ウルティブロの副作用と安全性

アイコン 2016.10.6 ウルティブロ
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ウルティブロは、抗コリン薬であるシーブリに、β2刺激薬であるオンブレスを加えた合剤のお薬になります。2種類の薬の効果で強力に気管支を広げる作用があり、COPDに主に使われるお薬です。

合剤ですから、抗コリン薬とβ2刺激薬の両方の副作用が生じることが避けられません。ですから、例えば今までシーブリを使用していてウルティブロに変えた方では、β2刺激薬の副作用も知っておく必要があります。

ここでは、ウルティブロの副作用と安全性について詳しくお伝えしていきます。

 

1.ウルティブロの副作用の特徴

ウルティブロの副作用は、シーブリの副作用である口渇とオンブレスの副作用である咳が多いです。

ウルティブロを投与されたCOPDの患者474例中27例(5.7%)に副作用が認められました。主な副作用は、

でした。なおこの調査結果は世界規模の結果です。日本人患者では119例中24例(20.2%)に副作用が認められました。主な副作用は、

でした。

β2刺激薬単剤であるオンブレスも咳が出やすいお薬です。咳が出る原因として、オンブレスを吸入した時に感じる甘み成分の乳糖になります。乳糖が喉に勢いよく付いてしまい、反射的にむせてしまうと考えられています。こちらの対策に関しては、

  1. 水を飲んで口を潤わせてから、オンブレスを吸入すること
  2. ストローを吸う程度の弱い力で吸入すること

などが挙げられます。また咳き込み以外にもβ2刺激薬の特徴的な副作用として多いのは、動悸と手の振るえです。

β刺激薬は心臓の動きも強めてしまい、結果としてドキドキする人がいます。またβ刺激薬を吸うと、手の震えを訴える人もしばしばいます。

またβ2刺激薬では、電解質の一つであるカリウムが低下することが報告されています。普通に食事している分には野菜や果物に多く含まれているため、まず問題になることはありません。しかし食事量が減ってきた高齢者などでは、注意が必要になります。

詳しく知りたい方は、「オンブレスの副作用と安全性」でまとめていますので一読してみてください。

一方で口腔内乾燥は、抗コリン薬のシーブリによる副作用です。アセチルコリンは唾液腺の受容体(M3受容体)を刺激することで、唾液の分泌を促します。ですからこの働きを邪魔する抗コリン作用が働くと、唾液が作られなくなってしまいます。

身体の水分が足りなくなったわけではないのです。絶対にやってはいけないことは、安易に水分を取ってしまうことです。特にアルコールやジュースは非常に危険です。

さらに水分を大量にとってしまうと、心臓に負荷がかかってしまいます。もともとCOPDは先ほど記載したように心臓に負荷がかかりやすい病気なのに、水分が大量に入ってくるとさらに負担がかかってしまいます。詳しく知りたい方は、「口の渇きは薬のせい?口渇の原因と対策」を一読してみてください

もう一つ重大な抗コリン薬の副作用としては、排尿障害があります。特に男性の方に多く認める副作用です。というのは、前立腺肥大によって尿が出にくくなるからです。前立腺肥大症とは、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。詳しく知りたい方は、「前立腺肥大症とは?前立腺肥大症の症状と進み方」を一読してみてください。

もともと前立腺肥大症で尿の通り道が狭い状態で抗コリン薬を投与すると、膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道が収縮して尿の出を悪くしてしまう作用があります。

先ほどの副作用報告は臨床試験でのものですが、臨床試験では前立腺肥大症の患者さんは除外されるため、数字では出てきません。しかし臨床の場では、前立腺肥大症に気づいていない人にウルティブロが使われて、排尿障害が起きた後に前立腺肥大だったと気が付くケースが多々あります。

これら抗コリン薬の副作用は、エンクラッセの副作用ともいえます。副作用対策も含めて詳しく知りたい人は、「尿が出にくいのは薬のせい?副作用での尿閉の原因と対策」を一読してみてください。

このように、副作用が出た場合はどちらの作用によるものか考えてみることは重要になります。

など、場合によってはウルティブロをやめて単剤に切り替えることも考慮します。

 

2.ウルティブロはどういった人に使用できないのか?

