三環系抗うつ薬の効果と副作用

アイコン 2015.9.19 抗うつ薬のまとめ

三環系抗うつ薬は、もっとも古くからある三環系抗うつ薬です。この薬の登場をうけて、うつ病の薬物療法が発展していくきっかけとなりました。

最近では、さらに副作用の少ないSSRI・SNRI・NaSSAといった新しい抗うつ薬が優先して使われるようになっています。ですが、三環系抗うつ薬は副作用が多いですが効果も大きいでので、今でもよく使われています。

ここでは、三環系抗うつ薬の効果と副作用について、ほかの抗うつ剤とも比較しながらみていきましょう。

 

1.三環系抗うつ薬とはどのような抗うつ剤なの?(作用機序)

三環系抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで効果を発揮します。

三環系抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンを増加させることで効果を発揮します。まずはセロトニンとノルアドレナリンについてご説明していきましょう。どちらも、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。

「セロトンン」は気持ちの安定に関係しているといわれていて、症状としては、不安や落ち込みと関係があるといわれています。ですから、セロトニンを増やせば抗うつ効果が期待できます。

「ノルアドレナリン」は、意欲に関係しているといわれていて、症状としては、意欲低下や気力低下といったものと関係があります。

 

これらの物質を増やすには2つの方法があります。

①分泌された神経伝達物質の回収を邪魔する(再取り込み阻害)
②神経伝達物質の分泌を増やす(自己受容体遮断)

 

三環系抗うつ薬では、①の方法をとっています。

分泌された神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンは、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。この再取り込みを阻害すれば、セロトニンやノルアドレナリンの量が増えますね。回収されずに残ったセロトニンやノルアドレナリンは残って作用し続けるので、効果が発揮さ れるのです。

この作用機序で効果を発揮するのが三環系抗うつ薬なのです。三環系抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリン以外にもいろいろな作用があります。抗ヒスタミン作用・抗コリン作用・抗コリン作用などが認められます。古い薬なので洗練されていないのです。このため副作用は多くなってしまいますが、効果としては厚みがあります。ハイリスク・ハイリターンな抗うつ剤なのです。

 

 

2.三環系抗うつ薬にはどのような種類があるの?

日本では、三環系抗うつ薬としては5種類が発売されています。最初に発売されたのは、トフラニール・トリプタノール・アナフラニールの3つです。効果は優れていたのですが、副作用がネックでした。副作用を緩和して作られたのが、アモキサン・ノリトレンの2つです。副作用は減りましたが、効果も薄れてしまいました。それでは、それぞれの特徴をみていきましょう。

 

2-1.トフラニール(成分名:イミプラミン

ノルアドレナリン優位に増加させる抗うつ剤で、遺尿症や慢性疼痛などにも使われます。

1959年に、日本ではじめて発売された抗うつ剤です。この薬が発売されたのを機に、薬物療法がうつの治療の中心となりました。SSRIなどの新しい抗うつ剤が発売されるまで、うつの治療の中心として使われていたのが三環系抗うつ薬です。

トフラニールは、一番最初に開発された三環系抗うつ薬です。トフラニールは、いろいろな受容体に広く作用します。効果としては、セロトニンよりもノルアドレナリンを優位に増加させます。このため、意欲低下や気力低下が目立つ方に効果が期待できます。副作用としては、抗コリン作用、抗ヒスタミン作用、抗α1作用がいずれも強く、便秘・口渇・ふらつき・体重増加・性機能障害などの副作用がみられます。

抗コリン作用を利用して、いわゆる「おねしょ」である遺尿症にも使われます。また、トリプタノールに次いで痛みにも効果があります。

 

2-2.トリプタノール(成分名:アミトリプチリン

最強の抗うつ剤といっても過言ではなく、悪夢や慢性疼痛にも使われます。

トリプタノールは1961年に発売されました。効果の強さでいえば、最強といっていいでしょう。古い抗うつ剤ですが、現在も最強の抗うつ剤として、切り札として使われます。効果が強いので、副作用もとても多いです。

