セロクエルの認知症へのメリット・デメリット

アイコン 2015.12.7 セロクエル

セロクエルは比較的新しい抗精神病薬になります。

おもに統合失調症や双極性障害の治療に使われますが、興奮を落ち着かせる鎮静作用があるので、いろいろな病気で使われています。催眠作用もあるので、睡眠薬として使われることもあります。

セロクエルは、高齢者には比較的使いやすいお薬なので、認知症の患者さんで興奮が強いときに使われることがあります。ここでは、セロクエルの認知症への効果と副作用についてみていきたいと思います。

 

1.セロクエルの認知症へのメリット

セロクエルの特徴は、効果の面では大きく2つあります。

この2つの特徴のため、セロクエルは薬が身体から抜けやすく、気持ちを鎮める鎮静作用も期待できます。このため、抗精神病薬の中では高齢者に使いやすいお薬です。

認知症の患者さんにセロクエルを使うには、大きく3つのケースがあります。それぞれのケースについて、セロクエルの役割をみていきましょう。

セロクエルの効果について詳しく知りたい方は、「セロクエル錠の効果と特徴」をお読みください。

 

1-1.認知症による暴言・暴力・声出し・徘徊を緩和する

認知症の周辺症状(BPSD)として、興奮や易怒性などに効果が期待できます。

認知症の患者さんのもっとも基本的な症状は、認知機能の低下です。記憶や判断力、いままであたり前にできていた日常生活ができなくなっていきます。これは中核症状と呼ばれていますが、これが原因となってさまざまな行動面や心理面での症状が認められます。これを周辺症状(BPSD)といいます。

認知症の周辺症状として、暴言や暴力がみられることがあります。矛先は介護の方に向けられることが多く、高齢者とは思えない力でケガをしてしまうこともあります。声出しが止まらず、周りの方に迷惑してしまうこともあれば、突然思い立ったかのように歩き回って徘徊してしまうこともあります。

認知症になると、理性で抑えられなくなった性格がむき出しとなったり、自分の気持ちを上手く表現できないために、ストレスがたまります。そのために、興奮してしまったり、怒りっぽくなってしまったりするのです。

この状態が続いていると、本人も介護者も疲れてしまいます。施設に入っている場合は、まわりの方への影響も考えなければいけません。このような時に、セロクエルは効果が期待できます。

セロクエルは、鎮静作用が強いお薬です。気持ちの高ぶりを鎮めてくれるので、結果として暴力や暴言、声出しや徘徊などがおさまっていくことが期待できます。

 

1-2.認知症などによるせん妄を改善する

セロクエルには抗コリン作用もなく、せん妄の改善に効果が期待できます。

せん妄とは、認知症に限らずにおこる急激に認められる意識障害です。急にぼけてしまって、今どこで何をしているのかがわからなくなってしまいます。このため周りの言葉も入らなくなってしまい、興奮したり暴力的になってしまうこともあります。

せん妄は高齢者はおこりやすいのですが、認知症の患者さんでもよく認められます。認知症の患者さんでは、生活リズムがどうしても乱れがちです。年を取ると睡眠が浅くなるのでリズムがただでさえ崩れやすいところに、認知症の患者さんでは理解ができなくなってしまいます。

このような状況に体調不良なども重なると、せん妄状態になってしまうことがよくあります。このような時は、セロクエルが効果を発揮します。セロクエルは、認知機能や記憶に対して悪影響のある抗コリン作用がわずかなので、せん妄を起こしにくお薬でもあります。

 

1-3.認知症による不眠を改善する

通常の睡眠薬とは異なる仕組みで不眠を改善します。

年をとって生活リズムのメリハリがつかなくなってしまいます。ですから、高齢者になると不眠で悩まされる方がとても多いです。認知症の患者さんでは、普通の方よりも生活リズムはとりにくくなってしまいます。昼夜逆転してしまうこともしばしばあります。

認知症の患者さんの問題は、夜間にじっとしていてくれないことです。家族が寝ていても関係なく、自分の思い立った行動をしてしまいます。介護される方にとっては、いつ夜に起こされるかわからないというのは非常に負担になります。介護者が疲弊して余裕がなくなってしまい、患者さんに感情をぶつけてしまうという悪循環がみられることもあります。

