インヴェガ錠(パリペリドン)の効果と特徴

アイコン 2015.10.28 インヴェガ

インヴェガ錠(一般名:パリペリドン)は、2011年に発売された第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)です。

古くからある第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)と比べて、統合失調症の陰性症状にも効果が期待でき、副作用も軽減されています。

インヴェガ錠は、第二世代抗精神病薬リスパダールを改良したお薬です。リスパダールよりも副作用が軽減されて、作用時間も長くなっています。このため眠気などの副作用が全体的に少なく、日常生活への影響が少ないお薬です。

ここでは、インヴェガ錠の効果と特徴を詳しくお伝えしていきたいと思います。他の抗精神病薬とも比較しながら、どのような方に向いているのかを考えていきましょう。

 

1.インヴェガの作用の仕組み(作用機序)

ドパミンD受容体とセロトニン2A受容体を遮断することでドパミンの働きを整えます。幻覚や妄想などの「陽性症状」と意欲減退や感情鈍麻などの「陰性症状」を両方改善していきます。

統合失調症では、脳内のドパミンに異常があることが分かっています。

ドパミンが過剰に分泌されると、陽性症状とよばれる幻覚や妄想などが起こります。脳の中でも「中脳辺縁系」と呼ばれる部分で、ドパミンが過剰になっています。

一方で「中脳皮質系」という脳の部分では、ドパミン分泌が落ちています。やる気が起こらない、集中できないなどの陰性症状は、このドパミンの減少が原因となって生じます。

 

統合失調症の目立つ症状は幻覚や妄想といった陽性症状ですから、まずはドパミンをブロックするお薬が開発されました。確かにドパミンをブロックしてしまえば陽性症状は改善が期待できますが、陰性症状には効果が期待できませんね。

そこで注目されたのが、中脳辺縁系以外でドパミンを抑制する働きをする「セロトニン」という物質です。このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外のドパミンの量を増やすことができます。

ですから、ドパミンD受容体とセロトニン2A受容体を同時にブロックしてしまえば、陽性症状と陰性症状への効果を両立させることができますね。このようにして作用するのがインヴェガです。その作用の特徴から、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)といわれています。

 

2.インヴェガとリスパダールの違いとは?

インヴェガでは、リスパダールよりも鎮静作用が少なく、副作用が軽減されています。徐放剤のため血中濃度も安定し、1日1回の服用もできます。

インヴェガは、リスパダールを改良して作られたお薬です。リスパダールは、最初に発売された第二世代抗精神病薬で、今でもよく使われている抗精神病薬です。

リスパダールは、幻覚や妄想の改善効果が強いです。穏やかな鎮静作用があるので、興奮を抑えるためにも使われています。粗削りな部分もあり、眠気やふらつきといった副作用は多少認められていました。

インヴェガでは、このリスパダールを大きく2つの点で改良しました。

 

リスパダールは、体内で代謝されるとパリペリドンに変化します。このパリペリドンはリスペリドンとほぼ同等の効果があり、リスペリドンはすぐにパリペリドンに変化してしまうので、パリペリドンが効果の中心となっています。

ですから、このパリペリドンだけを取り出せば、余計な作用がなくなって副作用が軽減されます。このため、リスパダールよりも眠気やふらつきなどが少ないです。その分、気持ちを落ち着かせる鎮静作用は少なくなっています。また、パリペリドンは腎臓で代謝されて、肝臓の影響をほとんどうけないという特徴があります。

 

また、OROSという特殊な技術によって、少しずつお薬が溶け出るように作られています。浸透圧を利用した徐放剤で、水が少しずつ内部に取り込まれて、有効成分が外に溶け出るように作られています。

ゆっくりと溶け出るため、リスパダールのようにすぐに効果が出てくるお薬ではありません。ですから、頓服としては向かないお薬です。ですが血中濃度の変化が安定するので、副作用がさらに少なくなります。薬の効きも長くなるので、1日に1回の服用でも効果が持続します。

 

