オルベスコの副作用と安全性

アイコン 2016.6.11 その他の吸入ステロイド

オルベスコは、喘息の治療に使われるステロイドの吸入薬です。

ステロイドといわれると、副作用が心配な人もいるかもしれません。しかしオルベスコで投与されるステロイドの量は、非常に微量です。さらに内服ではなく吸入することで、大部分が気管支にいきます。このためステロイドの内服に比べて、非常に副作用が少ないお薬です。

ただし、副作用が少ないといっても0ではありません。特にオルベスコは発作が起きてるときだけでなく、長期にわたって毎日吸うことで効果を発揮するお薬です。

オルベスコを長期間吸っていたらどのような副作用があるのでしょうか?それらのオルベスコの副作用に対しては、どのような対処法があるでしょうか?ここではオルベスコの副作用について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.オルベスコに含まれるステロイドの副作用は大丈夫?

ステロイドって聞くと怖いイメージをもたれる方も多いかもしれません。「症状がないのならオルベスコを吸いたくない」と思う人も少なくないでしょう。しかしオルベスコに入ってるステロイドは、非常に少ない量です。

ステロイドとはそもそもどんな物質か、まず確認してみましょう。その上で、オルベスコに含まれているステロイドの量についてお伝えしていきたいと思います。

 

1-1.ステロイドとは何か?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

他のホルモンは体の一部分にしか作用しないのに対して、ステロイドは全身の受容体に作用します。体内の血糖・脂肪・電解質・骨・筋肉の代謝に関与します。ステロイドホルモンの働きを一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。

元気になるための作用としては、

  1. 筋肉での蛋白質代謝、脂肪組織での脂質代謝をあげ、体内の血糖値をあげる
  2. リンパ球や間質細胞などの効果を止めて、組織での炎症を抑える
  3. 気持ちを高揚させる

などの効果があります。つまり体内のエネルギーとなる血糖値をあげて、気分を上げます。さらに一時的に炎症を止めることで、結果として体を元気にするホルモンです。

これだけ聞くと、すごくいいホルモンのような気もします。しかしなんでも限度というものがあります。筋肉や脂肪から血糖値を上げすぎてしまうと糖尿病になりますし、気持ちを上げすぎてしまうとイライラにつながります。炎症も抑えすぎてしまうと、いざばい菌が入った時に戦えなくなってしまいます。

つまりステロイドは、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切るホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。

 

1-2.オルベスコにステロイドはどれくらい含まれているの?

オルベスコは、最大量で0.8mgを1日に吸入します。

オルベスコディスカスの横に、50・100・200という数字が書いてあります。これは吸入ステロイドの1回量が示されています。1日1回で済むのがオルベスコの特徴ですので1日50・100・200吸うことになります。

このように聞くとすごく多い量のように感じてしまうかもしれません。しかしながらこれは、単位がμgです。1000μg=1mgになります。mgに直して1日量を計算すると、0.05mg・0.1mg・0.2mgとなります。

オルベスコの最大投与量は800μgの0.8mgになります。ステロイドは1日当たり5~30mgの量が体内で作られています。つまりオルベスコの最大量を吸っても、体内で作られている量よりもはるかに少ないのです。

さらにオルベスコでは、ステロイドを内服するのではなく吸入します。吸入したステロイドは、ほぼ気管支内に入ります。そのためステロイドを内服したときに起こるような副作用はまず認められません。

などはほとんど起こらないと考えて良いです。

 

2.オルベスコの副作用の特徴

主な副作用としては、嗄声があります。

実際にオルベスコの副作用はどれくらいあるのでしょうか。

成人でのお薬の承認時までの安全性評価によると、588例中45例(7.7%)に副作用がありました。

となっています。呼吸困難は、オルベスコを思いっきり吸いすぎるとよく起こる症状です。困る副作用としては、嗄声が挙げられます。

嗄声は、声がかすれてしまう症状です。これは、ステロイドが咽頭筋に付着したことによる筋力低下で起きるといわれています。

また吸入ステロイドでよく問題になるのはカンジダ症という、いわゆるカビの感染症です。これは吸入ステロイドの免疫抑制で、口の中にカビが繁殖しやすくなる影響です。オルベスコでも1%未満ですが、出現するとありますので注意が必要です。

