漢方の舌診とは?

アイコン 2015.11.24 漢方の基礎知識

漢方の診察のひとつに、舌診という方法があります。舌をみることで、身体の状態を推測していくができます。舌は血管が豊富に集まっているところなので、「血」の状態が見た目にでてきます。また、粘膜にもおおわれているので、体液などの「水」の状態もわかります。

このように、舌を観察することで身体の不調が見えてくるので、漢方では舌診が重要視されます。ここでは、漢方の舌診がどのようなものなのか、気血水の異常と舌でのあらわれ方も整理してご紹介したいと思います。

 

 1.漢方の舌診とは?

舌をみることで、血管から「血」の状態と、粘膜から「水」の状態がわかります。

舌は、非常に活発に動く筋肉です。舌がなければ話せませんし、食事もとれなくなってしまいます。ですから、舌の運動を維持するために、豊富に血管をめぐらせて栄養と酸素を舌の筋肉に届けています。また、舌は身体の外にされされています。さまざまな敵から身を守るために、粘膜でその周りを覆っています。

ですから舌をみれば、血管と粘膜の状態が分かります。漢方の世界では、身体の不調は気・血・水の異常ととらえています。

舌をみることで、血管から「血」の状態と、粘膜から「水」の状態がわかります。

舌診では、舌のさまざまな状態をみていきます。

 

2.舌診での注意点とは?

照明の明るさや色の濃い飲食物に注意が必要です。

食事を食べていない空腹時での舌の状態を見ていきます。舌を診ていくときの注意点を見ていきたいと思います。

できれば、自然光の下で診察することが望ましいでしょう。舌は、照明の種類によって舌の色がずいぶんと変化します。また、毎回同じ場所、同じで照明のところで、舌診をしていきます。毎回同じ条件で診察しないと、変化に気がつけません。

また、暗いと白色と黄色の区別がつきにくいため、十分な明るさのところで舌診を行いましょう。毎回できれば写真撮影することをおすすめします。現在は携帯電話で写真がとれるので、舌診の勉強はしやすくなっていますね。

濃い飲着色料を含む飲食物を口にすると、舌苔が飲食物の色に染まります。カレーやコーヒー、紅茶といった飲食物だけでなく、うがい薬のイソジンなども着色が濃く、舌に色がついてしまいます。

本来の舌の色と異なってしまいますので、診察するときは事前に何を食べたか聞いておきましよう。診察する前にうがいをしてもらうこともおすすめします。

 

3.舌診でのみていくポイント

舌の4つの部位をみてから、全体をみていきます。最後に舌苔をみていきます。

舌診をするときは、舌を4つの部位に分けて診察します。4つの部位は以下のようになります。

次に舌の全体をみます。そのときは色と形に注意して診察します。

そして最後に舌苔を診察します。舌苔は色や、舌苔の厚さや質を診察します。

 

4.漢方での気血水の異常と舌診の関係

漢方での気血水の異常が舌診ではどのようにして認められるのかをみていきましょう。まずは、気血水ではどのような異常が認められるのか、確認してください。

の異常

気うつ(気滞) 気が上手く流れない状態
気虚 気の足りない状態
上衝(気逆) 怒りやストレスで気が上昇する状態

の異常

瘀血 冷えなどで血のめぐりが悪い状態
血虚 血が足りない状態
血熱 血に熱が入り、血行が加速している状態
の異常 水毒(水滞) 余分な水がたまり、滞っている状態
津虚 水が不足している状態

詳しく知りたい方は、「漢方の気血水とは?」をお読みください。

気血水は相互に影響しあっていて、色々な状態が組み合わさります。8つの異常で認められる典型的な舌診の特徴を整理してみました。

 

