総合内科ってどんな内科?

アイコン 2016.3.7 内科について

内科は主に、消化器内科・循環器内科・内分泌糖尿病内科・腎臓内科・呼吸器内科・血液内科・神経内科・リウマチ内科の8科に分けることができます。

それぞれの内容について詳しく知りたい人は「内科の種類にはどんなものがあるのか」を読んでみてください。

これらの内科は、病気ごとに専門分野を分けて特化した内科になります。ですが実際には、ひとりが複数の病気をかかえていることが多いです。そんな患者さんは、病気ごとに違う内科の先生にみてもらわなければいけなくなりますね。

このように一つの病気ではなく、ひとりの人を診ようとする内科として総合内科があります。

しかし日本では、総合内科はまだ確立されていません。それはなぜでしょうか?総合内科が進んでいるアメリカと比較しながら書いていきたいと思います。

 

1.総合内科の役割①

軽症の病気を複数抱えている患者さんの治療にあたります。病気ではなく、ひとりの患者さんを全体的にみていく内科です。

ひとりの患者さんが、複数の病気をかかえることはよくあります。生活習慣病と呼ばれる病気はその代表例で、例えば糖尿病を患っている人は高血圧を患っていることも多いです。

大きな病院ではそういった時に、糖尿病は糖尿病内科、高血圧は循環器内科と別々に診ている事が多々あります。また、高血圧や糖尿病などの患者さんが、タバコの吸いすぎで息が苦しいといった場合、「レントゲンを撮っておくから詳しくは呼吸器内科で診てもらいましょう」と、同じ内科の中でもさらに別の科に回されることがあります。

このように、専門の科で別々にみていく必要があるのでしょうか?例えばお酒を飲みすぎたら、糖尿病も悪化するし血圧も上がります。それを別々の科にみてもらって、各々お薬を変更する必要があるのでしょうか?

軽症な疾患でも、継続して治療して続けなければいけない病気は沢山あります。そういった事を踏まえて、一つ一つの「病気」じゃなく、一人一人の「患者さん」を診ようという考えが総合内科です。

家庭医学科とも呼ばれることも多く、一人の患者さんを同じ一人の医師が見続けることによって、その患者さんに何か変化があった時にはすぐに対応しようという考え方です。

 

2.総合内科の役割②

はっきりしない症状があった時に、複数の疾患が背景にあるのか、どの専門内科が適切なのかを最初に判断していきます。

例えば、こんな患者さんを診るのも総合内科です。もともとタバコを大量に吸っていて、お酒も毎日飲んでる人がいます。

こういった背景の人が、「頭が少しぼんやりして、体が重い。咳も出てきた気もする。さらにお腹も張ってきたなぁ。」と複数の主訴であったら何科でしょうか?

頭がぼんやりするならまず神経内科?
タバコも吸って、咳しているなら呼吸器内科でしょう。
いやいや、お酒の飲みすぎで肝硬変なんだろうから、消化器内科で。
体が重そうなら心不全で浮腫んでるだろうから循環器内科ですよ。

どの科からスタートを切れば良いか分かりません。最初の科がスタートを切っても、

「頭のCTは異常ないから神経内科では問題ありません。」
「胸部のレントゲンは異常ないから呼吸器内科では問題ありません。」
「腹部CTで腹水溜まってないから消化器内科では問題ありません。」
「心電図では問題ないから循環器内科では問題ありません。」

受診したらしたでどこの科でも、「異常はない」「問題はない」で次の科へどうぞとなってしまう事があります。その科の先生は問題ないというけど、患者さんにとっては困っているから受診しているのです。これが世にいう医療のたらい回しでしょうか。

そういったどの科で診たらいいか分からない時に登場するのが「総合内科」です。最初に総合内科の先生が、どこの部分が調子が悪いのかを調べるのです。このようにみていくと、総合内科はとても必要そうな科に感じるかと思います。しかし日本では、いまいち総合内科が充実していきません。

どの科でスタートを切っても、その科の先生はある程度目星をつけて、次の科へ行くように指示することがほとんどです。そしてそこで治療が始まっていくのです。ですから日本では、総合内科がない病院が多いです。

重症例で救急車で運ばれてきた場合はどうしているのかというと、救急科がある病院はそちらで対応しています。救急科がない病院では、それぞれの内科医が持ち回りで診察しています。

 

3.アメリカと日本での総合内科の違いは?