3.インヴェガの効果と特徴

まずは、インヴェガの作用の特徴をまとめたいと思います。専門用語も出てきますが、後ほど詳しく説明していますので、わからないところは読み飛ばしてください。

インヴェガの効果は、ドパミンとセロトニンに対する作用によってもたらされます。

インヴェガでは、「D2遮断作用<セロトニン2A遮断作用」となっています。

 

抗精神病薬は、他の受容体にも作用します。これらは、副作用の原因となってしまいます。

インヴェガの基本的な特徴は、リスパダールと変わりありません。リスパダールよりも血中濃度が安定しているので、副作用は全体的に軽減されています。

これらをふまえて、インヴェガの特徴をメリットとデメリットに分けて整理してみましょう。

 

3-1.インヴェガのメリット

インヴェガの特徴は、「鎮静作用が弱く、副作用が軽減されたリスパダール」と考えると分かりやすいです。リスパダールと同様に、ドパミンD受容体遮断作用が強いです。インヴェガはドパミン受容体に強く結合して、その効果は持続します。このため、幻覚や妄想などの陽性症状に対してしっかりとした効果が期待できます。

また、セロトニン2A受容体遮断作用があるので、陰性症状にも効果が期待できます。意欲がでない、気力がでない、集中できないといった症状に効果が期待できます。

インヴェガはお薬の効きを穏やかにしたお薬なので、副作用が全体的に軽減されています。このため、眠気やふらつきなどが少なく、日常生活への影響が少ないお薬と言えます。

インヴェガは、薬を分解して排泄する代謝の中心は腎臓です。多くのお薬では肝臓をメインに代謝をするので、インヴェガは肝機能障害が認められるときに負担が少ないです。

作用時間が長くなっているので、1日1回の服用も可能になっています。服用方法がシンプルですので、飲み忘れも少なくなるというメリットがあります。

インヴェガには、1度注射をすれば4週間効果が続く、持続性注射剤のゼプリオンが発売されています。お薬を飲み続けるのが難しい方は、月に1回の注射にすることもできます。

 

3-2.インヴェガのデメリット

インヴェガはリスパダールよりは作用が穏やかですが、良くも悪くもドパミンD受容体遮断作用が強いお薬です。

このため、錐体外路症状がやや多くみられます。錐体外路症状とは、運動の調節をしている黒質線条体でのドパミンが足りなくなる作用で、パーキンソン病に似た症状がでてきます。具体的には、ふるえ(振戦)、筋肉のこわばり(固縮)、ソワソワ感(アカシジア)、眼球上転や筋肉の異常な収縮(急性ジストニア)などがあります。

また、インヴェガには高プロラクチン血症もやや多いです。本来は授乳中に上昇するホルモンのプロラクチンが上昇してしまいます。プロラクチンの分泌を抑制しているドパミンが足りなくなるために認められ、乳汁分泌や生理不順、性欲低下や性機能障害などの症状がみられます。

陰性症状の改善効果も期待できるのですが、非定型抗精神病薬の中では効果が弱いです。ドパミン遮断作用が強すぎるので、セロトニン2A遮断作用を上回ってしまいます。リスパダールと比べるとセロトニン2A遮断作用がやや強いので、陰性症状への効果も多少期待できます。

インヴェガは、薬価が高いのが難点です。効果の同じ量で比較すると、インヴェガはリスパダールの4~5倍の薬価になります。インヴェガは発売からまだ日が浅く、ジェネリックも発売されていません。

 

インヴェガの副作用について詳しく知りたい方は、
インヴェガの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

4.インヴェガの作用時間と使い方

インヴェガは最高血中濃度到達時間が24時間、半減期が19.6~22.9時間の非定型抗精神病薬です。外来では3mgから、入院では6mgから使われることが多いです。最大12mgまで使えます。リスパダール2mg≒インヴェガ3mgに相当します。

インヴェガは徐放剤ですから、服用してから24時間かけてゆっくりと血中濃度がピークに達します。インヴェガはそこから少しずつ身体から抜けていきます。19.6~22.9時間かけて血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

