ドグマチールの生理・妊娠・授乳への影響とは?

アイコン 2015.8.21 ドグマチール

女性の方は妊娠や授乳への薬の影響を心配をされる方は多いと思います。ドグマチールを服用しているのに予想外の妊娠がわかって、慌てている方もいらっしゃるかもしれません。

ドグマチールは、生理不順や乳汁分泌の副作用が有名です。妊娠や出産に対してどのような影響があるのでしょうか?

ここでは、そんなドグマチールの女性への影響について考えていきたいと思います。

 

1.ドグマチールの女性への影響

高プロラクチン血症によって、生理不順から不妊につながることがあります。

ドグマチールが下垂体という部分に作用すると、プロラクチンというホルモンを増やしてしまいます。このホルモンは乳汁の分泌を促す作用があります。本来は、子供が産まれてから増えてくるホルモンなのです。また、子育てをしている時には次の出産をする余裕もないですから、排卵を抑制して妊娠しないようにする作用もあります。

このため高プロラクチン血症になってしまうと、

などの副作用がみられます。

 

もう少し詳しくみていきましょう。

ドパミンはプロラクチンを抑制する作用があります。ドグマチールはドパミンを減少させるので、この抑制が外れてプロラクチンを増やしてしまいます。通常プロラクチンは、下垂体の上のホルモン中枢である視床下部から分泌されるGn-RHというホルモンによってコントロールされています。プロラクチンが多いことを感じ取った視床下部は、このGn-RHホルモンの分泌を控えます。このホルモンは、プロラクチンだけでなくLHやFSHといった女性ホルモンを増やすホルモンをコントロールしています。このため、LHやFSHの分泌が低下してしまい、女性ホルモンの分泌が乱れてしまうのです。このため、正常な排卵や月経が来なくなってしまうのです。

 

このような症状がみられたときは、正確に診断するためにプロラクチン濃度を測る血液検査をします。プロラクチン濃度の理想は15くらいといわれていますが、30を超えたら高プロラクチン血症と診断します。

高プロラクチン血症の症状がみられたら、ドグマチールを中止して他の抗うつ剤にすることがほとんどです。どうしても中止ができない場合は、ドパミンを増やすようなビ・シフロールやパーロデルなどのドパミン受容体作動薬を使うこともあります。生理不順が長く続いてしまうと、なかなか通常の生理が回復しないこともあります。このような時は、女性ホルモン治療や排卵誘発によってリズムを整えていきます。

 

2.ドグマチールの妊娠への影響

高プロラクチン血症による生理不順や無月経・無排卵に気を付ける必要がありますが、奇形などのリスクはほとんど報告がありません。

ドグマチールの薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)をみてみると、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」となっています。ドグマチールは胎盤を通して、赤ちゃんに一部伝わってしまいます。ですが、ドグマチールを服用することで奇形が増えるという報告は、ほとんどありません。ただ、製薬会社としてはリスクが否定できないので、万が一を考えて使わないでほしいとしているのです。ですから、過度に心配しないでください。

 

 ドグマチールが影響するのは、妊娠しにくくなってしまうことです。高プロラクチン血症になってしまって、女性ホルモンの分泌が乱れてしまいます。すると、生理のリズムが乱れてしまいます。また、卵の成熟も悪くなってしまいます。その結果、受精能力が落ちてしまったり、排卵しなくなってしまったりします。

 

ドグマチールを飲みながら出産をする場合は、産まれてくる赤ちゃんに配慮する必要があります。妊娠の終わりにドグマチールを服用していると、赤ちゃんが生まれてきてから離脱症状や錐体外路症状が起こることがあります。赤ちゃんにもお薬が胎盤から伝わっていますので、産後に赤ちゃんの体内から薬がなくなってしまうと離脱症状が起こります。症状としては、落ち着かない、すぐに泣く、ふるえ、筋肉が緩む、筋肉が硬くなる、呼吸困難になる、哺乳がうまくできないなどです。ですが、早めに見つけて症状を和らげる治療をおこなっていけば、問題ないことがほとんどです。後遺症が残るたぐいのものではないので、こちらも過度に心配する必要はありません。錐体外路症状は、運動の障害です。薬が赤ちゃんの身体から抜けていけば次第に良くなっていきます。

