パキシル錠の効果と特徴

アイコン 2016.11.8 パキシル

パキシル錠は、セロトニンを選択的に増加させるSSRIに分類される抗うつ剤です。SSRIが日本で初めて発売されたのが1999年のデプロメール/ルボックスになります。続けてパキシルが、2000年に発売となりました。

従来の抗うつ剤に比べて効果のわりに副作用が少なく、「うつは心の風邪」というキャッチコピーとともに発売されました。

当時のSSRIはこの2種類しかなく、比較するとパキシルの方が効果がしっかりしていました。このためパキシルは多くの患者さんに処方されていき、日本で1番処方される抗うつ剤となりました。

その後に発売されたジェイゾロフトやレクサプロと並んで、現在でもよく使われている抗うつ剤です。

パキシルは中止していく時に離脱症状が出やすいという難点がありますが、効果はしっかりとしたものが期待できます。ここでは、パキシル錠の効果について詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.パキシルのメリットとデメリット

はじめに、パキシルの特徴を簡単に紹介したいと思います。

  <メリット>

  <デメリット>

パキシルの特徴を簡単にいうと、「効果がしっかりとしているわりに副作用が少ない抗うつ薬ですが、やめる時が大変」なお薬です。パキシルをはじめとした新しい抗うつ薬は、昔からある三環系抗うつ薬よりも副作用が少なくできています。とても良い薬なのですが、やめる時に離脱症状が出てしまってなかなかやめられない方も多いです。

パキシルの効果は、他のSSRIよりも薬がスッと効いてきて、切れ味がよい印象があります。他のSSRIに比べると、患者さんの効果の実感も大きい印象があります。とはいっても薬の効果という点では、三環系抗うつ薬などの古い薬の方が強いといえます。ですが、これらの薬は副作用が強くなってしまい、結局のところ有効量まで薬を飲めなくなってしまう方も多いです。

パキシルはSSRIの中でも、不安を抑える効果がしっかりとしています。このため、様々な不安障害に適応が認められています。日本だけでなく海外でも、もっとも幅広く不安障害に使える薬になっています。それに加えて日本でも、2012年にジェネリックが発売となりました。これを受けて薬価も半額くらいになったので、かなり使いやすい薬となりました。

 

デメリットとしては、離脱症状の起こりやすさがあります。すべての抗うつ薬の中でも、パキシルが一番起こりやすいです。このため、なかなか薬を止められなくなってしまう方もいます。病気はよくなっていても、パキシルを中止すると調子が悪くなってしまうという方が少なくありません。

また、妊娠への影響も示唆されていて、パキシルでは心室中隔欠損という心臓奇形が増加する可能性が指摘されています。否定的な報告もあり、まだはっきりとわかっていませんが、妊娠を考える時はパキシルを避けた方が無難です。

 

2.パキシルの作用機序からみる特徴

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。

不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

パキシルは、脳内のセロトニンという神経伝達物質を増加させることで、抗うつ効果がもたらされるといわれています。どのようにセロトニンを増やすかというと、不要になったセロトニンの回収を邪魔しているのです。

セロトニンは、神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。パキシルは、この再取り込みを阻害することによって、セロトニンの量を増やします。回収されずに残ったセロトニンは残って作用し続けるので、効果が発揮されるのです。

このような働きをする薬を、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)といいます。日本で発売されているSSRIは、現時点で4種類あります。

になります。

 

3.パキシルと他の抗うつ剤の比較

パキシルはノルアドレナリンへの効果もあり、SSRIの中でも効果がしっかりしています。

以下の表では、主な抗うつ薬の作用をまとめてみました。これを踏まえて、パキシルの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

SSRIは、セロトニンだけに作用するように工夫をしているお薬です。ですが、他の物質にも少しずつ作用してしまいます。パキシルはセロトニンだけでなく、ノルアドレナリン作用がみられるという特徴があります。また、抗コリン作用が認められるのが、他のSSRIとの違いです。

