レクサプロ錠(エスシタロプラム)の効果と特徴

アイコン 2016.11.5 レクサプロ

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)は、2011年に発売されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ剤です。セロトニンだけを増加させることで不安や落ち込みを改善する作用のあるお薬です。

日本では新しいお薬になりますが、海外では2001年から使われています。日本でも10年遅れて、ようやく抗うつ剤として発売されました。

新しい抗うつ剤の中でも、効果と安全性のバランスのよさに非常に定評があり、処方数は年々増加しているお薬です。これまではうつ病だけの適応でしたが社交不安障害の適応も認められ、不安障害にも幅広く使われています。

このようにレクサプロは使いやすいお薬のため、心療内科や精神科だけでなく内科などでも処方されるようになってきています。

ここでは、レクサプロの効果を中心に、他の抗うつ薬と比較しながらお伝えしていきたいと思います。

 

1.レクサプロのメリットとデメリット

はじめに、レクサプロの特徴についてメリットとデメリットに分けてみていきましょう。

 

1-1.レクサプロのメリット

レクサプロの特徴を簡単にいうと、「効果がしっかりとしているわりに副作用が少ない抗うつ剤」です。

レクサプロをはじめとした新しい抗うつ剤はどれも、昔からある三環系抗うつ薬よりも副作用が少なくできています。その中でもレクサプロは、効果と副作用のバランスがよい薬と評価されています。

薬の効果だけをみると、もっとしっかりと効果のある薬はあります。ですが、どうしても副作用が強くなってしまい、そのせいで薬を中止せざるを得ない方も多いです。レクサプロは抗うつ剤の中でも副作用が少ないのです。

その理由は、レクサプロの作用の特徴にあります。レクサプロは純粋にセロトニンだけを増加させる抗うつ剤で、余計な作用が少ないのです。そして、他のお薬との相互作用も少ないお薬です。

このためレクサプロは副作用が少ないため薬もしっかりと使いやすく、治療に必要な量まで早く薬を増量できます。このため、効果もしっかりと出やすいのです。最高用量でも錠剤にして2錠ですみますので、薬の数が多くならないのもよい点かと思います。

レクサプロは抗うつ剤ですが、不安にもしっかりと効果を発揮します。不安障害での適応は社交不安障害だけですが、その他の様々な不安障害にも効果が期待できます。

 

1-2.レクサプロのデメリット

レクサプロはそのバランスの良さから、抗うつ剤として処方される機会はどんどんと増えているお薬になります。

レクサプロのデメリットをあげるとすると、効果の面では欧米より処方できる量がやや少ないことでしょう。とはいえ欧米人と日本人では体格も体質も違うので、少ない量でもよいのかもしれません。

ですが患者さんによっては、しっかりと抗うつ剤を使わなければいけない場合もあります。例えば強迫性障害では、通常よりも抗うつ剤が高用量必要となります。レクサプロは、欧米では最高用量が30mgであるのに対し、日本では20mgとなります。

また、レクサプロは添付文章(薬の説明書)では、QT延長症候群に注意するように記載されています。これは心電図のQT時間が延びてしまうことで、致死的な心室性の不整脈が生じてしまうことがあります。これは2010年以降に薬の認可が厳しくなったことが大きく、その他の SSRIとリスクは大きくはかわりません。ただし念のため、心電図で定期的にチェックしていくことが多いです。

もう一点は、薬価が高いことでしょう。2011年に発売されたばかりですので、ジェネリックが発売されるのも当分先になります。最大量まで服用していると、3割の自己負担で月4000円近くになってしまいます。

 

2.レクサプロの作用の仕組み(作用機序)

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。

不安や落ち込みといった症状には「セロトニン」が関係しているといわれていて、意欲や気力は「ノルアドレナリン」、興味や楽しみは「ドパミン」が関係しているといわれています。

レクサプロは、脳内のセロトニンという神経伝達物質を増加させることで、抗うつ効果がもたらされるといわれています。どのようにセロトニンを増やすかというと、不要になったセロトニンの回収を邪魔しているのです。

セロトニンは神経と神経の橋渡しを行う神経伝達物質です。分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。このことを「再取り込み」と呼びます。レクサプロは、この再取り込みを阻害することによって、セロトニンの量を増やします。回収されずに残ったセロトニンは、残って作用し続けます。このため、セロトニンの効果が増強されるのです。

