パキシルは太るの?体重増加と6つの対策

アイコン 2015.7.6 パキシル

精神科のお薬を処方すると、患者さんから「この薬は太りますか?」という質問をよく受けます。

精神科の薬はどうしても太る薬が多く、抗うつ剤も例外ではありません。パキシルは、過食が発作的におこることがあるので、太ってしまうことも多いです。ですが、食欲自体がどんどん増えるような薬ではありません。

パキシルで太らないようにするためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?ここでは、パキシルが太る理由からその対処法まで考えていきたいと思います。

 

1.パキシルは太るの?

パキシルは、抗ヒスタミン作用や抗5HT2c作用は弱いですが、セロトニンの作用が強いです。このため、代謝抑制作用から太りやすい傾向にはなります。また、過食が発作的に出てくる方もいるので、気を付ける必要があります。

抗うつ薬は、セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミンといった脳内の物質を増やすことで効果がでてきます。ですが、薬は目的通りには作用してくれません。いろいろな物質に影響を与えます。これが副作用としてでてくるのです。

体重増加には、細かくみると3つの作用が関係しています。

  1. 抗ヒスタミン作用による食欲増加
  2. 抗5HT2c作用による食欲増加
  3. セロトニンによる代謝抑制作用

パキシルは、主に③の作用が関係しています。パキシルでは抗5HT2c作用はほとんど認められませんが、抗ヒスタミン作用はわずかに認められます。この程度の作用でしたら、明らかな食欲増加にはつながりません。

ですが、セロトニンの作用が強いために代謝抑制作用が認められます。このため太りやすい傾向にはなります。セロトニンは精神を安定させ、リラックス状態をつくっていきます。すると、身体のエネルギーとしては消費が抑えられるようになります。エネルギーが使われなければ、体重は増えていきます。このように、セロトニンには代謝抑制効果があります。ですから、パキシルは太りやすい体質になってしまいます。

パキシルではこれに加えて、急に発作的に過食してしまう方がいらっしゃいます。なぜだかはよくわかりませんが、「食べ始めたら止まらなくなる」「急に我を忘れて食べてしまう」などの過食がみられます。パキシルを飲んでいて10kgも20kgも太ってしまったという方は、多くが過食によるものが多いです。自然と食欲が増えて太ったという方は少ないです。過食は女性の方が起こりやすいので、注意が必要です。

 

パキシルのその他の副作用について知りたい方は、
パキシルの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.パキシルだけでない太る理由

食欲は、精神疾患の影響を大きくうけます。

食欲は、心の影響を大きく受けます。食欲が低下してしまって体重が落ちてしまうこともあれば、食欲が増してしまって体重が増加することもあります。

典型的なうつ病の患者さんは、食欲がなくなって体重が減ってしまいます。また気力も低下してしまいますので、日中の活動量が落ちてしまいます。抗うつ薬を使って回復していくと、食欲から戻ってくることもあります。意欲がわかずに活動ができない状態が続くと、以前より太ってしまうこともあります。

また、摂食行動の異常という形で過食が認められることもあります。過食となってしまうのには、いろいろな背景があります。もちろんパキシルの副作用で過食になっていることもありますが、パキシルが過食を軽減することもあります。ですから、パキシルが太りやすくなるからといって、自己判断で中止せずに医師に相談してください。

このように、体重が増加しても「パキシルのせいで太った」と決めつけてはいけません。薬を自己判断で中断してしまうと症状が不安定になってしまったり、パキシルでは特に離脱症状がみられます。しっかりと他に原因がないかをよく考えてみる必要があります。疑問をもったら、主治医に相談してみましょう。

 

3.パキシルは他の抗うつ剤と比べて太るの?