総合内科が生まれたのがアメリカであり、最も発達しているのもアメリカです。そこでアメリカと日本の総合内科は何が違うか見ていきましょう。

 

3-1.アメリカでは総合内科はどうなっているのか

アメリカでは総合内科が、一つの科としてしっかり独立して活動しています。主にその医療内容は家庭医学科と呼ばれています。

医療が最初に登場した時は内科もこんなに細かく分かれていませんでした。医療が進むにつれて、こういった○○内科という細分化が進んだのです。

アメリカでも20世紀初頭には全医師の半数を占めた総合内科医が、1960年代なかばには2割程度にまで減少しました。○○内科と特化していないとダメだろうという時代はアメリカにもあったのです。

しかし一人の人が複数の科を受診するようになり、これが人にとって本当に良いのかと問題になりました。そんな背景で1969年に『家庭医学科』が専門科として設立されました。

この家庭医学科は以下の5つの事が重要視されました。

  1. Accessibility(近接性)
  2. Comprehensiveness(包括性)
  3. Coordination(協調性)
  4. Continuity(継続性)
  5. Accountability(責任性)

それぞれを詳しくみてみましょう。

①Accessibility(近接性)

常に身近な存在としていることです。距離的も近く通いやすい、経済的な負担が軽いなどの面だけでなく、医師と患者さんが気持ちも近く、気兼ねなく話せるなどの内面の近接性も含みます。

②Comprehensiveness(包括性)

先ほどのように高血圧、糖尿病など細かく専門科を分けずに、一人の患者さんの疾患全てを診ます。これは継続的な薬の処方だけでなく、それぞれの病気の予防や、新しく発症した病気の対応まで含みます。

③Coordination(協調性)

今まで診てきた病気が悪化したり、新しく発病した際に専門家と協力して診ていくことです。その時大切なのは他の先生にバトンタッチというよりも、患者さんと一緒に協力して診ていくという姿勢です。専門家で診断がついた、治療が落ち着いた際は、また家庭医学科として診ていきます。

④Continuity(継続性)

年齢は関係なく、受診したらいつまでも診ていくことを示します。「ゆりかごから墓場まで」という言葉を目標に、寄り添える限り治療を継続して、さらには病気が良くなったとしても続けて診ていくことを目指します。

⑤Accountability(責任性)

以上4つの事を、医師が責任を持って医療に努めることを示します。患者さんに分かりやすく診療し、医師と患者の二人で診ていく責務を果たします。

この5つを柱に、現在アメリカでは総合内科がしっかりと機能しているのです。

 

3-2.アメリカと日本ではなぜ総合内科のあり方が違うの?

保険制度の差が大きいです。アメリカでは総合内科でしっかりと予防管理していないと保険はおりません。一方で日本は国民皆介護保険のため、どんな人でも治療費が一定の負担で済むようになっているのです。

実は総合内科ブームは1980年代日本でも起こり、特にアメリカで研修された先生達によっていくつか総合内科が誕生したのです。しかし残念ながら、アメリカの家庭医学科とは程遠い存在になってしまったところが多いです。

総合診療科と標榜されても、日本は専門分野のブランド化が強く、住み分けが全くされなかったのです。医療業界もサービス業ですので、経営面もどうしても考えていかなければなりません。多くの病院では、うまく軌道に乗らなかった総合内科を解体してしまいました。

それではアメリカでは成功した総合内科が、どうして日本では成功しなかったのでしょうか?それは保険制度の違いが挙げられます。

アメリカでは保険会社が病気になったときにお金を負担するのですが、この際に自分の健康をちゃんと管理しているかが問われることが多いのです。

具体的な症例を一つ示しましょう。元々高血圧だった人が心筋梗塞で倒れたとします。その時に保険会社は、心筋梗塞のリスクファクターである高血圧がしっかり管理されていたかでお金を出すのか決めるのです。

こうした、「自分の健康は自分でまず守る」の精神をもとにアメリカの医療は成り立っているため、高血圧と診断されたアメリカ人のほとんどは家庭医学科で高血圧の治療を継続しています。

一方で日本では、国民皆保険制度のもとに全員が保険で医療を受けられます。つまり高血圧をしっかりコントロールしてる、していないに関わらず、皆医療保険が受けられるのです。

一見すると自分の健康はしっかり自分で守らせるアメリカの保険制度が良いようにみえるかもしれませんが、これは負の側面もあります。高血圧と診断されたのに、放っておいて心筋梗塞になった人はどうなるのでしょうか?

