頓服とは何だろう?頓服薬の意味

アイコン 2015.9.23 薬の基礎知識

「頓服」とは、医療関係者は当たり前のように使っている言葉ですが、なかなか一般の方には馴染みのない言葉です。処方箋に頓服と書かれていて、「どういう意味だろう?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

頓服とは、調子が悪いときに一時しのぎに使うお薬のことです。いろいろな症状に対して、頓服薬が使われています。

ここでは、頓服薬に求められる条件と、その治療の中での意味について考えていきたいと思います。

 

1.頓服とは?

調子が悪いときに、即効性を期待して使うお薬です。

頓服とは、調子が悪いとき、悪くなりそうなときに使うお薬です。本当につらい症状が出てきたときに、一時しのぎで使うお薬です。

このようなお薬ですので、

という2つの条件があります。

効果がすぐに期待できなければ、効果が出てくるまで耐えていなければいけませんね。効果がでてくるまでのスピードは、お薬の最高血中濃度到達時間をみれば推測ができます。血中濃度がピークになるまでの時間が短ければ、効果が出てくるのも早いのです。効果が出てくるまで、せいぜい30分くらいまでのお薬になるでしょう。

また、効果が実感できなくては意味がありません。「のんだけど効いているのかな?」というお薬は頓服としては意味がありません。ある程度、ちゃんとした効果が期待できることが必要です。「楽になった」という実感が大切なのです。

 

このように頓服とは一時しのぎのお薬にすぎません。そういう意味では、根本治療として使うお薬ではないことが多いのです。それでは意味がないのか?というとそういうわけではありません。

とくに精神科では、頓服はよく使われます。症状を感じることなく平穏に生活をしていくこと自体が治療につながることも多いのです。

 

2.頓服の使い方と、治療の中での意味とは?

頓服は症状をコントロールできる量を使います。いろいろな目的がありますが、精神科では症状をコントロールできているという安心感が重要です。

頓服はどのようにして使っていくのでしょうか?治療の中での意味とは何でしょうか?考えていきましょう。

頓服の使い方は、症状が出てきたときに使っていくお薬です。不安やイライラなどの精神症状の場合は、症状が出てくる予感がある時は前もって使うこともあります。

頓服の量の決め方としては、まずは少量から試してみます。効果が不十分でしたら、少しずつ量を増やして試していきます。症状をちゃんとコントロールできることが大事です。増減させながら、適切な量を見つけましょう。

 

それでは、頓服は治療の中でどのような意味があるのかを考えていきましょう。

多くの身体の病気では、根本治療や予防に力を入れていきます。コントロールしきれずに出てきてしまう症状を和らげるために、頓服を使います。症状を耐えられるのならばできるだけ使わない方がよいことが多いです。少しずつ頓服が減っていくことを目指します。

精神科では、身体の病気よりも頓服を使うことが多いです。多くの精神科の病気で重要なのは、症状がコントロールされているという安心感です。安心感があればストレスが軽減され、回復にも自信が出てきます。精神科ではこのような心理的な要素も大きいために、できるだけ辛い症状を取り除くことが必要なのです。症状を感じることなく平穏に生活をしていくこと自体が治療につながっていくのです。

 

ひとつの例として、不安障害での抗不安薬の意味について、具体的に考えてみましょう。

不安障害では、薬の治療と同時に認知行動療法をすすめていくことが多いです。認知行動療法とは、誤解を恐れずに言うと「自信をつけていく」ことです。自転車にはじめて乗る時のようなもので、最初は怖くてとても乗れませんね。まずは補助輪をつけて、自転車に乗ることへの自信をつけていきます。この補助輪が抗不安薬の頓服です。いずれ補助輪なしでも自転車に乗れるようになっていきますね。

頓服は、苦手なイベントの前につかいます。

まずは、「この薬を飲んでいたら大丈夫」という自信をつけます。それができたら、できそうなことから少しずつ薬を減らしたり、飲まないでチャレンジをしてい きます。うまくいったら自分にご褒美をあげてください。このようにして成功体験を積み重ねながら、少しずつ自信をつけていきます。最終的には頓服はお守り としてもっている形になれば理想です。

 

3.頓服とプラセボ効果

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。

精神科のお薬では、効果が期待できないお薬をあえて使うということもあります。「詐欺じゃないか!」と思われる方もいらっしゃいますが、これは患者さんを思ってのことです。

明らかに身体に異常がある内科などの病気とは違って、精神科の病気では「薬を飲んだという安心感」で精神的に落ち着くことが多いのです。患者さんのためを考えると、できるだけ薬は少なくしたいのです。このため、あえて効果のない薬や弱い薬を使うことがあります。

 

このような「薬を飲んだという安心感」を、「プラセボ効果」といいます。

どのお薬も、発売されるまでに臨床試験を行います。その試験では、偽物の薬と本物の薬をわからないようにしてデータをとります。その上でちゃんと差が出たら、科学的に間違いなく効果があったと分かるのです。

このような試験をすると、偽物の薬でも3割くらいの方には効果がでてきます。お薬を飲んでいるという安心感が、気持ちの安定につながるのでしょう。

 

ちゃんと効くお薬だと思って服用しないと意味がありませんから、患者さんには「よく効く薬」といって処方します。ですが今の世の中は情報化社会です。インターネットで薬の名前を調べてしまえばすぐにわかってしまいます。また、病院と薬局は分業しています。プラセボ効果を期待して薬を処方しても、薬局ではその意図をくみ取ってくれないこともあります。ですから、入院中の患者さんや認知機能の衰えたご高齢の方に使うことがほとんどでしょう。

このように、プラセボを使ってくれる医者は良心的だと思うのですが、ヤブ医者と呼ばれてしまうかもしれません。

私は頓服としてプラセボを使う時は、粉薬ならば乳糖(その名の通り糖)、錠剤ならばガスコン(腸のガスを減らすお薬)かムコスタ(胃薬)を処方しています。私の患者さんでこれらのお薬が処方されていた方は、良心だと受け取ってもらいたいものです。

 

まとめ

頓服とは、調子が悪いときに即効性を期待して使うお薬です。

頓服は症状をコントロールできる量を使います。いろいろな目的がありますが、精神科では症状をコントロールできているという安心感が重要です。

できるだけ薬を少なくするために、「薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)」を利用することもあります。

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