ルーラン錠(ペロスピロン)の効果と特徴

アイコン 2015.11.11 ルーラン

ルーラン錠は、2008年に発売された第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)です。おもに統合失調症の治療に使われていますが、不安や落ち込みを改善する作用があり、いろいろな病気でつかわれています。

ルーラン錠は日本で作られたお薬で、世界的にはあまりメジャーではありません。ですが、うまく合えば副作用が少なく、とても身体に優しいお薬です。

ここでは、ルーラン錠の効果と特徴を詳しくお伝えしていきたいと思います。他の抗精神病薬とも比較しながら、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

 

1.ルーランの作用の仕組み(作用機序)

ドパミンD受容体とセロトニン2A受容体を遮断することでドパミンの働きを整えます。幻覚や妄想などの「陽性症状」と意欲減退や感情鈍麻などの「陰性症状」を両方改善していきます。セロトニン1A受容体を部分的に刺激することで、不安や抑うつ、認知機能、陰性症状の改善効果も期待できます。

統合失調症では、脳内のドパミンに異常があることが分かっています。

ドパミンが過剰に分泌されると、陽性症状とよばれる幻覚や妄想などが起こります。脳の中でも「中脳辺縁系」と呼ばれる部分で、ドパミンが過剰になっています。

一方で「中脳皮質系」という脳の部分では、ドパミン分泌が落ちています。やる気が起こらない、集中できないなどの陰性症状は、このドパミンの減少が原因となって生じます。

 

統合失調症の目立つ症状は幻覚や妄想といった陽性症状ですから、まずはドパミンをブロックするお薬が開発されました。確かにドパミンをブロックしてしまえば陽性症状は改善が期待できますが、陰性症状には効果が期待できませんね。

そこで注目されたのが、中脳辺縁系以外でドパミンを抑制する働きをする「セロトニン」という物質です。このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外のドパミンの量を増やすことができます。

ですから、ドパミンD受容体とセロトニン2A受容体を同時にブロックしてしまえば、陽性症状と陰性症状への効果を両立させることができますね。このような作用をもつのがルーランです。その作用の特徴から、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)といわれています。

ルーランにはもう一つ、大きな特徴があります。セロトニン1A受容体部分作動薬として作用するのです。部分作動薬とは、その名前の通りで、少しだけ刺激するお薬です。セロトニン1A受容体は、抗うつ剤のターゲットになる受容体です。このため、抗うつ・抗不安効果が期待できます。また、認知機能や陰性症状の改善効果も期待できます。

 

2.ルーランの効果と特徴

まずは、ルーランの作用の特徴をまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

ルーランの効果は、ドパミンとセロトニンに対する作用によってもたらされます。

ルーランでは、「D遮断作用<セロトニン2A遮断作用」となっています。また、抗うつ・抗不安効果のあるセロトニン1A受容体を少しだけ刺激する作用があります。

 

抗精神病薬は、他の受容体にも作用します。これらは、副作用の原因となってしまいます。

これらをふまえて、ルーランの特徴をメリットとデメリットに分けて整理してみましょう。

 

2-1.ルーランのメリット

ルーランの特徴は、セロトニン1A受容体を少しだけ刺激する作用があることです。この作用によって、不安や落ち込みを改善する効果が期待できます。このため、統合失調症だけでなく、うつ病や不安障害の方にも効果が認められることがあります。

このようにセロトニン受容体への作用により、陰性症状の改善効果や認知機能改善効果も期待できます。SDAの中では効果が大きい印象です。また、ドパミンによる副作用も軽減されていて、錐体外路症状(ソワソワ・ふるえ・筋肉のこわばりなど)や高プロラクチン血症(乳汁分泌・生理不順・性機能障害など)も少ないです。

眠気や体重増加といった副作用も、ルーランでは少ないです。血糖値やコレステロールなども含めて、代謝への影響の少ないお薬です。

さらにルーランは、薬価が安いという特徴があります。第二世代(非定型)抗精神病薬の中では、とても安いお薬です。

 

2-2.ルーランのデメリット

ルーランは、ドパミンに対しては強力に結合して作用します。ですが、すぐにドパミン受容体から離れてしまうという特徴があります。このため、抗幻覚・妄想作用が弱いです。

さらには鎮静作用が弱いので、興奮を鎮める効果があまり期待できません。このため、幻覚や妄想の症状が強い方や興奮が強い方には、ルーランは力不足となってしまいます。

ルーランは、作用時間が短いお薬です。このため、効果を安定させるには1日に3回の服薬が必要となってしまいます。このため、服用回数が増えてしまうというデメリットがあります。これが飲み忘れにつながってしまうこともあります。

また、ルーランは食事による影響の大きなお薬です。食後にルーランは服用すると、血中濃度が1.6倍になります。効果が大きく変わってくるので、食後に服用しなければいけません。

 

ルーランの副作用について詳しく知りたい方は、
ルーランの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.ルーランの作用時間と使い方

