べネトリン吸入液の効果と副作用

アイコン 2016.7.30 サルタノール

喘息発作やCOPD(肺気腫)の急性増悪の時に、ネブライザーという吸入器を渡された方は多いかと思います。

ネブライザーを渡してくれた看護師さんからは、「気管支を拡げるお薬だよ」としか説明受けてないかもしれないですが、ネブライザーに使用される多くのお薬はβ2刺激薬です。

β2刺激薬は、気管支を拡げるお薬として咳や息苦しさの症状を和らげてくれるお薬です。ネブライザーに使用するβ2刺激薬のお薬の一つに、べネトリンがあります。

べネトリン(一般名:サルブタモール硫酸塩)は、1973年にグラクソスミスクライン社から発売されたβ2刺激薬になります。おもに吸入液として使われていて、病院などでネブライザーに使われることが多いです。

喘息発作が出現したときにすぐに使えるように、1978年にはサルブタモールが主成分のサルタノールという吸入薬が発売されています。喘息の人は、発作時に備えて持っている人もいるのではないでしょうか?

ただしべネトリンの成分であるサルブタモールは、短時間作用性β2刺激薬に分類されています。ですから即効性があるかわりに、作用時間も短いのが特徴です。実際には4~6時間しか効果がないといわれています。

ここでは、べネトリンの効果と特徴についてまとめていきます。

 

1.べネトリンの効果のメリット・デメリット

<メリット>

<デメリット>

べネトリンは短期作用型のβ2刺激薬です。ネブライザーという薬剤を含んだ細かい霧を発生させる装置を使用して吸入します。β2刺激薬は、気管支を拡げることで喘息やCOPDの症状を和らげます。べネトリンは即効性がある分、持続力がないのが特徴です。

喘息の治療薬は、

の2つに大まかに分けられます。このうちべネトリンは、発作が出現した時に治療するお薬となっています。喘息発作とは、急に咳や喘鳴とともに息苦しさが出現する状態です。

重症度としては、

に分かれています。べネトリンはβ2刺激薬として気管支を拡張することで、全ての状態において適応があります。そのためまず病院に来て最初の治療として、ネブライザーでべネトリンを使うことが一般的です。

一方でべネトリンは、短期作用型β2刺激薬です。つまり効果は4~6時間しかありません。そのため、中発作以上ではステロイドを点滴や内服で使っていくことにより、炎症をとる必要もあります。

気管支が狭まるもう一つの病気がCOPDです。COPDは、肺炎などのばい菌に感染すると容易に急性増悪を引き起こします。COPDの急性増悪したときの治療には、ABCがあります。

この中で気管支拡張薬(bronchodilators)として、べネトリンをネブライザーにて吸入していきます。

先ほどお伝えしたように効果は4~6時しかないため、入院してネブライザーをする際には1日3回~4回使用することが多いと思います。

 

2.べネトリンの剤形と用量とは?

べネトリンは、ネブライザーにて吸入します。主に喘息発作やCOPDの急性増悪で病院を受診したときに使用します。

べネトリンは、吸入液としてネブライザーを使用して吸入します。

になります。適応としては、気管支喘息・小児喘息・肺気腫・急性気管支炎・慢性気管支炎などの急性増悪に対して、病院を受診したときに使用することが多いです。

べネトリンは通常、1回0.3~0.5mL(サルブタモールとして1.5~2.5mg)、小児は1回0.1~0.3mL(サルブタモールとして0.5~1.5mg)を深呼吸しながらネブライザーで吸入します。

なお、べネトリンと同じ成分(サルブタモール)であるサルタノールは、1回の噴霧で200μg(0.2mg)です。成人では2回噴霧(0.4mg)、小児では1回噴霧(0.2mg)となります。サルタノールと有効成分は同じでも、投与量が全然異なることがお分かりいただけると思います。

べネトリンは通常、15~30分で効果が出てきます。べネトリン吸入で効果がないような喘息発作の場合は、追加で20~30分おきに繰り返して使っていくようにガイドラインでは推奨されています。しかし後述しますが、べネトリンの副作用には心臓の動きを強めてしまう作用があります。

そのため、繰り返して使用する場合は必ず医療機関内で使用しましょう。そして脈拍数を130回以下に保つように管理することが必要です。

 

3.べネトリンで使用するネブライザーとは?

