ジプレキサの眠気と6つの対策

アイコン 2015.11.23 ジプレキサ

精神科のお薬は眠くなるものが多いです。気持ちを落ち着かせるお薬が多いので、どうしてもリラックスして眠気につながってしまいます。日常生活を過ごしていかなければならない中で、眠気が強く出てしまうと困ってしまいますね。

ジプレキサは、第二世代の抗精神病薬に分類されています。抗精神病薬には気持ちを落ち着かせる鎮静作用がありますが、その強さにはお薬によって差があります。ジプレキサは鎮静作用が強いお薬です。このため、そこまでは眠気は多いお薬です。

ここでは、ジプレキサの副作用による眠気とその対策について、他の抗精神病薬とも比較しながら詳しくみていきましょう。

 

1.ジプレキサで眠気が生じる理由とは?

ジプレキサでは抗ヒスタミン作用が強く、抗α1作用や抗コリン作用とあわせて、眠気が強いお薬です。また、抗セロトニン2作用によって、深い睡眠が増加します。

ひとの脳の中では、さまざまな情報を処理するために多くの脳内物質が働いています。脳の活動のバランスをとるために、興奮させる「アクセル」と、抑制させる「ブレーキ」があります。眠気が出てきてしまうのは、アクセルを踏めなくなった時か、ブレーキを踏んだ時です。

精神科のお薬では眠気の副作用が多いですが、薬のタイプによって原因がわかれます。

抗精神病薬には、気持ちを落ち着かせる鎮静作用があります。この作用は、アクセルを踏めなくすることでもたらされます。もっとも影響が大きいのは、「ヒスタミン」という興奮性物質です。ヒスタミンがブロックされてしまうと、眠気が強く出てきてしまいます。

抗ヒスタミン作用による眠気は、実はみなさんもよく経験している眠気です。というのも、花粉症のお薬や風邪薬に含まれている成分だからです。これらのお薬を服用した時に、強い眠気に襲われたことはありませんか?市販の睡眠薬で有名なドリエルは、この抗ヒスタミン作用を利用した睡眠薬です。

 

ジプレキサでは、抗ヒスタミン作用は強いです。このため、眠気が強いお薬です。

他にも、

などが眠気に関係してきます。

セロトニン2受容体は、直接的な眠気というよりは、睡眠の深さに影響します。セロトニン2受容体が刺激されると睡眠が浅くなり、遮断されると睡眠が深くなります。このため、セロトニン2受容体遮断作用があるお薬は、熟眠障害を改善するお薬として使われることがあります。

α1受容体(アドレナリン受容体)は、血管の調節をしています。α1受容体が刺激されると血管が収縮し、遮断されると血管が拡張します。このため、α1受容体遮断作用があるお薬では、血管がうまく収縮せずに血圧が下がってしまいます。脳に血液が十分にいかなくなるので、ぼーっとしてしまいます。お風呂につかっていて、眠くなってしまう時の状態です。

抗コリン作用のコリンとは、アセチルコリンのことです。副交感神経の物質として有名ですが、脳内では覚醒状態に欠かせない物質です。記憶や注意、集中といった働きをしています。このため、抗コリン作用があるお薬では、注意力や集中力が薄れて眠気がでてきてしまいます。さらには、レム睡眠という夢を見る睡眠が抑制されます。

 

ジプレキサでは、セロトニン2受容体遮断作用が非常に強いです。このため睡眠を深くする働きがあるので、眠りを深くする効果が期待できます。

ジプレキサでは抗ヒスタミン作用が強く、抗α1作用や抗コリン作用とあわせて、眠気が強いお薬です。これを逆手にとって、睡眠薬として使われることもあります。ジプレキサでは寝つきがよくなるだけでなく、深い睡眠が大きく増加します。

 

ジプレキサの副作用について詳しく知りたい方は、
ジプレキサの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.ジプレキサと他剤の比較