セロクエルは寝つきをよくする効果があるお薬です。それでいて、上述したせん妄は起こしにくいお薬です。睡眠薬はせん妄のリスクになることもありますので、セロクエルは睡眠薬としても選択肢のひとつになります。

 

2.セロクエルの認知症へのデメリット

セロクエルは高齢者に使いやすいお薬ですが、デメリットもあります。セロクエルの副作用の特徴としては、大きく2つあります。

この2つの特徴が、セロクエルのデメリットに繋がります。認知症の患者さんでのセロクエルのデメリットについて、具体的にみていきましょう。

セロクエルの副作用について詳しく知りたい方は、「セロクエルの副作用(対策と比較)」をお読みください。

 

2-1.ふらつきによる転倒や骨折の危険が高まる

セロクエルは眠気やふらつきが強く、転倒・骨折により日常生活能力が一気に落ちてしまうことがあります。

セロクエルは鎮静作用の強いお薬です。これは裏を返せば、眠気が強く、ふらつきも強いということになります。

高齢者はただでさえ身体が衰えていくのですが、認知症の患者さんではリハビリなどの努力が難しいので、衰えていくスピードも速くなってしまいます。筋力がかなり落ちていて、骨ももろくなってしまいます。身体の腎臓や肝臓の機能が落ちていて、代謝も悪くなっています。

セロクエルが効きすぎてしまうと、ふらついてしまって転倒してしまうリスクが高くなります。高齢者が転倒すると、骨折しやすくなっています。骨折してしまうと、安静や手術によって寝たきり状態が続いてしまいます。そうなると、ますます筋力が落ちてしまいます。日常生活能力(ADL)が一気に落ちてしまうことがあります。

 

2-2.飲みこみが悪くなり、誤嚥性肺炎のリスクがあがる

セロクエルは少ないものの、飲みこみを悪くする方向に作用します。

高齢者は食べ物を飲みこむ力が少しずつ衰えてきてしまいます。上手く飲みこめないと、食べ物が気管に入ってしまうことがあります。これを誤嚥といいます。

若い方ならば誤嚥しても、すぐに咳がでて食べ物を吐き出します。高齢者になると、その咳の力が弱くなってしまいます。そうすると、うまく食べ物が吐き出せなくなり、肺にはいってしまい、そこで炎症がおこって誤嚥性肺炎となってしまうことがあります。

セロクエルは、飲みこみを悪くしてしまう方向に作用します。錐体外路症状という症状で、抗精神病薬の中では少ない方にはなります。ただ、高齢者ではちょっとのことで誤嚥のリスクが上がる方もいるので注意が必要です。

 

2-3.突然死のリスクがあがる

セロクエルをはじめとした非定型抗精神病薬では、60~70%の死亡率の増加が報告されています。

セロクエルをはじめとした非定型抗精神病薬を高齢者に使うと、死亡率が60~70%上がるという報告がされました。子の報告は、2005年にFDA(アメリカの公的機関)からされたものになります。

セロクエルなどの非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬よりも副作用が軽減されています。それでも、死亡率があがると考えられています。

これには、以下のような原因が考えられます。

セロクエルには代謝を悪化させてしまい、コレステロールや血糖などに影響を与えます。このため、動脈硬化が進んでしまうことで、脳や心臓の血管が詰まってしまうリスクがあがる可能性があります。

認知症の患者さんにセロクエルを使う時は、そこまで多い量は使いません。このため、食欲が見るからに増加したり、大きく代謝が悪化することはあまりありません。ですが、微妙な変化の積み重ねが、統計としてみたら死亡率の増加に繋がっている可能性があります。

 

3.セロクエルの認知症への使い方

認知症の患者さんにセロクエルを使う時は、どのような点に注意すればよいでしょうか。認知症の患者さんは高齢者がほとんどですので、その点を考慮しながら、セロクエルの使い方を考えていきましょう。

 

3-1.安易に使わない

環境調整や声掛けの仕方の工夫など、薬を使わないでできることはやってみましょう。

セロクエルは、認知症の根本をよくしていくお薬ではありません。鎮静作用を利用して、患者さんの気持ちの高ぶりを抑えるお薬です。風邪薬といっしょで、対症的なお薬なのです。このため、認知症に対しては正式な適応外で使っていくことになっています。

