響を与えます。アルミや赤いシートのお薬は、光に弱いお薬です。また、茶色の瓶で渡されることがある鉄剤のシロップも光に弱いです。光によって分解されてしまったり、別の物質に変わってしまうことで、薬の効果が落ちてしまいます。ですから服薬する際は、飲む直前に開封してください。

保管状態については、実際お薬を渡されるときに薬剤師からアドバイスがあると思いますので守ってください。きっちりと保管しないと、いつか使えるかもしれないと取っておいた残薬も無駄になりかねないのです。

 

2.残薬のはあげていいの?お薬の譲渡について

残薬を人に譲るのは、思わぬ副作用につながることがあります。絶対にやめましょう。

「ちょっと肩が痛いんだよね」
「じゃあこれはどう? よく効くよ!」

ご家族やお友達とのこんな会話、ありませんか?残薬をほかの人にあげることで、大きな体調悪化につながってしまうことはあまりありません。ですが身近な薬でも、なかには注意すべき副作用が隠れているものもあります。

たとえば、ケトプロフェンを含む湿布やテープ(モーラステープ・モーラスパップ)の重い副作用として、光線過敏症があります。このシップは、はがした後も3~4週間は成分が残っているので注意が必要です。でもこのことを知らずに使ってしまったら、ひどい湿疹ができてしまって病院に行かなければいけなくなることも考えられます。

そのほか、体重や体表面積、年齢はもちろん、血液検査などの結果などを考慮して、医師が適切なお薬を選んで処方しています。

さらには、患者さんそれぞれの生活リズムなども考えてお薬が出されている場合もあります。ですから、相手によかれと思ってあげた薬が、その人によって効いたり効かなかったり、副作用だけが出てしまったりしてしまい、かえってマイナスな影響を与える可能性も少なくありません。

残薬とはいえ、あなた自身のためだけのお薬です。他人に渡すのは絶対止めましょう。

 

3.残った薬はどうすればよい?残薬の処理について

飲み忘れで残薬がある場合は、正直に主治医に伝えてください。病院にもっていけば、適切に処理してくれます。

じゃあ、残薬はいったいどうしたらよいのでしょう。

捨てるにしても、分別は?
家族や近所の人に見られたらどうしよう?

そんなときは、かかりつけ医、あるいはお近くの薬局へ持ってきてください。プライバシーを侵害せず、安全・適切に処理致します。

主治医の先生に薬を飲み忘れていることをバレたくないと思うかもしれません。心配しないで正直にいていただいたほうが、私たち医者としては助かります。

薬は処方されたものをしっかりと服用していること前提に治療をすすめていきます。ですから飲み忘れを知らないでいると、誤った前提で治療をすすめていくことになります。

残薬を病院に持ってきて、正直に話してください。患者さんのことを考えて指導はすることはあっても、感情的に怒ることはありません。(医者が感情的になったら、変えたほうが良いです)

注射薬に使用した後の針についても同様です。どんな薬にも、なんらかの影響を人体に与える成分が含まれています。廃棄したつもりが、誤飲や針刺し事故などにつながらないようにしましょう。

 

4.薬を飲み忘れないには?残薬とアドヒアランス

薬を飲むことが、生活にストレスなく組み込まれていく必要があります。様々な方法があるので、患者さんから積極的に医師や薬剤師に相談してください。

そんなこといったって、余ってしまうものは余ってしまう…頑張っているのに飲み忘れてしまう方もいるかと思います。まずはその原因を探りましょう。

いろいろな理由があると思います。でも、薬によっては、

薬を飲むことはとても大変です。私自身が病気になって薬を飲むときも、飲み忘れることはしょっちゅうありました。普段、症状がない中で薬を飲むことはさらに大変です。

薬を飲み忘れないためには、服薬することがストレスなく生活に組み込まれていく必要があります。そのためにできることもあるので、医師や薬剤師に積極的に相談してください。

医師と患者さんが一体となって、患者さんが積極的にお薬を服用していくことをアドヒアランスと言います。症状の改善や病気の治療には、このお薬のアドヒアランスの向上が欠かせません。

 

5.残薬をへらすためには?残薬と国の対策

平成24年度から、薬局側から残薬確認を積極的に行うことで診療報酬が加算される仕組みになっています。

残薬が医療費の大きな負担になっていることは、以前からも議論されてきました。滋賀県薬剤師会が平成26年~27年の3か月に行った調査では、8744億円もの残薬薬剤費があるとの試算もなされました。

この調査は粗い統計なのですが、残薬薬剤費は数千億円規模にのぼる可能性があります。このことを受けて、平成24年度より診療報酬改定がなされました。

薬局サイドでも残薬確認を行うことで、重複投薬・相互作用防止加算の算定が可能になったのです。薬局側から積極的に残薬確認をすることで、少しでも残薬薬剤費を少なくしようという試みになります。

この制度の検証研究では、年間100億円程度の削減に成功したと報告されています。このように残薬確認によって、経済的効果が認めらるのです。

このように残薬がなくなることは、医療費としての問題というだけでなく、患者さん自身のお会計も安くなります。治療にとっても、プラスに働きます。

余った薬について持参するなり、残数をメモするなりして、次の診療に備えてみましょう。

 

まとめ

どんな薬にも、食べ物と同じで有効期限がありますが、それは、常識的・理想的な保管状態において効果が保証できる期間です。

処方された薬を、家族や知人に気軽にあげないようにしましょう。

保管に困ったお薬は、お近くの病院や薬局に相談してみましょう。

薬を飲むことが、生活にストレスなく組み込まれていく必要があります。様々な方法があるので、患者さんから積極的に医師や薬剤師に相談してください。

結果的に患者さんご自身の医療費の節約が、医療費全体の削減への貢献につながるのです。