スピリーバのCOPD(肺気腫)での効果とは?

アイコン 2016.7.13 スピリーバ

タバコを長い間吸っていると、肺が穴ぼこだらけになっていきます。咳や痰が出現してきて病院に受診すると、昔は肺気腫、慢性気管支炎といった病名を診断されていました。今ではこれらの疾患をまとめて、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といいます。

COPDの第一選択薬は現在、長時間作用型の抗コリン薬もしくはβ2刺激薬となります。しかしCOPDは残念ながら、お薬を吸入したからといって肺の穴ぼこが治るわけではありません。症状を少しでも和らげることで、これ以上どんどん悪くなるのを防ぐ治療になります。

COPDの第一治療薬として、抗コリン薬であるスピリーバは不動の地位を築いてきたお薬です。現在では多くのお薬が発売されましたが、スピリーバは今なおCOPDで最も多く処方されているお薬となっています。

「COPDと診断したらまずスピリーバ」という医師も多いと思います。それくらいCOPDとスピリーバは、切っても切れない関係となっています。

なぜCOPDではスピリーバがそこまで良いのか?ここでは、スピリーバのCOPDでの効果について詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.COPDとはどんな病気か?

COPDは、タバコを吸い続けたことで肺が傷つき結果として気管支が閉塞してしまう病気です。

COPDの正式名称は、chronic obstructive pulmoary diseaseといいます。日本語では慢性閉塞性肺疾患と訳します。日本語で書かれてもなかなかピンと来ないですよね。これはタバコで気管支が狭まって、慢性的に閉塞してしまう肺の病気ということです。

タバコの煙は口から吸ったら喉を通り、気道から狭い気管支の隅々まで煙が行き渡ります。つまり気管支の中枢から末梢まで、肺の全てをタバコの煙で傷つけてしまうのです。そしてタバコの煙で色々傷つけられた結果、気管支が狭まってしまいます。このことを難しく言っているのです。

さらにCOPDが難しいところは肺は非常に繊細な臓器であり、一回傷つけてしまうと良くならないのです。

むしろ年齢とともに体力が落ちてくると、肺の機能自体も落ちていきます。そのためタバコをやめても、肺の状態はどんどん悪くなることが予想されます。そのためCOPDはどんどん良くする病気というよりは、進行を防ぐために重きを置くべき病気といわれています。

COPDの病気について詳しく知りたい人は、「肺気腫とはどんな病気?寿命を縮めるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の怖さ」を参考にしてみてください。

 

2.COPDの治療は?

長期作用時間型の抗コリン薬かβ2刺激薬の吸入薬が第一選択肢となっています。

下の図は、2014年のCOPDのガイドラインになっています。

copdの治療ガイドライン

このようにピラミッドになっていて、悪くなればなるほど上の治療を追加で足していくという表になっております。薬の第一選択肢は現在、長時間作用型の抗コリン薬かβ2刺激薬となっています。どちらを先に選ぶかは専門家の中でも意見が分かれるところです。

しかし共通して言えるのは、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者
  2. 前立腺肥大症による排尿障害のある患者

この二つの病気がある人には抗コリン薬であるスピリーバは使えないということです。この場合は、長期作用型のβ2刺激薬であるオンブレスオーキシスが選択肢に上がると思います。

一方で病院を受診するくらい症状が強いのであれば、どちらか単剤ではコントロールが難しいことも多いです。COPDは、タバコで肺がボロボロになってしまった病気です。肺がボロボロになることで気管支が狭まり、息が思いっきり吐けなくなります。こうなると痰も詰まりやすく、かなり苦しい症状が出現します。

こういった場合には、ガイドラインのピラミッドの上の治療である抗コリン薬とβ2刺激薬の両方を使うことになります。

こういった流れを受けて、現在ではスピオルト、アノーロ、ウルティブロなど抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤が発売されています。

 

3.COPDにおけるスピリーバの立ち位置は?

