演技性パーソナリティ障害の治療と周囲の方の接し方や対応のポイント

アイコン 2016.12.30 演技性パーソナリティ障害

派手な恰好やオーバーアクションで人の気を引こうとする演技性パーソナリティ障害。妙になれなれしかったり、誘惑的な態度を取ったり、周囲の人も巻き込まれて困惑してしまうこともあります。

しかし、けしてそれは、悪意があってトラブルを巻き起こそうとしているわけではありません。そうやって周囲の関心を集めなければ、自分自身の価値を感じたり生きがいを感じたりすることができない心理状態にあるのです。

演技性パーソナリティ障害は、ただの性格の問題ではなく、病院での治療対象となります。それでは実際に、どのような治療を行うのでしょうか。

治療には時間がかかることが通常なので、その間付き合う周囲の方も色々と大変です。もし身近に演技性パーソナリティ障害の人がいた場合、どのように接して対応すればいいのでしょうか。

ここでは、演技性パーソナリティ障害(演技性人格障害)の治療、周囲の方の接し方や対応のポイントを診ていきたいと思います。

 

1.演技性パーソナリティ障害とは?

演技性パーソナリティ障害では、他者からの注目を極度に浴びたがる人格傾向があり、それが特徴として行動に現れます。

まず初めに、演技性パーソナリティ障害とはどのようなものかを簡単にまとめます。障害を理解することで、より冷静な対応がしやすくなります。

 

詳しく知りたい方は、「演技性パーソナリティ障害(演技性人格障害)の特徴をチェック!」をお読みください。

 

2.演技性パーソナリティ障害の心理

演技性パーソナリティ障害の方は、一見すると自信に満ちているように見えるかもしれません。しかしながら自分がよくわからず、内面の充実感が得られていないことも多いです。

演技性パーソナリティ障害の方を外から見ると、華やかな出で立ち、セクシーな振る舞い、オーバーな話し方やリアクション、とにかく派手な印象があります。

普通に考えると、「ああ、あの人はよっぽど自分に自信があるんだな…」と思ってしまいます。もし、それに成熟した内面がともなっているなら、それは非常に魅力的な人物となるでしょう。実際にそのような特質を利用し、演劇や芸能の世界で成功する人もいます。

しかし演技性パーソナリティ障害の方においては、派手な言動や外見は、空虚な自分の内面を補う手段です。自分自身というものがよくわからず、感情の動きも浅く、内面の充実を得ることや自分の価値を自分で認めることができず、周囲からの注目を浴びるという1点にだけ、生きがいを見出そうとします。

より高揚した感覚、より強い注目を引くという面で、とくに異性からの関心に執着する傾向が目立ちます。相手に対する恋愛感情から動くのではなく、とにかく注目を引くというのが目的のため、状況を選ばずに本来性的なアピールがふさわしくない場面や相手にもそれが向けられ、トラブルを引き起こすこともあります。

また、注目を集めている人物に傾倒しやすく、自分がその人に成り代わったように真似をしたり、その相手にのめりこんだりすることもあります。

とはいえ、相手から見える自分を気にするために、決定的に人間関係が崩れてしまうことはそこまで多くありません。ですがこのような付き合い方は、人間関係がぎくしゃくしがちになります。安定した人間関係が築けないために孤独になりやすく、そのストレスから抑うつ状態や不安障害に陥ったり、アルコールなどの物質依存に発展してしまうこともあります。

結局は、注目されていないと不安になってしまう子どものような心理状態で、演技性パーソナリティ障害は、「未熟性格型のパーソナリティ障害」とも言われています。

 

3.演技性パーソナリティ障害の治療

演技性パーソナリティ障害の治療は、お薬で症状をサポートした上での精神療法が中心になります。原則的に外来治療となり、家族を含めた治療が必要になることも多いです。

パーソナリティ障害全般に言えることですが、演技性パーソナリティ障害は薬だけでは治すことができません。もちろんお薬も治療に使っていきますが、演技性パーソナリティ障害の治療においては、お薬はサポートにすぎません。

