四物湯【71番】の効果と副作用

アイコン 2017.2.20 身体に効く漢方薬

女性の血の道症に用いられる漢方はさまざまありますが、四物湯も、そのうちの一つです。血液のめぐりをよくしてホルモンバランスを整えますが、同時に皮膚の潤いにも影響を与えます。

4つの生薬を同量配合したシンプルな組成で、それぞれの生薬が主に血流を増やし、血の流れをよくします。体を温める効果もあるため、血・気を充実させることで水のめぐりもよくし、皮膚のシミや乾燥をよくする効果もあります。

具体的には、病後や産後の疲労回復、貧血や更年期障害、冷え性などに処方されます。女性向きの処方とされますが、男性では高血圧の症状に使われることもあります。

四物湯の生薬は4種類とやや少なく、生薬それぞれの効果が強く出て副作用となる場合があり、処方できる体質には多少の制限があります。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、四物湯は「ツムラの71番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される四物湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.四物湯の生薬成分の効能

地黄が主薬となり血流を増加させるほか、気を充実させて体力をつけます。当帰と川芎は、補血作用と駆血作用をもち、貧血を解消して血流の増加を助けます。芍薬は血管拡張作用があり、血の巡りをさらに向上させます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

四物湯は、4つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

四物湯の4つの成分は、全てが血流に影響を与える生薬です。地黄が主薬となり血流を増加させますが、そのほかに滋養強壮効果もあり、体をあたためて気を充実させる効果も持ちます。

当帰と芍薬は、血流をよくする効果を持つ代表的な生薬です。当帰芍薬散という2つの成分だけで作られた処方もあり、これだけでも血流をよくして貧血を改善します。また、血行がよくなることで体をあたためる作用もあります。

川芎は、当帰と芍薬と同様に血を補い、めぐりをよくします。ホルモンバランスを整える効果もあり、PMSや生理痛に効果をあらわします。

このように四物湯は、補血剤の代表的な処方になります。

四物湯の生薬の由来について表にしました。

 

2.四物湯の証

陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(血虚)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは病院ではできません。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

四物湯が合っている方は、以下のような証になります。

四物湯は、体力のない虚証の人に向いている漢方薬になります。

 

3.四物湯の効果と適応

四物湯は、宋時代に書かれた「和剤局方」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

四物湯は体力がない人で、貧血気味で体が冷え、血行が悪く血の道症があり、乾燥やシミなどの皮膚症状を伴う場合によく使用されます。

血の巡りをよくする漢方はさまざまあり、当帰と芍薬だけで組成された当帰芍薬散も、女性特有の症状に頻繁に使用されます。四物湯はさらに地黄と川芎を加えることで、滋養作用と月経調整作用がプラスされました。血流をよくすることだけでなく、滋養効果の面からも体をあたためます。

慢性的な冷えを改善することでよくなる症状は種々ありますね。体があたたまって気血水の循環がよくなると、生理不順が整うようになり、PMSや更年期障害が楽になる効果が期待できます。

気血水のうち、血を増加させて貧血症状を解消して血のめぐりをよくするほか、地黄が体力をつけることで気も充実し、めぐりがよくなるのです。

漢方では、皮膚の症状は気血水のうち、水のめぐりが滞っていると考えられます。皮膚表面に、水とともに毒素や老廃物が滞り、シミの原因となると考えるのです。また、体内の水が不足していれば、皮膚表面にも水はゆき渡らず、唇や肌が乾燥する原因となります。

地黄には利尿作用もあるので、滞った水が排出されるよう体内にはたらきかけますが、気や血のめぐりの改善が水のめぐりにも影響を与え、皮膚表面にある毒素や老廃物を流し去ります。

水が行きわたって肌が潤うほか、体が温まれば代謝も上がるので新陳代謝が促され、シミが改善していくという仕組みです。体の末端まで気血水が十分にめぐることで、しもやけ症の改善にも効果があるとされます。

なお、添付文章に記載されている四物湯の適応は以下のようになっています。

皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症:産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、冷え症、しもやけ、しみ、血の道症

使用目標:比較的体力の低下した人で、手足が冷え、諸種の出血や貧血の徴候があり、皮膚の枯燥傾向のある場合に用いる。

  1. 月経不順、自律神経失調症などを伴う婦人
  2. 腹部軟弱で臍傍に動悸をふれる場合
  3. 単独で用いるよりは、種々の加減方や合方として用いることが多い

 

4.四物湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

四物湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。1日量は、ツムラは7.5g、コタローとクラシエでは6.0gとなっています。クラシエからは錠剤も発売されていて、1日18錠になります。

四物湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。四物湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

四物湯は血流の悪さを解消する処方なので、皮膚の状態や顔や唇の血色、貧血症状や手足の冷えなどが処方の目安になります。

 

5.四物湯の効き目とは?

四物湯の効果は、2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。

それでは、四物湯の効き目はどのような形でしょうか。

四物湯は、冷えの改善であれば、証が合う人なら4〜5日で効果を得られるようです。体が温まれば少しずつ改善される不調は多くありますから、貧血や生理不順が改善されたり更年期障害の諸症状が治まるまでには、1ヶ月ほどは様子を見た方がよいでしょう。

皮膚疾患については、シミが薄くなっていくのを実感できるまでには新陳代謝が促進されてからなので、1ヶ月から3ヶ月はかかります。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.四物湯の副作用

四物湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明 らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

川芎や当帰によって胃の不快感や食欲不振、吐き気や下痢などの消化器症状がみられることがあります。四物湯は生薬組成の種類が少ない分、それぞれの効果が強く出やすくなっています。そのため、もともと胃腸が弱い人には向かない処方とされています。

そのほか、症状によって、他の漢方を併用して使用する場合もあります。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

血流増加作用がある地黄が主薬となり、滋養効果も伴って血と気を充実させます。当帰と芍薬は補血、血流増加作用を、川芎はホルモンバランスを整える作用を持ち、血行不良や貧血から起こる血の道症、冷え、ホルモンバランスの乱れから起こる更年期障害、皮膚の乾燥やシミを改善します。

陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(血虚)

四物湯は、以下のような方に使われます。

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