このような働きをする薬を、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)といいます。日本で発売されているSSRIは、現時点で4種類あります。

です。これらにはどのような違いがあるのでしょうか?その他の抗うつ剤も含めて、続けてレクサプロと比較しながらみていきましょう。

 

3.レクサプロと他の抗うつ剤との比較

レクサプロはSSRIの中でも、セロトニンだけに選択的に作用します。

以下の表では、主な抗うつ剤の作用をまとめてみました。これを踏まえて、レクサプロの作用の特徴を考えてみましょう。

代表的な抗うつ剤について、作用を比較してまとめました。

SSRIは、セロトニンだけに作用するように工夫をしているお薬です。ですが、他の物質にも少しずつは作用してしまいます。その中でもレクサプロの特徴として、シンプルにセロトニンだけに作用するという点があげられます。

パキシルはノルアドレナリン作用や抗コリン作用が認められますし、ジェイゾロフトではドパミン作用が認められます。レクサプロは他の受容体にほとんど作用しないので、最も純粋なSSRIといえます。このことをセロトニン選択性が高いといいますが、これにはメリットだけでなくデメリットもあります。

メリットとしては、他の物質に作用しないので、副作用が少なくなります。このため、薬の効果がでてくる量までしっかりと使えます。デメリットとしては、効果に厚みがないことがあります。意欲や興味に関する症状が強い場合は、レクサプロの効果が不十分な場合があります。

また、レクサプロは他の抗うつ剤と異なる作用があります。

抗うつ剤の作用機序をもう少し詳しくお話しすると、抗うつ剤はセロトニンの再取り込みをしているSERT(セロトニントランスポーター)に作用しています。

レクサプロはSERTにくっつくと、セロトニンの再取り込み阻害をするだけではありません。SERTの構造を変化させて、レクサプロが離れにくくする「アロステリック作用」があります。これによって、レクサプロの効果が持続して安定するのです。

 

SNRIは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させるお薬です。サインバルタ・イフェクサー・トレドミンが発売されていますが、トレドミンは効果がマイルドです。サインバルタとイフェクサーを比べると、イフェクサーの方がセロトニンに対する作用が強いです。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンを増加させる効果が強いです。抗ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が目立つお薬ですが、うまくあえば効果がしっかりとしたお薬です。

昔からある三環系抗うつ薬では、いろいろな受容体に作用してしまいます。ですから副作用が多いのですが、効果の面でも新しい抗うつ剤よりも強いといえます。

 

4.レクサプロの強さ

効果はしっかりとしていますが、副作用が少ない薬です。さまざまな抗うつ剤を比較すると、レクサプロとジェイゾロフトのバランスがよいといわれています。

レクサプロの抗うつ剤としての強さはどのくらいあるでしょうか?様々な新しい抗うつ剤12種類の効果と副作用を比較した報告をご紹介したいと思います。

抗うつ剤の効果と副作用の比較を図表でしめしました。(MANGAstudy)

MANGA studyといわれている新しい抗うつ剤を比較した論文をたくさん集めてきて分析したものです。2009年にランセットという超有名専門誌に発表されたものです。この結果をみると、レクサプロはとてもよい評価になっています。

レクサプロは、有効性で2位、安全性で1位となっています。金額なども含めて総合的に考えると、この研究ではジェイゾロフトに次いでよい薬となっています。この結果を鵜呑みにしてはいけませんが、レクサプロが有効性と安全性のバランスがよいことは臨床の現場でも実感します。

「効果がどれだけ強いのか?」という点だけをみると、古くからある三環系抗うつ薬になるかと思います。ですが副作用が強く出てしまうので、まずは新しい抗うつ剤から使っていくのが治療の主流となっています。新しい抗うつ剤の中で、レクサプロはしっかりと効果が期待でき、それでいて副作用が比較的少ないお薬になります。

 

5.レクサプロの効き方

血中濃度は24.6~27.7時間で半減しますが、血中から薬がなくなっても130時間近く効果が持続します。

抗うつ剤は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。

抗うつ剤が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日ぐらいで薬の体内での濃度が安定します。

レクサプロを服用すると、4時間ほどで血中濃度が最高値になります。そこから徐々に血中濃度が低下していき、24.6~27.7時間で血中濃度が半減します。このように、身体からゆっくりと抜けていくお薬ですが、レクサプロの効果は薬がなくなってからも持続するという特徴もあります。

