トレドミン錠の効果と特徴

アイコン 2016.11.12 トレドミン

トレドミンは、2000年に発売された日本で初めてのSNRIです。

SNRIとはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のことで、落ち込みや不安に効果のある「セロトニン」だけでなく、意欲や気力に効果がある「ノルアドレナリン」にも効果のあるお薬です。

とはいっても効果の強さはマイルドで、その分副作用も少ないお薬です。トレドミンと同じタイプのSNRIは、現時点で3剤発売されています。その効果のマイルドさから、使われる機会は少なくなってきています。

ですがトレドミンは、しっかりと効けば優しくてよいお薬になります。トレドミンは、どのような方に向いているでしょうか?

ここでは、トレドミンの効果を中心に、他の抗うつ薬と比較してお伝えしていきたいと思います。

 

1.トレドミンのメリットとデメリット

はじめに、トレドミンの特徴を簡単に紹介したいと思います。

 

1-1.トレドミンのメリット

トレドミンの特徴を簡単にいうと、「効果も副作用もマイルドなやさしい抗うつ剤」です。トレドミンは他の薬にも影響しなければ副作用も少ないので、とても身体にやさしい薬です。ですが、効果もマイルドなお薬になっています。

トレドミンには、セロトニンだけでなくノルアドレナリンを増やす効果があります。ノルアドレナリンが増えると、意欲が高まったり、気力が出てきたりします。

また、痛みに対しても効果が期待できます。夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。ですから、慢性的な痛みがある時などに使われたりします。

全体的に副作用が少ないお薬ですので、安全性が高いです。トレドミンの名前の由来は、「Tolerance is dominant(安全性が優れている)」からきているくらいです。

そしてもう一つの大きな特徴としては、薬を分解する肝臓の酵素であるCYPに影響しないことがあります。多くのお薬はCYPの影響をうけてしまい、これによって他のお薬との飲み合わせが悪いものもあります。ですがトレドミンはCYPへの影響が少ないため、他のお薬との飲み合わせを心配しなくても大丈夫です。

また、トレドミンは発売から年月がたっていますので、ジェネリックの「ミルナシプラン」が発売されています。ジェネリックの薬価は、先発品の6割くらいになっています。

 

1-2.トレドミンのデメリット

デメリットとしては、効果がとてもマイルドな点です。症状が重い方にはメインでは使いにくいお薬です。他のお薬のサポートとして使うことが多い印象です。

また、効果の持続が短いお薬なので、回数を分けて服用しなければいけません。飲む回数が増えてしまうと飲み忘れも増えてしまいますので、この点でもメインのお薬としては使いにくいです。

副作用が全体的に少ないお薬ですが、おしっこが出にくくなるという副作用がみられます。ご高齢の男性では、前立腺が肥大してしまっておしっこが出づらくなっていることが多いです。

そこにこのお薬を使ってしまうと、とどめをさされてしまって「尿閉(おしっこがでない)」になってしまうことがあります。気を付ける必要があります。

 

2.トレドミンの作用機序

セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSNRIです。

不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

トレドミンは、脳内のセロトニンとノルアドレナリンという神経伝達物質を増加させることで、抗うつ効果がもたらされるといわれています。どのように増やすかというと、不要になったセロトニンやノルアドレナリンの回収を邪魔しているのです。

セロトニンとノルアドレナリンは神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。トレドミンは、この再取り込みを阻害することによって、神経伝達物質の量を増やします。回収されずに残ったセロトニンやノルアドレナリンは、残って作用し続けます。このため、効果が発揮されるのです。

このような働きをする薬を、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といいます。日本で発売されているSNRIは、現時点で3種類あります。

になります。

 

3.トレドミンと他の抗うつ剤との比較

不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復してくれます。ですがトレドミンは、効果がマイルドです。

以下の表では、主な抗うつ薬の作用をまとめてみました。これを踏まえて、トレドミンの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

SNRIは、セロトニンだけでなくてノルアドレナリンも増加させます。このため、不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復させる効果もあります。

セロトニンだけを増加させるSSRIでは、不安や焦りがとれて落ち込みを改善していきます。ですが、ある程度よくなった後にあと一歩・・・ということはよく経験します。そんな時はSNRIが効果を発揮することがあります。

 

それでは、SNRIの効果を比較してみましょう。トレドミンの効果は、サインバルタに比べると劣ってしまいます。これは、セロトニンとノルアドレナリンへの作用の強さと比率が大きく違うからです。それでは、作用の違いを数字でみてみましょう。

商品名 種類 セロトニン再取込阻害 ノルアドレナリン再取込阻害 効果比率
サインバルタ SNRI 0.8 7.5 9:1
トレドミン SNRI 151 68 1:2
イフェクサー SNRI 82 2480 30:1

この数値は再取り込み阻害の強さをみたものです。Ki値といって、数値が低いほど作用が強力であることを意味しています。

トレドミンの効果の比率は、セロトニンよりもノルアドレナリンを増加させる作用が強いです。そして、増加させる強さは、サインバルタよりもかなり劣ってしまいます。このため効果はマイルドですし、落ち込みを改善する抗うつ効果も強くはありません。

トレドミンはノルアドレナリンを増やす効果の方が強いので、セロトニンにしぼって増加させるSSRIと併用すると相乗効果が期待できますね。このように、他の薬の効果を補うように使うことが多いです。

 

