イナビルの副作用と安全性

アイコン 2016.2.4 イナビル

インフルエンザと診断されて、病院でイナビルを処方されたことがある方は多いかと思います。

インフルエンザのシーズン中は医療機関は非常に忙しく、人によっては十分な副作用の説明を受けないままイナビルを処方された人もいるかもしれません。イナビルは病院ですぐに吸入することも多く、後になって副作用が心配になった方もいらっしゃるでしょう。

イナビルにはどんな副作用があって、安全な薬といえるのでしょうか?
また、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか?

ここでは、イナビルの副作用についてまとめたいと思います。

 

1.異常行動の副作用はイナビルでもあるの?

タミフルによる異常行動は、日本でのみ10代の飛び降りが起きたため注意喚起されています。一方イナビルでも異常行動の報告がありますので注意が必要です。

タミフルによる異常行動は、2007年に10代の患者さんが飛び降り自殺したことを契機に、複数の10代患者さんの飛び降りを認めた事が始まりです。これらの原因究明のために様々な研究が行われましたが、はっきりした原因はわかっていません。本当にタミフルで異常行動が起きるかどうかは、未だに結論が出されていないのです。

一方でイナビル投与後でも、異常行動が認めた症例は存在します。その中では、飛び降りによる死亡事故も存在します。「タミフルじゃなくてイナビルだから大丈夫!」と考えないようにしましょう。

詳しく知りたい方は「イナビルに異常行動はみられるのか?」を参照ください。

異常行動がみられるのは、イナビルなどの薬のせいだけではありません。インフルエンザが進行すると、インフルエンザ脳症が発症して異常行動をきたすことがあります。現在、インフルエンザの治療薬はどれを投与しても異常行動は認めております。そもそも薬の副作用なのか?それともインフルエンザの進行に伴う症状か?どちらかはっきりとは言えないのが現状です。

ですので、インフルエンザの治療中は常に異常行動を起こしうると考えておきましょう。

 

2.イナビルで多い副作用とは?

イナビルで多い副作用は下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状です。

イナビルの副作用の頻度は、そこまで多いものではありません。一般的には下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状が言われております。しかしタミフルなどの他のインフルエンザのお薬でも認めますし、インフルエンザ自体でも消化器症状を認めることがあります。とくにインフルエンザB型では消化器症状が多いのです。

インフルエンザに限らず、熱が出たときに医師が症状を聞くのは、どこの部位に感染しているのかを予想するためです。インフルエンザは通常、飛沫感染、接触感染によってウイルスが上気道に付着して、そこで増殖されることによって咳や鼻水などの症状が出現します。胃や腸にインフルエンザが感染すると、お腹の症状が出現するのです。

イナビルの副作用なのか、それともインフルエンザの症状なのかを鑑別するのは、医師でも困難なのです。

インフルエンザの症状で下痢や嘔吐を認めるならば、これは身体からウイルスを出そうとする防御反応の結果です。嘔吐は薬で止めることもありますが、下痢は無理に止めると病状が悪化することがあります。もし副作用だとしても、その後数日たてば治る例がほとんどです。脱水症状などに気を付けて、ポカリスエットなどを多く摂るようにしましょう。お茶や水は栄養がないので注意が必要です。

また、冬の時期に激しい嘔吐、下痢というと、インフルエンザBよりノロウイルスを疑います。特に発熱がない場合は、かなりの確率でノロウイルスの事が多いです。

 

イナビルの効果について詳しく知りたい方は、「イナビル(ラニナミビル)の効果と特徴」をお読みください。

 

3.イナビルの重篤な副作用とは?

イナビルに限らずどんなお薬も、まれに起こる副作用まで含めると非常にたくさんの副作用が挙げられます。イナビルは乳成分が含まれているので、乳製品にアレルギーがある方は他のお薬に変更した方が安全かもしれません。

イナビルの添付文章をみていくと、アナフィラキ―ショック、気管支攣縮、皮膚粘膜眼症候群などの重篤な副作用の記載が並んでいます。このような記載をみると、イナビルを吸入するのがためらわれてしまうかもしれません。

ただしこの副作用は、薬のアレルギーとしてほぼ全ての薬、さらにいうとサプリメントや食べ物でも認める事がある症状です。イナビルで特別に多いということはありません。

しかしながらイナビルには、乳成分が含まれています。このため、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際に、重篤なアレルギーが出たと報告されています。そのため乳製品にアレルギーがある方は、イナビルは避けた方が良いかもしれません。

イナビルを服用してこれらのアレルギー症状が出現した時は、もう二度とイナビルは吸入しないようにすることです。一度イナビルでアレルギー症状が出た方は、添付文書でも禁忌になっております。必ず医師に伝えてください。