これに対してジェイゾロフトでは、ドパミン作用が多少認められます。レクサプロは他の受容体にほとんど作用しません。

さらにパキシルは、血中濃度の上がり方に特徴があります。ほとんどの薬は、薬の量を増やすと血中濃度も同じ割合で増えていきます。パキシルでは、服用する量よりも多い割合で薬の量が増えていきます。ですから、薬を使っていくと効果がどんと出やすいのです。

 

このような特徴があるため、パキシルは他のSSRIと比べると効果の実感が大きいお薬です。スッと薬が効いて症状が落ち着いていくので、切れ味がよい印象があります。パキシルは不安や焦りにしっかりと効いて、意欲や気力にも改善にもつながっていきます。

副作用としては、他のSSRIに比べると抗コリン作用がみられます。あるといっても多少ですので、これによる目立った副作用はありません。ですが、認知機能が低下させてせん妄を引き起こしてしまうこともあるので、高齢の方にはあまり向かないといえます。

 

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬です。サインバルタとトレドミンですと、サインバルタの方が効果がしっかりとしています。

NaSSAも、セロトニンとノルアドレナリンを増加させる効果が強いです。抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が目立つお薬ですが、うまくあえば効果が強いお薬です。

昔からある三環系抗うつ剤では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用が多いのですが、効果の面でも新しい抗うつ剤よりも強いです。

 

4.パキシルの強さ

①ノルアドレナリンへの作用②血中濃度の急激な上がり方③高用量まで使えるといった点で、パキシルはしっかりとした効果が期待できます。

パキシルの抗うつ薬としての強さはどのくらいあるでしょうか?そのひとつの答えとして、MANGA studyという新しい抗うつ薬を比較した大規模研究が報告されています。この報告ではパキシルの有効性は示されましたが、際立った効果があるとは報告されませんでした。

これは臨床的な実感とは多少異なります。私は薬のやめにくさを考えると、パキシルは積極的に処方したい薬とはいえません。ですが効果の鋭さは感じていて、必要な方にはパキシルを処方しています。

 

パキシルの効果がしっかりとしている理由としては、ノルアドレナリンへの作用と血中濃度の急激な上がり方の2点を上述しました。もう一つ、パキシルが効果を出しやすい理由があります。

日本では海外に比べると、抗うつ薬の最高用量は制限されています。もちろん体格の違いなどもあるのだと思いますが、ジェイゾロフトでは日本では100mgまでに対して、海外では200mgまで使われたりします。実に2倍も違います。

パキシルは、うつ病や多くの不安障害では40mgまで、強迫性障害に限っては50mgとされています。ですから、日本では40~50mgまで使えます。海外では50~60mgまで使えるので、比較的海外と同じレベルで使える薬なのです。ですから、パキシルは効果がしっかりと出てくる量まで使うことができるので、有効性が高いといえます。

 

このように以下の3つの点から、パキシルではしっかりとした効果が期待できると考えられます。

ただ、「効果がどれだけ強いのか?」という点だけをみると、古くからある三環系抗うつ薬の方が強いです。ですが副作用が強く出てしまうので、まずは新しい抗うつ薬から使っていくのが治療の主流となっています。

 

5.パキシルの効き方

パキシルの血中濃度は、14時間で半減します。

抗うつ剤は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。

抗うつ剤が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。薬の服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

パキシルを服用すると4~5時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、14時間で血中濃度が半減します。抗うつ剤は1日中効果が続く必要がある薬ですので、抗うつ薬の中で比較すると身体から抜けていきやすいです。

 

また、パキシルは血中濃度の上がり方に特徴があります。ほとんどの薬は、薬の量を増やすと血中濃度も同じ割合で増えていきます。パキシルでは、服用する量よりも多い割合で薬の量が増えていきます。一直線に血中濃度が増えていかないので、非線形といったりします。

例えば、服用する薬の量を2倍にすると、血中濃度が3倍や4倍となってしまったりします。このような特徴になるのは、CYP2D6という肝臓の酵素が関係しています。この酵素は、パキシルの分解に必要な酵素です。ですがパキシルは、この酵素の働きを邪魔してしまうのです。ですから、パキシルが増えるにつれて、どんどん強くなっていくのです。

