アドエアの副作用と安全性

アイコン 2016.6.2 アドエア

アドエアは喘息の治療に使われる、ステロイドとβ2刺激薬の合剤の吸入薬です。

ステロイドといわれると、副作用が心配な人もいるかもしれません。しかしアドエアで投与されるステロイドの量は、非常に微量です。さらに内服ではなく吸入することで、大部分が気管支にいきます。このためステロイドの内服に比べて、非常に副作用が少ないお薬です。

ただし副作用が少ないといっても0ではありません。特にアドエアは発作が起きてるときだけでなく、長期にわたって毎日吸うことで効果を発揮するお薬です。

アドエアを長期間吸っていたらどのような副作用があるのでしょうか?それらのアドエアの副作用に対しては、どのような対処法があるでしょうか?ここではアドエアの副作用について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.アドエアに含まれるステロイドの副作用は大丈夫?

ステロイドって聞くと怖いイメージをもたれる方も多いかもしれません。「症状ないのならアドエアを吸いたくない」と思う人も少なくないでしょう。しかしアドエアに入ってるステロイドは、非常に少ない量です。

ステロイドとはそもそもどんな物質か、まず確認してみましょう。その上で、アドエアに含まれているステロイドの量についてお伝えしていきたいと思います。

 

1-1.ステロイドとは何か?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

他のホルモンは体の一部分にしか作用しないのに対して、ステロイドは全身の受容体に作用します。体内の血糖・脂肪・電解質・骨・筋肉の代謝に関与します。ステロイドホルモンの働きを一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。

元気になるための作用としては、

  1. 筋肉での蛋白質代謝、脂肪組織での脂質代謝をあげ、体内の血糖値をあげる
  2. リンパ球や間質細胞などの効果を止めて、組織での炎症を抑える
  3. 気持ちを高揚させる

などの効果があります。つまり体内のエネルギーとなる血糖値をあげて、気分を上げます。さらに一時的に炎症を止めることで、結果として体を元気にするホルモンです。

これだけ聞くと、すごくいいホルモンのような気もします。しかしなんでも限度というものがあります。筋肉や脂肪から血糖値を上げすぎてしまうと糖尿病になりますし、気持ちを上げすぎてしまうとイライラにつながります。炎症も抑えすぎてしまうと、いざばい菌が入った時に戦えなくなってしまいます。

つまりステロイドは、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切るホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。

 

1-2.アドエアにステロイドはどれくらい含まれているの?

アドエアは最大量で1mgを1日に吸入します。

アドエアディスカスの横に、100・250・500という数字が書いてあります。これは吸入ステロイドの1回量が示されています。1日2回吸うので、200・500・1000吸うことになります。

このように聞くとすごく多い量のように感じてしまうかもしれません。しかしながらこれは、単位がμgです。1000μg=1mgになります。mgに直して1日量を計算すると、0.2mg・0.5mg・1mgとなります。

ステロイドは1日当たり5~30mgの量が体内で作られています。つまりアドエアの最大量を吸っても、体内で作られている量よりもはるかに少ないのです。

さらにアドエアでは、ステロイドを内服するのではなく吸入します。吸入したステロイドは、ほぼ気管支内に入ります。そのためステロイドを内服したときに起こるような副作用はまず認められません。

などはほとんど起こらないと考えて良いです。

 

2.アドエアの副作用の特徴

主な副作用としては、嗄声・口腔内カンジダ症があります。

実際にアドエアの副作用はどれくらいあるのでしょうか。海外臨床試験において、調査症例1111例中、153例(13.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されています。その主なものは、

となっています。頭痛の副作用は、アドエアを思いっきり吸いすぎるとよく起こる症状です。困る副作用としては、嗄声とカンジダ症が挙げられます。

嗄声は、声がかすれてしまう症状です。これはステロイドが咽頭筋に付着したことによる筋力低下で起きるといわれています。

またカンジダ症は、いわゆるカビの感染症です。これは吸入ステロイドの免疫抑制で、口の中にカビが繁殖しやすくなる影響です。

一方でβ2刺激薬での副作用として有名なものは、

が挙げられます。ただしアドエアのβ2刺激薬であるサルメテロールキシナホ酸塩は、処方してみてもそこまで上の二つの副作用は多くない印象があります。実際に添付文章でも、1%未満と記載されています。

