ラピアクタ(ペラミビル)の効果と特徴

アイコン 2016.2.13 その他のインフルエンザ治療薬

ラピアクタ(ペラミビル)はインフルエンザに対して唯一の点滴薬として活躍しています。

一般的に点滴薬として適応があるのは、お薬が飲めない、吸えない重症例の患者さんになります。そのため、入院した時に使用されることが多いお薬になるので、馴染みがない人も多いかもしれません。

ラピアクタは点滴で治療ができるので、薬を吸えなかったり飲み込めないほどに重症であっても確実に投与することができます。このため、現在のインフルエンザ治療の切り札と言っても過言ではないお薬です。

ここでは、ラピアクタの作用の仕組みから詳しくお伝えしていきます。

 

1.ラピアクタの作用の仕組み(作用機序)

ラピアクタの効果を考えていくにあたって、どのようにしてラピアクタが効果を発揮するのかを知る必要があります。

インフルエンザウイルスが感染してからどのようにして体内で増殖していくのか、そしてインフルエンザ治療薬がどのようにしてそれを防ぐのか、詳しくみていきましょう。

 

1-1.インフルエンザの増殖機序について

ラピアクタの効果や副作用を手っ取り早く知りたい方は、2の「ラピアクタの用量と使い方」から読んでいただければ幸いです。

インフルエンザの増殖は以下の3つの過程を経て増殖します。

  1. インフルエンザが体内への付着
  2. インフルエンザウイルスのRNA・タンパク質の合成
  3. インフルエンザウイルスの放出

インフルエンザウイルスは自分で増殖はできません。ヒトの細胞を使って増殖して、それをばらまくことで周囲の細胞に感染を広げていきます。

インフルエンザウイルスが口や鼻から入ってくると、身体の細胞に侵入してきます。そして人の細胞の中で、ウイルスのRNAという遺伝子やタンパク質を合成していくことで増殖します。そして新しくできたインフルエンザウイルスが、感染細胞から飛び出して周囲の細胞に感染を広げていきます。

①の付着・③の放出という過程で、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる2つの糖蛋白の働きが必要になります。HAは16種類、NAは9種類あります。

インフルエンザA型では、このHAとNAの組み合わせで変異を起こすため、新型が出現します。自然界では50種類以上の組み合わせが存在するといわれ、予防接種はその中で今年は流行するだろうと予想される何種かを打ちます。そのため予想された以外のウイルスが感染すると、インフルエンザワクチンを摂取したとしてもインフルエンザに罹患してしまうのです。

 

1-2.抗インフルエンザ薬の作用機序と種類

日本で使われている抗インフルエンザ薬は、全てウイルスが感染細胞から放出されるのを阻害する薬剤(ノイラミニダーゼ阻害薬)です。ノイラミニダーゼ阻害薬は4剤あり、ラピアクタもその中の一つです。

抗インフルエンザ薬の作用の仕組みは、先ほど述べた①~③のいずれかを阻害しています。

インフルエンザ治療薬の作用と種類をまとめました。

赤で示した4剤が日本で発売されている薬です。

シンメトレル(アマンダジン)は内服薬であり、日本でもパーキンソン病などに使われる薬ですが、アメリカなどの海外ではインフルエンザにも使用されています。しかしシンメトレルはインフルエンザA型にしか効果がなく、そのA型にも効かないアマンタジン耐性インフルエンザが高率に出現しています。このことからWHOも使用を推奨しておりません。

アビガンは新しい作用機序のインフルエンザ治療薬として注目されており、感染した細胞内でのウイルスの増殖を防ぎます。現在の薬で効果のない新型インフル エンザが流行した場合、厚労省が要請して製造されることになっています。致死性のエボラ出血に対する有効性も認められ、ウイルス性疾患への幅広い効果が注 目されています。