SSRIは、セロトニンだけに作用するように作られているので、不安や焦りをとる効果はしっかりとしています。その中でもレクサプロは、セロトニン だけに作用するように作られています。パキシルはノルアドレナリン作用や抗コリン作用が認められるので、効果がしっかりしていて副作用も比較的に多いです。ジェ イゾロフトではドパミン作用がみられます。ルボックス/デプロメールは、SSRIの中では効果がマイルドです。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させる効果が強いです。抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が目立つお薬ですが、うまくあえば効果が強いお薬です。

昔からある三環系抗うつ剤では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用が多いのですが、効果の面でも新しい抗うつ剤よりも強いです。

 

4.トレドミンの効き方

トレドミンの血中濃度は、8.2時間で半減します。

抗うつ薬は、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。

抗うつ薬が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

 

トレドミン服用すると、2~3時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、8.2時間で血中濃度が半減します。抗うつ剤の中で比較すると、薬が身体から抜けていくのは早いです。このため、1日1回の服用では効果が発揮されないので、1日2~3回の服用が必要になります。

トレドミンは、セロトニンよりもノルアドレナリンを増やす効果が強いです。このため、抗うつ剤の効果が出てくるのが早く、1週間ほどで効果が出てくる方もいらっしゃいます。ただ、効果がマイルドなので不十分な効果になってしまって、切れ味が悪い印象があります。

トレドミンには、12.5mg・15mg・25mg・30mg錠剤の4種類があります。ですから、25mgから薬を始めていくことが多いです。25mgずつ増量して、100mgまで使うことができます。ただし、高齢者の方は60mgまでとなっています。

 

5.トレドミンの副作用

副作用は全体的に少ないですが、吐き気・下痢・性機能障害・尿閉がみられます。

トレドミンは、セロトニンとノルアドレナリンに働きます。

セロトニンによる副作用としては、胃腸を刺激してしまうことで吐き気や下痢がよくみられます。トレドミンは効果の持続が短いので複数回に分けて服用する必要があります。このため、胃腸に薬が作用する時間が長くなるので吐き気や下痢がみられやすいです。また、性機能障害がみられます。SSRIでよくみられる副作用ですが、SNRIのトレドミンでもよく認められます。セロトニンの働きが関係していると考えられています。

ノルアドレナリンによる副作用としては、尿閉があげられます。トレドミンは脳だけに作用するわけではありません。ノルアドレナリンは、身体では交感神経に作用する物質です。尿道にあるα1受容体に作用すると、おしっこの通り道がしまってしまいます。

運動している時や緊張している時をイメージしてみるとわかりやすいです。このような時はトイレにいく場合ではないので、交感神経が働いて尿を出しにくくするのです。もともと前立腺肥大などがあっておしっこが出にくい方は注意が必要です。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。トレドミンは副作用は全体的に少なめです。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

トレドミンの副作用について詳しく知りたい方は、
トレドミンの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

6.トレドミンが向いている人は?

トレドミンはどのような方に向いているのでしょうか?トレドミンの適応をふまえて、みていきましょう。

 

6-1.トレドミンの適応疾患とは?

<適応>

<適応外>

トレドミンは、うつ病やうつ状態の時に適応が認められているお薬です。この目的で使われることが一番多いでしょう。

それ以外に、トレドミンには鎮痛作用が期待できるので、慢性疼痛にも適応外で使われることがあります。

 

6-2.トレドミンが向いている人とは?

適応をふまえて、トレドミンがどのような人に向いているのかを考えていきましょう。

トレドミンは、効果も副作用もマイルドなお薬です。うつ病やうつ状態の方のメインのお薬としては、力不足となってしまう印象があるので使いにくいです。症状の程度が軽くて、意欲や気力がでてこないことが症状の中心である場合はトレドミンを使っていくこともあります。

ですが、どちらかというとサポートとして使うことの方が多いでしょうか。SSRIなどの他の抗うつ剤で治療していて、良くはなったけれどやる気が出てこない・・・そんな時にトレドミンを追加します。

またトレドミンは、痛みに効果が期待できるという特徴があります。うつ病の患者さんは、頭痛をはじめとした何らかの痛みを伴っていることが6~7割あります。うつ状態を脱しても、痛みが身体の症状として残ることもあります。

このように症状が残る方では、再発率がかなり高くなることがわかっています。ですから、痛みがある時には向いているお薬です。うつ病と関係のない慢性疼痛の方でも、トレドミンが使われることもあります。

そしてトレドミンは、薬を分解する身体の酵素(CYP)にほとんど影響を与えません。このため、他の薬に影響を与えないという特徴があります。年を取るにつれて高血圧や脂質異常症などで薬が増えていく方が多いので、薬をたくさん飲まれている方には向いています。

高齢の男性では、前立腺肥大とあわさって尿閉になることに気を付けなければいけません。ですが高齢の女性では、過活動膀胱の頻尿で悩んでいる方もいらっしゃいるので、トレドミンは向いていると思います。

 

まとめ

セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSNRIです。

不安や焦りだけでなく、意欲や気力を回復してくれます。ですが、効果がマイルドです。

血中濃度は8.2時間で半減します。

副作用は全体的に少ないですが、吐き気・下痢・性機能障害・尿閉がみられます。トレドミンは、症状が軽度の方・意欲や気力が出ない方・痛みがある方・他のお薬を飲んでいる方・高齢の女性に向いています。

販売者名 旭化成・ヤンセンファーマ株式会社
分類 SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
剤形 錠剤(12.5mg・15mg・25mg・50mg)
薬価 錠剤(19.8円・23円・33.4円・56.4円)
ジェネリック ミルナシプラン
成分(一般名) ミルナシプラン
半減期  8.2時間
用法 1日2~3回 最大100mgまで(高齢者は60mg)