 

3.アドエアの主な副作用での対処法

アドエアを吸入してから、うがいをすることが大切です。

アドエアで一番問題になるのが嗄声と口腔内のカビです。これはステロイドが口腔内に残ってしまうため起こる副作用です。アドエアは、気道内に入って炎症を落ち着けることが大切なお薬です。

つまり気道内に入ってしまえば、口腔内にステロイドがとどまる必要は全くありません。そのためアドエアを吸入したら、うがいをしっかりすることがとても大切になります。

特に嗄声や口腔内のカビは、アドエアを吸った瞬間に起こるものではありません。吸入ステロイドの残りが蓄積されて、徐々に声がかすれたり、カビが繁殖していきます。一度アドエアを吸って副作用がないから大丈夫と油断しないようにしましょう。

また、うがいもただ口をすすぐだけではだめです。喉の奥に残ってるステロイドを洗い流す気持ちでしっかりやらないと意味がありません。

うがいをする時に、声をだされることも多いかと思います。ですが、声をだせば効果がよいというわけではありません。一番大切なのは、のどの奥のほうまでキレイにすることです。ですから、のどの奥を意識すると効果的です。声を出すならば、「オ~」とすると、のどの奥まで水が届きやすいです。

喉の奥まできれいに洗い流せれば、口腔内も大体はステロイドが洗い流せます。うがいをしても良くならないという人は一度うがいの方法を見直してみましょう。

それでも治らない人は、アドエアディスカスのドライパウダーからアドエアのエアゾールに変えてみるのも一つの手です。エアゾールはスプレータイプのため、粒子がより小さくなります。

吸入力が弱くて口の中にドライパウダーの粉が残ってしまう人は、スプレーで噴霧されますので、吸う力が弱くても一気に気道に入り込むことができます。

これでも嗄声で困る人は、あえてアドエアにこだわる必要はありません。吸入ステロイドの治療薬は、他にもたくさんあります。

副作用が嫌だからアドエアを自己中断してしまうと、発作が起きたときに吸入ステロイドの何十倍ものステロイドを内服や点滴で行く必要があります。そうならないためにも、しっかり副作用対策をしてアドエアを吸い続けるようにしましょう。

 

4.アドエアが使えない人は?

「有効な抗菌加療が存在しない感染症にかかった人」と添付文章に記載されていますが、このケースはほぼありません。

アドエアの添付文章には、どのような人が使えないと書いてあるのでしょうか?

有効な抗菌薬が存在しない感染症の方

とあります。実はこの一文、どんなにステロイドが小量な場合でも決め台詞のように出てきます。医者の私たちでも、「有効な抗菌薬が存在しない感染症とはいったいなんだろう??」と思います。

普通の肺炎や尿路感染では、まずそんなばい菌はいません。どこかの地域のよほど特殊な感染症を示しているのかもしれないですが、普通に生活している分にはまず感染しないです。

そのため感染症にかかっても、アドエアをやめてくださいという指示はありません。

その他に原則禁忌の疾患として、結核が添付文章に記載されています。「必要な場合は慎重に投与すること」となっています。喘息において吸入ステロイドが不必要になることは、基本ありません。むしろ結核を起因に喘息が悪化する可能性があります。

このように喘息で肺結核になった場合は、吸入ステロイドを含めて治療を継続することが多いです。アドエアを吸っていても肺結核の治療薬がしっかり投与されていれば、まず問題になりません。

ただし肺結核の治療中に、「胸に喘鳴が聞こえる」といわれてアドエアの治療を開始された方は注意が必要です。アドエアの効果がない場合は喘息ではなくて、気管支結核で気管支が狭まっていることで喘鳴が聞こえている可能性はあります。

次に慎重投与ですが、

これらの注意書きも、ステロイドやβ2刺激薬が少量でも入っていたら決まり文句になっています。アドエアの場合は投与量が少ない上に内服ではなく吸入するため、ほぼ問題になることはありません。

 

5.どのようなお薬ともアドエアは併用して良いのか?

