フルティフォームの副作用と安全性

アイコン 2016.7.12 フルティフォーム

フルティフォームは、ステロイドとβ2刺激薬の合剤の吸入薬です。喘息の治療薬として、主に使われているお薬になります。

ステロイドといわれると、副作用が心配な人もいるかもしれません。しかしフルティフォームで投与されるステロイドの量は、非常に微量です。さらに内服ではなく吸入することで、大部分が気管支だけに作用します。このためステロイドの内服に比べて、非常に副作用が少ないお薬です。

ただし、副作用が少ないといっても0ではありません。特にフルティフォームは発作が起きてるときだけでなく、長期にわたって毎日吸うことで効果を発揮するお薬です。

フルティフォームを長期間吸っていたらどのような副作用があるのでしょうか?
フルティフォームの副作用に対しては、どのような対処法があるでしょうか?

ここではフルティフォームの副作用について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.フルティフォームのステロイドでの副作用は大丈夫?

ステロイドって聞くと怖いイメージをもたれる方も多いかもしれません。「症状がないのならフルティフォームを吸いたくない」と思う人も少なくないでしょう。しかしフルティフォームに入ってるステロイドは、非常に少ない量です。

ステロイドとはそもそもどんな物質か、まず確認してみましょう。その上で、フルティフォームに含まれているステロイドの量についてお伝えしていきたいと思います。

 

1-1.ステロイドとは何か?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

他のホルモンは体の一部分にしか作用しないのに対して、ステロイドは全身の受容体に作用します。体内の血糖・脂肪・電解質・骨・筋肉の代謝に関与します。ステロイドホルモンの働きを一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。

元気になるための作用としては、

  1. 筋肉での蛋白質代謝、脂肪組織での脂質代謝をあげ、体内の血糖値をあげる
  2. リンパ球や間質細胞などの効果を止めて、組織での炎症を抑える
  3. 気持ちを高揚させる

などの効果があります。つまり体内のエネルギーとなる血糖値をあげて、気分を上げます。さらに一時的に炎症を止めることで、結果として体を元気にするホルモンです。

これだけ聞くと、すごくいいホルモンのような気もします。しかしなんでも限度というものがあります。筋肉や脂肪から血糖値を上げすぎてしまうと糖尿病になりますし、気持ちを上げすぎてしまうとイライラにつながります。炎症も抑えすぎてしまうと、いざばい菌が入った時に戦えなくなってしまいます。

つまりステロイドは、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切るホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。

 

1-2.フルティフォームにステロイドはどれくらい含まれているの?

フルティフォームは、最大量で1mgを1日に吸入します。

フルティフォームは50と125の2種類があります。これは吸入ステロイドの1回量が示されています。

このように聞くとすごく多い量のように感じてしまうかもしれません。しかしながらこれは、単位がμgです。1000μg=1mgになります。mgに直して1日量を計算すると、0.05mg・0.125mgとなります。フルティフォームの最大量は125を1回4吸入を朝、夕につまり1日8回吸入します。つまり0.125×8回=1mgの量を最大で吸入するのです。

ステロイドは、1日当たり5~30mgの量が体内で作られています。つまりフルティフォームの最大量を吸っても、体内で作られている量よりもはるかに少ないのです。

さらにフルティフォームでは、ステロイドを内服するのではなく吸入します。吸入したステロイドは、ほぼ気管支内に入ります。そのためステロイドを内服したときに起こるような副作用はまず認められません。

などはほとんど起こらないと考えて良いです。

 

2.フルティフォームの副作用の特徴

主な副作用としては、嗄声・口腔内カンジダ症があります。

実際にフルティフォームの副作用はどれくらいあるのでしょうか。国内で実施された臨床試験において、副作用集計の対象となった472例中101例(21.4%)に副作用が報告されています。その主な副作用は

困る副作用としては、嗄声とカビ(カンジダ)による口内炎や咽頭炎が挙げられます。

嗄声は、声がかすれてしまう症状です。これはステロイドが咽頭筋に付着したことによる筋力低下で起きるといわれています。

またカンジダ症は、いわゆるカビの感染症です。これは吸入ステロイドの免疫抑制で、口の中にカビが繁殖しやすくなる影響です。

一方でβ2刺激薬での副作用として有名なものは、

が挙げられます。フルティフォームでも動悸が1.3%認められます。このような症状が出現した場合は、すぐに医師に相談してください。フルティフォームの量や、場合によっては薬自体の変更を考慮します。