大切なことは、ドグマチールを内服していることを、ちゃんとお産をする病院で伝えてください。事前にしっておけば、リスクも考えて赤ちゃんの状態を注意深く見守ることができます。また、何か症状がみられると、すぐに原因がわかるので早期治療につなげられます。

 

ドグマチールを飲んでいる方は、計画的に妊娠を考えていただいた方がよいです。ですが、万が一薬を飲んでいる時に妊娠が発覚したとしても、過度に心配しなくて大丈夫です。胎児への影響はほとんどないと考えられますので、主治医と相談して、できる範囲で薬を減らしていくようにしましょう。漢方や心理療法などもうまく利用すると、薬を減らしていくこともできます。

 

3.抗うつ剤の妊娠への影響の比較

抗うつ剤のほとんどは、「絶対に安全とは言えないけど、大きな問題はないだろう」と考えられています。もちろん薬は飲まないに越したことはないですが、お母さんが不安定になってしまったら赤ちゃんにもよくありません。ですから、無理をしてはいけません。抗うつ剤の妊娠への影響を比較してみましょう。

 

3-1.ドグマチールのガイドラインでの位置づけ

ドグマチールの妊娠へのリスクは、FDA基準では「?」、山下分類では「E」となっています。

抗うつ薬の妊娠への影響を比較しました。FDAと山下分類で比較しています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)が出している薬剤胎児危険度分類基準というものがあります。現在のところ、もっとも信頼性が高い基準となっています。この基準では、薬剤の胎児への危険度を「A・B・C・D・×」の5段階に分けられています。

A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
B:ヒトでの危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌

妊娠での薬の危険性をまとめたものは、日本では公的なものがありません。薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)を参考にした山下の分類というものがあります。この分類では、「A・B・C・E・・E+・F・-」の8段階に分類しています。妊娠と授乳をひっくるめています。

A:投与禁止
B:投与禁止が望ましい
C:授乳禁止
E:有益性使用
:3か月以内と後期では有益性使用
E+:可能な限り単独使用
F:慎重使用
-:注意なし(≠絶対安全)

 

3-2.抗うつ剤での妊娠リスク比較

妊娠を希望されている方は、ドグマチールを避けた方がよいです。

ドグマチールは生理不順や不妊になったりすることが多く、妊娠出産を考える女性には使いにくいお薬です。FDAでは妊娠の安全性の基準が定まっていませんが、 妊娠が成立してからの奇形の心配は少ないと思われます。

 

SSRIでは、大きな奇形がみられたという報告はなく、ほとんど影響がないといわれてきました。最近になって、パキシルでは心室中隔欠損という心臓奇形が増加する可能性が指摘されています。否定的な報告もあり、まだはっきりとわかっていませんが、妊娠を考える時は避けた方が無難です。他のSSRIはあまり影響がないと考えられています。

SNRIやNaSSAについても、新しい薬なので情報が十分とは言えませんが、明らかに関係している奇形の報告はありません。

昔からある三環系・四環系抗うつ薬では、大量に使った時に奇形の報告もされているので、妊娠中の安全性は劣ります。特にアナフラニールでは、心血管奇形が増えるという報告もあり注意が必要です。

 

妊娠への薬の影響を詳しく知りたい方は、
妊娠への薬の影響とは?よくある6つの疑問
をお読みください。

 

4.ドグマチールの授乳への影響

母乳に出ていきやすいといわれていますが、安全性は高いと考えられています。

ドグマチールの薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)をみてみると、「授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること。」となっています。

ですが、海外のガイドラインなどをみてみると、ドグマチールによる授乳への安全性は高いといわれています。ドグマチールは母乳に出ていきやすいです。ですが、これによる赤ちゃんへの影響はほとんどないと考えられています。

ですから医師の立場としては、「安全性は高いといわれているけど、リスクも踏まえて自己判断してください」と患者さんに説明せざるを得なくなってしまいます。母乳保育のメリットは、単に栄養補給だけでなく様々なメリットがあることがわかってきていますので、やめてくださいとも言いにくいのです。

 

ドグマチールは服用しながら授乳をしても大きな問題は起きないと考えられていますが、用心するならば生後2か月は気を付けた方がよいかも知れません。この頃は、肝臓や腎臓の機能が未熟なので薬が分解されにくく、また脳のバリア(脳血液関門)も十分に出来上がっていません。少量の薬も、大きく影響してしまうことがあります。メリットの大きい初乳だけは赤ちゃんに与えて、生後2か月までは人工乳保育をするのも方法です。