 

パキシルは、1日1回の服用で効果は問題ありませんが、2回にするとより安定します。10mgを1日1錠からはじめて、少しずつ薬の量を増やしていきます。副作用が心配な方は、5mgからはじめていくこともあります。

パキシルの効果はSSRIの中では実感があるとはいえ、じっくりと効いていきます。およそ2週間くらいして効果が認められてきます。パキシルの効果を見ながら、少しずつ増量して有効な量を探っていきます。パキシルは40mgまで使うことができ、場合によっては50mgまで使うことができます。

 

6.パキシルの副作用

副作用は全体的に少ないですが、眠気・体重増加・嘔吐下痢・不眠・性機能障害がみられます。

パキシルは、セロトニンを増やす効果が強い薬です。ですから、セロトニンが過剰に働いてしまうことによる副作用が多いです。セロトニンが胃腸を刺激してしまうことで、吐き気や下痢がみられることがあります。また、睡眠が浅くなって不眠傾向になる方もいます。SSRIの中でも、パキシルは性機能障害は必発といってもよいくらいにみられます。

それ以外としては、SSRIはそこまで食欲が増えたりする薬ではありませんが、パキシルでは発作的な過食になってしまう方がいらっしゃいます。このため体重増加につながりやすい薬といえます。また、眠気に関してもみられることがあります。抗コリン作用や夜の睡眠が浅くなってしまうことなどが原因と考えられます。10%くらいの方で認められるでしょうか。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。パキシルはSSRIの中では副作用が多めですが、全体的に見れば少ない方です。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

パキシルの副作用について詳しく知りたい方は、
パキシルの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

7.パキシルが向いている人は?

抗うつ剤のパキシルはどのような時に使われるのでしょうか?適応疾患をみていきながら、実際にどのような方に使われるのかをお伝えしていきます。

 

7-1.パキシルの適応疾患

<適応>

<適応外>

パキシルは、うつ病以外の様々な不安の病気に対しても適応が認められています。東日本大震災をうけて、PTSDでの適応も認められました。このことからも、不安にはとても有効であることが分かるかと思います。

保険上は、強迫性障害は50mgまで、パニック障害は30mgまで、他は40mgまでと、病気によって最高用量が異なっています。パニック障害やうつ病であっても、パキシル40mgまで使ってみて効果がもうひと押しでしたら50mgまで使うこともあります。

適応に認められていない不安障害でも、表向きの病名を変えて使ったりすることがあります。生理の前に気持ちが不安定となってしまう月経前緊張症(PMS)でも、パキシルが使われることがあります。ですが、パキシルには奇形の可能性なども報告されていますので、妊娠適齢期の女性には他の薬を使った方がよいでしょう。

 

7-2.パキシルが向いている人とは?

パキシルの特徴は、副作用が少ないわりに効果がしっかりとしているという点です。抗うつ薬は眠気が強いものも多く、薬を飲むと仕事にならなくなることもあります。パキシルでも眠気が出てきてしまう方もいますが、他の薬に比べると眠気は少ないです。ですから、仕事や家庭をこなしながら治療をしていく方に向いています。

また、SSRIの中でも不安をとる効果がしっかりとしている印象があります。ですから、様々な不安障害では効果が期待できます。不安障害の中でも強迫性障害では、パキシルやルボックス/デプロメールではしっかりとした量を使えるので、効果が期待できます。

また、パキシルはどちらかというと男性に向いています。上述しました奇形の問題もありますし、過食が起こりやすいなどの副作用も考えると、男性の方が向いているといえそうですね。

 

まとめ

パキシルは、セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。

①ノルアドレナリンへの作用
②血中濃度の急激な上がり方
③高用量まで使える

といった点で、しっかりとした効果が期待できる抗うつ剤です。

パキシルの血中濃度は14時間で半減します。

副作用は全体的に少ないですが、眠気・体重増加・嘔吐下痢・不眠・性機能障害がみられます。パキシルが向いているのは、仕事や家庭をこなしながら治療を進めていく方・不安が強い方・強迫性障害の方・男性です。

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