パルミコートの副作用と安全性

アイコン 2016.8.6 パルミコート

パルミコートは、喘息の治療に使われるステロイドの吸入薬です。

ステロイドといわれると、副作用が心配な人もいるかもしれません。しかしパルミコートで投与されるステロイドの量は、非常に微量です。さらに内服ではなく吸入することで、大部分が気管支にいきます。このためステロイドの内服に比べて、非常に副作用が少ないお薬です。

ただし、副作用が少ないといっても全くないわけではありません。パルミコートは、喘息発作の予防薬として長期にわたって毎日吸っていくお薬です。

パルミコートを長期間吸っていたら、どのような副作用があるのでしょうか?それらのパルミコートの副作用に対しては、どのような対処法があるでしょうか?ここではパルミコートの副作用と安全性について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.パルミコートのステロイドの副作用は大丈夫?

ステロイドって聞くと怖いイメージをもたれる方も多いかもしれません。「症状ないのならパルミコートを吸いたくない」と思う人も少なくないでしょう。しかしパルミコートに入ってるステロイドは、非常に少ない量です。

ステロイドとはそもそもどんな物質か、まず確認してみましょう。その上で、パルミコートに含まれているステロイドの量についてお伝えしていきたいと思います。

 

1-1.ステロイドとは何か?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドは、実は体の中で作られているホルモンになります。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

他のホルモンは体の一部分にしか作用しないのに対して、ステロイドは全身の受容体に作用します。体内の血糖・脂肪・電解質・骨・筋肉の代謝に関与します。ステロイドホルモンの働きを一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。

元気になるための作用としては、

  1. 筋肉での蛋白質代謝、脂肪組織での脂質代謝をあげ、体内の血糖値をあげる
  2. リンパ球や間質細胞などの効果を止めて、組織での炎症を抑える
  3. 気持ちを高揚させる

などの効果があります。つまり体内のエネルギーとなる血糖値をあげて、気分を上げます。さらに一時的に炎症を止めることで、結果として体を元気にするホルモンです。

これだけ聞くと、すごくいいホルモンのような気もします。しかしなんでも限度というものがあります。筋肉や脂肪から血糖値を上げすぎてしまうと糖尿病になりますし、気持ちを上げすぎてしまうとイライラにつながります。炎症も抑えすぎてしまうと、いざばい菌が入った時に戦えなくなってしまいます。

つまりステロイドは、攻撃のスイッチを入れる代わりに、防御のスイッチを切るホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。

 

1-2.パルミコートにステロイドはどれくらい含まれているの?

パルミコートは、最大量で1.6mgを1日に吸入します。

パルミコートは1日2回朝夕に吸入します。この時に1回の吸入で、ブデゾニドを200μg吸入することになります。パルミコートは吸入回数を増やすことで量を増やすため、2回、3回と吸入するにつれて400μg、600μgと増えます。

このように聞くとすごく多い量のように感じてしまうかもしれません。しかしながらこれは、単位がμgです。1000μg=1mgになります。mgに直して1日量を計算すると、0.2mg・0.4mg・0.6mgとなります。パルミコートの最大投与量は1回4吸入で1日8吸入のため、1.6mgとなります。

ステロイドは、1日当たり5~30mgの量が体内で作られています。つまりパルミコートの最大量を吸っても、体内で作られている量よりもはるかに少ないのです。

さらにパルミコートでは、ステロイドを内服するのではなく吸入します。吸入したステロイドは、ほぼ気管支内に入ります。そのためステロイドを内服したときに起こるような副作用はまず認められません。

などはほとんど起こらないと考えて良いです。

 

2.パルミコートの副作用の特徴

主な副作用としては、嗄声・口腔内カンジダ症があります。

実際にパルミコートの副作用はどれくらいあるのでしょうか。

承認時までの成人を対象とした臨床試験及び特別調査における総症例1,171例中48例(4.1%)56件に副作用が認められました。主な副作用は、

となっています。咽頭症状や咳は、パルミコートを思いっきり吸いすぎるとよく起こる症状です。困る副作用としては、嗄声とカンジダ症が挙げられます。

嗄声は、声がかすれてしまう症状です。これは、ステロイドが咽頭筋に付着したことによる筋力低下で起きるといわれています。小児でも同様に発売前調査したところ、1.6%と最も認めた副作用でした。

またカンジダ症は、いわゆるカビの感染症です。これは吸入ステロイドの免疫抑制で、口の中にカビが繁殖しやすくなる影響です。

 

3.パルミコートの主な副作用での対処法

パルミコートを吸入してから、うがいをすることが大切です。

パルミコートで一番問題になるのが、嗄声と口腔内のカビです。これはステロイドが口腔内に残ってしまうため起こる副作用です。パルミコートは、気道内に入って炎症を落ち着けることが大切なお薬です。

つまり気道内に入ってしまえば、口腔内にステロイドがとどまる必要は全くありません。そのためパルミコートを吸入したら、うがいをしっかりすることがとても大切になります。

特に嗄声や口腔内のカビは、パルミコートを吸った瞬間に起こるものではありません。吸入ステロイドの残りが蓄積されて、徐々に声がかすれたり、カビが繁殖していきます。一度パルミコートを吸って副作用がないから大丈夫と油断しないようにしましょう。

またうがいも、ただ口をすすぐだけではだめです。喉の奥に残ってるステロイドを洗い流す気持ちでしっかりやらないと意味がありません。

うがいをする時に、声をだされることも多いかと思います。ですが、声をだせば効果がよいというわけではありません。一番大切なのは、のどの奥のほうまでキレイにすることです。ですから、のどの奥を意識すると効果的です。声を出すならば、「オ~」とすると、のどの奥まで水が届きやすいです。

喉の奥まできれいに洗い流せれば、口腔内も大体はステロイドが洗い流せます。うがいをしても良くならないという人は一度うがいの方法を見直してみましょう。

 

それでも治らない人は、あえてパルミコートにこだわる必要はありません。吸入ステロイドの治療薬は、他にもたくさんあります。

副作用が嫌だからパルミコートを自己中断してしまうと、発作が起きたときに吸入ステロイドの何十倍ものステロイドを内服や点滴で行く必要があります。そうならないためにも、しっかり副作用対策をしてパルミコートを吸い続けるようにしましょう。

 

4.パルミコートが使えない人は?

