大建中湯の効果と副作用

アイコン 2016.9.19 身体に効く漢方薬
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大建中湯は、日本でもっともよく使われる漢方薬と言われます。主にお腹が冷えて胃腸が弱り、動きが悪くなることで起きる便秘や腹痛などの諸症状に使われます。

「中」は、漢方の世界で体の中部にある胃腸を表します。「大建」は、丈夫にするという意味を持ち、合わせて「胃腸を丈夫にする薬」という意味になります。

大建中湯は胃腸のトラブルに広く使われていて、冷えが原因の腹痛や便秘・下痢から、開腹手術の後にも使われます。妊娠中の便秘にも使われることがあります。

ここでは、病院で処方される大建中湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.大建中湯の生薬成分の効能

大建中湯の主な効能は、体を温めて血流をよくし、消化器機能を改善します。腸の蠕動運動を正常化させ、腸内環境を整えます。人参・山椒・乾姜が身体を温めると同時に消化機能を正常化させ、膠飴が腸内環境を整えます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

大建中湯は、4つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量15gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

大建中湯が期待される効果は、胃腸の働きを正常化することです。体を温めて消化器の動きをよくすることが基本的な効果なので、冷えが原因で胃腸の調子が悪い場合に適しています。

体を温める効果があるのは、4つの成分のうち、人参・山椒・乾姜です。冷えを改善させるとともに消化器機能を改善し、お腹の張りを解消して痛みを取ります。

その効果は科学的にもわかってきており、腸内血管の血流を増加し、消化管運動亢進ホルモン(モチリン)の分泌を促します。

膠飴は糖分の一種で、腸内で善玉菌のエサとなります。善玉菌が増えることにより、腸内環境が整います。また、善玉菌が増殖する際に乳酸や酢酸が分泌され、それらが大腸の腸壁を刺激して自然な腸の動きを促すため、便秘の解消となります。

大建中湯の生薬の由来について

 

2.大建中湯の証

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは病院ではできません。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

大建中湯が合っている方は、以下のような証になります。

大建中湯は、体力が低下していて冷えのあるような人に向く漢方薬になります。

 

3.大建中湯の漢方医学的な効果

大建中湯は、気を補うことで脾の働きを整えます。

漢方の世界では、消化器官を「脾」と表します。体全体をめぐっている「気血水」のうち、「気」が「脾」に不足すると、「脾気虚」の状態となります。

「気」はエネルギーなので、不足すると「脾」は冷え、働きが悪くなります。体は食物から栄養を取り込めずに弱々しくなっていきます。また、冷えは「脾」の動きも鈍くします。すると不要なものを排出させることができなくなり、体内にとどめたままになってしまいます。

「脾」が冷えて働きが悪くなって起こる症状は、腹部膨満や便秘・下痢、吐き気や嘔吐、腹痛などです。腸の動きが鈍くなって起こりがちなのは便秘ですが、蠕動運動が不規則になることもあり、消化吸収の途中で腸が突然動いたりすると下痢になります。

大建中湯は人参と膠飴が補気薬となり、「脾気虚」の状態にエネルギーを与えて働きを強くします。山椒と生姜はその働きを安定させ、体に気を取り込み、巡らせるようにします。

「脾」 にエネルギーが補われて腸があたたまると、腸管の血流は増加します。この作用により、食物の消化吸収率は上がります。こうして食物の栄養が体にめぐり、体力が回復します。また、腸の動きがよくなり正常化することで便秘と下痢が改善し、お腹の冷えや張り、それらに伴う痛みもなくなります。

 

4.大建中湯の効果と適応

大建中湯は、漢時代に書かれた「金匱要略」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

大建中湯には胃腸の機能を正常化させる働きがあるため、腹部膨満や下痢・便秘、腹痛といった症状に使われます。身体を温める生薬が中心のため、とくに冷えからくる腹部症状によく使われます。

便通をよくする漢方薬は種々ありますが、同時に腸内環境を整える処方は、大建中湯にのみに見られます。

そのほか、開腹手術後に腸閉塞になるのを予防し、腸の機能を回復されるために使われることもあります。手術の際は麻酔の影響によって、一時的に腸の働きが弱くなってしまいます。麻酔から覚めると徐々に腸の運動は戻るのですが、回復が遅くなることがあります。