 

3.フルティフォームの主な副作用での対処法

フルティフォームを吸入してから、うがいをすることが大切です。

フルティフォームで一番問題になるのが嗄声と口腔内のカビです。これはステロイドが口腔内に残ってしまうため起こる副作用です。フルティフォームは、気道内に入って炎症を落ち着けることが大切なお薬です。

つまり気道内に入ってしまえば、口腔内にステロイドがとどまる必要は全くありません。そのためフルティフォームを吸入したら、うがいをしっかりすることがとても大切になります。

特に嗄声や口腔内のカビは、フルティフォームを吸った瞬間に起こるものではありません。吸入ステロイドの残りが蓄積されて、徐々に声がかすれたり、カビが繁殖していきます。一度フルティフォームを吸って副作用がないから大丈夫と油断しないようにしましょう。

特にフルティフォームはスプレータイプのため、ドライパウダーの粉に比べて吸った感じがしないため油断しがちです。

また、うがいもただ口をすすぐだけではだめです。喉の奥に残ってるステロイドを洗い流す気持ちでしっかりやらないと意味がありません。

うがいをする時に、声をだされることも多いかと思います。ですが、声をだせば効果がよいというわけではありません。一番大切なのは、のどの奥のほうまでキレイにすることです。ですから、のどの奥を意識すると効果的です。声を出すならば、「オ~」とすると、のどの奥まで水が届きやすいです。

喉の奥まできれいに洗い流せれば、口腔内も大体はステロイドが洗い流せます。うがいをしても良くならないという人は一度うがいの方法を見直してみましょう。

これでも嗄声で困る人は、あえてフルティフォームにこだわる必要はありません。吸入ステロイドの治療薬は、他にもたくさんあります。

副作用が嫌だからフルティフォームを自己中断してしまうと、発作が起きたときに吸入ステロイドの何十倍ものステロイドを内服や点滴で行く必要があります。そうならないためにも、しっかり副作用対策をしてフルティフォームを吸い続けるようにしましょう。

 

4.フルティフォームが使えない人は?

「有効な抗菌加療が存在しない感染症にかかった人」と添付文章に記載されていますが、このケースはほぼありません。

フルティフォームの添付文章には、どのような人が使えないと書いてあるのでしょうか?

有効な抗菌薬が存在しない感染症の方

とあります。実はこの一文、どんなにステロイドが小量な場合でも決め台詞のように出てきます。医者の私たちでも、「有効な抗菌薬が存在しない感染症とはいったいなんだろう??」と思います。

普通の肺炎や尿路感染では、まずそんなばい菌はいません。どこかの地域のよほど特殊な感染症を示しているのかもしれないですが、普通に生活している分にはまず感染しないです。

そのため感染症にかかっても、フルティフォームをやめてくださいという指示はありません。

その他に原則禁忌の疾患として、結核が添付文章に記載されています。「必要な場合は慎重に投与すること」となっています。喘息において吸入ステロイドが不必要になることは、基本ありません。むしろ結核を起因に喘息が悪化する可能性があります。

このように喘息で肺結核になった場合は、吸入ステロイドを含めて治療を継続することが多いです。フルティフォームを吸っていても肺結核の治療薬がしっかり投与されていれば、まず問題になりません。

ただし肺結核の治療中に、「胸に喘鳴が聞こえる」といわれてフルティフォームの治療を開始された方は注意が必要です。フルティフォームの効果がない場合は喘息ではなくて、気管支結核で気管支が狭まっていることで喘鳴が聞こえている可能性はあります。

次に慎重投与ですが、

これらの注意書きも、ステロイドやβ2刺激薬が少量でも入っていたら決まり文句になっています。フルティフォームの場合は投与量が少ない上に内服ではなく吸入するため、ほぼ問題になることはありません。

