パキシルの離脱症状と6つの対策

アイコン 2015.7.10 パキシル

抗うつ薬が急に身体からなくなると、調子が悪くなることがあります。薬を飲まなかったせいで病気が悪化したと勘違いされる方が多いですが、そうとも限りません。身体に慣れていた薬が急になくなることによる離脱症状、これが原因であることも多いです。

離脱症状は古い薬より、むしろSSRIをはじめとした新しい抗うつ薬でよくみられます。パキシルはSSRIの中でも、最も離脱症状が起こりやすい薬です。このため、調子がよくなってもなかなか薬を止められない方もいらっしゃいます。

ここでは、パキシルの離脱症状について、詳しく説明していきます。

 

1.離脱症状とは?

薬が身体から急になくなることで起きる症状です。薬を減らしてから1~3日ほどで認められることが多いです。めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感・シャンビリ感などの症状がみられます。

薬をしばらく継続して使用していくと、身体に薬があることが当たり前になってきます。その状態で薬の量を減らしたり、服用を中止したりすると、身体にいろいろな不調が出てくることがあります。これが離脱症状です。

「めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り」といった身体症状が出ることがあります。「イライラ・不安・不眠・ソワソワ感」といった精神症状がみられることもあります。また、「シャンビリ感」といって、金属音のようなシャンシャンという耳鳴りがし、電気が流れたようにビリビリとしびれた感じがすることがあります。

これらの症状は、SSRIと三環系抗うつ薬では違いがあります。イライラ感といった攻撃性や、シャンビリ感といった脳に衝撃を受けるような感覚、手足のしびれといった感覚異常は、パキシルをはじめとしたSSRIに特徴的です。三環系抗うつ薬にはあまりみられません。

薬を1か月以上服用すると、薬を減らしていく時に、このような離脱症状が認められることがあります。およそ薬が減ってから1~3日くらいしてから認められます。2週間ほどすると落ち着きますが、重症の場合は2~3か月続くこともあります。

 

2.なぜパキシルで離脱症状が起こるのか?

SSRIのパキシルでは、セロトニンの急激な変化が関係しているといわれています。

薬を飲み始めてすぐの頃は、身体から薬の成分が消えても効果がなくなるだけです。しかし、長期間にわたって薬を飲み続けると、身体は薬が入ってくることを前提に体調を整えるようになります。その状態で急に減薬や断薬してしまうと、身体の調子がくるってしまいます。これが不快な症状となってあらわれるのです。

ただ、どのように調子がくるってしまうかは正確にはわかっていません。SSRIでは、セロトニンが関係していると考えられています。身体がセロ トニンの多い状態に慣れてセロトニンに対する反応が鈍っていきます。その状態でいきなりセロトニンが足りなくなりなくなると、セロトニンの働きが狂ってしまって離脱症状がでてきます。セロ トニンの受け皿である受容体が慣れるまでは、離脱症状が続いてしまいます。

詳しく知りたい方は、
抗うつ剤の離脱症状と5つの対策
をお読みください。

 

3.パキシルの離脱症状と、他の抗うつ剤との比較

パキシルは、半減期が長くはありません。さらに薬の濃度が急激に増加するので、離脱症状は抗うつ剤の中でも一番おこりやすいです。

新しい抗うつ剤であるSSRIやSNRIは、昔からある三環系抗うつ薬に比べて離脱症状は起こりやすいといわれています。その原因はよくわかっていませんが、セロト ニンだけに作用する力が強いことが関係していると考えられています。特にSSRIで離脱症状がよくみられるので、SSRI離脱症候群やSSRI中断症候群とも呼ばれています。SSRIの中でもパキシルは離脱症状が強いです。

 

離脱症状を考えるには、半減期が重要になります。半減期とは、薬が分解されて血中濃度が半分になるまでにかかる時間を意味します。つまり、半減期が長いということはゆっくりお薬が身体から抜けていき、半減期が短いということは急激に身体から薬が抜けていきます。半減期が短いと身体がびっくりしてしまうので、離脱症状がおこりやすくなります。

