潤腸湯の効果と副作用

アイコン 2016.11.13 身体に効く漢方薬
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便秘といっても数種類あります。潤腸湯は、体液が不足してコロコロとした硬い状態の便が出る便秘であったり、体力の低下によって、いきんでも便を押し出せないタイプの便秘に効果的な漢方薬です。

漢方の世界で便秘は、便がたまって腸が熱を持つと考えられ、まずはたまった便を排出して熱をとり、腸の状態を整えることで柔らかい便を作れるようにします。

そして低下した腸機能を向上させ、通常の便通をもたらすように徐々にはたらきかけていきます。潤腸湯は、体がやや弱った高齢者、病後や産後の便秘に適しているといわれます。

ここでは、病院で処方される潤腸湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.潤腸湯の生薬成分の効能

大黄・枳実が腸を刺激して蠕動運動を促し、便の排出を活発化させて腸管の熱をとります。当帰・地黄が血を補って力をつけ、桃仁が胃腸の血流をよくします。麻子仁・杏仁・桃仁が腸に潤いを与え、排便しやすい柔らかい便をつくるよう腸内を改善します。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

潤腸湯は、10つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、製剤1日量に含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

10種類の生薬のうち、大黄・麻子仁・杏仁・厚朴・枳実に芍薬を加えると、「麻子人丸」という漢方の処方になります。麻子仁丸も便秘に対する処方ですが、潤腸湯は先に述べた5種類に、さらに桃仁・当帰・地黄・黄芩・甘草を加えます。

麻子仁丸の組成では、大黄・枳実による腸の刺激、厚朴による胃腸を整える作用、麻子仁・杏仁の腸を潤す効果によって便秘を解消しますが、潤腸湯はこれに「血」を補う効果が加わります。当帰と地黄がそれぞれ補血効果・強壮作用を持ち、桃仁も血の巡りをよくします。

さらに潤腸湯は、麻子仁・杏仁に加えた桃仁も脂肪油が含まれており、水分の少ない便を潤滑にします。当帰・地黄は腸内で水分を含んで膨張し、排便を促す作用があります。

また、甘草は他の生薬の効果を緩やかにする作用があります。潤腸湯は、麻子仁丸よりも効き目が穏やかで、体力をつけながら便秘を解消するための処方になります。

潤腸湯は、科学的にも作用メカニズムが分かってきています。クロライドチャネルの1つであるCFTRという制御因子を活性化することで、clイオンとともにNa+イオンが腸管内に移動します。これと一緒に水分が移動して、腸管内の水分分泌が促進されるのです。これによって便通を改善します。

潤腸湯の効果はマイルドではありますが、2012年に新しい便秘薬として発売されたアミティーザに近い作用があるのではと考えられています。

潤腸湯の生薬の由来について

 

2.潤腸湯の証

陰陽(中間)・虚実(虚~中間)・気血水(血虚)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは病院ではできません。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽」「虚実」「寒熱」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

防風通聖散が合っている方は、以下のような証になります。

潤腸湯はやや体力が弱った人に向いている漢方薬になります。

 

3.潤腸湯の効果と適応

潤腸湯は、明時代に書かれた「万病回春」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

病後や産後、または月経後、高齢で体力が低下した場合、水分をとっても体内に保つことができなくなり、「燥症」という症状が出ることがあります。

漢方では血以外の体液を水と呼びますが、「燥症」になると、具体的な症状として口や喉の乾き、肌の乾燥などが起こります。そして腸に水が不足した場合、便秘となって腸に熱を持ちます。便に水分が含まれず、コロコロとした固い便がでるようになります。

体力が低下している人のこういった症状は、燥症だけでなく血虚によって体の血の巡りが悪くなっていることが多く、むしろその影響で水にも影響が出ていると考えられます。

潤腸湯は、腸に水を補って固い便を柔らかく改善するとともに、血を補って体に力をつけます。体内に血をめぐらすことで胃腸にも血を行き渡らせ正常な働きに戻すともに、いきんで排出する力をつけるのです。

病後や高齢で横になっていることが多く、腹筋が弱くなって便を押し出せないような症状の人にも使われます。弛緩性便秘といって、大腸全体の運動機能が落ちてしまっているような便秘です。

また潤腸湯は、ストレスなどによる自律神経の異常による便秘にも使われます。結腸の緊張が異常に高まってしまって、コロコロとした硬い便が出るようになってしまう便秘で、痙縮性便秘と呼ばれます。

なお、ツムラの添付文章に記載されている潤腸湯の適応は以下になります。

便秘

[参考] 使用目標:体力中等度あるいはやや低下した人の弛緩性または痙攣性便秘に用いる。

  1. 老人あるいは胃腸機能の低下した人の便秘
  2. 皮膚枯燥、腹壁弛緩し糞塊が触知される場合

 

4.潤腸湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

潤腸湯は、ツムラから発売されています。1日量は、ツムラは7.5gになっています。

潤腸湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。防風通聖散を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.潤腸湯の効き目とは?

効果は2週間以上かけて,ゆっくりと認められることが多いです。

それでは、潤腸湯の効き目はどのような形でしょうか。

潤腸湯は、慢性の便秘に効くタイプの漢方薬です。また、体力をつけながら胃腸機能を改善していくので、効果は徐々にあらわれ、即効性は期待できないと言えます。

体力が落ちた人にとっては急激な症状の変化は好ましくないため、甘草や地黄を使い、緩やかな効果でじっくりと症状を治していくタイプの処方です。

大黄の刺激により、先にたまっていた便はすぐに排出されるかもしれません。ですが体内に血が補われて体に循環し、腸内にも水分が十分に行き渡り、腸内で正常な排便環境が整うようになるまでは時間がかかります。

ただ、血行不良や水分不足を根本から改善していくことを目指すため、継続した服用によって便秘をしにくい体質になっていくと考えられます。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.潤腸湯の副作用

潤腸湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明 らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

潤腸湯の生薬成分には甘草が含まれており、これを大量に服用すると「偽アルドステロン症」と呼ばれるだるさや浮腫(むくみ)、血圧上昇、低カリウム血症が生じたりすることがあります。複数の漢方薬を併用する際には、とくに注意が必要です。

その他では、ごくまれに間質性肺炎と肝障害が起こることがあると報告されています。咳や息切れ、呼吸困難が認められたり、発熱やひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が出た場合は、すぐ医師に連絡してください。

当帰によって胃の不快感や食欲不振、吐き気や下痢などの消化器症状がみられることもあります。

そのほか、大黄には子宮収縮作用や、骨盤内臓器が充血する作用があります。流産や早産の可能性があるので、妊婦への処方は慎重に行うか、処方を控えます。大黄はとりすぎると腹痛を起こす可能性もあるため、他の大黄を含んだ漢方との併用にも注意が必要です。

また、やや体力がない人に向けた処方ですが、著しく体力の低下した人、もともと胃腸が弱い人には向きません。胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢などの症状が見られたら、使用を中止します。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

大黄・麻子仁・黄芩の通便作用で腸の熱をとります。地黄・当帰・杏仁・桃仁が強壮作用と血流増加作用を持ち、体力をつけて腸を潤った状態に整えます。

陰陽(中間)・虚実(虚~中間)・気血水(血虚)

潤腸湯は、以下のような方に使われます。