細胞からの放出を阻害する薬剤は、ノイラミニダーゼ阻害薬といわれています。ノイラミニターゼ(NA)とはインフルエンザウイルスの表面にある糖蛋白で、細胞から飛び出していく際に必要となります。この働きを邪魔するので、ウイルスが細胞外に出ていけなくなります。

日本で発売されている4種類の薬は、全てこのノイラミニダーゼ阻害薬となります。この中ではリレンザとイナビルが吸入薬、ラピアクタが点滴するお薬で、タミフルは内服薬になります。

この中でラピアクタは唯一の点滴するお薬ということで、インフルエンザ治療の切り札として活躍しています。

 

2.ラピアクタの用量と使い方

ラピアクタは300mgを1回投与が通常量です。ただし重症化が予想される場合は量を600mgに増やしたり、症状に応じて翌日も投与できる唯一のお薬です。

ラピアクタの添付文書を引用すると

通常,ペラミビルとして300mg を15 分以上かけて単回点滴静注する。合併症等により重症化するおそれのある患者には,1 日1 回600mgを15 分以上かけて単回点滴静注するが,症状に応じて連日反復投与できる。

となっております。点滴を選択する場面は、多くは入院する場合です。そのためクリニックには置いてないことも多いです。

ただしラピアクタが特別に即効性や効果が高いということはありません。他のインフルエンザ治療薬のイナビルやタミフル、リレンザと比較しても大きくは変わりません。

患者さんによっては、点滴の方が効果がありそうと思って希望される方もいらっしゃいます。しかしノイラミニダーゼ阻害薬は、「インフルエンザウイルスを退治する」薬ではなく、「インフルエンザウイルスの増加を防ぐ」薬です。そのため点滴したからすぐ治るわけではないのです。できるだけ早く何らかのインフルエンザ治療薬を使いながら、安静加療をしていくのが一番です。

 

3.ラピアクタと他のインフルエンザ治療薬の比較

ラピアクタの特徴は、「点滴で確実に投与できる」という点にあります。入院するような重篤な状態の患者さんはラピアクタが選択されることが多いです。

ラピアクタはどんな人に向いていて、どんな人に向いてないのでしょうか。まずは4剤の比較を見てみましょう。

インフルエンザ治療薬の効果と特徴を比較しました。

ラピアクタは、60代以上の高齢者になると使用頻度が上昇します。これは高齢者は体力がなく、色々な病気を元々お持ちなので、入院することが多いからです。

逆に若い場合は、基本的にはインフルエンザは家で安静にしていれば治る病気なので、重篤でない限りラピアクタが選択されることはありません。

また、状態に応じて量や投与回数が調整できるのも、ラピアクタ唯一の特徴です。ただし、何でも沢山投与すれば良いというものではありません。薬は治すというメリットもあれば、副作用というデメリットもあります。年齢や症状に応じて、医師が必要だと判断した量を使っていきましょう。

以上のように同じインフルエンザの治療薬でも、ラピアクタは重症化した場合に登場するお薬のため、他の3剤とは明確に使用状況が違うお薬です。

 

4.ラピアクタが使われるインフルエンザで入院する状態とは?

ラピアクタが使われるのは、おもにインフルエンザで入院することになった場合です。インフルエンザで入院するのは、どのような状態でしょうか?

 

4-1.インフルエンザで入院する場合は?

端的に言うと、命にかかわりがあるような重篤な状態と医師が判断した場合です。

「ラピアクタを投与する状態」=「入院するほど重篤な状態」という認識で良いのですが、ではどんな時に入院が選択されるのでしょうか?

医師は治療の指標になるガイドラインをもとに治療を行っていますが、そのガイドラインでは以下のように書いてあります。

「医師が命にかかわるような重篤な合併症及び状態であると判断した場合、入院適応とする」

これだと当たり前すぎて、逆にイメージがわかないですよね。インフルエンザはありふれた病気というイメージですが、その症状は人によっては命の危険につながることもあります。インフルエンザが重症かどうかは、年齢や持病、受診した時の状態などを総合的に判断していきます。

高齢者や乳幼児はインフルエンザは重症化しやすいです。インフルエンザの重症化を疑う状態は以下になります。

このような状態であると医師は入院しなければ命にかかわると判断し、入院になることが多いです。

 

4-2.インフルエンザを外来で経過観察する場合とは?

