漢方薬でみられる副作用とは?

アイコン 2016.1.27 漢方の基礎知識

漢方薬は安全性が高いと思われている方が多いかと思います。それは否定しませんが、漢方薬に副作用がないわけではありません。

漢方薬は生薬を配合したものとはいえ、その生薬には様々な作用があります。生薬の中にはとても強い作用を持つものがあります。体質や病状に合わない漢方を使ってしまうと、調子が崩れてしまうことがあります。これを西洋医学でいえば、副作用になります。

現在は漢方薬は病院でも医療保険の中で処方することができます。私たち医者は、漢方の専門家とは違います。できる限り体質やバランスの崩れ方は意識しますが、病院では症状や病気に対してこの漢方という形で使われることがほとんどです。

このため、体質に合わない漢方を処方してしまい「誤治」となってしまうことはよくあります。その結果、副作用がみられることもあるのです。ここでは、漢方薬の副作用についてお伝えしていきたいと思います。

 

1.漢方薬の副作用の考え方

漢方では、証に合わない漢方による誤治や、特定の生薬による副作用が認められることがあります。

普通の病院で処方されるお薬は、症状や病気に対して「薬」が処方されます。このため目的とする作用があって、それ以外の余計な作用は副作用という表現をします。

副作用も、薬の作用の仕組みから原因を推測することができます。ですから、副作用を軽減するためにはどうしたらよいのか、対策をある程度考えることができます。場合によっては、副作用止めを使うこともあるのです。

 

漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、証の見定めを間違えたことを意味します。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

しかしながら、中には漢方の特定の生薬成分が原因となって生じる症状があります。食べ物でもアレルギーがありますし、生薬の漢方でもアレルギーが起きることもあります。特定の生薬の作用によって、「副作用」がみられることもあります。

 

2.漢方薬の誤治とは?

証を見誤ると、さまざまな症状となって現れます。このことが証を考え直すきっかけになります。

適切な漢方薬を選んでいくためには、漢方独特の四診によって「証」を決めていく必要があります。証とは、診断のようなものです。その人の体質、身体の抵抗力、病気の原因、身体のバランスの崩れ方などを見極めていきます。

その証にあった漢方薬を選んで使っていきます。この証を間違えてしまうと、合わない漢方薬を使ってしまうことになります。例えば、温めるべきときに冷やす漢方を使ってしまうと、症状は悪化してしまいます。誤治でみられる症状を以下にあげてみます。

  正治 誤治
気分 不快
睡眠 良眠 不眠
食欲 増加 減少
消化器症状 快便・健胃 便秘・下痢・吐き気
排尿 快尿 頻尿・乏尿・残尿感
生理 順調 不順
自律神経 良好 冷え・ふらつき・ほてり

 

このように、生薬の作用とは関係なく全体的に合わないサインが認められたら、誤治と考えて証を改めて考えます。このこともヒントにしながら、適切な証をみつけていくのです。

 

3.漢方薬の生薬による副作用

漢方薬は、さまざまな生薬の配合によってできています。その中の特定の生薬によって、好ましくない症状が出てしまうことがあります。大きく分けて2つあります。

食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。

また、生薬自体の作用により、好ましくない症状がみられることがあります。生薬ときくとあまり効果が強くないイメージを持たれるかもしれませんが、そんなことはありません。

皆さんの馴染みが深いものとしては、食べ物にもよく使われる生姜があります。生姜を食べると身体が温かくなりますし、漢方でも冷えによく使われています。生薬の効果は決して弱いものではありません。

生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。主な副作用として、食欲低下、発熱やじんましん、むくみ、動悸、不眠、血圧上昇などがあります。ごくまれではありますが、重大な副作用として間質性肺炎があります。

特に注意すべき生薬についてひとつずつ見ていきましょう。

 

3-1.麻黄・附子

交感神経刺激作用による副作用が認められます。

動悸・頻脈などの心血管症状、悪心・嘔吐などの消化器症状、不眠やイライラなどの精神症状、多量の発汗や舌のしびれなどの自律神経症状があらわれることがあります。

麻黄には、交感神経刺激作用を持つエフェドリンが含まれています。このエフェドリンによって、交感神経が優位になって過緊張状態になります。心臓の働きは高まり、消化は抑えられます。頭は覚醒して気持ちはピリピリし、汗の分泌が多くなるのです。