まずは、代表的な抗うつ薬の半減期を見てみましょう。

抗うつ剤の半減期をまとめました。

パキシルはの半減期は14時間と、短い方ではありませんが、目立って長いわけではありませんね。薬を服用すると、4~5時間で血中濃度がピークにな ります。そこから14時間かけて半分くらいの量になります。残りの5~6時間でさらに薬が抜けていくので、だいたい飲んだ量の40%くらいが身体に残りま す。これが少しずつ蓄積していって、安定します。パキシルの半減期は、ジェイゾロフトやレクサプロと比べると短いです。ですから、半減期をみても離脱症状が起こりやすいといえます。

また、薬の力価(強さ)は高い方です。パキシルは最高用量が40mgであることに対して、ジェイゾロフトは100mgです。1mgあたりの効果は、パキシルの方が強いことを意味します。このことを力価が高いといいますが、力価が高い薬の方が薬の変化が大きいです。このため、離脱症状は起こりやすくなります。

パキシルはこれだけではありません。パキシルは自分の薬の分解を邪魔するという性質があるので、薬の量を増やしていくとドンドンと 濃度が上がっていきます。薬を減らしていくとは反対に、一気にガクンと血中濃度が下がってしまうのです。

これらの3つの大きな理由を含めると、様々な抗うつ剤を比較しても、もっとも離脱症状が起こりやすい薬といえるのです。

 

SNRIでは、サインバルタで離脱症状が起きやすいです。半減期が短いこともありますが、これはカプセル製剤であることが要因として大きいです。少しずつ減量することができないため、離脱症状が起こりやすいです。

三環系抗うつ薬では、おもに抗コリン作用が関係していると考えられています。薬がなくなってアセチルコリンが解放されると、リバウンドによりアセチルコリンの活動が急に強まります。三環系抗うつ薬全体として、あまり認められませんが注意は必要です。

 

4.パキシルの離脱症状での対処法

パキシルは離脱症状が起こりにくい薬です。ですから、離脱症状がみられるのは、そのほとんどが急に薬を自己判断でやめてしまった場合です。

抗うつ薬は状態がおちついてきても、しばらくは続けていく必要があります。薬を自分で減量するのでしたら、「薬をやめたい」という気持ちを主治医に伝えてください。その上で計画的に減薬していきましょう。

ここでは、離脱症状が現れた時の対処法をご紹介したいと思います。

 

4-1.様子を見る

自己中断の場合は薬を戻しましょう。減薬中でしたら、耐えられそうなら様子をみましょう。

パキシルは自己中断で離脱症状がでてくることがほとんどです。この場合は原則として薬の量を元に戻すようにしましょう。もともとの病気が治りきらずに無理に減薬をすると、症状が悪化することがあります。ですから、主治医の先生に相談してください。

減薬中の場合、様子をみていくのもひとつの方法です。離脱症状が出てきていても、大きく日常生活に影響がなければ辛抱してください。

身体が薬が減った状態に少しずつ慣れていきます。それにあわせて症状は少しずつ和らいでいきます。個人差はありますが、1~2週間ほどすると症状が治まることが多いです。

安定剤が頓服として処方されている場合は、離脱症状が強い時に服用してもよい場合があります。症状が多少軽減されることがあります。

 

4-2.元の量に戻す

自己中断の場合は元に戻してください。日常生活に支障が大きい場合も、元に戻してください。

パキシルで離脱症状が起きるときは、ほとんどが自己中断によるものです。この場合は、元の量に戻してください。

医師と相談の上で減薬している場合は、症状の程度によります。症状がひどく日常生活に影響が大きい場合は、パキシルの量を元に戻しましょう。すると、比較的すみやかに状態は改善します。

一度落ち着いた後に、「薬をいつ減らしていくのか?」「どのように減らしていくのか?」を主治医と相談しましょう。しばらく時間をおいて、減薬をすると上手くいくこともあります。