ネブライザーとは、薬剤を含んだ細かい霧を発生させる装置になります。

ネブライザーは、喘息発作をよく引き起こす人には馴染みのある機械かもしれません。逆に喘息でも普段発作を起こさない人は見慣れない名前でしょう。

ネブライザー

 

このような機械を使用します。ネブライザーを使用して薬剤を細かな粒にして吸引してもらうことにより、べネトリンを直接気管内に投与する治療法です。ネブライザーは2種類があります。

現在、多くのネブライザーはジェットネブライザーを使用しています。理由としては、

  1. 超音波では、粒子を発生させる際に薬が変成してしまう。
  2. 超音波ネブライザーは粒子が細かくなりすぎてしまい、肺胞奥にいきすぎてしまうことで、息ができなくなることがある。
  3. 苦しい時は超音波ネブライザーのような煙だと吸いづらく、ジェットネブライザーのように勢いよく流してくれた方が吸いやすい。

などの理由です。そのためべネトリンを投与するネブライザーは、ジェットネブライザーが多いです。

 

4.べネトリンの副作用とは?

べネトリンでは、動悸や手の震えが出現します。

べネトリンの添付文章では、総症例2,508例中、副作用が報告されたのは70例(2.79%)であり、そのうち主なものは、

が挙げられます。特に重要なのが動悸です。β刺激薬は心臓の動きも強めてしまい、結果としてドキドキする人がいます。またべネトリンは吸入薬なので、肺の奥まで届かせようとすると気道に刺激があったり、頭痛が出現することがあります。

またβ刺激薬を吸うと、手の震えを訴える人もしばしばいます。

またべネトリンでは、電解質の一つであるカリウムが低下することが報告されています。普通に食事している分には野菜や果物に多く含まれているため、まず問題になることはありません。しかし食事量が減ってきた高齢者などでは、注意が必要になります。

ただしこれらの副作用を考慮しても、喘息発作やCOPDの増悪の治療を優先した方が良いことが多いです。動悸に関しては不整脈につながる可能性もあるので、出現した場合は看護師さんにつたえて、心電図モニターで経過をみる必要があります。

 

5.べネトリンが使用できない人は?

べネトリンが使用できない人は、基本的にいません。

べネトリンが禁忌となる疾患はありません。使用するのに注意が必要な疾患は、以下の4つです。

  1. 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺ホルモンの分泌促進により症状悪化の恐れ]
  2. 高血圧の患者[α及びβ1作用により血圧を上昇させる恐れ]
  3. 心疾患のある患者[β1作用により症状を悪化させる恐れ]
  4. 糖尿病の患者[グリコーゲン分解作用により症状を悪化させる恐れ]

しかしこれらは、喘息発作が起きた時点でさらに悪化する可能性があります。またβ2刺激薬の他の喘息発作治療薬としては、ステロイド点滴があります。このステロイドの方が上記の疾患をより悪化させる可能性を考慮すると、喘息発作が起きたときにべネトリンをためらう理由はないと思います。

 

またお薬を内服中で気を付けるものは、以下の通りです。

  1. アドレナリン・イソプレナリン(カテコールアミン併用により、アドレナリン作動性神経刺激の増大が起きる。そのため、不整脈を起こすことがある。)
  2. キサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤 (低カリウム血症による不整脈を起こすおそれがある。)

①のお薬は、交感神経を刺激するお薬です。β2も交感神経に属する神経です。そのため併用することで、さらに効果が高まる可能性があります。しかしアドレナリンなどは、血圧が低下して集中治療室に入院しているような方に使用するお薬です。そのため普通に生活している人では、まずお目にかかることはないでしょう。

気を付けるべきは、②のキサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤です。特にキサンチン誘導体とステロイドは、喘息発作が起きたときに一緒に使用することが多いお薬です。

低カリウム血症のリスクが高まりますが、普通に食事を摂取している人では心配はまず必要ありません。食事がとれないような方でこれらの治療を使用する場合は、入院する場合が多いです。

また利尿剤は、尿と一緒にカリウムが一緒に出ていってしまうお薬です。そのため利尿剤を投与している方は、定期的に採血でカリウムを調べていることが多いです。

 

6.べネトリンは高齢者・妊婦・小児でも安全?