COPD治療薬としては、セレベント<スピリーバ=オンブレスという位置づけになっています。

2009年までのCOPDのガイドラインでは、

のどちらかが推奨されていました。しかし2011年に医学界で最も有名な雑誌の一つ The New England Journal of medicineの2011年の論文で、β2刺激薬の代表であるセレベントと抗コリン薬代表であるスピリーバの対決の結果、スピリーバの方が効果があることが示されました。

その結果を図を使いながら説明します。まず下の図はスピリーバ(チオトロピウム)とセレベント(サルメテロール)を使っていた患者さんでの、COPDで入院した率になります。

スピリーバ対サルメテロール

緑がスピリーバ、点線がセレベントです。縦軸は入院した率になるため下にあればあるほど入院した人数が少ないことを示します。一方で横軸は、経過日数になります。つまり360日経過をみた試験になるのです。

この結果、緑のスピリーバは点線のセレベントより常に下にあり、COPDの悪化を防げていたことを示している図になります。

次にCOPDが軽症・中等症・重症だった場合での、セレベントとスピリーバの効果をみたのが下の図です。

チオトロピム対サルメテロール

見慣れなくて少し難しい図かもしれません。

ということを示しています。結果として軽症・中等症・重症全てが1以下という結果から、COPDがどのような状態であってもスピリーバの方が効果があったということになります。

この結果をうけて、2011年のガイドラインでは第一選択肢が抗コリン薬で、β2刺激薬は効果が不十分な時に上乗せすることとなりました。

しかし新しく発売されたβ2刺激薬のオンブレス対スピリーバでの対決が、2013年のLANCETの論文で紹介されています。結果としてオンブレスとスピリーバは、COPDに対しては同等の効果があるという引き分けの結果でした。

これを受けて2014年のガイドラインでは、β2刺激薬もしくは抗コリン薬が第一選択薬という位置づけになっています。ここまでの流れを汲むと、セレベント<スピリーバ=オンブレスという効果の位置づけになります。

 

4.COPDのスピリーバでの実際の効果は?

スピリーバはCOPDに対して即効性を示す治療ではありません。スピリーバを吸い続けることで、症状を和らげ結果として増悪、さらには死亡率を低下させる治療になります。

これらは、COPDと診断されて治療をしていくにあたって常につきまとう問題です。実際に私もスピリーバを処方した次の外来で、このような疑問や気持ちを伝えられる患者さんはとても多いです。

実際にCOPDに対してスピリーバを吸うことで、肺の穴ぼこが良くなるわけではありません。気管支を広げることで症状を緩和する治療になります。スピリーバを吸い続けることで、COPDの症状である息切れがどのように変化するかを調べた結果をご紹介しましょう。

スピリーバ息切れ

縦軸のTDIは、息切れを質問して点数化したものです。お薬を吸う前の息切れを1点として、その後の経過をみていきます。横軸が日数になり、344日間経過を追っています。緑がスピリーバ、灰色がプラセボ(偽薬)になります。

50日時点でスピリーバを吸い続けることで1点をキープしているのが分かると思います。一方でスピリーバを吸わないプラセボでは、点数がどんどんと落ちていきます。このように毎日吸い続けることで、結果的に吸わない時よりも悪化を防ぐことができるのがスピリーバの特徴です。

さらにこのことは息切れだけでなく、咳や痰でも同様の結果が証明されています。どの結果も吸った瞬間に感じることは少なく、吸い続けることで効果を実感しているという結果になります。

そのため、スピリーバを数日吸っただけで実感がないから自分には効果がないと思ってやめてしまうのは非常にもったいないです。

症状を緩和することで結果として、先ほどのセレベントでの対決で勝ったようにCOPDの悪化を防ぐことにつながります。COPDの悪化を防ぐことで、結果として死亡率の低下にもつながります。

スピリーバ死亡率

縦軸は生存率のため、こちらの図は上の方が効果が高いことを示します。横軸が日数になり、48か月(2年間)観察していることになります。先ほど同様に緑がスピリーバで、灰色がプラセボです。

スピリーバが、常にプラセボより上にあるのがわかるでしょうか?48か月の時点ではスピリーバが生存率95%、プラセボが90%という差になっています。スピリーバを5年、10年と吸い続ければ、さらに差が出てくると思います。

今まで示した図には分かりづらいところもあったかもしれません。しかしこの図をみて、今までCOPDと診断されてスピリーバを吸い続けることが疑問だった人も、吸い続けた方が良いと実感してくれればと思います。

 

まとめ

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