演技性パーソナリティ障害の患者さんは生活のあらゆる場面で、性格傾向が周囲との不和を生みます。とはいっても、他人からどう見られるかを気にするため、決定的に崩れることは少ないです。しかしながら、表面的に何とか付き合っていくといったように、不安定な人間関係となってしまうことが多いです。

その結果としてストレスが蓄積し、不眠や不安、うつといった症状が認められ、それに対してはお薬が使われます。お薬によって症状を改善するだけでも、ストレスが軽減されて自分自身と向き合いやすくなっていきます。

 

演技性パーソナリティ障害の治療では、根本的には時間をかけたカウンセリングが必要になります。しかしながら現在の健康保険制度では、一般の診療で医師が患者さんと話す時間はそう多くとれない仕組みになっています。そのため、臨床心理士によるカウンセリングが行える医療機関で治療を行っていくべきです。

カウンセリングは、どうしてもお金がかかってしまいます。カウンセリングに関しては、「カウンセリングはどうして高いのか?カウンセリングの実情と選び方」をお読みください。

 

演技性パーソナリティ障害の人の場合、身近な人を巻き込んでしまうことも少なくなく、演技に振り回されてしまうと症状が一向に良くなりません。ですから、家族やパートナーを含めた治療が行われることが多いです。

治療の原則は外来になります。演技性パーソナリティ障害は入院してすぐに治る病気ではなく、日常生活の中で少しずつ治療を積み重ねていく必要があります。ですから通院でお薬を使いながら、地道なカウンセリングを続けていきます。

演技性パーソナリティ障害の患者さんが入院となるケースは、うつ状態のため自殺念慮が出現した場合です。このような時は一時的に病院で療養する必要があります。

 

4.演技性パーソナリティ障害の薬物療法

症状を和らげるために、対症療法的にお薬が使われることが多いです。

演技性パーソナリティ障害の薬物治療では、病気そのものを治す特効薬はありません。個人個人の状態に合わせ、必要と思われるものが処方されます。ですから症状に応じて対症療法的に薬が使われます。

このように演技性パーソナリティ障害の治療では、薬は補助的な役割になります。ですが、辛い症状をやわらげるためには有効です。

治療でカウンセリングを受ける場合でも、まずは薬を使って困っている症状を落ち着けます。不眠やうつ状態、強すぎる不安や興奮などがあると、心の余裕がなくなります。心に余裕がなければ柔軟な考え方はできませんし、自分の内面と向き合うエネルギーが足りなくなります。

自己愛性パーソナリティ障害の人に対して使われる主な薬を簡単にまとめてみます。

①抗うつ剤

気持ちの落ち込みが長引いていたり、物事に気力や興味が出ないといった、うつ状態が見られるときに使われます。

抗うつ薬には様々な系統と種類がありますが、比較的副作用のでにくいSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが使われることが多いです。

それで効果がみられない場合は、三環系抗うつ薬NaSSAが使われます。

②抗不安薬

抗不安薬は即効性があります。おもにベンゾジアゼピン系抗不安薬が使われています。

ただ、長期間抗不安薬を続けていると問題が生じるお薬です。心身の依存がおこったり、薬の効きが悪くなってしまったりします。このため依存してしまい、抗不安薬をなかなかやめられなくなってしまう方もいらっしゃいます。

ですから抗不安薬は、できるだけ少なく使っていくのが原則です。演技性パーソナリティ障害の患者さんでは、できれば症状が激しい時だけの頓服にしたいお薬です。

③睡眠薬

不眠が辛いときに使われます。睡眠薬にもいろいろな種類が発売されていますが、現在主流なのはベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

抗不安薬と同じで依存のリスクがあるので、大量・長期連用にならないように注意が必要です。最近は新しいメカニズムのお薬も発売されているため、効果が期待できる方はそれらから使っていきます。