べネトリンは、高齢者・妊婦・小児どなたでも使用できるお薬です。

まず高齢者ですが、べネトリンの添付文章では、

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

となっております。喘息という病気は、年間2000人以上の方が亡くなられている病気です。その多くがご高齢の方です。そのため、高齢の方で喘息発作が出現した場合は、速やかにべネトリンを吸入することが必要になります。

また妊婦・授乳中の方ですが、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されている。)

と記載されています。催奇形と書かれるとぎょっとしてしまうかもしれませんが、これは吸入する何百倍もの量を血液に投与したことで認められたものです。

喘息発作が出現したときにべネトリンの有益性が危険性を下回るケースは、ほぼありません。喘息発作が出現して治療を遅れてしまうと、もっと重篤になります。体の中の酸素が足りなくなると、お腹の子供にも影響が出かねません。

そのため病院としても喘息発作を抑えるために、妊婦の方が受診した場合もべネトリンのネブライザーを勧めると思います。

喘息の発作時は小児でも、大人でも治療する内容はほとんど変わりません。ただし小児の場合は、体重や年齢に応じてべネトリンの投与量が変わります。

 

7.べネトリンが向いてる人は?

べネトリンは、ネブライザーの吸入器がないと使用できないお薬です。かなり重症の人は自分でネブライザーを購入しますが、ほとんどの人は持っていないと思います。そのためべネトリンを使うのは、病院でのことが圧倒的に多いです。

特に喘息発作が出現して病院を受診した場合は、まずこのべネトリンなどのβ2のネブライザーを使っていきます。

喘息の患者さんの中には、「毎日吸うのは大変だから、発作が出たら病院を受診して、べネトリンのネブライザーを吸入する」という方をよくみかけます。これは大きな間違いです。

喘息発作を繰り返すと、気管支がどんどん太くなってきます。これは筋トレをイメージしていただけると理解していただけると思います。筋トレをすると、徐々に腕の筋肉が太くなります。腕だと筋トレの効果があって喜ばしいことですが、気管支が太くなることは喘息を悪化させてしまいます。

気管支が太くなりすぎてしまうと、べネトリンに反応しない状態になってしまいます。喘息発作がおきてべネトリンを使っても、気道が広がらなくなってしまって喘息発作が改善しなくなります。これをリモデリング(不可逆性)と、専門用語では呼んでいます。

べネトリンに反応しなくなってから慌てて毎日治療する長期管理薬を行っても、一部の人は手遅れになります。人によっては喘息発作でべネトリンが効かなくなったら、次の治療と思うかもしれません。

しかし喘息発作が出現したときにできることは、

  1. べネトリンなどをネブライザーで吸入
  2. ステロイドを点滴(テオフィリンも場合によっては追加)

しか治療法はありません。実は喘息で入院する時は、基本的に①べネトリンの吸入と②ステロイド点滴を繰り返すことになります。

しかしステロイドは、諸刃の治療です。効果もありますが、副作用も強いお薬です。喘息でステロイドが手放せなくなると、非常に状態は悪いです。人によっては酸素が手放せなくなってしまいます。

べネトリンは気管支を拡げる素晴らしいお薬ですが、一方で安易に頼らないようにしましょう。

 

べネトリンが活躍するもう一つの病気がCOPDになります。COPDは肺炎などのばい菌に感染すると容易に急性増悪を引き起こします。COPDの急性増悪したときの治療のABCがあります。

この中で気管支拡張薬(bronchodilators)としてべネトリンをネブライザーにて吸入する方は多いと思います。痰が多いなどの症状の人には、これに去痰剤を混ぜたりします。

このように喘息もCOPDも、べネトリンを使う時は急に症状が出現して病院を受診したときがほとんどです。

 

まとめ

<メリット>

<デメリット>

<向いている人>

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