また腸管を手術した後、細胞が損傷した部分を修復しようとして、癒着を起こす場合もあります。どちらの場合も、腹部膨満感、吐き気や嘔吐、腹痛や排ガスの停止などが起こります。場合によっては再度の開腹手術を必要とする場合があり、入院が長引いてしまうことになります。

腸閉塞を予防するためには、手術後、すぐに腸が動き出すことが望ましいとされます。大建中湯を服用することで、腸の動きは促進され、術部の癒着の防止が期待できます。また、早期に腸が動き出すことは手術後の食事開始の時期が早まることにつながり、体力の回復も早まって、入院期間の短縮にもつながります。

もう一つは、妊娠中の便秘に対しての効果です。妊娠初期は、ホルモンの影響で胃腸の筋肉が緩み、消化器官の蠕動運動が低下します。便を押し出す力が弱くなり、便秘となります。つわりがあると、食物の消化吸収力も弱まります。妊娠中期・後期になると、胎児が大きくなり、大腸を圧迫して便秘が起こります。

この症状も、腸の動きをよくする大建中湯が効果的です。大黄のように直接大腸に刺激を与えて排便を促すのではなく、体を温めて血流をよくすることによって腸の動きをよくするので、子宮に刺激を与えずに穏やかに効果をあらわします。

胃腸を整え、大便を正常に排出することは、大腸がんの予防にもつながります。また、抗炎症作用も認められているため、クローン病など、炎症性腸疾患の治療に使われることもあります。

なお、添付文章に記載されている大建中湯の適応は以下のようになっています。

腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの

使用目標:体力が低下した人で四肢や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満、鼓腸のある場合に用いる。
1)腹壁がうすく軟弱無力で腸の蠕動不安を認める場合
2)冷えにより症状の悪化する場合
3)開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛、腹部膨満感

 

5.大建中湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

大建中湯は、ツムラやコタローから発売されています。1日量は、ツムラは15g、コタローは27gになっています。

大建中湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。大建中湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

また大建中湯は、熱湯にとかして温かいうちに飲むとより効果的です。

 

6.大建中湯の効き目とは?

効果は2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。

それでは、大建中湯の効き目はどのような形でしょうか。

大建中湯は、陰証の人に向いている漢方です。体質改善を目的とするので、慢性の便秘や冷えには2〜3ヶ月の服用が必要です。便秘に関しては大腸だけに刺激を与えて排便を促す瀉下剤と違い、胃腸を全体的に整えて便秘を根本から治します。消化器官への刺激が少ないので、効果はゆっくりです。

膠飴の麦芽糖の影響で、善玉菌が腸内で増え出すのは服用から2時間が経過してからと言われます。人によっては、早期に便意を感じられるかもしれません。

生薬が全て効果を発揮し、大建中湯として効果をあらわすにはしばらく時間が必要です。

手術後の腸閉塞への投与については、慢性疾患への対処ではないため、効果は比較的早くからあらわれます。手術後は体力を消耗しているため陰証といえるので、大建中湯は体質も向いています。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

7.大建中湯の副作用

大建中湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。大建中湯は安全性が高いと言われ、滅多に重篤な副作用はありませんが、効果や体調は注意深く観察することが必要です。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。大建中湯を構成する生薬は、それ自体の副作用は目立ちません。

まれに、重篤な副作用として、

これらの症状が出た場合は、すぐに服用をやめ、医師に相談しましょう。

副作用以外にも、以下のように注意が必要です。大建中湯は冷えをとる効果があります。体を温めるので、熱がある人、内臓に炎症の症状がある人には使えません。また、もともと肝機能に問題がある人も、症状が重くなる場合があるので、肝臓の数値には注意が必要です。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

大建中湯の主な効能は、体を温めて血流をよくし、消化器機能を改善します。腸の蠕動運動を正常化させ、腸内環境を整えます。人参・山椒・乾姜が身体を温めると同時に消化機能を正常化させ、膠飴が腸内環境を整えます。

陰陽(陰)・虚実(虚)・寒熱(寒)・気血水(気虚)

大建中湯は、以下のような方に使われます。