アドエアと一緒に使ってはいけない薬はありません。

アドエアと併用禁忌になっているお薬は、添付文章にはありません。そのためどのようなお薬を使用していても安心して吸入できるお薬です。

アドエアと併用して注意が必要なお薬は、

リトナビルはエイズで使用するお薬です。基本的にずっと飲み続けなければいけないお薬のため、アドエアと併用する場合中止することはありません。

アドレナリンは血圧をあげる昇圧剤です。こちらは救急部で使用するお薬のため、アドエアと併用してもしっかりと入院下で管理されるため問題になることはまずないです。

キサンチン・利尿剤・ステロイドがおそらく問題になるかと思います。利尿剤は高血圧や心不全に使われます。キサンチンはテオドールという商品名で発売されており、喘息で使うお薬です。ステロイドも、アドエア吸入中に喘息発作が起きた場合は使用します。

これら3剤にアドエアを使用すると、低カリウム血症をきたすことがあると記載されています。ただし確率は非常に低いです。カリウムは野菜などに含まれている栄養素です。普通に生活している人が低カリウム血症になることはまずありません。

病気などで食事などがほぼとれなくなった人は、注意が必要です。

このように併用注意の薬を飲んでいたとしても、アドエアを中止することはまずありません。

 

6.アドエアは高齢者・妊婦・授乳中・小児でも安全?

アドエアは、高齢者・妊婦・授乳中・小児どなたでも使用できます。

まず高齢者からみていきましょう。アドエアの添付文章では、

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること

と記載されています。この文言もほぼすべてのお薬の添付文章に書いてある文言で、高齢者に対しては慎重投与となっています。実際に高齢者は喘息発作を起こすと、最悪の場合は命に関わってきます。だからこそ、必ずアドエアを吸うようにしましょう。

ただし、アドエアがうまく吸えない人も高齢者の中にはいらっしゃるかもしれません。吸入がうまくできなければ、アドエアエアゾールに吸入補助器のスペーサーを考慮しましょう。

次に、妊婦の方について添付文章では、

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(大量のβ2刺激剤及び副腎皮質ステロイド剤を投与すると実験動物で催奇形作用が知られています)

と記載されています。催奇形性といわれると非常に怖いですね。しかしこれは実際に吸入する量の100倍近くの量を、吸入ではなく注射や経口で投与したら起きた症例です。

実際の喘息のガイドラインでも妊娠中の喘息発症は17.1%とする報告もあり、しっかりと治療することの大切さを記載しています。喘息の悪化による母体・胎児の低酸素血症のほうが、赤ちゃんの成長に関与する危険性が高いのです。そのため、妊娠中は積極的な喘息管理が重要とされています。

授乳中は添付文章では、

アドエア使用経験が少ないので、患者に対する本剤の重要性を考慮した上で授乳の中止あるいは本剤の投与を中止すること

とされています。しかしアドエアで喘息コントロールをやめてしまった場合、発作が起きるともっと大量のステロイドが必要になります。このことを考慮すると、アドエアを中止することは得策ではないと思います。大部分の喘息の方はアドエアを吸入しながら授乳していますが、それが問題になったことはまずありません。

ただし添付文章でこう記載されてる以上、アドエアを吸いたくないという方はいらっしゃると思います。その場合は自己中断するのではなく、まず医師に相談してから中止しましょう。

小児の方は添付文章では、

吸入ステロイド剤を特に長期間、大量に投与する場合に成長遅延をきたすおそれがある。長期間投与する場合には吸入ステロイド剤の投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節することとし、身長等の経過の観察を十分行うこと

とされています。アドエアでは、最もステロイド量が低いアドエア100ディスカスとアドエア50エアゾールしか小児には適応になっていません。アドエアではステロイドを経口ではなく吸入で使うので、まず成長遅延を起こすことはありません。ほとんどなくても0ではないので記載するのが添付文章です。

 

まとめ