逆にフルティフォームを併用して問題になるような重篤な状態であれば、必ず上記の疾患は定期的に医師がみていると思います。もし心配なら、上記の疾患をみている医師に相談し今の自分の状態を再度確認してみてください。

これらの疾患を昔いわれたことあるからやめておこうといって自己中断してしまうと、喘息の症状が悪化したときにもっと強力な薬が必要となることがあります。

 

5.フルティフォームとお薬の飲み合わせ

フルティフォームと一緒に使ってはいけない薬はありません。

フルティフォームと併用禁忌になっているお薬は、添付文章にはありません。そのためどのようなお薬を使用していても安心して吸入できるお薬です。

フルティフォームと併用して注意が必要なお薬は、

リトナビルはエイズで使用するお薬です。基本的にずっと飲み続けなければいけないお薬のため、フルティフォームと併用する場合中止することはありません。

アドレナリンは血圧をあげる昇圧剤です。こちらは救急部で使用するお薬のため、フルティフォームと併用してもしっかりと入院下で管理されるため問題になることはまずないです。

QT延長は心電図異常のことです。これらのお薬はフルティフォームを使用しなくても単独で心電図異常が起こることがあります。もし心配なら事前に医師に相談し心電図をみてもらいましょう。

キサンチン・利尿剤・ステロイドがおそらく問題になるかと思います。利尿剤は高血圧や心不全に使われます。キサンチンはテオドールという商品名で発売されており、喘息で使うお薬です。ステロイドも、フルティフォーム吸入中に喘息発作が起きた場合は使用します。

これら3剤にフルティフォームを使用すると、低カリウム血症をきたすことがあると記載されています。ただし確率は非常に低いです。カリウムは野菜などに含まれている栄養素です。普通に生活している人が低カリウム血症になることはまずありません。

病気などで食事などがほぼとれなくなった人は、注意が必要です。

このように併用注意の薬を飲んでいたとしても、フルティフォームを中止することはまずありません。

 

6.フルティフォームは高齢者・妊婦・授乳中でも安全?

フルティフォームは、高齢者・妊婦・授乳中でも使用できます。

まず高齢者からみていきましょう。フルティフォームの添付文章では、

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること

と記載されています。この文言もほぼすべてのお薬の添付文章に書いてある文言で、高齢者に対しては慎重投与となっています。実際に高齢者は喘息発作を起こすと、最悪の場合は命に関わってきます。だからこそ、必ずフルティフォームを吸うようにしましょう。

ただし、フルティフォームがうまく吸えない人も高齢者の中にはいらっしゃるかもしれません。吸入がうまくできなければ、フルティフォームに吸入補助器のスペーサーを考慮しましょう。

次に、妊婦の方について添付文章では、

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(大量のβ2刺激剤及び副腎皮質ステロイド剤を投与すると実験動物で催奇形作用が知られています)

と記載されています。催奇形性といわれると非常に怖いですね。しかしこれは実際に吸入する量の100倍近くの量を、吸入ではなく注射や経口で投与したら起きた症例です。

実際の喘息のガイドラインでも妊娠中の喘息発症は17.1%とする報告もあり、しっかりと治療することの大切さを記載しています。喘息の悪化による母体・胎児の低酸素血症のほうが、赤ちゃんの成長に関与する危険性が高いのです。そのため、妊娠中は積極的な喘息管理が重要とされています。

授乳中は添付文章では、

フルティフォーム使用経験が少ないので、患者に対する本剤の重要性を考慮した上で授乳の中止あるいは本剤の投与を中止すること

とされています。しかしフルティフォームで喘息コントロールをやめてしまった場合、発作が起きるともっと大量のステロイドが必要になります。このことを考慮すると、フルティフォームを中止することは得策ではないと思います。大部分の喘息の方はフルティフォームを吸入しながら授乳していますが、それが問題になったことはまずありません。

ただし添付文章でこう記載されてる以上、フルティフォームを吸いたくないという方はいらっしゃると思います。その場合は自己中断するのではなく、まず医師に相談してから中止しましょう。

なおフルティフォームは、現時点では小児にはまだ安全性が確認されていないため承認されていないお薬となっています。

 

まとめ