また、喘息や肺気腫(COPD)などの呼吸器疾患をお持ちの方が、イナビルを吸入後に息が苦しくなったり、意識がなくなったという報告が少数ながらあります。しかしこれは、イナビルを思いっきり吸いすぎたことによる影響なのでは?と推測されています。どんなお薬も正しい方法で使用しないと、効果がないばかりか副作用がでることもあります。

もしこれらの病気で吸入方法が気になる方は「イナビルの使い方・タミフルとの効き目の比較」をお読みください。

 

4.イナビルの市販後調査とその解釈

市販後調査では、イナビルの副作用はほとんど報告されていません。

イナビルに限らず、薬は発売されてからしばらく、副作用の調査が行われます。これを市販後調査といいますが、イナビルの発売後の調査では、2011~2012年のシーズン3,542例中50例(1.4%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢(0.31%)、胃腸炎(0.11%)、悪心(0.08%)となっております。

参考までに、同じインフルエンザ治療薬のタミフルの市販後調査4,211例では、副作用は90例(2.1%)に認められました。主な副作用は、下痢22 件(0.5%)、悪心12 件(0.3%)、腹痛11件(0.3%)となっています。

イナビルの市販後調査をみると、タミフルと同程度の副作用報告数で、最も多い下痢でも0.31%と非常に少ないです。市販後調査の副作用は、処方した医師それぞれの判断で報告されます。例えば内服後に下痢の症状が出たと患者さんに言われた時に、イナビルの副作用と判断し報告したらカウントされます。しかしながら、後からインフルエンザの症状が出たと判断されたらカウントされないのです。

適当に感じるかもしれませんが、多くの薬はそのように市販後調査されています。見方をかえると、市販後調査は実際の臨床医の印象が反映される数字なのです。このため、イナビルによる副作用は全体的に少ないというのが、現場での印象です。

 

5.イナビルは妊娠中や授乳中でも使えるの?

イナビルは妊娠中では奇形の報告などはなく、むしろインフルエンザの治療が推奨されています。授乳中は念のため、吸入してから2日は授乳を中止する方が安全かと思います。

まず妊娠中ですが、イナビルがお腹の赤ちゃんに影響がないのか心配かと思います。現在の産婦人科のガイドラインでは、イナビル投与により、流産率、心形態異常、その他の形態異常、早産、低出生体重児、胎児発育不全児の増加は認められないと報告されています。

むしろ週数が進むごとにインフルエンザが重症化しやすくなると言われていますし、高熱が続く方が赤ちゃんに影響が大きいです。このためインフルエンザと診断されたら、早期にイナビルの吸入を推奨しています。

詳しく知りたい方は、「妊婦さんにインフルエンザ予防接種と治療薬は安全?」をお読みください。

 

次に授乳中の方ですが、お母さんがイナビルを吸入すること自体は良いのですが、母乳へ微量ながら移行することが報告されています。

そのためイナビル服用中は、授乳を避けることとはっきり添付文章に書かれています。イナビルの授乳の再開については、最後にイナビルを服用してから2日(48時間)後であれば、血中濃度が検出できないくらいの量になっているから問題ないとしている報告が多いです。

本当に微量のため授乳継続しても赤ちゃんに影響はないとしている報告もありますが、添付文章に従えば、やはり吸入直後は避けた方が無難かと思います。

そもそもインフルエンザは、飛沫感染や接触感染によって人から人へ移る病気です。お母さんの体調が悪い時に赤ちゃんに近づくことで、インフルエンザが移ることも考えられます。二日間くらいはお母さん自身の体調を良くすることに努めた方が、最終的にはお母さん、赤ちゃんともに良いのではと思います。

 

6.イナビルと他剤の飲み合わせとアルコールの影響

イナビルと飲み合わせが悪い薬はありません。どんなお薬を飲んでいても吸入は可能です。

添付文書では、イナビルが他のお薬と大きく相互作用を引き起こして、血中濃度が上昇したり低下することはないと報告しております。そのためどんなお薬を飲んでいても影響はないので、安心してイナビルを吸入してください。

イナビルとの飲み合わせというよりも、インフルエンザの時は解熱剤に注意が必要です。よく解熱剤として出されるロキソニンは、子供ではインフルエンザ脳症との関連が指摘されているため禁忌となっております。

そのためインフルエンザで発熱した時は、カロナール(成分名:アセトアミノフェン)を出すことが一般的です。

 

患者さんの中には、「お酒(アルコール)は飲んでも良いかと?」とおっしゃる方もいらっしゃいます。少量のお酒は身体によいといったりしますが、インフルエンザのときはアルコールはやめてください。

インフルエンザの時は、熱も高くなって汗もたくさんかき、脱水になりやすいです。アルコールには利尿作用があるので、脱水のリスクを高めてしまいます。ただでさえ脱水になりやすい状態ですので、アルコールはやめるようにしてください。

 

まとめ