作用部位であるSERT(セロトニントランスポーター)には、レクサプロがくっついて離れにくくなっています。このため、薬自体が身体からなくなっても効果だけは持続するのです。SERT占有率の半減期は、およそ130時間といわれています。

ですから、1日1回の服用で効果がしっかりと一日中安定します。夕方に1回服用とすることが多いでしょうか。1日のどこで服用してもかまいません。

薬の説明書には、10mgを1日1錠からとなっています。副作用は少ないのでいきなり1錠からでも問題はないのですが、0.5錠からはじめる方が副作用のリスクは減ります。私は0.5錠から始めて、問題がなければすぐに1錠に量を上げていくことが多いです。

 

6.レクサプロの副作用

副作用は全体的に少ないですが、嘔吐下痢・不眠・性機能障害がみられます。

レクサプロは、セロトニンにだけ働く特徴があって他の受容体にほとんど作用しません。ですから、セロトニンによる副作用が中心です。胃腸を刺激してしまうことで、吐き気や下痢がみられることがあります。また、睡眠が浅くなって不眠傾向になる方もいます。

SSRIでは性機能障害がよくみられますが、パキシルやジェイゾロフトほどではありませんが、レクサプロでも多くの方が悩まれています。

代表的な抗うつ薬の副作用の比較を以下にまとめます。レクサプロは副作用は全体的に少なめです。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

詳しく知りたい方は、「レクサプロの副作用(対策と比較)」をお読みください。

 

7.レクサプロが向いている人は?

レクサプロはどのような方に向いている抗うつ剤でしょうか?

まずは、レクサプロの適応疾患からみていき、どのような方に向いているかを考えていきたいと思います。

 

7-1.レクサプロの適応疾患

<適応>

<適応外>

保険上では、うつ病の適応のみとなっています。不安に対する効果もしっかりとしていて、海外ではパニック障害や全般性不安障害に対しても適応が認められています。

ですから日本でも、表向きは「うつ病」として、適応外という形で不安の病気によく使われていました。2015年11月より、日本でも社会不安障害(対人恐怖症やあがり症とよばれることも多い不安障害)に適応となりました。

また、生理前に不安定になる月経前緊張症に対して使われることもあります。

 

7-2.レクサプロが向いている人とは?

レクサプロの特徴は、効果と安全性のバランスがよく副作用が少ないことです。抗うつ薬は眠気が強いものも多く、薬を飲むと仕事にならなくなることもあります。レクサプロでも全くないわけではありませんが、他の薬に比べると眠気は少ない印象です。ですから、仕事や家庭をこなしながら治療をしていく方に向いています。

他の抗うつ剤と比べると、早い効果が期待できます。これは、レクサプロが安全性が高い薬のために、はじめから有効用量を使えるためです。通常の抗うつ剤では、有効用量よりも少ない量から少しずつ増加させていく必要があります。レクサプロは10mgから開始することができますが、この量から効果を期待できる抗うつ剤です。

また、SSRIの中でも不安をとる効果がしっかりとしている印象があります。ですから、パニック障害や全般性不安障害の方には効果がしっかりと出てきます。不安障害の中でも強迫性障害には、パキシルやルボックス/デプロメールの方が効果的な印象があります。

レクサプロは、最高用量でも1日10mg錠2つになります。このため、薬の数が増えることが心配な方には向いているといえます。不安が強い方はお薬の心配もされることが多いので、少ない錠数ですむというのは意外とメリットが大きいです。

さらに、レクサプロは女性に向いています。男性と女性でのSSRIの効果の違いを比較して、ジェイゾロフトとレクサプロは女性に効果的であったという報告があります。副作用の影響を受けやすい女性には優しい薬なのでしょう。

 

まとめ

セロトニンの再取り込みを阻害することで効果を発揮するSSRIです。SSRIの中でもセロトニンだけに選択的に作用します。

効果はしっかりとしていますが、副作用が少ない薬です。さまざまな抗うつ薬を比較すると、レクサプロとジェイゾロフトのバランスがよいといわれています。

血中濃度は24.6~27.7間で半減しますが、血中から薬がなくなっても130時間近く効果が持続します。

副作用は全体的に少ないですが、嘔吐下痢・不眠・性機能障害がみられます。

<レクサプロのメリット>

<レクサプロのデメリット>

<レクサプロが向いている人>