「高血圧をしっかりコントロールしなかったから、心筋梗塞になるリスクが上がって結果的になってしまったのですよ!自己責任ですから当社は一切関与しません。」

つまりお金が出ないので、自動的に治療が受けられなくなる人も大勢いるのです。アメリカでは、保険会社に保険代金が払えない人は虫歯すら治せない社会です。アメリカのドラッグストアには、虫歯の時に気を紛らわせる用のガムも売ってます。日本では医者が診断してでないと処方できないような強力な薬も、アメリカでは普通に売っています。

「自分の身は自分で守る」で銃を持つのも許されるアメリカは、医療に関しても自己責任という厳しいレールを敷いてるのです。

しかしここで私が言いたいのは、どっちの保険制度が良いかということではありません。心筋梗塞は、日本で多くの人が命を落としている疾患です。病院で治療を受ければ大丈夫という病気ではありません。保険制度でお金が出る、出ないという問題ではなく、しっかりと日ごろから高血圧などの病気は管理して重大な病気にならないように予防することが大切なのです。

 

3-3.日本では総合内科はないのか?

一部ではしっかりと日本で総合内科を標榜している病院もありますが、アメリカの家庭医学科とはかけ離れた内容になっていることが多いです。

1976年に日本で初めて奈良県の天理よろず相談所病院に総合診療部が設置されました。その後、1981年川崎医科大学に大学初の総合内科が作られ、さらに2000年代ではアメリカで研修された先生たちを元にして作られた総合内科が有名になった病院がいくつかあります。

これらの有名どころの病院では、感染症内科や救急科といった元々全身を診る科が集まって総合診療科として存在していることが多いです。そのため家庭医学科というよりは、いろいろな病院に行っても診断がつかない患者さんを救う科としてエキスパート揃いといった科となっています。実際に有名な病院で総合内科として研修される先生も、そういったスーパードクターを目指していることが多いです。

しかしながら大部分の総合内科では、正直各々の病院で足りない部位を埋める科としての存在になってしまってます。救急科がない病院では総合内科が救急車の対応をしたり、消化器内科と循環器内科しかない病院は、それ以外の疾患の場合は総合内科として何人かの先生で診たりしています。一部の大学病院などでは研修医などの若手医師の教育の場となっているところもあります。

このような総合内科ですと、多くの専門内科と比べると立場が弱くなってしまう事が多いです。病院によっては「雑務内科」や「教育内科」といった扱いであり、総合内科の魅力が伝わりづらいことが多いです。

このように日本では総合内科といっても病院によって全く異なる顔を見せており、「総合内科とは?」と聞かれても他の専門内科のように一言で説明できないことが多いです。

 

4.日本の今後の総合内科はどうなるの?

日本においても、自分の専門分野以外もしっかりとみれることが求められるようになってきています。これをうけて2017年から、内科の研修制度が新しくなります。

新内科研修制度も含めて、日本の総合内科の今後について考えていきたいと思います。

 

4-1.総合内科学会や総合内科専門医はあるのか?

総合内科学会はありません。総合内科専門医はありませんが、家庭医療専門医があります。

内科は専門分野にいろいろ特化してますが、大元は日本内科学会にそれぞれ属しています。2016年度に日本内科学会に属している学会は13科です。

日本総合内科学会というものは存在していません。2010年から、日本プライマリーケア連合学会が作られましたが、まだまだ歴史が浅いです。さらには総合内科は病院によって全く内容が異なるので、総合内科がなかなか確立してきていません。

また各々の学会には専門医が設定されています。つまり各学会が、それぞれの専門家として認めたという証です。

客観的に評価するために学会ごとに経験年数や経験症例数、論文発表数や学会での発表数が定められ、最終的に筆記試験や口頭試問に合格することで、その科の専門としての能力を学会から認めてもらえるようになります。

日本プライマリーケア連合学会の家庭医療専門医制度がありますが、発足してまもないためあまり浸透していません。これまでは総合内科学会にあたる組織がなかったので、おおもとの内科学会が内科認定医(内科専門医)ということで、総合内科にあたる専門医を認めていました。しかしこれが、現場の総合内科とは大きくかけ離れた試験内容でした。

まず提出する症例ですが、細かい分野に分かれて指定されています。さらにそれらの病気の入院患者のみが認められているのです。つまり、それぞれの科での病気に関するまとめに過ぎないのです。

さらに試験が各科の非常に最先端の知識を問われるので、かなりの難問です。問題によっては日本でまだ報告されてない病気や、今後入ってくるだろうと言われる最新の薬剤などなど、その分野の専門家でない限りはまず使わない知識が問われていました。

内科認定医を取得するのに、全く現場で使わない知識を勉強して詰め込みます。しかしテストのためだけに詰め込んだ知識は、学校の時の期末試験と同じく、テストが終わったら色あせてしまいます。そのようなあやふやな知識は現場では使えません。

また入院症例しか認めない時点で、全ての科がある程度そろってる大きな病院で働いてないと取得はまず無理です。そのためアメリカのような本来の総合内科として働いている医師の方が、内科認定医を取得しづらかったのです。

 

4-2.今後、日本での総合内科はどうなるのか?