 

3.オルベスコの主な副作用での対処法

オルベスコを吸入してから、うがいをすることが大切です。

オルベスコなどの吸入ステロイドで一番問題になるのが、嗄声と口腔内のカビです。これはステロイドが口腔内に残ってしまうため起こる副作用です。オルベスコは、気道内に入って炎症を落ち着けることが大切なお薬です。

つまり気道内に入ってしまえば、口腔内にステロイドがとどまる必要は全くありません。そのためオルベスコを吸入したら、うがいをしっかりすることがとても大切になります。

特に嗄声や口腔内のカビは、オルベスコを吸った瞬間に起こるものではありません。吸入ステロイドの残りが蓄積されて、徐々に声がかすれたり、カビが繁殖していきます。一度オルベスコを吸って副作用がないから大丈夫と油断しないようにしましょう。

またうがいも、ただ口をすすぐだけではだめです。喉の奥に残ってるステロイドを洗い流す気持ちでしっかりやらないと意味がありません。

うがいをする時に、声をだされることも多いかと思います。ですが、声をだせば効果がよいというわけではありません。一番大切なのは、のどの奥のほうまでキレイにすることです。ですから、のどの奥を意識すると効果的です。声を出すならば、「オ~」とすると、のどの奥まで水が届きやすいです。

喉の奥まできれいに洗い流せれば、口腔内も大体はステロイドが洗い流せます。うがいをしても良くならないという人は一度うがいの方法を見直してみましょう。

 

それでも治らない人は、オルベスコディスカスのドライパウダーからオルベスコのエアゾールに変えてみるのも一つの手です。エアゾールはスプレータイプのため、粒子がより小さくなります。

吸入力が弱くて口の中にドライパウダーの粉が残ってしまう人は、スプレーで噴霧されますので、吸う力が弱くても一気に気道に入り込むことができます。

さらにこれでも嗄声で困る人は、あえてオルベスコにこだわる必要はありません。吸入ステロイドの治療薬は、他にもたくさんあります。

副作用が嫌だからオルベスコを自己中断してしまうと、発作が起きたときに吸入ステロイドの何十倍ものステロイドを内服や点滴で行く必要があります。そうならないためにも、しっかり副作用対策をしてオルベスコを吸い続けるようにしましょう。

 

4.オルベスコが使えない人は?

「有効な抗菌加療が存在しない感染症にかかった人」と添付文章に記載されていますが、このケースはほぼありません。

オルベスコの添付文章には、どのような人が使えないと書いてあるのでしょうか?

有効な抗菌薬が存在しない感染症の方

とあります。実はこの一文、どんなにステロイドが小量な場合でも決め台詞のように出てきます。医者の私たちでも、「有効な抗菌薬が存在しない感染症とはいったいなんだろう??」と思います。

普通の肺炎や尿路感染では、まずそんなばい菌はいません。どこかの地域のよほど特殊な感染症を示しているのかもしれないですが、普通に生活している分にはまず感染しないです。

そのため感染症にかかっても、オルベスコをやめなくてもまず問題ないでしょう。

その他に原則禁忌の疾患として、結核が添付文章に記載されています。「必要な場合は慎重に投与すること」となっています。喘息において吸入ステロイドが不必要になることは、基本ありません。むしろ結核を起因に喘息が悪化する可能性があります。

このように喘息で肺結核になった場合は、吸入ステロイドを含めて治療を継続することが多いです。オルベスコを吸っていても肺結核の治療薬がしっかり投与されていれば、まず問題になりません。

ただし肺結核の治療中に、「胸に喘鳴が聞こえる」といわれてオルベスコの治療を開始された方は注意が必要です。オルベスコの効果がない場合は喘息ではなくて、気管支結核で気管支が狭まっていることで喘鳴が聞こえている可能性はあります。

 

5.オルベスコと飲み合わせが悪いお薬はあるの?