SSRIは、抗うつ薬の中で比較すると太りにくいです。パキシルはその中では太りやすいです。

抗うつ剤の太りやすさを比較してみました。

SSRIは、抗ヒスタミン作用をほとんど認めませんので、食欲が明らかに増加するお薬ではありません。むしろ、体重や体型にとらわれが強いような過食症の方では、治療に用いることもあります。ただし、パキシルではなぜか過食が発作的に起きてしまうことがあります。ですから、過食がみられたら注意をしなければいけません。

古くからある三環系抗うつ薬は、抗ヒスタミン作用も強く、また抗5HT2c作用も認めます。抗うつ薬ですからセロトニン作用も強いので、抗うつ薬の中で比較すると太る傾向にあります。この中でも最も太りやすいのがトリプタノールです。

新しい抗うつ剤の中では、NaSSAと呼ばれるリフレックス/レメロンでは太りやすいです。抗ヒスタミン作用が強く、また抗5HT2c作用も強いので食欲が増加します。

SNRIのサインバルタやトレドミンは、ノルアドレナリンを増やします。交感神経系の物質が増加しますので、意欲があがり活動的にする作用があります。ですから、体重増加にはつながりにくいです。

その他、抗うつ剤としてよく使われるドグマチールは、胃の働きをよくする作用があります。このため、食欲があがって太る傾向にあります。エビリファイに関しては、ドパミンを増やすことで活動的にさせるので、むしろ体重が減ることがあります。

 

4.パキシルの体重増加での対処法

4-1.体重測定をする

まずは自分自身の体重を定期的に測定し、体重変化に気を付けていきましょう。

体重を定期的に測っていますか?体重測定といえば、年に1回の健康診断の時だけという方も多いのではないでしょうか。

「なんだか最近太ってきたなぁ・・・」と思って体重を測ってみたら、その数字にビックリしてしまうこともあります。その衝撃が大きすぎて、お薬を急にやめてしまうことにもなりかねません。

早めに体重増加に気づけた方が、すぐに対策をとって戻しやすいです。体重が大きく増えてしまったら、元に戻さなきゃという気持ちもくじけてしまいますね。

ですから精神科のお薬を服用している時は、できるだけ体重測定をするようにしましょう。

 

4-2.食事を見直す

間食をひかえ、炭水化物を控えるマイルールをつくりましょう。

パキシルによる体重増加は、ちゃんとカロリーをコントロールすれば改善されていきます。パキシルは代謝への影響もありますが、必要以上に食べるから太るのです。

食欲に任せていると、必要以上に食事をとってしまいます。動物の本能として、エネルギーは蓄えられるときにできるだけ蓄えるためです。

このため、食生活を見直しましょう。

いくつか補足したいと思います。

食事をとると身体があったかくなります。これは食事誘発性熱産生と呼ばれていますが、栄養素が分解されて熱が産生されるのです。消化活動によって胃腸が動くので、代謝がよくなるのです。このため、食事は3食きっちりととった方がやせます。食事の回数を3食以上に増やしてしまうと、よほどきっちりした方でないと自分の摂取カロリーがわからなくなるのでやめましょう。

この食後の代謝増加を大きくするには2つの方法があります。「よく噛んで食べること」と「タンパク質を多くすること」です。タンパク質では、摂取カロリーの30%あまりが熱産生につかわれると報告されています。よく噛んで食べると、熱産生が増えることもわかっています。

炭水化物抜きダイエットが流行っていましたが、おすすめできる方法ではありません。少なくとも朝食の糖質はなくすべきではないと考えています。すぐにエネルギーに変換できる栄養素は糖質です。脳の活動が低下している朝には、糖質でスイッチを入れる必要があります。糖質抜きダイエットが行き過ぎると、タンパク質や脂質が不足してしまって筋肉量が落ちてしまうことがあります。すると基礎代謝が落ちるので、痩せにくい身体になってしまいます。

ですから、炭水化物を減らすマイルールを作る程度がちょうどよいです。例えば、ご飯は半盛りにする、夜のラーメンは封印するなどです。ダイエットの目標が達成しても続けられるものにしていきましょう。

 