トリプタノール自体はセロトニンを優位に増加させますが、代謝されるとノリトレンになります。ノリトレンはノルアドレナリンを優位に増加させるので、セロトニンもノルアドレナリンをどちらも強力に増加させます。抗コリン作用、抗ヒスタミン作用、抗α1作用がいずれも強く、便秘・口渇・ふらつき・眠気・体重増加・性機能障害などの副作用がみられます。

トリプタノールは眠気が強いですが、睡眠の質にも影響があります。夢を見ているレム睡眠を減らすので、悪夢で悩んでいる方に使うことがあります。また、痛みにも効果が認められますので、慢性疼痛に使われることも多いです。

 

2-3.アナフラニール(成分名:クロミプラミン)

セロトニンを優位に増加させ、強迫性障害などの不安障害にも使われます。

アナフラニールは、1973年に発売されました。ほとんどの三環系抗うつ薬がノルアドレナリンを優位に増加させますが、アナフラニールはセロトニンを優位に増加させます。このような三環系抗うつ剤はアナフラニールくらいですので、今でもよく使われています。

アナフラニールは、SSRIの効果が不十分な時に使われたりします。新しい抗うつ剤にはない、厚みのある効果が期待できます。副作用は多く、便秘・口渇・ふらつき・体重増加・性機能障害に注意が必要です。

アナフラニールは、不安障害にもよく使われます。とくに強迫性障害では、SSRIのフルボキサミンと併用してよく使われています。また、アナフラニールは抗うつ剤の中で唯一点滴があります。どうしても薬が飲めない時や内服薬では効果が不十分な時、点滴が有効なことがあります。

 

2-4.ノリトレン(成分名:ノリトリプチン)

トリプタノールの代謝産物で、ノルアドレナリンを優位に増加させます。

三環系抗うつ薬は、効果は優れていたのですが副作用がネックとなっていました。どうにかできないかと開発されたのがアモキサンとノリトレンです。ノリトレンは、1971年に発売されました。ノリトレンはトリプタノールの代謝産物で、副作用は多少軽くなっています。ですが効果も減弱してしまっています。

ノリトレンは、ノルアドレナリンを優位に増加させます。このため、意欲低下が目立つ方に効果が期待できます。副作用としては、便秘・口渇・体重増加・性機能障害に注意が必要です。

 

2-5.アモキサピン(成分名:アモキサン

抗コリン作用などの副作用が減少しましたが、効果も減弱しています。他の抗うつ剤と比べて効果が早いです。

アモキサンは1981年に発売され、抗コリン作用がかなり軽減されています。効果としては、ノルアドレナリンを優位に増加させます。

副作用は減りましたが、効果も減弱してしまいました。そうはいっても、それなりにしっかりとした効果は期待できます。アモキサンは、他の抗うつ剤と比較して効果の発言が早いという特徴があります。早い方は1週間もすると効果がでてきます。副作用は大きく軽減されていますが、体重増加・性機能障害・不眠に注意が必要です。

アモキサンは、意欲低下が目立つ方に使われることが多いです。

 

3.三環系抗うつ薬が使われる疾患とは?

三環系抗うつ剤は抗うつ剤に分類されるように、うつの治療のために開発されたお薬です。セロトニンとノルアドレナリンを増加させることで不安や意欲を改善するだけでなく、痛みにも効果があります。夢を減少させる効果もあるので悪夢にも使われます。ひとつずつみていきましょう。

 

3-1.うつ病

落ち込みや不安、意欲や気力を改善していきます。

実のところ、うつ病の原因はよくわかっていません。そして、うつ病の方の脳ではどのような異常が起こっているのかも、ハッキリとわかっていません。

色々な薬が開発されている中で、どうやら「モノアミン」と呼ばれる脳内の神経伝達物質が関係していることがわかってきました。モノアミンのうち、セロトニンを増やせば落ち込みや不安に、ノルアドレナリンを増やせば意欲や気力に効果があることがわかってきたのです。

ですが、脳内のセロトニンやノルアドレナリンを測るすべは今のところありません。これができれば、うつ病の科学的に診断ができたでしょう。うつ病の患者さんの脳内では、おそらくセロトニンやノルアドラナリンが欠乏していると考えられているのです。

三環系抗うつ薬は、これらの物質を補うことで抗うつ効果を発揮します。効果はちゃんとあるので、セロトニンやノルアドラナリンを増やすことが治療につながることはわかっているのです。

