当帰芍薬散【23番】の効果と副作用

アイコン 2016.9.11 心に効く漢方薬

当帰芍薬散は、主に女性特有の慢性症状に処方される漢方薬です。月経困難や冷え性、浮腫などに効果的で、妊娠中の女性の安定剤として使われることも多いです。

不妊や産前産後、また流産後の体調回復に効果があるとされます。妊娠中の体調維持にも使われます。

血の巡りをよくすることで、体の隅々に血を行き渡らせて体を温め、冷えを解消します。それと同時に余分な水分を排出し、浮腫や水太りを解消します。

さらに女性ホルモンのバランスを整えるともいわれていて、女性ホルモンの変動による心身の症状である「血の道症」を軽減してくれます。

当帰芍薬散は、貧血で痩せ型の弱々しく疲れやすい体質の人に向いています。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、当帰芍薬散は「ツムラの23番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される当帰芍薬散の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.当帰芍薬散【23番】の生薬成分の効能

芍薬・川芎・当帰は、血のめぐりを良くしてくれます。蒼朮・茯苓・沢瀉は水分調整を行い、消化器症状を改善します。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

当帰芍薬散は、6つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、1日量7.5gに含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

当帰芍薬散の効果は大きく2つに分けられ、

になります。

1つ目の血の巡りをよくする作用に関わるのが、芍薬・川芎・当帰です。科学的にみると、以下の成分が作用することで血の巡りをよくしていることがわかっています。

当帰と川芎は、どちらも血のめぐりをよくしてくれます。補血・駆血・月経調整などの効果が期待できます。芍薬は末梢血管拡張作用によって、血流増加を促進します。

また、芍薬と川芎には鎮痛作用も認められ、他の漢方では、鎮痛をメインとした効果を期待して使われることもあります。

 

2つ目は、水毒の改善です。蒼朮・茯苓・沢瀉の3つに利尿効果があり、さらに蒼朮には発汗作用、茯苓には胃腸の動きをよくする作用も加わって、体内の余分な水分を排出します。

このほか茯苓・川芎・当帰には鎮静作用も認められ、ホルモンの乱れからくるイライラを鎮めます。

当帰芍薬散の生薬の由来について

 

2.当帰芍薬散の証

陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(血虚・水毒)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽」「虚実」「寒熱」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

当帰芍薬散が合っている方は、以下のような証になります。

当帰芍薬散は体が虚弱な人に向いている漢方薬になります。

 

3.当帰芍薬散の効果と適応

当帰芍薬散は、漢時代に書かれた「金匱要略」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

当帰芍薬散は、体力のない女性が慢性的に持つ、女性特有の症状の改善に役立ちます。冷えや貧血、月経困難症、体内の水分停滞からくる浮腫や水太りなどです。

妊娠中でも安全性が高く、妊婦さんの安定薬として使われることもあります。女性ホルモンの変動が関係する精神症状に対して、当帰芍薬散が使われることが多いです。温経湯と組み合わせて、不妊症に使われることもあります。

 

漢方では、「気・血・水」が体内を巡っているとされています。3つのうち、「気」はエネルギーを表す陽の物質、「血・水」は体内を巡る液体を表し、陰の物質とされます。

すべてが相互作用しあっていて、それぞれがまんべんなく体を循行すれば不調はありませんが、三つのうち一つの流れに異常が出ると、他の循行にも影響し、体の一部だけでなく、各部位に不調があらわれるのです。

「血」が不足すると「血虚」の状態になります。「血虚」は、貧血、めまい、動悸、不安、ぼんやりするなどの症状をあらわし、「血」の体内の循行も乏しいことから、体の末端まで血液が行き渡らず、冷えの症状を呈します。貧血は、女性であれば月経に異常を来し、月経痛や月経不順、月経前後の頭痛や精神不穏などの心身の症状を引き起こします。

「血虚」は、同じ陰の性質を持つ「水」にも影響を及ぼします。「水」は血液以外、汗、尿、唾液など、私たちの体を構成する液体すべてを指します。

「水」は「血」とともに体内を循行しますが、「血瘀」の影響で「水」の流れも滞ると、体内で不要な「水」がとどまった「水毒」の状態になります。体外に排出されない「水」は、浮腫や胃アトニー(胃の機能低下)となどの不調としてあらわれます。

また、「血虚」で冷えの症状が出ると汗をかきづらく、「水」はますます排出されづらくなり、悪循環となるのです。

当帰芍薬散は、このような「血虚」の状態に対し「補血剤」として効果をあらわします。「血」を充実させて、血液量と血流を増やし、体の末端まで血液と栄養分を行き渡らせます。

「補血剤」の効果がある生薬は、当帰芍薬散の成分のうち、当帰・川芎・芍薬ですが、「水毒」に対しては蒼朮・茯苓・沢瀉が、「利水剤」としてはたらきます。当帰芍薬散は、利尿作用・発汗作用の改善作用などによって、水毒を改善します。

補血作用と利水作用、この2つの作用によって血色をよくし、全体的に青白くむくんで冷えた、いわゆる「水太り」を解消します。

なお、添付文章に記載されている当帰芍薬散の適応は以下のようになっています。

筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:
貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症

 

4.当帰芍薬散の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

当帰芍薬散は、ツムラやコタロー、クラシエなどから発売されています。1日量は、ツムラは7.5g、コタローは9g、クラシエは6gとなっています。

当帰芍薬散は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。当帰芍薬散を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.当帰芍薬散の効き目とは?

効果は最低でも一ヶ月、服用を続け、その後ゆっくりと認められることが多いです。

それでは、当帰芍薬散の効き目はどのような形でしょうか。

当帰芍薬散は、慢性症状をあらわす陰証に効果的であるため、劇的な改善というよりは、ゆっくりとした体質改善に近い効き目です。漢方では、約28日の間に「気」の力により、身体中から「血」を集め、月経が起こると考えます。

体の周期の巡りとともに当帰芍薬散の服用を続けていくと、充実した「血」によって正常な月経が起こるようになっていきます。こうして、効果を実感できることもあります。

 

妊娠中の服用に関しては、貧血や浮腫の改善のほか、腰痛や動悸、めまいや便秘の改善にも効果があるとみられています。妊娠中の体調不良改善の結果として、流産予防、陣痛の軽減にも効果があると言われます。

また、服用によってホルモンバランスが整うことで、妊娠しやすい体に近づくとも言われます。この効果もしばらく服用を続け、体質を改善した結果といえるでしょう。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.当帰芍薬散の副作用

当帰芍薬散では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

当帰芍薬散は、虚弱体質に向く処方です。そのため、体力が充実している、貧血や血行不良の症状がないなど、証が適応しない人が服用した場合、各成分の作用が強く出て、それが副作用として出やすくなってしまうこともあります。

このように誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

当帰芍薬散は、蒼朮・茯苓に消化器官の調子を整える健胃作用がありますが、もともと胃腸が弱すぎる体質には合わないことがあり、胃の不快感や食欲不振があらわれる場合があります。

服用中、眠気と体重増加があらわれることもあります。これは、女性ホルモンが影響します。ホルモンが整い、妊娠に適した体に近づくために起こる現象です。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

当帰・川芎・芍薬が補血剤としてはたらき、貧血、血行不良を改善します。蒼朮・茯苓・沢瀉が利水剤としてはたらき、「水毒」を改善します。「血」を充実させ、「水」の巡りをよくし、月経困難を改善し、女性ホルモンのバランスを整えます。

陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(血虚・水毒)

当帰芍薬散は、以下のような方に使われます。