2017年度から内科学会は、新・内科専門医として初期研修を含めて5年間の研修後に専門科に進むようにします。

この内科認定医のあり方において、全く総合内科としての機能をみていないと上層部からも多くの意見が噴出されました。

日本内科学会でも危惧されて、以下の文章が書かれています。

「研修医制度が始まってから、認定内科医の研修期間における内科全体の研修期間が減少する傾向が見受けられるようになりました。そして徐々に内科系研修が専門的な内容(subspecialty)研修に偏り、総合的に診れる内科(generalist)の力が落ちてますし、内科系専門医の領域的、地域的偏在などの問題も顕在化してきました。」

そのため2017年度から新制度が始まります。日本内科学会では、

「内科系医師に必須な条件であるgeneralityと subspecialtyの調和を保った標準レベル以上の新しい世代の内科専門医の養成を目的とします。そのために、内科200症例以上を経験し、そのうち各内科領域について2例ずつ病歴要約を提出することが求められます。提出した病歴要約は査読を受け、さらに筆記試験を合格することにより、新・内科専門医として認定されます。研修には初期研修を含め、5年を要することになります。」

ということが決まりました。つまり初期研修で2年間色々な科を回ったのに追加して、3年間さらに全ての内科分野を回り、全科が診られるようにしましょうといった内容です。

しかしこれは総合内科の地位を確立するのではなくて、内科医はみな総合内科医としての力を持っておきましょうという内容です。この2017年度の制度で、ますます総合内科は肩身が狭くなるのでは?と個人的には思っています。

 

5.日本には家庭医学は存在しないの?

アメリカにおける総合内科は、日本ではクリニックの内科にあたると思います。普段から自分の健康をクリニックで定期的にみていくことが大切だと感じます。

ここまででアメリカのような総合内科は存在しないのか?と疑問に持った人もいるかもしれませんが、実はあなたの身近にたくさん総合内科として存在しています。

それは、あなたの町のクリニックです。最初にアメリカの5つの理念をみてください。

  1. あなたの身近にいつもあり(近接性)
  2. あなたの健康全てを考えながら(包括性)
  3. あなたと一緒に歩み続けて(協調性)
  4. あなたの体調を常にみていてくれて(継続性)
  5. あなたに対して責任を持ってくれる(責任性)

をあげましたが、これは日本におけるクリニックの目指すべき役割なのです。クリニックによっては専門性を求めているところも多くなってきますが、原点はこの家庭医学にあると思います。

今の世の中は、専門性の高さに人気が集まります。最近のクリニックも、「〇〇と△△に特化したクリニック」などと謳っているところがたくさんあります。確かに強みはあるのかもしれません。ですが専門的な部分を求めるならば、大きな病院にいけばたくさん専門家がいます。

患者さんは自分のひとつの症状に目を奪われがちです。ですがその原因が、実は全く違うところからきていることもあります。あなたという人全体をみてくれるクリニックに相談しておけば、専門的な治療が必要な時は適切な医療機関に紹介してくれます。

色々な内科クリニックは沢山ありますが、上の5つをしっかりと意識した家庭医学ができるクリニックを見つけて、あなたの身体を守っていきましょう。病気を治すことも大切ですが、病気にならないように予防することも大切です。病気になってからでは遅い。そんなことも多々あります。

「何かあったらまず受診しよう」と思えるクリニックを見つけてください。医師としても、何度もきてくれる患者さんはカルテをみなくてもわかるようになってきます。そんな関係性の中で見つかってくる病気もあります。

まとめ

アメリカでは総合内科は、家庭医学科として確立されています。

アメリカの総合内科で重要視されていることは、以下の5つです。

  1. Accessibility(近接性)
  2. Comprehensiveness(包括性)
  3. Coordination(協調性)
  4. Continuity(継続性)
  5. Accountability(責任性)

現在、日本での総合内科は確立されておらず、2017年度から内科医はまず総合内科の知識を持つように研修するようにプログラムを作成しています。

アメリカにおける総合内科は、日本ではクリニックの内科にあたると思います。普段から自分の健康をクリニックで定期的にみていくことが大切だと感じます。