インヴェガでは、「最高血中濃度到達時間時間24・半減期19.6~22.9時間」といえます。

 

このため、1日1回の服用でもしっかりと効果が出てくるお薬です。外来では3mgから、入院では6mgから使われることが多いです。最大12mgまで使えるお薬です。リスパダール2mg≒インヴェガ3mgとなっています。

 

5.インヴェガとその他の抗精神病薬の比較

インヴェガは、リスパダールの有効成分を取り出したお薬です。作用はリスパダールとほぼ同じです。

抗精神病薬の作用を比較して一覧にしました。

代表的な抗精神病薬の作用を比較して、それぞれのお薬の位置づけを考えていきましょう。

まずは、第二世代の非定型抗精神病薬から処方されることが一般的になっています。陰性症状への効果も期待できますし、何よりも副作用が軽減されていて患者さんへの負担が少ないからです。非定型抗精神病薬には、大きく3つのタイプが発売されています。それぞれの特徴をざっくりとお伝えしたいと思います。

非定型抗精神病薬がしっかりと効いてくれればよいのですが、効果が不十分となってしまうこともあります。急性期の激しい症状を抑えるためには、定型抗精神病薬の方が効果が優れています。また、代謝への影響は定型抗精神病薬の方が少ないです。

定型抗精神病薬は、セレネースの系統とコントミンの系統の2つに分けることができます。

インヴェガは、非定型抗精神病薬のSDAに分類されます。インヴェガは、リスパダールの鎮静作用を弱めたお薬です。

 

6.インヴェガが向いている人とは?

インヴェガは、統合失調症の治療薬としてのみ適応が認められています。多くの薬では適応外で他の病気につかわれることもありますが、インヴェガでは統合失調症以外の患者さんにはあまり使われません。

インヴェガの特徴は、「鎮静作用の弱いリスパダール」でしたね。このため、幻覚や妄想などの陽性症状が強い方で、興奮などはそこまで認められないような時に使われることが多いです。

 

インヴェガはドパミンを強力にブロックするので、幻覚や妄想などの陽性症状に対する効果が優れています。一方で、意欲減退や感情鈍麻などの陰性症状が中心の方では、ジプレキサ・セロクエル・エビリファイ・ルーランなどの他のお薬の方が向いています。

リスパダールに比べると鎮静作用が弱いので、興奮を鎮める効果が弱いです。ですから、幻覚や妄想によって興奮が強かったり、易刺激的な時には向かないお薬です。

 

インヴェガは、リスパダールよりも副作用が軽減されています。このため、リスパダールを使っていて体重増加や眠気などの副作用がつらい方には、インヴェガに変更すると軽減することがあります。

また、インヴェガが代謝されるときに、肝臓にほとんど影響をしません。インヴェガは水に溶けやすい形になって、腎臓から代謝されます。このため、肝機能が低下している方(高齢者・飲酒・肥満)には向いています。

インヴェガは、ゆっくりとお薬が効くように工夫されたお薬です。ですから、1日に1回の服用で効果がしっかりと安定します。

このような方に向いているお薬といえます。

さらに特筆すべきこととしては、インヴェガでは持続性注射剤ゼプリオンが発売されています。4週間に1回の筋肉注射だけすれば、お薬の効果が持続します。インヴェガでも飲み忘れが多い方や副作用で困っている方には、持続注射剤が向いています。まずはインヴェガで効果を確かめてから、このような注射剤を使っていきます。

 

まとめ

インヴェガは、「鎮静作用が弱く、副作用が軽減したリスパダール」と考えると分かりやすいです。ドパミンD受容体遮断作用が強いですが、リスパダールよりも眠気やふらつきといった鎮静作用が弱いです。徐放剤のため血中濃度も安定し、1日1回の服用もできます。

ドパミンD受容体遮断作用とセロトニン2A受容体遮断作用の両方があります。

インヴェガのメリットとしては、

インヴェガのデメリットとしては、

インヴェガが向いている方は、

スポンサーリンク

スポンサーリンク