ですから、認知症の患者さんが落ち着かなくなってしまった時に、安易にセロクエルを使ってしまってはいけません。セロクエルは効果はあるのですが、患者さんにとってもデメリットがあるのです。転倒骨折や誤嚥によって死亡率があがってしまうという報告もあります。ですから、できるならば使わないほうがよいお薬です。

ですが、興奮している状態をそのままにしておくわけにもいきません。本人も疲れてしまうし、介護者も疲れてしまいます。施設などに入所している方では、周りの方への影響も考えなければいけません。

このため、セロクエルを使うべきかどうかは、2つの観点を見ていく必要があります。

薬以外のことでできることがあるならば、まずは試してみましょう。患者さんへの接し方や環境をかえることで、落ち着くこともあります。患者さんの世界にいるつもりで、どのようにしたらストレスなく過ごせるかを考えてみましょう。ちょっとした意識や工夫で大きく変わることもあります。

できることをやってもどうしようもない時はお薬を考えていかなければいけません。この時に考えなければいけないのは、介護とのバランスです。介護の方が何とかなる範囲でしたら、多少落ち着かないことが多くてもお薬をつかわないほうが良いです。介護の方が疲弊してしまうようでしたら、お薬をつかわなければいけません。

このように、セロクエルは安易に使うことはせず、やれることをやって限界になったら使うようにします。

 

3-2.できるだけ少量から

12.5mgから始めることが多いです。

お薬は症状を落ち着けるためのものなので、できるだけ少量から使うようにするべきです。

また、認知症患者さんはたいていが高齢者ですので、身体の機能は全体的に落ちています。筋力もなければ、飲みこみも悪いです。薬がちょっと作用するだけでも大きな影響が出てしまうこともあります。

お薬を分解して排泄する肝臓や腎臓の機能も低下しています。このため、お薬が身体にたまりやすく、作用が強くなってしまうことがあります。高齢者は内科のお薬を飲んでいることも多いです。いろいろなお薬との相互作用で、分解が遅れることもあります。

このためセロクエルは、高齢者では12.5mgから使うことが多いです。一番小さな規格である25mg錠剤を半分に割ります。セロクエル半錠くらいでよく効く人もいます。効果をみながら少しずつ増量していきます。

過去にセロクエルを服用していたり、似たようなお薬で明らかに大丈夫という状況があれば、25~50mgからはじめることもあります。

 

3-3.漫然と使わない

落ち着いてしばらくしたら、お薬を減薬していく意識が大切です。

どのお薬にもいえることなのですが、漫然とお薬をつかってはいけません。セロクエルを使って落ち着いた患者さんは、しばらくはお薬を使い続けて安定するのを待つ必要があります。ある程度落ち着いてきたら、お薬を減量していかなければいけません。

あくまでセロクエルは、一時的に症状を落ち着けるために使われるお薬です。お薬を続けていくことでのデメリットもありますので、漫然と使い続けてはいけないのです。

「また暴れられたら困ってしまう」などと考えてしまって、お薬が怖くてやめられなくなってしまうことがあります。少しずつお薬をやめていけば、問題ないことが多いです。接し方や環境での工夫もしながら、少しずつお薬を減らしていきましょう。

 

4.抗精神病薬での認知症への影響の比較

抗精神病薬の中で比較すると、セロクエルはデメリットが少ないお薬と考えられます。

抗精神病薬の中では、どのお薬が安全なのでしょうか?それを調べた報告をひとつご紹介したいと思います。

アメリカの医療データから、非定型抗精神病薬6種類を新しく使った高齢者75445名を半年間おっていき、死亡リスクの違いを調べました。

死亡率の高い順に、セレネース>>リスパダール≒ジプラシドン≒ジプレキサ≒エビリファイ>セロクエルとなっています。

セレネースはリスパダールに比べても死亡率は2倍となっていました。できるだけ非定型抗精神病薬を使った方がよいでしょう。非定型抗精神病薬では大きな差がありませんが、セロクエルは比較的安全性が高いといえます。

 

まとめ

セロクエルのメリットは、

セロクエルのデメリットは、

セロクエルの使い方