このように交感神経を刺激することは、心臓に負担をかけてしまいます。そのため、狭心症、心筋梗塞などの疾患や既往歴があれば、慎重に投与しなくてはいけません。妊婦さんでも子宮の収縮を促してしまうので避けなければいけません。

 

附子は猛毒で知られるトリカブトの根を弱毒化したものです。主成分はアコニチンで、利尿・強心・鎮痛作用があります。附子も交感神経を優位にする生薬です。ですからその副作用は、動悸・頻脈などの心血管症状、悪心・嘔吐などの消化器症状が中心となります。口のしびれなどの神経症状がみられることもあります。

 

3-2.甘草

偽アルドステロン症と呼ばれる副作用により高血圧やむくみ、低K血症などが認められることがあります。

体液が過剰になることで高血圧や手足のむくみ、尿量の減少などが認められます。また、低K血症によって筋肉痛や脱力、けいれんなどが認められることがあります。このような病態を偽アルドステロン症といいます。

アルドステロンは、尿におけるナトリウムやカリウムといったミネラルのバランスを調整するホルモンです。アルドステロンが働くと、ナトリウムを再吸収しカリウムを排泄します。ナトリウムと同時に水分を再吸収するので、血圧が上がります。カリウムは排泄してしまうので低K血症になります。

甘草に含まれているグリチルリチンという成分は、コルチゾールを増加させることによってアルドステロンのターゲットの受容体の働きを強くします。まるでアルドステロンが増えたかのような作用がみられるので、偽アルドステロン症がいいます。

すぐに副作用がみられることもあれば、時間をかけてジワジワと進んでいくこともあるので、定期的な血液検査や心電図を行っていく必要があります。

 

3-3.桂皮・当帰・黄今

薬疹の頻度が高く、まれに重症薬疹がみられることがあります。

どのような薬でもみられる副作用として薬疹がありますが、桂皮・当帰・黄今の生薬を含む漢方薬では、薬疹が認められやすいです。とくに飲み始めに認められることが多く、発疹や発赤、かゆみなどに注意が必要です。

ほとんどの薬疹は大きな問題に発展することはありません。ですが、まれに重症化してしまうことがあります。眼や口などの粘膜に水疱が生じるスティーブンス・ジョンソン症候群、さらに広範囲に全身の皮膚がヤケドのようにただれる中毒性表皮壊死症が見られることもあります。このような重症薬疹は死に至ることもあるので、注意が必要です。

 

3-4.黄今

小柴胡湯による間質性肺炎が世間を騒がせましたが、黄今が原因ではと考えられています。

小柴胡湯による間質性肺炎での死亡例の報告は、漢方薬は安全という神話が打ち砕かれたきっかけとなりました。間質性肺炎によって肺が線維化してカチコチになってしまい、呼吸状態が悪化します。

間質性肺炎の初期症状としては、予想外の発熱、息切れや呼吸困難、かわいた咳などがみられます。胸のレントゲンをとると、すりガラス状の影が認められます。

小柴胡湯に含まれる成分のうち、黄今が原因ではないかと考えられています。

詳しく知りたい方は、「漢方薬は安全?漢方薬による間質性肺炎」をお読みください。

 

3-5.地黄・大黄

地黄では胃の動きが悪くなり、大黄では腸の動きが活発となります。

地黄は、胃の動きを悪くするという作用があります。このため、食欲低下、胃の不快感、吐き気や嘔吐、下痢などの副作用が認められることがあります。動きが悪くなるだけですので、胃を荒らすことはありません。

大黄は、便秘によく使われる生薬です。腸の動きをよくすることで便の排泄を促します。大黄の効果は個人差も大きく、少しの量でも効きすぎてしまって腹痛や下痢がみられることがあります。

 

まとめ

漢方では、証に合わない漢方による誤治や、特定の生薬による副作用が認められることがあります。

特定の生薬によるものとしては、「麻黄・附子」による交感神経刺激による副作用、「甘草」による偽アルドステロン症、「桂皮・当帰・黄今」による薬疹、「黄今」による間質性肺炎には注意が必要です。「地黄」では胃の動きが悪くなり、「大黄」では腸の動きがよくなります。