ドグマチールを飲みながら母乳保育をしていく決断をされた方は、できるだけ赤ちゃんに影響が出ない工夫をしましょう。ドグマチールは比較的に安全性が高いので、薬を変更する必要はありません。授乳した直後に内服をするなど、飲み方の工夫をしましょう。ドグマチールの薬の血中濃度が最高になるのは、服用してから2~3時間後です。できるだけ、そのピークをずらしましょう。

 

赤ちゃんの影響を心配して、薬を中止しようと思われる方もいらっしゃるかと思います。ですが、無理をしてはいけません。お母さんが健康で元気でなければ、お子さんの成長にも影響しますので、ご自身のことを大事にしてください。ただでさえ、人生でも数えるほどの大イベントを乗り越え、生活も一変したかと思います。夜泣きで赤ちゃんに起こされることもしばしば、ホルモンのバランスも崩れていますし、妊娠出産のダメージの回復もあります。ですから、必要なお薬はしっかりと続けていく必要があります。ドグマチールは比較的安全といわれていますし、わずかなドグマチールが母乳に含まれていたとしても、赤ちゃんにとってもメリットの方が大きいこともあります。主治医の先生に相談して、気持ちを整理しましょう。

 

5.ドグマチールの授乳への影響の比較

抗うつ剤の授乳への影響を比較してみてみましょう。

 

5-1.ドグマチールのガイドラインでの位置づけ

ドグマチールの授乳へのリスクは、Hale分類では「L2」、山下分類では「B~C」となっています。

抗うつ剤の授乳への影響を、Hale分類と山下分類で比較しました。

薬の授乳に与える影響に関しては、Hale授乳危険度分類がよく使われます。Medication and Mothers’ Milkというベストセラーの中で紹介されている分類です。

この分類では「L1~L5」の5段階に薬剤を分類しています。新薬は情報がないのでL3に分類されます。

L1:最も安全
L2:比較的安全
L3:おそらく安全・新薬・情報不足
L4:おそらく危険
L5:危険

授乳での危険度を分類したものも妊娠と同様、日本にはありません。薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)を参考にした山下の分類があります。上述しました通り、「A・B・C・E・・E+・F・-」の8段階に分類しています。

A:投与禁止
B:投与禁止が望ましい
C:授乳禁止
E:有益性使用
:3か月以内と後期では有益性使用
E+:可能な限り単独使用
F:慎重使用
-:注意なし(≠絶対安全)

 

5-2.抗うつ剤での授乳リスクの比較

ドグマチールは比較的に安全と考えられています。 

ドグマチールはL2に分類されていて、比較的安全性が高いといわれています。ただ、母乳に出ていきたやすいことがわかっていますので、母乳のあげ方には注意をした方がよいです。

 

SSRIは、どれも比較的安全といわれています。4剤で比較すると、パキシルとジェイゾロフトで母乳に出てしまう薬の量が少ないことがわかっています。ジェイゾロフトの方が全体的に副作用も少ないので、Haleの分類ではL1となっています。レクサプロでは、薬が母乳に出ていきやすいことがわかっています。それでもL2となっているのは、レクサプロが副作用の少ない抗うつ剤だからです。

その他の抗うつ剤でも、比較的安全性は高いといわれています。ですが、日本の添付文章を参考にした山下分類では、ほとんどが授乳を避けた方がよいor授乳禁止となっています。古くからある三環系抗うつ薬のアモキサンだけが、有益使用となっています。これは、古い薬なので添付文章が厳しくないためです。確かにアモキサンは、三環系抗うつ薬の中では副作用が少ないです。ですが、より副作用の少ない新しいドグマチールが軒並み禁止とされているのでとても不思議です。おそらく時代の変化を反映しているのでしょう。

薬の授乳への影響に関して詳しく知りたい方は、
授乳への薬の影響
をお読みください。

 

まとめ

高プロラクチン血症によって、生理不順から不妊につながることがあります。

高プロラクチン血症による生理不順や無月経・無排卵に気を付ける必要がありますが、奇形などのリスクはほとんど報告がありません。

授乳に関しては、母乳に出ていきやすいといわれていますが、安全性は高いと考えられています。