喘息の切り札のゾレア!花粉症にも著効するのに保険適応にならないわけ

アイコン 2016.5.2 花粉症の特殊な治療薬

ゾレア(一般名:オマリズマブ)は、ノバルティスファーマ製薬会社より2009年に発売された喘息の治療薬になります。

これまで喘息は吸入ステロイド薬を中心に治療していましたが、これでも症状がコントロールできない方は非常に治療に難渋します。こうした中重症喘息の救世主として発売されたのがゾレアになります。

ゾレアは、ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤です。ゾレアは喘息発症の原因となるIgEとくっつき、その働きをブロックしてしまうお薬です。ゾレアの効果は非常に強く、重症喘息でもかなりの効果が期待できます。喘息のコントロール薬として、ゾレアは最終兵器となっています。

一方で花粉症も、喘息と同じⅠ型アレルギーに属しています。花粉症はスギ花粉が体内に侵入したことがきっかけでIgEが発生したことをきっかけに、鼻水や目のかゆみなどの症状が生じる病気です。

そのため花粉症にも、実はゾレアは抜群の効果を示します。さらには2週間~4週間効果が持続する注射薬になりますので、薬を飲むわずらわしさもありません。

しかしながらゾレアは、花粉症には保険適応となっていません。ここでは、ゾレアについて詳しくみていきたいと思います。どうしてここまで効果のあるゾレアが花粉症に対して適応がないのか、そこも踏まえて説明したいと思います。

 

1.ゾレアってどんなお薬か?

ゾレアは、ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤としてIgEとくっついて、その働きを阻害することでアレルギーの炎症を改善させるお薬です。

まず初めに、ゾレアがどのようにして効果を発揮するのかをご説明します。少し難しくなるので、実際の効果が知りたい方は飛ばして読んでください。

喘息や花粉症は同じⅠ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーの発生機序は以下のようになります。

  1. アレルギーを起こす原因物質(抗原)が体内に侵入します
  2. 抗原に対してB細胞からIgEがつくられます
  3. 血液中を移動してきたIgEがマスト細胞に結合し、化学物質(炎症性メディエーター)が放出されます
  4. 炎症性メディエーターが気管支で炎症を起こせば喘息に、鼻や目で炎症を起こせば花粉症の症状が出現します

ゾレアはこの②のB細胞からIgEが作った抗体とくっついて、IgEがマスト細胞と結合するのを邪魔するお薬になります。ゾレアは、IgEのモノクローナル抗体になります。

モノクローナル抗体というのは、IgEだけにくっつくことに特化したお薬になります。ちなみに、B細胞が作り出す様々な抗体にくっつく抗体をポリクローナル抗体といいます。

ゾレアはIgEだけにくっつくために、そのブロック率は非常に強いです。IgEをほぼブロックできてしまえば、③や④には進めません。つまり喘息や花粉症の症状は、ほぼ出ないといえます。

モノクローナル抗体はもともと、リウマチなどの膠原病という特殊な病気や、癌などの治すのが難しい病気に対して作られたお薬です。そのため他の喘息薬と比較すると、ゾレアは効果がとても強いお薬になります。

 

2.ゾレアは花粉症にどれくらい効くの?

ゾレアは花粉症の中重症の患者様では2割程度でほぼ完治でき、全体では8割程度に効果を示しています。

「ゾレアが花粉症に効く!」これはゾレアの機序が分かっている方であれば、みんな考えることです。

実際に日本でも、ゾレアが花粉症でどれくらい効くのかを大阪大学で研究されています。こちらは2008年のclinical and Experimental Alleryの論文で、一般的に医学界で知られている研究です。

花粉症の中重症患者さん308例を、それぞれゾレアを投与する群とアイピーディを投与する群に分けてその効果を調べました。

結果は、ゾレアを投与した患者さんの3割近くが症状が軽快し、あまり効果のなかった患者さんは1割程度となっています。(アイピーディは1割強が軽快し、3割近くがあまり効果がありませんでした。)

さらにゾレアは、副作用も1.5%となっています。アイピーディの1.6%とほぼ変わらない結果になります。この副作用も、注射部位の痛みなど軽症なものがほとんどでした。

ゾレアはすごく効果があるとお伝えしましたが、軽快した患者さんが3割といわれると少なく感じるかもしれません。しかしこれは、症状がかなり強い方だけを集めた試験です。

さらに花粉症の治療薬の柱である抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬を組み合わせれば、花粉症の症状はかなりコントロールできます。

 

3.ゾレアは花粉症でどうして保険適応されないの?

ゾレアは非常に高いお薬のため、花粉症で保険適応を通すと莫大な医療費がかかってしまうからです。

大阪大学での研究でゾレアの花粉症に対する効果は証明されていますが、ゾレアは喘息にしか適応がないお薬です。どうしてこれだけ効果があるのに、ゾレアは花粉症に使えないのでしょうか?

