サインバルタは頭痛や痛みにどのような効果があるのか

アイコン 2015.7.9 サインバルタ

抗うつ薬の中には痛みに効果があるものがあります。

慢性的に痛みが続くときに痛み止めを使い続けると、効果も乏しく身体に負担が大きいです。このような時には、サインバルタのような抗うつ薬が使われます。

ここでは、頭痛をはじめとした痛みに対して、サインバルタがどのように効くのか、他の薬とも比較しながらみていきたいと思います。

 

1.サインバルタが痛みに効くメカニズム

セロトニンだけでなく、ノルアドレナリンも増加させることにより、痛みに効果があります。

「痛みに抗うつ薬」というとビックリされる方も多いかと思いますが、抗うつ薬は鎮痛効果があります。サインバルタも痛みの改善によく使われる薬です。

サインバルタが痛みに効くのは、ノルアドレナリンとセロトニンを増量させることによります。サインバルタ以外では、同じSNRIのトレドミン、NaSSAのリフレックス/レメロン、三環系抗うつ薬のトリプタノール・トフラニール・ノリトレンなどがよく使われます。

抗うつ薬はどれもセロトニンを増加させる効果がありますので、これらの薬の特徴は「ノルアドレナリンも増加させる薬」といえます。

 

セロトニンやノルアドレナリンは、どのようにして痛みに効果があるのでしょうか?痛みがどのようにして感じられているかを簡単にご説明すると、お分かりいただけると思います。

身体に何らかの痛み刺激が加わると、その情報が脳に届いてはじめて、痛みを感じます。身体が受けた痛みの情報は、まずは脊髄に伝えられます。そこから次の神経にバトンタッチして、一気に脳に伝えられます。

ですが、状況によっては痛いなどと感じていられない場合もあります。このような時に備えて、ここのバトンタッチを調整する神経として下行疼痛抑制系という神経があります。

下行疼痛抑制系神経が働くと、このバトンタッチが抑えられるように働きます。この神経は、セロトニンとノルアドレナリンの2つの物質で痛みを和らげるように働きます。

夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。我にかえってから急に痛みが襲ってきたりするのは、ノルアドレナリンがきれた証拠ですね。

抗うつ薬はこの下行神経抑制系神経に働いて、セロトニンとノルアドレナリンを増加させて効果を発揮するのです。

 

2.どのような痛みに効くのか?

神経障害性疼痛と心因性疼痛に有効です。

痛みには大きく分けて、

の3種類があります。障害性疼痛とは、打撲や切り傷など、日常生活で私たちがよく体験する痛みです。身体に異常が起きてますよ、という身体のメッセージです。これには痛み止めがよく効きます。

 

サインバルタなどの抗うつ薬が効果を発揮するのは、残りの2つの痛みです。

神経障害性疼痛とは、痛みを伝える神経がダメージを受けたり、変化してしまって起こる慢性的な痛みです。ピリピリするような不快な痛みから、灼けつくような痛みであったり、軽く触れただけで激痛が走ったりすることもあります。

神経の痛みですので、これを抑制するようなサインバルタのような抗うつ薬が効果を発揮します。他にもリリカという神経の興奮を抑える薬もよく使われています。

心因性疼痛とは、文字通り、心がつくり上げる痛みです。心がつくり上げるといっても、本人には痛みが実際に存在して、苦しみがとても強いです。特に痛みの原因がなくても、ストレスなどから心因性疼痛がはじまることもあります。このような病気を疼痛性障害といいます。

また、痛みが長く続いてしまうと脳にも痛みがこびりついてしまい、痛みがなかなかとれなくなってしまいます。神経因性疼痛は慢性的な痛みですので、心因性疼痛が合わさってくることはよくあります。この心因性疼痛に対しては、サインバルタの効果が期待できます。

サインバルタのその他の副作用について知りたい方は、
サインバルタカプセルの副作用
をお読みください。

 

3.抗うつ剤の鎮痛効果の比較

SNRI:サインバルタ>トレドミン、三環系抗うつ薬:トリプタノール>トフラニール>ノリトレン

それでは、それぞれの抗うつ薬での痛みの効果を比較していきたいと思います。

先ほどセロトニンとノルアドレナリンが重要だという話をしてきました。どちらも多ければよいかというと、そう単純なものではありません。セロトニンとノルアドレナリンは、相乗的に鎮痛作用をもたらすことがわかっていますが、そのバランスが重要といわれています。

商品名 セロトニン再取込阻害   ノルアドレナリン再取込阻害 効果比率
トリプタノール 4.33 34.5 8:1
サインバルタ 0.8 7.5 9:1
トレドミン 151 68 1:2
ベンラファキシン 82 2480 30:1

※ベンラファキシンは日本では発売されていないSNRIですが、近々日本でも発売が見込まれています。

この数値は再取り込み阻害の程度をみたものです。Ki値といって、数値が低いほど効果が強力であることを意味しています。

 

抗うつ薬の鎮痛効果だけをみると、三環系抗うつ薬のトリプタノールが最も強いです。上の表をみていただくと、トリプタノールと効果のバランスが似ているのがSNRIのサインバルタであることがお分かりいただけるかと思います。

ですから、SNRIの中ではサインバルタの効果が一番しっかりしています。サインバルタは副作用が少ないので、まずはじめに使われることが多いです。トレドミンは効果がマイルドです。NaSSAのリフレックス/レメロンの鎮痛効果は、サインバルタよりは多少劣る印象です。

三環系抗うつ薬の中では、トリプタノールの他に、トフラニールやノリトレンが使われることがあります。効果でいうと、トリプタノール>トフラニール>ノリトレンという印象です。トフラニールもノリトレンも、ノルアドレナリンを優位に増やす薬です。トフラニールの方が薬効は強いですが、副作用が多いです。

 

4.実際の使い方

慢性的な痛みがある時には、まずはじめに使われることが多いです。

痛みに対して抗うつ剤を使う時には、まずは副作用の少ないSNRIから使われることが多いです。その中でも効果がしっかりとしているサインバルタから使われることが多いです。サインバルタで副作用が問題になるようでしたら、トレドミンをためしてみます。

SNRIで効果が乏しいときは、三環系抗うつ薬を使っていきます。副作用が強い薬なので難しいところですが、患者さんの状態に応じてトリプタノール、トフラニール、ノリトレンを使い分けていきます。

ノリトレンはトリプタノールの代謝産物で、副作用を軽減したものですが、効果は弱くなってしまいます。トリプタノールで効果があったけれど、副作用が・・・という方は、ノリトレンを試してみてもよいかもしれません。

それでは、どれくらいの用量まで使っていくのでしょうか?サインバルタは最大60mgまで使える薬です。効果をみながら、20mgずつ増量して様子をみていきます。

新しいお薬なので情報が不足していますので、ガイドラインではCになっています。頭痛のガイドラインでAランクとされているのはトリプタノールだけで、10mg~60mgが推奨されています。

心因性疼痛で、不安障害の要素が強い場合などでは、SSRIを使うこともあります。痛み=ノルアドレナリンと短絡的に捉えずに、患者さんごとに痛みの本質を見定めることが重要です。

 

まとめ

サインバルタは、セロトニンだけでなくノルアドレナリンも増加させることにより、痛みに効果があります。

神経障害性疼痛と心因性疼痛に有効です。

抗うつ剤の鎮痛効果を比較すると以下になります。
SNRI:サインバルタ>トレドミン
三環系抗うつ薬:サインバルタ>トフラニール>ノリトレン

まずは副作用の少ないSNRIのサインバルタを使うことが多いです。