 

3-2.慢性疼痛・線維筋痛症

三環系抗うつ薬では、痛みに対して効果が期待できます。

三環系抗うつ薬はセロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させるので、痛みに対する効果が期待できます。

セロトニンやノルアドレナリンは、どのようにして痛みに効果があるのでしょうか?痛みがどのようにして感じられているかを簡単にご説明すると、お分かりいただけると思います。

身体に何らかの痛み刺激が加わると、その情報が脳に届いてはじめて、痛みを感じます。身体が受けた痛みの情報は、まずは脊髄に伝えられます。そこから次の神経にバトンタッチして、一気に脳に伝えられます。ですが、状況によっては痛いなどと感じていられない場合もあります。このような時に備えて、ここのバトンタッチを調整する神経として下行疼痛抑制系という神経があります。

下行疼痛抑制系神経が働くと、このバトンタッチが抑えられるように働きます。この神経は、セロトニンとノルアドレナリンの2つの物質で痛みを和らげるように働きます。夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。我にかえってから急に痛みが襲ってきたりするのは、ノルアドレナリンがきれた証拠ですね。

三環系抗うつ剤はこの下行神経抑制系神経に働いて、痛みに効果を発揮するのです。

 

3-3.不眠症・悪夢

抑うつ傾向がみられる不眠の方には、効果的です。悪夢を減らす効果が期待できます。

三環系抗うつ薬の副作用として、眠気は多くの方が経験します。これをうまく使えば、不眠症の治療に役立てることができます。三環系抗うつ薬は、睡眠の質に影響を与えます。夢をみているレム睡眠を減少させます。このため、夢が減るので悪夢で悩んでいる方によく使われます。

このような効果があるので、抑うつ傾向がある方には睡眠薬として有効なことがあります。うつ病の方で不眠が認められているときには、三環系抗うつ薬が睡眠薬代わりになってくれることもあります。

 

3-4.遺尿症

抗コリン作用を利用して、おっしこを出にくくします。

小さなころに「おねしょ」をしてしまうことは当たり前です。ですが、ある程度の年齢になっても治らないと、社会生活に支障がでてきてしまいますね。このような方は、遺尿症として治療が必要なことがあります。

三環系抗うつ薬は、古い抗うつ薬であるがゆえに副作用が多いです。この副作用を逆手にとって治療に利用します。副作用のうちの抗コリン作用は、 膀胱を弛緩させて尿道をしめる働きがあります。このため、頻尿などの治療薬としても抗コリン薬が使われています。

三環系抗うつ薬の中でも古い薬であるアナフラニー ル>トフラニール>トリプタノールは、抗コリン作用が強いです。このため効果が期待できます。その他にも、三環系抗うつ薬には尿意覚醒を促す作用があたり、尿量減少作用があるといわれています。

 

4.三環系抗うつ薬と他の抗うつ剤の効果を比較

三環系抗うつ薬以外にもいろいろな抗うつ剤が使われています。三環系抗うつ薬の特徴としては、

につきます。この特徴をふまえて、代表的な抗うつ剤と比較してみましょう。

 

4-1.四環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬よりも効果はかなり弱いです。睡眠効果を期待して使われています。

四環系抗うつ薬は、三環系抗うつ薬の副作用を軽減できないかと開発された抗うつ剤です。副作用は軽減されましたが、残念ながら効果も薄れてしまっています。

四環系抗うつ薬には、ノルアドレナリンだけを増やす効果しかありません。セロトニンに対する作用がないので、抗うつ効果は弱いですノルアドレナリンを増やす効果としても、NaSSAにはかないません。眠気がある抗うつ剤なので、NaSSAと同じように睡眠薬代わりに使われることが多いです。

 

4-2.SSRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

三環系抗うつ薬はSSRIよりも効果が期待できます。一方で、副作用は非常に多いです。

SSRIはセロトニンだけにしぼって効果を発揮する抗うつ剤です。このため、不安や落ち込みには効果がより発揮されます。SSRIは、他の受容体には作用しないようにできています。このため、副作用はかなり軽減されています。