「有効な抗菌加療が存在しない感染症にかかった人」と添付文章に記載されていますが、このケースはほぼありません。

パルミコートの添付文章には、どのような人が使えないと書いてあるのでしょうか?

有効な抗菌薬が存在しない感染症の方

とあります。実はこの一文、どんなにステロイドが小量な場合でも決め台詞のように出てきます。医者の私たちでも、「有効な抗菌薬が存在しない感染症とはいったいなんだろう??」と思います。

普通の肺炎や尿路感染では、まずそんなばい菌はいません。どこかの地域のよほど特殊な感染症を示しているのかもしれないですが、普通に生活している分にはまず感染しないです。

そのため感染症にかかっても、パルミコートをやめなくてもまず問題ないでしょう。

その他に原則禁忌の疾患として、結核が添付文章に記載されています。「必要な場合は慎重に投与すること」となっています。喘息において吸入ステロイドが不必要になることは、基本ありません。むしろ結核を起因に喘息が悪化する可能性があります。

このように喘息で肺結核になった場合は、吸入ステロイドを含めて治療を継続することが多いです。パルミコートを吸っていても肺結核の治療薬がしっかり投与されていれば、まず問題になりません。

ただし肺結核の治療中に、「胸に喘鳴が聞こえる」といわれてパルミコートの治療を開始された方は注意が必要です。パルミコートの効果がない場合は喘息ではなくて、気管支結核で気管支が狭まっていることで喘鳴が聞こえている可能性はあります。

次に慎重投与ですが、

ステロイドが免疫を抑制するお薬のため、ステロイドが少量でも入っていたら感染症の患者は決まり文句になっています。パルミコートの場合は投与量が少ない上に内服ではなく吸入するため、ほぼ問題になることはありません。

 

5.パルミコートは他のお薬と飲み合わせは大丈夫?

パルミコートと一緒に使ってはいけない薬はありません。

パルミコートと併用禁忌になっているお薬は、添付文章にはありません。そのためどのようなお薬を使用していても安心して吸入できるお薬です。

パルミコートと併用して注意が必要なお薬は、

イトリコナゾールはカビに感染したときに使うお薬です。シムビコートのステロイドであるブデゾニドの血中濃度をあげると記載されていますが、最初に記載したようにもともとの量が凄い少ないため、血中濃度が上昇してもほぼ問題ないです。

 

6.パルミコートは高齢者・妊婦・授乳・小児でも安全?

パルミコートは、高齢者・妊婦・授乳中・小児どなたでも使用できます。

まず高齢者からみていきましょう。パルミコートの添付文章では、

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること

と記載されています。この文言もほぼすべてのお薬の添付文章に書いてある文言で、高齢者に対しては慎重投与となっています。実際に高齢者は喘息発作を起こすと、最悪の場合は命に関わってきます。だからこそ、必ずパルミコートを吸うようにしましょう。

ただし、パルミコートがうまく吸えない人も高齢者の中にはいらっしゃるかもしれません。吸入がうまくできなければ、パルミコートエアゾールに吸入補助器のスペーサーを考慮しましょう。

次に、妊婦の方について添付文章では、

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(大量の副腎皮質ステロイド剤を投与すると実験動物で催奇形作用が知られています)

と記載されています。催奇形性といわれると非常に怖いですね。しかしこれは実際に吸入する量の100倍近くの量を、吸入ではなく注射や経口で投与したら起きた症例です。

実際の喘息のガイドラインでも妊娠中の喘息発症は17.1%とする報告もあり、しっかりと治療することの大切さを記載しています。喘息の悪化による母体・胎児の低酸素血症のほうが、赤ちゃんの成長に関与する危険性が高いのです。そのため、妊娠中は積極的な喘息管理が重要とされています。

さらにパルミコートの主成分である吸入ステロイド成分(ブデソニド)ですが、アメリカFDA(Food and Drug Administration=食品医薬品局)では、薬剤の胎児への危険度を次のようA、B、C、D、Xの5段階に分けて、基準を設けています。その基準は以下の通りです。

胎児への安全性のカテゴリー

吸入ステロイドの中で、ブデソニドだけがFDAの基準でカテゴリーBに分類されています。参考までに、他の吸入ステロイドはカテゴリーCに分類されています。カテゴリーBは動物実験で安全性が確認できているものとなります。

カテゴリーAは人で証明されていることになりますが、一種の人体実験になるためほとんどカテゴリーAにあたる薬はありません。そのためシムビコートは、かなり安全なお薬と言えると思います。

ただし添付文章でこう記載されてる以上、パルミコートを吸いたくないという方はいらっしゃると思います。その場合は自己中断するのではなく、まず医師に相談してから中止しましょう。

小児の方は添付文章では、

低出生体重児、新生児、乳児又は4歳以下の幼児に対する安全性は確立していない

とされています。パルミコートは、5歳以上では問題なく処方されています。

4歳以下には、パルミコートの吸入器であるタービュヘイラーの操作が難しいので使用できないと思います。そのため5歳未満の方には、パルミコート吸入液を使用することが多いです。パルミコート吸入液を、ネブライザーという特殊な吸入器を使用して吸入します。

 

まとめ