五苓散【17番】の効果と副作用

アイコン 2016.6.22 身体に効く漢方薬

五苓散は、身体の水分循環を改善する代表的な漢方薬です。余分な水分を身体から排出するだけでなく、身体全体での水分のバランスの偏りを整えてくれる漢方薬です。

ですから、身体のむくみはもちろんのこと、身体の水分の異常によって生じる様々な症状に効果が期待できます。吐き気やおう吐、下痢、めまいや頭痛、動悸などに使われます。

精神疾患を抱える患者さんでは、自律神経症状としてこのような症状がみられることが多いです。五苓散は、症状を和らげることで治療のサポートとして処方されることが多いです。

体内の水分の代謝がうまくいっていない状態を、漢方では「水滞」や「水毒」といいます。本来の体内の水分は、腎臓や胃腸、皮膚などの働きによって、尿・便・汗といった形で排泄されバランスがとれています。

五苓散は、これらの尿や発汗を正常にすることで体内の水分のバランスを調整する「利水剤」として用いられます。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、五苓散は「ツムラの17番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される五苓散の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.五苓散【17番】の生薬成分の効能

五苓散は、主薬である「沢瀉」を中心に、同じように利尿作用のある「猪苓」や「茯苓」、「蒼朮」に、発汗作用のある「桂皮」が組み合わせられています。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

五苓散は、5種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

五苓散はその名が示す通り、5種類の生薬からできています。

主な成分は「沢瀉」で、それ以外の茯苓や蒼朮、猪苓にも利尿作用があります。身体の水分の循環を良くし、めまいや耳鳴りといった症状を改善させます。

桂皮は、「ニッキ」や「シナモン」としてよく知られています。身体をあたためながら発汗させ、気をめぐらせる作用があります。頭痛やめまいなどに効果が期待できます。

科学的にも裏付けが少しずつみられてきていて、水チャネルと呼ばれるアクアポリン阻害作用による水分代謝調節作用と、抗炎症作用によって浮腫が軽減されることが分かってきています。生薬としては、蒼朮・猪苓・桂皮の関係が深いと考えられています。

 

2.五苓散の証

陰陽(中間)・虚実(中間)・寒熱(寒)・気血水(水毒)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

五苓散では、あまり体質に関係なく広く使える漢方薬になります。五苓散は、子供にもよく使われます。お腹の力が弱っていて、お腹を動かすと振水音といわれる音が聞こえる時は水がだぶついている状態なので、五苓散のよい適応です。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

五苓散が合っている方は、以下のような証になります。

 

3.五苓散の効果と適応

五苓散は、漢時代の「傷寒論」および「金匱要略」という古典書に紹介されています。5種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。子どもからお年寄りまで幅広く使用できる漢方薬です。

五苓散に含まれている5種類の生薬のうち、沢瀉、茯苓、蒼朮、猪苓によって利尿作用がはたらき、身体の中に停滞している水分を排出して循環をよくします。これによって、むくみやめまい、下痢、頭痛などの症状を和らげます。感染性下痢に対する有効性も確認されています。

水分のバランスが崩れている典型的な状態は、口が渇いてしまい尿量が減っていることです。水分の循環が悪く、身体に水がだぶついてしまっています。

精神科のお薬では、副作用として口が渇いたり、おう吐や下痢といった症状がみられることがあります。五苓散は、このような副作用の症状を和らげるのにも使われます。

五苓散は、さまざまなタイプの頭痛にも効果が認められます。2013年の慢性頭痛の診療ガイドラインでは、五苓散はグレードBとして推奨されています。

さらには、吐き気をともなう片頭痛や緊張型頭痛の症状も和らげることもあります。

 

五苓散でもう一つ注目すべき効果は、二日酔いの効果があることです。私も五苓散は、この目的で常備薬にしています。

お酒を飲むとアルコールが肝臓で分解されて、アセトアルデヒドという物質になります。アセトアルデヒドが原因となり、頭痛や吐き気、顔が赤くなったりします。アルデヒドは最終的に、水と二酸化炭素に分解されて体の外に排出されます。

しかし、お酒を飲みすぎると肝臓が分解しきれず、アセトアルデヒドが体内に残り、これが頭痛や吐き気などの二日酔いの症状を引き起こします。

このような場合、体の水分バランスを調整してくれる五苓散が効き目を発揮します。身体の中の余分なアセトアルデヒドの代謝物を、尿として体の外に排出するのを助ける働きをします。

なお、添付文章に記載されている五苓散の適応は以下のようになっています。

口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病

 

4.五苓散の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

五苓散は、ツムラ・コタロー・クラシエ・マツウラ・三和などから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。

五苓散では、ツムラや三和は7.5g、コタローやクラシエは6.0g、マツウラは4.5gとなっています。クラシエからは錠剤も発売されていますが、1日量が18錠にもなります。

五苓散は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかにし、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。五苓散では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.五苓散の効き目とは?

二日酔いなど明らかに水分の問題があるときは効果は早いです。慢性的な症状では、効果は2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。

それでは、五苓散の効き目はどのような形でしょうか。

五苓散の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

五苓散は、二日酔いやむくみなどの明らかな水分停滞があるような症状では効果は早く認められることが多いです。しかしながら、めまいや頭痛といった慢性的な症状では、人によっても効果に差があります。

このような慢性的な症状では、五苓散の効果は効き目がゆっくりと考えた方がよいです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。 効果は2週間くらいから認められることがあります。じっくりと時間をかけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.五苓散の副作用

五苓散では重大な副作用は起こりにくいとされていますが、服用時にむかついたり、食欲減退などの症状がみられることがあります。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。五苓散は体質にはあまり関係なく使える漢方薬で、誤治となることは少ないです。

生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。五苓散を構成している生薬には、大きな副作用を引き起こすものはありません。

五苓散で注意するのは、生薬に対するアレルギーです。食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

このように五苓散は、副作用はとても少なく安全性が高い漢方薬です。漢方薬としての独特の苦味から、服用時のむかつきや食欲不振がみられることがあるくらいでしょう。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

五苓散は、生薬の沢瀉、茯苓、蒼朮、猪苓による利尿作用が中心と言えます。桂皮を含めた5種類の生薬が体内の水分のバランスを整え、水が停滞していることで起こるむくみや頭痛、吐き気、下痢などの症状を緩和します。

陰陽(中間)・虚実(中間)・寒熱(寒)・気血水(水毒)

五苓散は、以下のような方に使われます。

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