患者さんの訴えといった主観的なものよりも、客観的なデータを見て決めることが多いです。

インフルエンザの患者さんやご家族の中には、「調子が悪いから入院させてほしい」と希望されることもあります。

しかしながらインフルエンザが流行する冬場はベッドが空いていないことも多く、また病院内で感染を広げてしまうことも懸念されます。ですからインフルエンザでは、重症化のリスクが高くなければ入院できないこともあります。

まずは患者さんから見たら入院させて欲しいと思うのに、医師からみたら帰宅して様子を見るように言われる可能性があるものをいくつか挙げてみましょう。

このように言われてしまうと、冷たく感じる人もいるかもしれません。そんなこと言って「何かあったらどうするんだ!!」と怒る人もいるかもしれません。ですが主観的な訴えだけでは入院を決められません。大げさに言ったからといって、入院になるわけではありません。入院の判断は、患者さんの客観的な検査データを中心にして判断していきます。

このように、原則は検査データにより入院かどうかを判断していきます。そうはいっても患者さんの症状があまりにひどく、それがインフルエンザの重症化につながる場合は入院も検討します。

このような状態では生活ができないですし、脱水症状にもなりやすいです。年齢や持病なども含めて総合的に判断します。

 

4-3.どうしてインフルエンザの入院は重症だけなのか?

インフルエンザは他の人に移る可能性がある病気のため個室対応になります。そのため他の病気に比べて入院適応のハードルが高いです。

入院治療を希望すれば入院できる病気も多いです。しかしながらインフルエンザでは、入院治療は重症例か、重症化するリスクが高いケースに限られます。その理由は、インフルエンザの感染力の強さにあります。他の人に移る可能性があるため、個室でなければ対応できないのです。

他の患者さんもいる部屋に入院していただいて、皆に移ったら大変です。入院している患者さんは病状が悪い患者さんが多いので、中にはインフルエンザに感染すると命にかかわる方もいらっしゃいます。そのためインフルエンザ入院は、個室や感染部屋など特殊な部屋に入院が必要になります。

しかし多くの病院では、個室は重症な患者さんが入院するときに使われます。そのためインフルエンザでの入院は、他の肺炎などの患者さんよりハードルが上がるのです。

特に冬の時期は体調を崩す方が多く、病院自体も満床に近い状態です。そのため、本当にベッドが必要な患者さんのために空けておきたいというのが、病院側の本音なのです。なにも入院だからといって、手間がかかるというわけではありません。

患者さんから時々、「インフルエンザなのに帰宅ということは、絶対に大丈夫ということですよね?」と聞かれることがあります。医療の世界では、絶対や100%という言葉は存在しません。そのため、「悪くなったらまた来てください。」という回答になります。

「悪くなったら、また寒い中連れてこなきゃいけないなんて!!」と思うかもしれませんが、皆で譲り合いながら何とか治療している日本の医療の現状をご理解いただければと思います。

私も長年診ていた肺がんの患者さんが、状態が悪くなって入院させようとした時に、ベッドが空いていなくて泣く泣く他の病院に入院を頼むことがありました。その患者さんは残念ながらお亡くなりになってしまいましたが、患者さんの家族から「最後は先生に診ていただきたかった。」というお手紙をいただいて、胸が詰まる思いでした。

このような患者さんが一人でも少なくなるよう病院側は頑張っていますので、ぜひインフルエンザの患者さんも、「帰宅で大丈夫」と医師が判断した場合は、「本当に必要な患者さんのために譲ろう」と思っていただければ嬉しいです。

 

まとめ