釣藤散の効果と副作用

アイコン 2016.6.4 身体に効く漢方薬

釣藤散は一般的に、中高年で血圧が高めになっている人で、慢性的な頭痛や頭重感がある方に使われることの多い漢方薬です。頭痛だけでなく、イライラや落ち込み、めまいや耳鳴り、不安や不眠といった症状に使われることもあります。

交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで自律神経症状が認められます。このような症状があらわれる原因を、漢方では「気」の乱れととらえます。気が上半身に集まってしまってのぼせているような場合、イライラやめまい、頭痛や肩こりなどの症状が認められます。このような場合には、「気」を静める働きのある漢方薬が処方されます。

釣藤散は、体の中であがってしまった「気」を下げる作用があります。このようにして、おもに頭痛に効果があると考えられています。科学的なエビデンスは不十分ではありますが、経験的に効果があることが分かっており、日本頭痛学会でもエビデンスレベルBとされています。

ここでは、病院で処方される釣藤散の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.釣藤散の生薬成分の効能

釣藤散は、鎮痛・鎮痙作用のある「釣藤鈎」を主成分としています。釣藤鈎は脳の血流をよくするだけでなく、セロトニンを増加させて気持ちを落ち着かせます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

釣藤散は、11種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、ツムラの製剤1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

釣藤散は11種類の生薬からできています。釣藤鈎は脳の血管を広げて循環をよくし、痛みを和らげると言われています。また釣藤鈎は、セロトニンを増加させる作用(5HT1A受容体部分作動薬)が確認されています。これにより、気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。

石膏は炎症をひかせてのぼせを冷まします。麦門冬は身体を潤すことで熱を冷まします。茯苓や半夏は水分の循環を良くし、めまい・耳鳴りの症状を改善させます。

その他には防風や菊花は痛みを取り除くとともに、あがってしまった「気」によって起こるめまいやふらつきを抑える作用があります。菊花は、目の充血や痛みなどにも効果があります。人参には滋養強壮作用があります。

また、釣藤散の特徴は、胃腸が弱っている方に優しいという点です。陳皮・生姜・茯苓・半夏・人参などは胃腸の働きを整える生薬になります。

 

2.釣藤散の証

陰陽(陽)・虚実(中間~虚)・寒熱(熱)・気血水(気上衝)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは病院ではできません。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。漢方の代表的な証には、「陰陽」「虚実」「寒熱」「表裏」の4つがあります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

釣藤散が合っている方は、以下のような証になります。

 

3.釣藤散の効果と適応

釣藤散は、「本事方」という金時代の古典書に紹介されています。11種類それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

釣藤散に含まれている11種類の生薬により鎮静作用がはたらき、身体の中で過剰に上衝した「気」を下げ、興奮状態が鎮められます。精神の興奮から起こっている頭痛や肩こり、のぼせなどの症状は、こうした作用で和らげられるとされています。

自律神経のバランスを整えて血圧を上げている原因を改善するため、ストレス性の高血圧の場合には血圧を安定させる作用が期待されます。また、高血圧によって生じる頭痛や肩こりも、こうした作用により改善されると考えられます。

典型的には、朝に起こる頭痛に効果があります。慢性頭痛の診療ガイドライン2013では、釣藤散はグレードBとなっています。

釣藤散は、体力が比較的体力がある人向けの漢方薬です。中年以降で高血圧の傾向があり、慢性的に頭痛やめまい、肩こりのある人に使われます。また、身体を冷ます漢方なので、冷えがない人に向いています。胃腸が弱っている方にも向いています。

なお、添付文章に記載されている釣藤散の適応は、以下のようになっています。

体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの

 

4.釣藤散の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

釣藤散は、ツムラ・コタロー・クラシエ・マツウラなどから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。釣藤散では、ツムラ・クラシエ・マツウラは7.5g、コタローは6.0gになっています。

釣藤散は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかにし、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。釣藤散では、空腹時の方が吸収はよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.釣藤散の効き目とは?

効果は2週間以上かけてゆっくりと認められることが多いです。ときに即効性があることもあります。

それでは、釣藤散の効き目はどのような形でしょうか。

釣藤散の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な身体の症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもあります。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

釣藤散は、一般的には効き目はゆっくりです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。 効果は2週間くらいから認められることがあります。じっくりと時間をかけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

このような効き目なので、抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性はありません。ですから、不安発作に頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.釣藤散の副作用

釣藤散では、生薬固有の副作用として偽アルドステロン症に注意が必要です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレル ギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

釣藤散の生薬成分の甘草は、大量に服用すると生薬としての副作用が懸念されます。「偽アルドステロン症」と呼ばれる機能異常によって、高血圧やむくみ、低カリウム血症などが認められることがあります。低カリウム血症によって、筋肉のけいれんや麻痺が起こることがあります。

甘草の入っている他の製剤やグリチルリチンとの飲み合わせには十分な注意が必要です。また、長期間にわたって複数の漢方薬を服用するときは念のために注意してください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

釣藤散は、鎮静作用と鎮痛作用が中心と言えます。11種類の生薬がバランスをとりながら「気」の上衝を鎮め、精神的な興奮状態を鎮めます。ストレスからくる高血圧や高血圧にともなって現れる頭痛や頭重感、肩こりなどの症状の緩和に使われます。

陰陽(陽)・虚実(中間~虚)・寒熱(熱)・気血水(気上衝)

釣藤散は、以下のような方に使われます。