ジプレキサは抗ヒスタミン作用も強く、鎮静作用が強いので眠気が強いお薬です。

ジプレキサの眠気を、他の抗精神病薬と比較してみましょう。まずは作用を比較してみましょう。

抗精神病薬の作用を比較して一覧にしました。

影響の大きい抗ヒスタミン作用に注目しながら、眠気の副作用を見ていきましょう。

第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)としては、セレネースとコントミンが代表的です。コントミンはいろいろな受容体に作用するのに対して、セレネースはドパミン受容体に選択的に作用するお薬なので眠気は少ないです。コントミンは抗ヒスタミン作用が強く、眠気がもっとも強いです。

これらのお薬の副作用を少なく改良したのが、第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)です。この中では、MARTAと呼ばれるジプレキサ・セロクエルで眠気が強いです。MARTAはいろいろな受容体に作用するため、抗ヒスタミン作用も強いのです。

第二世代抗精神病薬のうち、SDAとDSSは眠気が少ないです。この中で比較してみると、

リスパダール>ルーラン>エビリファイ>ロナセン≒インヴェガ

という印象です。

抗精神病薬の眠気の副作用比較

 

3.薬だけでない眠気が起きる理由

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

眠気がでてくる原因は薬以外にも4つほど考える必要があります。

薬によって変化が明らかでしたら、薬が原因といえます。ですがそれ以外のことが原因となることもあるので、注意が必要です。

精神症状で眠気や倦怠感がでてくる場合もあります。症状としての眠気の場合は、これまでの経緯や症状の変化などから総合的に判断していきます。症状として眠気や倦怠感が強くなる方は、何らかのきっかけがあることが多いです。このため、日常生活を過ごす中での変化を意識して確認していきます。

夜間の睡眠を十分にとれていなくて、日中に眠気が出てきている場合もあります。睡眠時間はとれていますか?朝に眠気はないですか?夜間にイビキなどはないですか?

また、生活リズムが崩れてしまっていることが原因のこともあります。体内時計のリズムが崩れると、睡眠時間は十分であっても睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感となることがあります。いわゆる時差ぼけは、この状態です。昼過ぎまで寝てしまって身体がだるい経験をされた方も多いと思います。起きる時間は大きくずれていませんか?

女性の場合は、女性ホルモンが自律神経に影響します。生理周期と関係して眠気が認められる場合や、女性ホルモンが減少していく更年期にあたる場合は、女性ホルモンの影響も考慮する必要があります。

 

4.ジプレキサによる眠気の対策

ジプレキサはそこまで眠気の強いお薬ではありません。ですが、お薬の効き方には個人差も大きく、眠気が強く出てきてしまう方もいらっしゃいます。ジプレキサの市販後と再審査終了時の副作用報告(5612症例)では、眠気の副作用は4.01%の方に認められました。

それでは、ジプレキサを服用していて眠気が見られたときには、どのように対処すればよいのでしょうか?対策をみていきましょう。

 

4-1.様子をみる

生活に支障がでなければ、少しがまんしてみてください。

薬の副作用は、飲みはじめに強くなる傾向があります。ジプレキサによる眠気も飲み始めにみられることが多いですが、時間と共に慣れていくことが多いです。

何とかなる範囲でしたら、少し様子を見てみるのも方法です。1~2週間ほど様子を見て、少しずつ眠気が薄れていくか待ちましょう。生活への支障が大きかったり、危険性がある時は無理をしてはいけません。主治医と相談しながら、他の対策を考えていきましょう。

 

4-2.薬を分割して飲む回数を増やす

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方には行うことがありますが、ジプレキサは作用時間が長いので効果はあまり期待できません。

薬の服薬回数を増やすのも方法のひとつです。

薬の副作用は、血中濃度のピークで一番強くでます。薬を分割して飲む回数を増やせば、血中濃度が安定します。このため、副作用は一般的に軽減されます。

これは眠気に関しても同じことがいえるので、薬をこまめに服用することで眠気が軽減することがあります。ジプレキサは半減期が28.5時間と長いので、あまり効果は期待できません。

薬を飲んで暫くすると眠気が強くなる方は、試してみてもよいでしょう。ただ、回数を増やすと飲み忘れてしまうリスクが高まります。薬を飲み忘れてしまった場合、多少ずれても結構ですので服用するようにしましょう。

 