 

4-3.減量ペースを落とす

再チャレンジする場合は、減量ペースを落とすことが原則です。

薬の減らすペースを落としていくと、薬の変化が緩やかになります。離脱症状が起こってしまった場合、次に減薬していくにあたっては、この戦略が原則になります。

パキシルの場合、5~10mgずつ減量していていくことが多いです。私は念のため5mgずつ減量しています。それくらい慎重に減量した方がよいお薬です。10mgで難しければ5mg、5mgで難しければ2.5mgに落としていきます。10mgまでは順調に減量できたのに、最後の5mgを減らすと離脱症状が出てしまう方もいらっしゃいます。

これ以上減量ができない量の場合、飲む間隔をあけていく場合もあります。毎日→休日抜く→2日に1回抜く→中止などとしていきます。

 

4-4.薬の服用回数を増やす

パキシルは半減期が長いとはいえないので、効果があることもあります。

薬の服用回数を増やすことで、薬の血中濃度の波が小さくなります。半減期の短い薬の場合は、血中濃度の波が大きくなります。ですから、この方法が有効なことがあります。

パキシルの場合、効果の持続時間は14時間です。短いわけではありませんが、決して長いとはいえません。このため、この方法で血中濃度をより安定させていくと離脱症状が軽減されます。

 

4-5.起こりにくい薬に切り替える

どうしても減量できない場合は、他の抗うつ剤に置き換えることも検討します。

少量ずつ減量することが難しかった場合、離脱症状が起こりにくい薬に切り替えるという方法もとります。

効果が弱く(力価が低い)、半減期が長い薬の方が、離脱症状は起こりにくいといえます。同じ系統の薬からこのような薬に切り替えていきます。この場合、新しい薬を併用して、効果が安定してきてから減薬をしていきます。

パキシルは、抗うつ薬の中ではもっとも離脱症状が起こりやすい薬です。同じSSRIの中で、レクサプロやジェイゾロフトは離脱症状が比較的起こりにくいので、切り替えていくこともあります。

 

4-6.パキシルCRに切り替える

パキシルよりも血中濃度が安定するので、離脱症状が起こりにくくなります。

パキシルには、改良版の薬であるパキシルCRが発売されています。この薬は徐放剤といって、薬の成分がゆっくりと放出されて身体に吸収されていくようにできています。ですから、パキシルよりも血中濃度が安定するので、離脱症状も起こりにくくなります。

パキシルCRは、パキシルとの置き換えが簡単です。他の抗うつ剤に切り替えるのならば慎重に切り替えていく必要がありますが、同じ有効成分ですのですぐに切り替えられます。ですが有効成分は変わらないので、離脱症状はもちろん起こります。

また、パキシル10mg相当の12.5mg錠剤が一番小さい錠剤です。薬を割ってしまうと、徐放剤の効果がなくなってしまいます。このため、少しずつ減薬が難しくなってしまいます。パキシルを変えるのは不安だけれども離脱症状で苦しんでいる方は、パキシルCRに置き換えてみるのも一つの方法です。

 

まとめ

離脱症状とは、薬が身体から急になくなることで起きる症状です。薬を減らしてから1~3日ほどで認められることが多いです。めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感・シャンビリ感などの症状がみられます。セロトニンが関係しているといわれています。

パキシルは半減期が長いわけではなく、薬の増減で血中濃度が急激に変化する薬です。離脱症状は抗うつ剤の中でも、もっとも起こりやすい薬といえます。

医師と相談の上で減薬している場合、離脱症状の対処法としては、日常生活への影響の大きさで考えていきます。なんとかなるならばそのまま様子を見ましょう。日常生活に支障が大きい場合は元に戻してください。

再チャレンジする場合は、減量ペースを落とすことが原則です。服薬回数を増やす方法や、他の薬に切り替える方法、パキシルCRに切り替える方法があります。