ジプレキサのうつ病への効果

アイコン 2015.11.30 ジプレキサ

非定型抗精神病薬のジプレキサは、おもに統合失調症と双極性障害の治療に使われるお薬です。

それだけでなくジプレキサは、うつ病やうつ状態の患者さんに使われることもあります。ジプレキサが処方されたからといって統合失調症や双極性障害というわけではないのです。

ジプレキサはどうして抗うつ効果が期待できるのでしょうか?
ジプレキサが使われるのはどのようなケースでしょうか?

ここでは、ジプレキサのうつ病やうつ状態への効果について、詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.ジプレキサはどうしてうつ病に使えるの?

適応外ですが、うつ病の患者さんにも効果が期待できます。

ジプレキサの添付文章上は、統合失調症と双極性障害に使われるお薬となっています。うつ病には適応が認められていませんが、双極性障害のうつ状態に対しては正式に適応が認められています。

だからといって、ジプレキサがうつ病に効かないわけではありません。国に正式な適応を認めてもらうためには、臨床試験をして効果があることを証明しなければいけません。臨床試験には莫大なお金がかかるので、売り上げにつながらないなら臨床試験までは行いません。

ジプレキサの販売戦略として、統合失調症と双極性障害にターゲットを絞っているのです。双極性障害の躁症状とうつ症状の両方の適応をとっている唯一の抗精神病薬となっています。海外では抗うつ剤のプロザックとの合剤であるシンビアックスが発売されて、このお薬でうつ症状の抵抗をとっています。日本ではジプレキサだけで抗うつ効果が証明されています。

ですから、うつ病の方にもジプレキサの効果は期待できます。抗うつ剤と併用することもできます。このような使い方を「適応外処方」といいます。形式上は、統合失調症や双極性障害という病名で処方がされています。

 

2.ジプレキサはうつ病や躁にどうして効くの?(作用機序)

気分を持ち上げる効果と抑える効果の両方が期待でき、気分の波を小さくします。

ジプレキサは、気分に対してどのような効果が期待できるのでしょうか。

まずはうつ症状についてみていきましょう。ジプレキサがどのようにしてうつ症状を改善しているのかは、はっきりと分かっているわけではありません。ですが、大きく3つの作用が関係していると考えられています。

ジプレキサによってセロトニン2A受容体や2C受容体がブロックされると、大脳皮質前頭前野でのノルアドレナリンやドパミンが増加することが分かっています。意欲や興味を高めて、気分を持ち上げる効果が期待できます。

また、ジプレキサはBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質を増加させて、神経機能を回復して保護することが分かっています。とくに記憶に関係する海馬での神経新生によって、抗うつ効果がもたらされるのではと考えられています。

ジプレキサは抗ヒスタミン作用が強く、眠気が強いお薬です。セロトニン2受容体遮断作用は睡眠を深くする作用もあります。このため、睡眠が深くなってしっかりと休養をとることができます。

これらの作用によって、ジプレキサには抗うつ効果があると考えられています。

 

躁症状については、大きく2つの作用が関係していると考えられています。

躁症状がみられるときは、中脳辺縁系という部分でドパミンの過活動が起こっていると言われています。統合失調症に近しい状態とも考えられます。ですから、ジプレキサによってドパミンをブロックすることで効果が期待できます。

また、ジプレキサはさまざまな受容体に作用するお薬です。抗α1作用や抗ヒスタミン、抗コリン作用や抗セロトニン2作用などによって鎮静作用が強いです。躁症状はエネルギーが高まっている状態ですので、ジプレキサで気分の高ぶりを鎮めることができます。抗躁効果に関しては、ジプレキサにはしっかりとしたエビデンスがあります。

 

このように、ジプレキサはうつ症状にも躁症状にも効果が期待できます。このため、気分の波を小さくさせる効果が期待できます。ジプレキサは気分安定薬とも呼ばれています。

 

ジプレキサの抗精神病薬としての効果について詳しく知りたい方は、
ジプレキサの効果と特徴
をお読みください。

 

3.ジプレキサの効果時間と使い方

ジプレキサは最高血中濃度到達時間が4.8時間、半減期が28.5時間の非定型抗精神病薬です。うつ症状には低用量から、躁症状には高用量から使われています。

ジプレキサを服用すると、4.8時間で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、28.5時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

 

このため、1日1回の服用でも効果がしっかりと持続するお薬です。鎮静作用があり、眠気も強いお薬なので、夕食後や就寝前に使われることが多いです。薬を飲んですぐに眠気がくる方は就寝前がよいでしょう。あまり眠気がこない方は、夕食後に服用する方が就寝時間にジプレキサの血中濃度がピークになります。

ジプレキサは、うつ症状では低用量から、躁症状では高用量から使っていきます。添付文章では以下のようになっていて、最高用量はいずれも20mgとなっています。

実際には、うつ症状では1.25~5mgから開始していきます。ジプレキサの用量を考えるにあたって、考慮しなければいけないジプレキサの特徴が3つあります。

このため、高齢女性非喫煙者では少量から使っていく意識が必要です。反対に、若年男性喫煙者にはしっかりと使います。

 

4.ジプレキサが向いている人は?

ジプレキサは、糖尿病の方には使うことができないお薬です。このため、糖尿病と診断されたことがある方には使うことができません。また、体重増加の副作用も多く、肥満傾向の方には向いていないお薬です。ですから、血糖や体重に問題ない方しか使えないお薬です。

それでは、どのようなうつ病の方にむいているのか、みていきましょう。

ジプレキサは、不安や焦燥感が強いときに使われることがあります。うつ病といっても、いろいろな症状のあらわれ方をします。身体はついてこないものの、不安や焦りだけが内面で強くなってしまうことがあります。このような方にいきなり抗うつ剤を使うと、自殺などの間違った行動をするエネルギーを与えてしまいます。

このような時には、鎮静作用のあるジプレキサが使われることがあります。このような時は、開始用量は多めに使っていきます。少量ですと、意欲だけを高めてしまうこともあります。

 

また、うつ病では妄想が認められることがあります。うつ病に多い妄想としては、貧困妄想、罪業妄想、心気妄想です。全く根拠がないのに、患者さんの中で非現実的なネガティブなことを思い込んでしまいます。このような妄想が認められるときには、ジプレキサなどの抗精神病薬が効果的なことがあります。

抗うつ剤の効果が不十分な時に、その効果を増強するためにつかわれることもあります。ジプレキサ自体の抗うつ効果だけでなく、相互作用により抗うつ剤の血中濃度が上昇する効果もあります。このような増強療法(augmentation)をする時は、少量で使われます。

 

うつ状態の患者さんでは、その原因がハッキリとしない時があります。とくに若い患者さんでは、双極性障害が隠れていることもしばしば経験します。ときに統合失調症が原因でうつ状態になっていることもあります。双極性障害の方にいきなり抗うつ剤を使ってしまうと、躁転(躁状態になること)してしまうことがあります。ジプレキサでは躁転のリスクが少なくてすむので、このような時には使われことがあります。

 

まとめ

ジプレキサは適応外ですが、うつ病の患者さんにも効果が期待できます。

気分を持ち上げる効果と抑える効果の両方が期待でき、気分の波を小さくします。

ジプレキサは最高血中濃度到達時間が4.8時間、半減期が28.5時間の非定型抗精神病薬です。うつ症状には低用量から、躁症状には高用量から使われています。

ジプレキサが向いているのは、