4-3.夕食後や就寝前に服用する

ジプレキサは1日1回でも効果は期待できるので、日中落ち着いているならば、夕食後や夜に飲み方を変更するのも方法です。

睡眠中でしたら眠気は出てきてくれた方が好都合ですね。ジプレキサには睡眠を深くする効果も期待できます。このため、就寝前に服用するという方法もあります。

ジプレキサを日中に服用しているには、理由があることもあります。ご自身で判断せず、主治医の先生と相談しましょう。

ジプレキサは半減期が長いお薬なので、1日1回の服用でも効果は十分に持続します。薬を飲んですぐに眠気がくる方は就寝前に服用するのがよいでしょう。直後に眠気がこない方は、夕食後に服用する方がちょうど就寝時間に血中濃度がピークになります。

 

4-4.減量する

必ず主治医に相談してください。

ジプレキサの効果がしっかりと出ているならば、少し減らして様子をみるのもひとつの方法です。ジプレキサを減らしてみて、効果はそのままで眠気が軽減できれば、それに越したことはありません。統合失調症の場合は、再発を防止する維持量としては最低で5mgになります。これでも眠気が強い場合は、他のお薬に切り替えた方がよいです。

ですが、必ず主治医に相談してください。薬を減量しても大丈夫かどうかは、これまでの経過をみて判断しなくてはいけません。

確かに、眠気がとれて活動的になる方もいらっしゃいます。ですが、症状が十分と落ち着いていない時期に急にお薬を減らしてしまうと、余計に症状が長引いて、結果として薬を飲む期間が増えてしまうことがあります。

 

4-5.アルコールや相互作用のある薬を見直す

飲酒習慣は主治医にちゃんと伝えましょう。相互作用に注意が必要な精神科のお薬としては、デプロメール/ルボックスがあげられます。

ジプレキサの相互作用には注意をしなければいけません。相互作用によってジプレキサの濃度が上昇してしまえば、眠気が強く出てしまうこともあります。

相互作用というとお薬のことに目が行きがちですが、もっとも注意すべきはアルコールです。アルコールもお薬も、同じ肝臓で分解されます。肝臓の仕事が増えれば、お薬の分解も遅れてしまいます。ジプレキサの効果が強く出てしまって、副作用の眠気が強くなってしまうことがあります。

飲酒が習慣化してしまうと、肝臓の機能も変化するので血中濃度がより不安定となってしまいます。このため、効果も不安定になり、副作用も出やすくなってしまいます。治療がおくれてしまいますので、お酒を飲んでいることは主治医に正直に伝えてください。

 

精神科のお薬としては、抗うつ剤のデプロメール/ルボックスとの併用に注意が必要です。ジプレキサは、CYP1A2などの肝臓にある酵素で分解されていきます。デプロメール/ルボックスでは、このCYP1A2阻害作用が強力です。血中濃度が1.5~1.75倍までに上昇することが確認されていて、眠気の副作用が強く認められることがあります。

 

4-6.他の抗精神病薬に変える

ジプレキサで眠気が強い場合は、SDAやDSSなどに切り替えを検討します。

ジプレキサによる眠気がどうしても改善できないのでしたら、他のお薬に変えていくしかありません。

ジプレキサやセロクエルといったMARTAは、鎮静作用とともに眠気が強いお薬です。このため、眠気の少ないSDAやDSSなどに変更することで軽減が期待できます。

どのお薬に変更していくのかは、眠気だけでなく総合的な判断が必要です。眠気が少し認められていても、総合的にみたらジプレキサが一番よいということもあります。主治医としっかりと相談してお薬を考えていきましょう。

 

まとめ

ジプレキサでは抗ヒスタミン作用が強く、抗α1作用や抗コリン作用とあわせて、眠気が強いお薬です。また、抗セロトニン2作用によって、深い睡眠が増加します。

ジプレキサは抗ヒスタミン作用も強く、鎮静作用が強いので眠気が強いお薬です。

薬以外の眠気の原因としては、精神症状・不十分な睡眠・生活リズムの乱れ・女性ホルモンが考えられます。

眠気の対策としては、以下の6つの方法があります。