半夏厚朴湯【16番】の効果と副作用

アイコン 2016.2.7 心に効く漢方薬

心の病では、漢方薬を使うことが身体の病気よりも多いかと思います。

どうしても精神科の薬には抵抗が強い方も多く、漢方薬を希望される患者さんも多いです。それだけでなく、不定愁訴(はっきりしない症状)という部分に漢方薬は強みがあるのです。

半夏厚朴湯は、気の滞りを改善する気剤の中の代表的な漢方薬です。抑うつ気分や不安症状に対して用いられることの多い漢方薬です。うつ病や不安障害などでよく使われる漢方薬です。

ヒステリー球とよばれる咽喉頭部の違和感ではよく使われていて、「何かがつっかえる感じ」に有効な漢方薬です。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、半夏厚朴湯は「ツムラの16番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される半夏厚朴湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.半夏厚朴湯【16番】の生薬成分の効能

理気作用(抗うつ作用)・鎮静作用により精神の安定に働き、制吐作用・鎮咳作用・健胃作用などが認められます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

半夏厚朴湯は、5つの生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

※カッコ内は、製剤1日量に含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

蘇葉による抗うつ作用は、理気作用とよばれるものになります。「気うつ」と呼ばれる気の滞りを改善する作用があります。鎮静作用も相まって、不安や抑うつに対しての効果が期待できます。

加えて、制吐作用や鎮咳作用、健胃作用がみとめられるので、神経性胃炎や咳やかすれ声、つわりにも使われることがあります。

半夏厚朴湯の生薬について

 

2.半夏厚朴湯の証

陰陽(中間)・虚実(虚~中間)・寒熱(寒~中間)・気血水(気うつ)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

証とは、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などになります。これらの証と、漢方薬の特徴を合わせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

病院では、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

半夏厚朴湯が合っている方は、以下のような証になります。

 

3.半夏厚朴湯の効果と適応

半夏厚朴湯は、漢方の古典である「金匱要略」をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

半夏厚朴湯がもっともよく使われるのは、気の滞りを改善する気剤としてです。

気が上手く流れなくなって滞ってしまう状態を気うつ(気滞)といいます。このため、どこかが「つっかえている感じ」が認められます。のどに違和感を感じたり、胸につっかえを感じる時には、気うつの状態であることが多いです。

このような状態になると、抑うつ気分を始め、のどの違和感や呼吸困難感、胸の違和感、頭重感などが認められます。お腹がはって食欲も低下します。

このような状態を改善に向かわせるため、軽症のうつ病の方に使われることがあります。とくに「何かがつっかえる感じ」がある方に有効です。

鎮静作用もあるので、不安障害やストレス性障害にも効果が期待できます。半夏厚朴湯には制吐作用や鎮咳作用、健胃作用が認められることから、呼吸器や消化器の自律神経症状が認められる方に向いています。

その中でもとくに、ヒステリー球という喉の違和感にはよく効きます。更年期障害にも使われることがあります。

なお、添付文章に記載されている半夏厚朴湯の適応は以下のようになります。

気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声

 

4.半夏厚朴湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

多くの漢方薬は、ツムラ・コタロー・クラシエから発売されています。生薬成分の含まれる量は同じなのですが、会社によって漢方薬の1日量が異なります。半夏厚朴湯では、ツムラは7.5g、コタローとクラシエは6gになっています。

粉薬が苦手な方は、クラシエでは錠剤があります。しかしながら1日量が12錠になるので、飲むのが大変です。

半夏厚朴湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用することで、麻黄や附子などの効果の強い生薬は胃酸によって効果をおだやかになり、その他の生薬は早く腸に到達して吸収がよくなります。半夏厚朴湯では、空腹時の方が吸収がよくなります。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.半夏厚朴湯の効き目とは?

効果は2週間以上かけて、ゆっくりと認められることが多いです。

それでは、半夏厚朴湯の効き目はどのような形でしょうか。

半夏厚朴湯の効果は、人それぞれです。証がぴったりと合う方には、効果テキメンなこともあります。いままで様々な症状で悩まされていた方が、ビックリするくらいに穏やかになることもありました。その一方で、まったく効果の実感がない方もいらっしゃいます。

半夏厚朴湯は、一般的には効き目はゆっくりです。とくに病気で悩まされていた期間が長い患者さんほど、そのバランスを整えるには時間がかかります。効果は2週間くらいで認められることがあります。じっくりと1~2か月かけて効果が認められることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

このような効き目なので、抗不安薬のようにすぐに不安を取り除いてくれるような即効性はありません。ですから、不安発作に頓服として使っても効果は期待しにくいです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.半夏厚朴湯の副作用

半夏厚朴湯では、誤治やアレルギー反応による副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

 

また、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。半夏厚朴湯の生薬成分では、明らかな副作用を引き起こすものはありません。

 

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

7.半夏厚朴湯の効果が期待できる人とは?

半夏厚朴湯は、効果があると信じ込める人の方が効果が期待できます。

昔から「良薬は口に苦し」といわれてきたように、独特の苦みが漢方の効能を引き立たせてくれることがあります。このような思い込みの効果ともいえるプラセボ効果(偽薬効果)は、心の病気では非常に大きいです。

一般的に精神科のお薬は、30%ほどのプラセボ効果があるといわれています。臨床試験などを行うと、ダミーの薬でも3割くらいの人には効果が認められるのです。漢方薬のプラセボ効果は、西洋薬よりも大きいという報告もあります。

ですから、半夏厚朴湯は効くと思い込んで服用した方がよいのです。そういう意味では、信じ込める人の方が効きやすいのです。せっかく服用するのですから、「こんなに苦いんだから半夏厚朴湯は効くんだ!」を思いながら服用してください。

半夏厚朴湯を心の治療に使う時は、現実的には以下のケースがあります。

病気や症状という面で見れば、半夏厚朴湯はこれまでお伝えしてきたような方に向いているといえます。しかしながら、半夏厚朴湯の効果だけを期待して使うケースばかりではありません。

実際の現場では、さまざまなケースで半夏厚朴湯が使われています。せっかく服用されるのでしたら、しっかり効くと言い聞かせながら服用してください。

 

まとめ

理気作用(抗うつ作用)・鎮静作用により精神の安定に働き、制吐作用・鎮咳作用・健胃作用などが認められます。

陰陽(中間)・虚実(虚~中間)・寒熱(寒~中間)・気血水(気うつ)

半夏厚朴湯は、以下のような方に使われています。