4-1.気の異常

【気虚】

状態:気の不足

舌の状態:歯痕舌・地図状舌

全体的に淡い色となることが多いです。舌がむくんで分厚くなり、歯の列の中に収まりきらないため、舌の縁に歯の跡がつく歯痕舌が認められることがあります。また、地図状舌といって、舌苔がまだらについている状態がみられることもあります。地図状舌は西洋医学では原因不明で、何らかの代謝の異常と考えられています。

「気」は「水」のめぐりをよくする働きがあるので、「気」が不足すると「水」も滞ってしまいます。このため、むくみが舌にあらわれることが多いです。

【気うつ(気滞)】

状態:気の循環異常、気が滞っている

舌の状態:厚白苔舌・胖大舌

舌の縁の両側が赤く、中央に白や黄の舌苔のある厚白苔舌がみられます。水分が多くなり舌が大きくて硬くなっており、胖大舌といいます。舌は硬いので、歯痕舌のように跡がつきません。

【気の上衝(気逆)】

状態:気が逆流して頭にいき、のぼせる状態

舌の状態:薄白苔舌

舌は大きくなっており、歯痕があることもあります。舌苔は白くて厚さは薄い状態となっていて、薄白苔舌とよばれています。

4-2.血の異常

【瘀血】

状態:血の循環が悪い状態

舌の状態:青紫裂紋舌

全体的に暗紫色で、黒いシミのような斑点があることもあります。血行が悪くなってネバネバするので、乾燥を起こして溝ができやすいです。舌の裏の静脈が黒々と浮き出ている状態となることがあります。

【血虚】

状態:血が不足している状態

舌の状態:淡泊裂紋舌

舌は小さく、全体的に淡い色となります。舌苔は薄い状態です。乾燥しやすいため、亀裂(裂紋)ができることもあります。

【血熱】

状態:血の中に熱がこもっている状態

舌の状態:紅絳舌

舌は大きくなり歯痕舌であることもあります。血がたまっていて深い紅色をしていて、乾燥しやすいため裂紋もあります。舌苔は少ないです。

4-3.水の異常

【水毒】

状態:水が多い状態

舌の状態:淡胖白膩苔

舌が水によって肥大し、歯痕が著明となります。舌苔も厚く白い状態です。分厚くてネバネバした舌苔に覆われて舌が見えなくなっていて、膩苔とよばれています。

【津虚】

状態:水が不足している状態

舌の状態:痩薄舌

舌の色は淡泊となっていて、乾燥しやすいために裂紋も認められます。

 

5.舌診以外の漢方の診察とは?

舌診は「望診」の中のひとつで、その他の「聞診・問診・切診」とあわせて四診と呼ばれています。

東洋医学の診察には主に4つの方法があります。望診・聞診・問診・切診です。この4つの診断方法をまとめて「四診」と呼びます。舌診とは、望診の中の一つの方法です。

このように漢方を専門にしている先生は、検査に頼ることなく患者さんを五感を使って観察しながら、病気の本質や現在の状態を把握していくのです。これには膨大な知識と経験が必要になります。

私たち西洋医学で病気をみていく医師は、本当に漢方を理解して使っていくことはできないというのが本音です。漢方を専門に長年研鑽をつまれている先生は別ですが、多くの漢方を得意という先生は、ただ単に「漢方の情報をいっぱい知っている」にすぎません。この症状ならこの漢方といった程度のもので、本当のところでの漢方知識はもっていません。

これは仕方がないことなのです。漢方薬の中には、非常に効果が期待できるものがあるのも事実です。ですから私たち医師は、症状に効くと言われている漢方薬を、患者さんの体質に合わせて処方するという方法をとっています。少しでも患者さんの体質を把握できるように、私も舌診を勉強しています。

 

まとめ

舌をみることで、血管から「血」の状態と、粘膜から「水」の状態がわかります。

照明の明るさや色の濃い飲食物に注意が必要です。

舌の4つの部位をみてから、全体をみていきます。最後に舌苔をみていきます。

舌診は「望診」の中のひとつで、その他の「聞診・問診・切診」とあわせて四診と呼ばれています。