大柴胡湯【8番】の効果と副作用

アイコン 2016.12.19 身体に効く漢方薬

大柴胡湯は、体の内にこもった熱や炎症を抑えて機能を整えることで、高血圧や便秘といった症状をやわらげる漢方薬になります。

大柴胡湯が適応するのは、体力が充実してがっちりとした体型の人で、高血圧や肥満症によってさまざまな症状が出た場合などになります。その主な原因として、ストレスがあげられます。

例えば、ストレスがたまると食べ過ぎてしまうことがありますね。ストレスで「気」のめぐりが滞ってしまったところに、さらに消化できないくらいの食べ物を体に取り込むと、消化器官の「脾」に負担がかかって熱を持ち、高血圧や内臓の炎症、便秘を引き起こします。

食べ過ぎた上に、体のエネルギーの循環がうまくいかないと肥満につながります。そして高血圧は、のぼせや肩こり、頭痛を起こし、イライラや不眠にもつながっていきます。

大柴胡湯は、ストレスでイライラする気持ちを落ち着け、内臓の炎症を抑え、「気」のめぐりをよくしてくれるはたらきをします。便秘解消や代謝の促進の効果もあるので、ダイエットにつながるのです。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、大柴胡湯は「ツムラの8番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される大柴胡湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.大柴胡湯【8番】の生薬成分の効能

サポニンを含む柴胡が主薬となり、気持ちを鎮めて体の熱を冷まし、肝機能を向上させるはたらきをします。大黄は便秘を解消することで熱を冷まし、スムーズな「気」のめぐりを取り戻します。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

大柴胡湯は、8つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

大柴胡湯は、小柴胡湯に芍薬・枳実・大黄を加えて、人参・甘草を除いたものです。大黄を加えることで、便秘を改善して胃腸症状を落ち着ける効果が期待できます。

主薬となる柴胡の主成分はサポニンで、炎症を抑えて熱をとり、イライラする気持ちを鎮めます。このはたらきを黄芩がサポートし、半夏・生姜が吐き気を抑えて胃腸を正常な状態に戻します。

大黄は大腸を刺激して便秘を解消し、熱をとります。枳実にも同様に、便秘を解消して胃腸を守る作用があります。これに生姜・大棗の発汗作用と利尿作用も手伝い、「気」に伴って停滞していた「水」を排出します。便秘の解消によってめぐるようになった「気」は、芍薬の効果によって「血」とともに全身にめぐるようになります。

大柴胡湯が効果を発揮しだすと、肝臓の脂質代謝が高まるといわれています。便秘の解消や内臓の炎症の改善、イライラの抑制によって気血水のめぐりが良くなり、エネルギーの代謝が高まるからです。肥満や高血圧、高脂血症に効果があると言われる所以はここにあります。

大柴胡湯の生薬の由来について

 

2.大柴胡湯の証

陰陽(陽)・虚実(実)・寒熱(熱)・気血水(気滞)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

大柴胡湯が合っている方は、以下のような証になります。

大柴胡湯は、体力がある人の慢性的な症状に向く漢方薬になります。

 

3.大柴胡湯の効果と適応

大柴胡湯は、漢時代に書かれた「傷寒論」と「金匱要略」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

大柴胡湯は、体つきががっちりした体力がある人に使われます。体の中にこもった熱や炎症のために、高血圧や便秘、それに伴う頭痛や肩こりの症状がある人にもっともよく使用されます。

もともとの原因は多くがストレスなのですが、大柴胡湯を服用することによって気持ちが落ち着き、胃腸などの消化器が正常なはたらきを取り戻すことで、気持ちも体もすっきりとしてきます。

また、「気」のめぐりは、漢方の世界でいう「肝」が正常にはたらくことが重要です。体力のある人は「気」が不足しているわけではなく、偏った場所で停滞していることで不調が起こります。「肝」が正常に働くことで、気の滞りによる抑うつやイライラなども改善していきます。ですから、ストレスやイライラによって引き起こされる不眠も改善が期待できます。

また「肝」は、現代でいうと「肝臓」です。大柴胡湯は肝臓の代謝機能が高まる効果を利用し、黄疸などの肝機能障害、脂肪肝の改善に使われることがあります。このため、ダイエット目的に使われることもあります。街の薬局でも、市販されている漢方薬です。

だからといって、安易に大柴胡湯は使わない方が良いです。大柴胡湯は、体力のある人に向いている漢方薬です。標準体型の人や減量だけが目的の人は、副作用が目立ってしまうこともありますので注意しましょう。

なお、ツムラの添付文章に記載されている大柴胡湯の適応は以下になります。

比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症:胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症

[参考] 使用目標:体力・体格ともに充実した人で、胸脇苦満が強く、便秘する場合に用いる。

  1. 悪心、嘔吐、季肋部の苦満感などを伴う場合
  2. 肩こり、頭痛、頭重、めまい、耳鳴りなどを伴う場合

 

4.大柴胡湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

大柴胡湯は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。1日量は、ツムラは7.5g、コタローは9g、クラシエは6gとなっています。クラシエからは錠剤も発売されていますが、1日量は18錠にもなります。

大柴胡湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。大柴胡湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.大柴胡湯の効き目とは?

便秘の解消は、飲み始めた直後から1週間の間に効果が見られます。慢性疾患や肝機能の検査など、数値に変化があらわれるには、数ヶ月かかります。

それでは、大柴胡湯の効き目はどのような形でしょうか。

大黄が入っていますので、刺激に慣れていない人であれば、便秘にはすぐに効果があらわれることが多いです。エネルギーの循環は、スムーズなめぐりを阻む老廃物の排出が優先なので、大柴胡湯を服用して、まずはすみやかに便秘を解消します。

しかし慢性の便秘になっていた場合、しばらく様子を見て便秘をしない体質に変わっていくことが重要です。大黄の効果に続き、他の生薬の作用によって消化器官の機能は正常化していくので、徐々に排泄のリズムが整ってきます。

それに比べて、「肝」への作用はゆっくりです。脂肪の蓄積などは、生活の積み重ねによって起こるので、効果が見られるようになるまでには、数ヶ月を要することもあります。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.大柴胡湯の副作用

大柴胡湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

重い副作用としては、ごくまれに間質性肺炎と肝障害が起こることがあると報告されています。咳や息切れ、呼吸困難が認められたり、発熱やひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が出た場合は、すぐ医師に連絡してください。

また、胃の不快感や食欲不振、吐き気や下痢などの消化器症状がみられることもあります。

妊婦の方は、医師と十分に相談していただく必要があります。大量に摂取しなければ大丈夫と言われていますが、大黄には子宮収縮作用があります。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

柴胡が主薬となって「気」の流れをよくします。内臓の炎症とイライラする気持ちを抑えて「肝」のはたらきを改善し、「気」のめぐりをよくします。大黄は便秘解消効果によって、熱をとります。

陰陽(陽)・虚実(実)・寒熱(熱)・気血水(気滞)

大柴胡湯は、以下のような方に使われます。

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