ルーランは最高血中濃度到達時間が1.5時間、半減期が2.3時間の非定型抗精神病薬です。4~12mgから使われることが多いです。最大24mgまで使えます。

ルーランを服用すると、1.5時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、2.3時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

ルーランは体内で分解されて、ID-15036にかわります。この物質にはドパミン遮断作用はありませんが、セロトニン遮断作用はルーランの1/8あります。ID-15036はルーランの6倍の量があるので、セロトニン遮断作用を増強します。これも、ルーランの陰性症状や認知機能改善効果、錐体外路症状や高プロラクチン血症の軽減につながっています。

また、ルーランは、食事の影響が大きなお薬です。食後では最高血中濃度が高くなり、作用時間も長くなります。食後に服用すると、最高血中濃度が1.6倍となり、最高血中濃度到達時間も1.4倍になります。このため、ルーランは食後に服用します。

 

添付文章では、ルーランは1日3回の食後服用となっています。12mg(1回4mg)から始めることとされています。ルーランの効果を1日持続させるためには、1日3回服用しなければいけません。症状が落ち着いてくると、1日1~2回にすることもできます。

副作用が心配な方や、1日効果を持続させる必要がない方は4mgから始めていきます。ルーランは、4~12mgからはじめて、最大48mgまで使えるお薬です。

 

4.ルーランとその他の抗精神病薬の比較

ルーランは、受容体に強く作用してもすぐに離れてしまいます。このため、作用の強さのわりに眠気や体重増加といった副作用が少ないです。

抗精神病薬の作用を比較して一覧にしました。

代表的な抗精神病薬の作用を比較して、それぞれのお薬の位置づけを考えていきましょう。

まずは、第二世代の非定型抗精神病薬から処方されることが一般的になっています。陰性症状への効果も期待できますし、何よりも副作用が軽減されていて患者さんへの負担が少ないからです。非定型抗精神病薬には、大きく3つのタイプが発売されています。それぞれの特徴をざっくりとお伝えしたいと思います。

非定型抗精神病薬がしっかりと効いてくれればよいのですが、効果が不十分となってしまうこともあります。急性期の激しい症状を抑えるためには、定型抗精神病薬の方が効果が優れています。また、代謝への影響は定型抗精神病薬の方が少ないです。

定型抗精神病薬は、セレネースの系統とコントミンの系統の2つに分けることができます。

ルーランは、非定型抗精神病薬のSDAに分類されます。ルーランの各受容体には比較的強く作用します。しかしながらすぐに受容体から離れてしまうので、作用の強さのわりに全体的に副作用が少ないです。

 

5.ルーランの適応疾患とは?

<適応>

<適応外>

ルーランは、不安や落ち込みを改善する効果の強い抗精神病薬です。このため、不安が強い統合失調症の方には使われることが多いです。幻覚や妄想を抑える力は強くないので、幻覚や妄想が目立つ方には使いにくいお薬です。鎮静作用も弱いので、興奮が強いかたにもつかえません。

統合失調症の陰性症状が目立つときや、副作用が目立つときに使われることが多いです。

 

ルーランはこれ以外にも、いろいろな目的で使われることがあります。

ルーランは、抗うつ剤の効果増強に使われることがあります。少量追加することで、抗うつ剤の効果が増強されます。うつ病や不安障害で、妄想的な思考が認められている時には効果が期待できます。

また、気分がやや高まり過ぎている時に、優しい鎮静作用を期待して使うことがあります。激しく興奮している時には効果が乏しいですが、やや気分が高まっている時にはちょうどよいことがあります。

ルーランは副作用が少なく優しい薬なので、高齢者に使われることも多いです。認知症の周辺症状(物忘れによって生じる症状)を軽減したり、せん妄状態を落ち着かせるためにつかわれます。

 

6.ルーランが向いている人とは?

ルーランは大きく3つの特徴があります。

この特徴を踏まえて、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

 

ルーランは、幻覚や妄想などの陽性症状に対する効果としては力不足です。このため、幻覚や妄想が目立つような急性期の統合失調症の患者さんには向いていません。

さらに鎮静作用も弱いので、興奮が強い方は向いていません。このため、ある程度症状の落ち着いている統合失調症の患者さんに使われることが多いです。

ルーランの特徴は、抗うつ効果と抗不安効果です。ですから、不安が強い統合失調症の患者さんに向いています。統合失調症だけでなく、やや妄想に近い不安が認められるうつ病や不安障害の方に向いています。

陽性症状は落ち着いてきて、陰性症状が目立ってきた患者さんにも使われることがあります。また、他のお薬で副作用が強く出てしまった時に、ルーランに切り替えられることもあります。

副作用が全体的に少ないので、高齢者にも比較的使いやすいです。優しく気持ちを鎮めていきたいときに向いているお薬です。

 

まとめ

ルーランの作用の特徴は、セロトニン1A受容体部分作動薬として働くことです。

ドパミンD受容体遮断作用>セロトニン2A受容体遮断作用となっています。

ルーランのメリットとしては、

ルーランのデメリットとしては、

ルーランが向いている方は、