オルベスコと一緒に使ってはいけない薬はありません。

オルベスコと併用禁忌になっているお薬は、添付文章にはありません。そのためどのようなお薬を使用していても安心して吸入できるお薬です。

オルベスコと併用して注意が必要なお薬は、CYP3A4阻害作用を有する薬剤と記載されています。添付文章であげられている薬剤名は以下の2つです。

リトナビルはエイズで使用するお薬です。基本的にずっと飲み続けなければいけないお薬のため、オルベスコと併用する場合中止することはありません。

イトリコナゾールも真菌などのカビが感染した人に使うお薬です。こちらもオルベスコと併用することであえて中止にするようなことはありません。

この2つの薬剤を使うと、オルベスコの効果を若干高める可能性が記載されていますが、最初に示したように吸入している量自体が微量です。その微量のステロイドの作用が少し高まる程度であれば、ほぼ問題にならないでしょう。

 

6.オルベスコは高齢者・妊婦・授乳中・小児でも安全?

オルベスコは、高齢者・妊婦・授乳中・小児どなたでも使用できます。

まず高齢者からみていきましょう。オルベスコの添付文章では、

高齢者での薬物動態試験で、オルベスコの血中濃度が非高齢者に比べて高くなることが認められているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること

と記載されています。ただしこちらも少量のステロイドの血中濃度が増えるくらいではほぼ問題にならないです。実際に高齢者は喘息発作を起こすと、最悪の場合は命に関わってきます。だからこそ、必ずオルベスコを吸うようにしましょう。

ただし、オルベスコがうまく吸えない人も高齢者の中にはいらっしゃるかもしれません。吸入がうまくできなければ、オルベスコエアゾールに吸入補助器のスペーサーを考慮しましょう。

次に、妊婦の方について添付文章では、

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(大量の副腎皮質ステロイド剤を投与すると実験動物で催奇形作用が知られています)

と記載されています。催奇形性といわれると非常に怖いですね。しかしこれは実際に吸入する量の100倍近くの量を、吸入ではなく注射や経口で投与したら起きた症例です。

実際の喘息のガイドラインでも妊娠中の喘息発症は17.1%とする報告もあり、しっかりと治療することの大切さを記載しています。喘息の悪化による母体・胎児の低酸素血症のほうが、赤ちゃんの成長に関与する危険性が高いのです。そのため、妊娠中は積極的な喘息管理が重要とされています。

授乳中は添付文章では、

オルベスコ使用経験が少ないので、患者に対する本剤の重要性を考慮した上で授乳の中止あるいは本剤の投与を中止すること

とされています。しかしオルベスコで喘息コントロールをやめてしまった場合、発作が起きるともっと大量のステロイドが必要になります。このことを考慮すると、オルベスコを中止することは得策ではないと思います。大部分の喘息の方はオルベスコを吸入しながら授乳していますが、それが問題になったことはまずありません。

添付文章もそこは十分わかってるため、本罪の重要性を考慮したうえでという一文を入れています。医師からすると重要性を考慮したら、喘息に吸入ステロイドは外せないお薬なので継続が必要と判断することが多いでしょう。

ただし添付文章でこう記載されてる以上、オルベスコを吸いたくないという方はいらっしゃると思います。その場合は自己中断するのではなく、まず医師に相談してから中止しましょう。

小児の方は添付文章では、

吸入ステロイド剤を特に長期間、大量に投与する場合に成長遅延をきたすおそれがある。長期間投与する場合には吸入ステロイド剤の投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節することとし、身長等の経過の観察を十分行うこと

とされています。オルベスコではステロイドを経口ではなく吸入で使うので、まず成長遅延を起こすことはありません。ほとんどなくても0ではないので記載するのが添付文章です。小児の方で気を付けることとしたら、高齢者と同じくオルベスコが上手く吸えない可能性があります。

そのため、うまく吸えない場合はスペーサーという補助器具を使うようにしましょう。

 

まとめ