④抗精神病薬

脳内の興奮に関わるドーパミンを中心に調整する薬です。強い興奮やイライラ、不安をやわらげるときに使われます。抗精神病薬には気分安定化作用があり、効果も早く認められます。

現在では、副作用の少ない非定型抗精神病薬というタイプが中心に使われています。

⑤気分安定薬

気分の波が大きく、情緒不安定な場合に使われます。イライラしたり興奮することが多い方に使われることが多いです。デパケンなどが使われます。

 

5.演技性パーソナリティ障害の精神療法

 自分自身の内面に目を向け、本音でコミュニケーションをとっていくことを目指していきます。時間をかけて正常な自己を育てていく必要があるため、時間をしっかりととった臨床心理士によるカウンセリングが望ましいです。

演技性パーソナリティ障害の方は、自分の内面や情感がよくわからず、「自分は誰からも求められない存在ではないか」という不安もあり、自己が未熟で不安定です。

演技性パーソナリティ障害の治療では、医師や心理士との面接の中で自分の内面や感情を見つめなおしていく必要があります。演技性パーソナリティ障害の方は自分自身の内面に目を向けるのが苦手であることが多く、ここが治療のはじまりです。

そして少しずつ、外見や性的魅力などによって他人からみえる自分によってアイデンティティを確かめることをなくしていく必要があります。他人からどう思われるかを気にせず、本音でコミュニケーションをとっていくことを目指していく必要があります。

このようにして正常な自己を育て、安定した人間関係や内面的な充実を育てていくことを目標とします。

薬物療法と診療の中である程度状態が落ち着いてくれば、現実におこっているトラブルや問題点、日常の中で困難がある部分を整理し、具体的にどのように対処すればいいかを、順番に検討していきます。

時間はかかりますが、演技性パーソナリティ障害の方は自分自身の苦しみをなんとなく気づいている場合も多く、比較的治療へは積極性があります。その一方で、医療に相談するということも演技のひとつとして利用されることもあります。例えばパートナーなどに、病人であるということをアピールするといったことがあります。

演技性パーソナリティ障害の方は、内面に目を向けるのが苦手ではありますが、上手くいかないことでの不全感を抱えている方が多いです。少しずつ自身の問題に目を向けるようにしていき、自らが治していきたいと思えるように治療者は関係性を築いていきます。

自分自身の問題に気づけるようになったとしても、長年かかって出来上がった苦しい心理状態や行動パターンは、そう簡単には変化しません。その効果が現れるまでは時間がかかり、コツコツした地道な積み重ねが必要です。ですが、あきらめずに取り組んでいけば必ず変化はおこります。実際に演技性パーソナリティ障害を克服し、安定した生活や人間関係が実現する方もいます。

演技性パーソナリティ障害の方の基本にある、外交的な刺激を好む性質や派手さも、周囲や生活に支障のない社会的に許される範囲で内面のともなったものになれば、むしろ長所となることもあります。ある程度そのような部分を尊重しつつ、極端で苦しいところを緩和させ、生活や周囲との調和をはかることが治療の目標となります。

このようにして治療をしていくため、臨床心理士による時間をしっかりととったカウンセリングを行っていくことが望ましいのです。

 

6.周囲の人の接し方や対応のポイント

演技性パーソナリティ障害の方の特徴や心理状態、治療目標をふまえた上で、実際に周囲の方がどう接したらいいかという対応のポイントを診ていきたいと思います。

とはいえ、ここに書くのはあくまで一般論です。同じ演技性パーソナリティ障害の方と言っても個人差は大きく、その状態、環境や性別、年齢、人間関係などによって、臨機応変に対応する必要があります。

具体的なことに関しては専門の病院で相談し、また、治療中の場合には主治医の判断をあおぐようにしてください。

治療へのつなぎ方

演技性パーソナリティ障害の人は、自分から積極的に精神科を訪れることはあまりありません。相手の障害を指摘したり、無理やり病院へ行かせたりしようとすれば、激しい怒りをかう恐れがあります。