4-3.運動習慣をつくる

運動習慣によって筋肉量が増えると基礎代謝が増加するので、痩せやすい身体になります。

運動をすると、筋肉量が増えるために基礎代謝が上がります。このため、何もしないでも消費カロリーが増えていきますので、太りにくくなります。

できるならば、筋トレと有酸素運動を組み合わせた方が効率よく痩せられます。筋トレをすると少しずつ筋肉量が増えていくだけでなく、筋トレ直後から代謝があがります。この状態で有酸素運動を行うと、脂肪が効率よく燃焼されるのです。筋トレをするならば、大きい筋肉から鍛えていくのが効率がよいです。胸や背中やお尻の筋トレをしていきます。

パキシルでも、運動をすることで代謝がよくなっていきます。また、運動は精神的にもよい影響があります。運動するとスッキリしますよね。軽症のうつ病の方では、治療として運動が勧められることもあるのです。運動習慣により病状がよくなれば、薬も減らしやすくなります。

 

4-4.パキシルを減薬する

主治医と必ず相談してください。

過食の発作がみられたときは、パキシルの服用をどうするのかも考えていきます。精神状態が安定しているならば、パキシルを減薬していきます。ですが、調子がいいからといって自己判断してはいけません。いままでの経過からみて、総合的に判断していきますので、主治医とよく相談してください。

無理に減薬してしまうと、症状が悪化することがあります。パキシルは離脱症状が起こりやすい薬なので、減薬には注意が必要です。ですから、パキシルを使っていて効果がしっかり出ているならば、まずは食事と運動を意識しましょう。

 

4-5.他の抗うつ剤に変える

レクサプロやジェイゾロフト、SNRIへ変えてみるのはひとつの方法です。

薬の切り替えにはリスクも伴います。同じ作用をする抗うつ薬だからといって、同じように効果がでるとは限りません。ですから、パキシルの効果も含めて総合的に切り替えるかを考えます。

お薬を切り替える場合は、いきなり置き換えたりすることはありません。まずは併用して副作用がないことを確認してから、少しずつパキシルを減薬して新しい抗うつ薬を増やしていきます。

同じSSRIでは、副作用が少ないレクサプロやジェイゾロフトに切り替えてみることがあります。意欲低下などが目立つときは、サインバルタやトレドミンなどのSNRIに切り替えるのも方法です。

 

4-6.過食の治療をする

気分転換薬や少量のエビリファイなどを使って、過食の治療をしていきます。

体重への影響を見た時に、パキシルは他のSSRIとそこまで大きく変わりません。一気に体重が増えてしまうのは、過食が発作的に出てきてしまう時です。過食がでてきてしまったらそれに対して治療をしていくと、落ち着くこともあります。

薬としては、少量のエビリファイや気分安定薬を使っていきます。少量のエビリファイでは、脳内に働いてドパミンが分泌されます。食欲自体が多少落ちる方がいらっしゃいますし、気分が落ち着いて発作的な過食が落ち着くこともあります。また、気分安定薬と呼ばれるてんかんの薬を使うこともあります。多いのはデパケンやトピナでしょうか?気分の波を落ち着けて、興奮などを鎮める働きがあります。トピナでは、食欲減少という副作用がありますので、これを利用することもあります。トピナはめまいの副作用も多い薬ですので、気持ち悪くて食べれない・・・となる方も多いです。

もちろん、過食で苦しんだ過去がある方には、積極的にパキシルは処方しません。このように突然過食が出てきてしまった場合は、過食自体の治療をしていくこともあります。パキシルの副作用としての過食というだけでなく、精神症状としての過食での要素がある場合は、しっかりと過食と向き合う必要があります。

 

まとめ

パキシルは、抗ヒスタミン作用や抗5HT2c作用は弱いですが、セロトニンの作用が強いです。このため、代謝抑制作用によって太りやすい傾向はあります。

食欲は、精神疾患の影響を大きくうけます。薬だけでなく他に原因がないかも考える必要があります。

SSRIは、抗うつ薬の中で比較すると太りにくいです。パキシルは過食が発作的にみられることがあり、注意が必要です。

対処法としては、

があります。