効果という意味では、総合的にはSNRIと同じくらいでしょうか。安全性も高いので、抗うつ剤として初めに使われることも多いです。SNRIはSSRIと違って、セロトニンだけでなくノルアドレナリンを増加させます。このため、意欲低下や気力低下目立つ方にはSNRIの方が効果が期待できます。患者さんの状態によって使い分けます。

SSRIは不安を和らげる効果が強いので、様々な不安障害、摂食障害や月経前緊張症(PMS)などに使われています。

 

4-3.SNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害

三環系抗うつ薬はSNRIよりも効果が期待できます。ですが、副作用はとても多いです。

セロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させる抗うつ剤として発売されました。SNRIもSSRIと同様に、他の受容体には作用しないようにできています。このため、副作用はかなり軽減されています。

効果という意味では、SSRIと同じくらいでしょうか。安全性も高いので、抗うつ剤として初めに使われることも多いです。SNRIはSSRIと違って、セロ トニンだけでなくノルアドレナリンを増加させます。このため、ノルアドレナリンによって意欲低下や気力低下目立つ方に効果が期待できます。

SNRIは痛みにも効果があることがわかってきています。このため、疼痛の緩和のために使われることもあります。

 

4-4.NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬

新しい抗うつ剤では効果がもっともしっかりしていますが、三環系抗うつ薬には劣ります。

NaSSA は、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を増やすとともに、セロトニンの作用を効率化することで効果を発揮する薬です。新しい抗うつ剤の中でも効果が強い お薬で、13種類の抗うつ剤を比較した研究では、もっとも効果が優れていたという結果がでています。SNRIよりも効果が強いです。

この抗うつ剤では、良くも悪くも眠気と食欲増加が特徴的です。いい面では働けば、不眠が改善し、食欲が戻ります。悪い面で働らけば、眠気が日中に及んでしまい、体重が増加してしまいます。とくに飲み始めに眠気が強くでてくるので、働いていたり家事をされている方では、使いにくいお薬になってしまいます。

不眠がある方などでは、うまくいけば睡眠薬を使わなくて済みます。

 

4-5.抗うつ剤のタイプ別、効果の強さの比較

効果の強さだけをみれば、三環系抗うつ薬>NaSSA>SSRI=SNRI>四環系抗うつ薬となります。

このように、いろいろな抗うつ剤が発売されています。抗うつ剤の効果を比較して図にまとめたので参考にしてください。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

5.三環系抗うつ薬の副作用

抗うつ薬の中で副作用が多く、便秘・口渇・ふらつき・体重増加・性機能障害が多いです。ノリトレンとアモキサンでは副作用が軽減されています。

三環系抗うつ薬は古い薬なので洗練されておらず、いろいろな受容体に作用します。このため、効果が厚いですが、副作用も色々なものがみられます。

抗コリン作用が強く、便秘や口渇などがよく認められます。抗ヒスタミン作用も強く、体重増加が認められます。 抗α1作用はそこまで認められませんが、他の作用とも合わせてふらつきも強いです。新しい抗うつ薬ほどではないですが、性機能障害もよく認められています。

ノリトレンやアモキサンは、抗コリン作用を中心に副作用を軽減した三環系抗うつ薬です。このため、便秘や口渇を中心に副作用が軽減されています。

まれではありますが、三環系抗うつ薬では不整脈が起こることがあり、命に関わることもあるので注意が必要です。

 

6.抗うつ剤のタイプ別、副作用の比較

副作用の多さで比較すると、三環系抗うつ薬>四環系抗うつ薬≒NaSSA>SSRI≧SNRIとなります。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

まとめ

三環系抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害することで効果を発揮します。

トフラニール・トリプタノール・アナフラニール・ノリトレン・アモキサンの5種類が発売されています。

三環系抗うつ薬はうつ病・慢性疼痛・線維筋痛症・不眠症・悪夢・遺尿症などで使われます。

抗うつ剤のタイプごとに効果の強さを比較すると、三環系抗うつ薬>NaSSA>SSRI=SNRI>四環系抗うつ薬となります。

副作用の多さで比較すると、三環系抗うつ薬>四環系抗うつ薬≒NaSSA>SSRI≧SNRIとなります。