それは、ゾレアは非常に高価なお薬だからです。ゾレアの投与量は、血液のIgEの量と体重によって決まります。そのためゾレアを打つ際には、採血が必ず必要になります。

この結果に応じて、ゾレア1回75mg~600mgを2週間または4週間ごとに皮下注射するお薬です。肝心の値段をみてみましょう。

商品名 投与量 価格
ゾレア 75mg 23128円
ゾレア 150mg 45578円

※2016年4月30日時点での薬価になります。

つまりゾレアは、75mgで約2万3千円、150mgになると4万5千円近い薬価になるお薬になります。抗モノクローナル抗体は特殊なお薬で、分子標的薬と呼ばれます。免疫グロブリン(IgE)という分子レベルで作用するお薬なので、ゾレアは非常に高価なものになります。

一番安くても4週間に1回2万3千円、一番高いと2週間に1回18万円かかる治療になります。医療費は、多くの方は3割負担かと思います。つまり残りの7割は、国が医療費として補助してくれているのです。保険適応になれば、自己負担は6938円~54694円の範囲で使えるお薬になります。

現在、日本人で花粉症の方は2300万人近くいるといわれています。ですから、ゾレアを花粉症で保険適応としてしまうと大変なことになります。そのためゾレアは、今後も薬価がよほど安くならない限りは保険適応にはならないと思います。

 

4.ゾレアは花粉症で投与することはできないのか?

喘息をお持ちの方、また花粉が飛散している時に咳がある方は、ゾレアの適応があるかもしれません。

ゾレアは花粉症には保険が使えないので、使うならば自費になります。自費でゾレアを使おうと思われる方はほとんどいないでしょうし、ゾレアを花粉症の治療に使っている医療機関もほとんどないでしょう。

ですが中には、ゾレアが保険適応になる方もいらっしゃいます。喘息でゾレアが保険適応出来る方では、花粉症の治療もかねて使うことを考慮してもよいかもしれません。喘息でゾレアを投与していると、「ゾレアを打っていると花粉症は全く気にならなかった」という患者さんは多いです。

そもそも喘息と花粉症は同じⅠ型アレルギーであり、IgEが関連する疾患です。細かい違いはありますが、喘息はIgEによる炎症が気管支で起きていて、花粉症は目や鼻で起きているという違いがあるだけです。つまりIgEによって喘息が起きている人は、花粉症も非常に高い確率で起きています。

実際に、喘息患者に鼻炎が合併しているかを調べた大規模な全国実態調査があります。2009年に行われた「SACRAサーベイ」になりますが、この調査結果では、実に70%近くの喘息患者さんにアレルギー性鼻炎の合併が認められました。これをうけて、喘息治療の方針が大きく変わりました。それを象徴する一つのフレーズがあります。

「one airway one disease」

これは上気道(鼻・喉)と下気道(気管支・肺)を切り離して考えるのではなく、体の中でひと続きの空気の通り道(one airway)ととらえて治療していくことを意味しています。

そのため上気道と下気道の病気は、アレルギーの原因や炎症が起きる過程も共通しているひとつの病気(one disease)と考えるべきとされました。これまでは上気道(鼻・喉)の病気は耳鼻科、下気道(気管支・肺)の病気は呼吸器内科と別れて治療していました。別々の科が各々で治療するのではなく、一つの病気として一緒に治療しようという考え方になってきています。

特に上気道での炎症で鼻水が下気道に垂れ込めば、咳が誘発されて、結果として喘息の悪化につながります。このため鼻炎のコントロールは、喘息の治療に必要不可欠となっています。

2004年のAllergyの論文でも、喘息で鼻炎を合併している患者さんにゾレアを投与した研究が発表されています。結果として鼻炎が良くなったことで、喘息による症状が抑えられたことが証明されています。もし喘息患者の方で花粉症の症状が強い方がいたら、「喘息と花粉症は別だから関係ないや」と思わずに医師に相談してみてください。

 

また喘息の治療をされている方は、今の治療で上手くいっているのかを振り返ってみましょう。

いつものことだから、これが普通と思ってる喘息の方も多いと思います。しかしこれは普通ではなくて、治療薬でコントロールできない証拠です。特にいつも上記のような症状だと、花粉症でIgEの炎症が強まるときは症状がさらに強く出るかもしれません。

 

花粉症の時期に咳が続く人も、ゾレアが適応になるかもしれません。実際に喘息と診断するのは非常に難しいのです。喘息にはいろいろな型があるといわれています。年中咳が続く人もいれば、花粉症などの特定の時期に発症することも喘息ではよく認めます。

花粉症の症状は目のかゆみや鼻詰まりの他に、喉のかゆみや咳が続くこともあります。これは鼻だけではなく、喉や気管支までIgEの炎症が及んでいる可能性が高いのです。

「one airway one disease」の考え方からすると、花粉症や喘息を別々に分けて考えるべきではありません。そのため花粉症の季節で咳もある方は、ぜひ呼吸器内科を受診してみてください。もし喘息と診断された場合は、ゾレアも適応となる可能性があります。保険適応になれば、自己負担は6938円~54694円の範囲で使えるお薬になります。

 

まとめ