ウルティブロは、緑内障と前立腺肥大症の方は注意が必要です。

ウルティブロの添付文章では、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を高め、症状を悪化させる恐れ]
  2. 前立腺肥大等による排尿障害のある患者[更に尿を出にくくすることがある]
  3. アトロピン及びその類縁物質あるいは本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者

この3つに関しては禁忌になっています。③は薬に対してアレルギーが起こった人は使えないということですが、これはすべての薬で記載されていることです。つまり、

この2つの病気をお持ちの方は注意が必要です。とはいっても、この病気だったら全ての人が禁忌なのかというと、そうではないのです。それぞれ条件があり、軽症であれば使用できる場合もあります。

ウルティブロを吸入する方の多くは、高齢者の方が多いかと思います。緑内障も前立腺肥大症も、高齢者には多い病気です。人によっては指摘されてなくても、実はこれらの病気が隠れている可能性があります。

これらは緑内障であり得る症状です。

これらは前立腺肥大症であり得る症状です。

これらの症状があると使用できないのは、抗コリン薬で禁忌になるためです。

一方で前立腺肥大症と緑内障以外の方には、ウルティブロは非常に使用しやすいお薬となっています。ウルティブロの慎重投与である疾患は、

  1. 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺機能亢進症の症状を悪化させるおそれがある。] 
  2. 心疾患を有する患者[抗コリン作用、 β 2刺激作用により不整脈 が悪化するおそれがある。] 
  3. 高血圧の患者[血圧を上昇させるおそれがある。]
  4. 糖尿病の患者[高用量のβ 2刺激剤を投与すると、血糖値が上昇するおそれがある。]
  5. てんかん等の痙攣性疾患のある患者〔痙攣の症状を悪化させるおそれがある。〕
  6. 重度の腎機能障害のある患者[グリコピロニウムの血中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがある。]

となっています。しかしこれらの病気の方は、しっかりとお薬によって症状がコントロールされていることが多いです。そのため、これらの病気でウルティブロが使えないということは少ないです。

さらに②心疾患や③高血圧がある患者さんですが、ウルティブロに適応があるCOPDの患者さんでは、心臓がへばっていて心不全になっている可能性が高いのです。

COPDは、肺がタバコでボロボロになった病気です。これによって、息が思いっきり吐けなくなります。息が吐けなくなった分、頑張る臓器は心臓です。心臓は肺がやられた分、一生懸命動いて酸素を供給しようとします。

しかし心臓は休むことができません。24時間、常に動き続けています。一生頑張り続けなければいけないので、COPDの人の心臓はへばり気味です。ですからCOPDの人の心臓は、軽症でも高血圧の人が多く、重度ですとほぼ心不全は必発です。

だからといってウルティブロを使わないと、呼吸状態が悪くて心臓への負担が続いてしまいます。COPDに心不全がある人はウルティブロを避けるのではなく、逆に積極的に使用する必要があります。

またウルティブロを吸入して注意するお薬としては、

  1. リトナビル、ケトコナゾー ル、エリスロマイ シン等
  2. β2遮断薬
  3. 抗不整脈薬、三環系抗うつ薬

となっています。ただしウルティブロは吸入してもほとんどが気管内で作用するお薬です。動物実験ではこれらのお薬と併用してそれぞれの薬の効果が増加したり減弱したりするため併用注意に記載されていますが、実際の現場で問題になることはほとんどありません。

ですからウルティブロを使用する際には、緑内障と前立腺肥大に気を付けるようにしましょう。

 

3.ウルティブロは妊娠中でも使用できるの?

ウルティブロは、妊婦の方にも使用は禁止されていません。むしろ原疾患コントロールした方が、胎児にとってもよいです。

ウルティブロは、COPDで処方されるお薬です。COPDはタバコで肺がボロボロになって息が吸いづらくなっている病気です。

実際にウルティブロは添付文章でも、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。インダカテロールの動物実験(ウサギ)で骨格変異の発生率増加を伴う生殖毒性が報告されている。また、グリコピロニウム及びインダカテロールの動物実験で胎盤通過性が報告されている(グリコピロニウム:マウス、ウサギ、イヌ、インダカテロール:ラット)。〕

と記載されています。胎児に移行する異常奇形と記載されると、ドキッとする人もいるかもしれません。しかしウルティブロは、吸入薬としてほぼ全てが気管支内に作用します。皮下注射で全身に投与するのではないため、体内に影響は少ないです。

COPDと妊娠時期に診断される方は少ないかと思います。しかしCOPDと診断されてウルティブロを処方されている方は、COPDの急性増悪で低酸素血症などを併発すると、お腹の赤ちゃんに影響します。そのためウルティブロは中止しない方が無難かと思います。

 

まとめ