もしも相手にうつ状態や不眠などの症状が見られる場合は、「あなたの苦しみを少しでも楽にするために病院という選択肢がある」と、相手への共感の姿勢で治療をすすめるようにします。

それでも難しいとき、自分での対応が無理と感じるときは、まずは自分だけが病院を訪れ対処を相談してみることもできます。

問題を抱え込まない

演技性パーソナリティの人には、周囲が振り回されてしまうことが少なくありません。一人で抱え込んだり、家庭内で抱え込んだりしないようにしましょう。

相談先としては、パーソナリティ障害治療を扱える精神科、学校や職場のカウンセラー、公的な相談施設などがあります。できれば専門の知識を持つ第三者に相談をし、客観的な意見を聞くようにしましょう。

③適切な距離を保つ

周囲の方にとってもっとも重要なのは、「本人に巻き込まれない、踏み込まない」ということです。家族、恋人、親友、職場仲間であっても、それをどうすることもできません。

本人の望むように気を向けないと、機嫌が悪くなったりすることもあります。それを避けるために、相手の望むようにすることは治療的ではありません。意図通りに動いてしまいますと、そのための行動や嘘が有効だと思ってそれがエスカレートしてしまうことがあります。

といっても、本人を突き放すのではありません。普通に接しながらも、できないことはできないと一線をひき、自分自身の生活を大事にしてください。つかず離れずというのは楽ではありませんが、適切な距離を保つことが大切です。

④相手の言動自体を否定しないで提案をする

周囲の方からすると、「ここでその振る舞いや恰好はちょっとどうなの?」と言いたくなることもあると思います。

けれど、患者さん自身にとっては、それによって注目を浴びることで自分を確かめているところがあり、それを否定されるとよけい心理状態が不安定になってしまう恐れがあります。かといって、身近な人となれば放置はできないものです。

その振る舞いそのものを否定するのではなく、本人の心理面を踏まえて他の方法で提案してみてもよいでしょう。

例えば、「その恰好はあなたに似合ってとても素敵だけれど、元々美人だから控えめな格好だとより魅力が増すよ」とか、「派手なあなたもいいけど、仕事を一生懸命している姿も素敵だと思うよ」などです。

⑤外見や性的魅力以外の部分をほめる

演技性パーソナリティ障害の方は、自分自身の価値を、外見や性的魅力でしか確かめられない傾向があります。ですがそれは、それ以外の自分に価値を見出せないからとも言えます。

自分の内面がいったいどういうものか、内面を充実させたり内面で人とつながったりするのがどういうことなのかがわからないのです。

そこで、外見や性的魅力をアピールしてきたら、それはそれで認めてあげたうえで、それ以外の内面的な長所を評価してあげる言葉をかけてみましょう。また、仕事や生活面で何かの行動をしたら、外見から離れた行動そのものを評価するようにしてみましょう。

そのことが患者さん自身の喜びとなれば、外見や性的魅力以外の自分というものを、少しずつ育てていくことができます。

⑥外見から離れた活動を一緒に行ってみる

もし本人が外見のことから離れた何かの活動に興味を持ち、それがとくに問題の無さそうなものなら、一緒に行ってあげてもいいと思います。

誰かとそのような時間を共有することで内面的な喜びに触れ、状態が落ち着くこともあります。ボランティア活動や園芸、芸術など、内面を磨ける趣味に誘ってあげるのもいいでしょう。それを通して外見以外での人間関係が築けるようになると、だいぶ安定していきます。

⑦無理に制限をしない

少しずつ内面的な部分での喜びを学んでいくのがプラスになるとはいえ、演技性パーソナリティ障害の方は基本的に、外交的な刺激を好む傾向があります。

それを無理やりに家庭的にさせようとしたり、大人しくさせようとしたりすると、かえって精神状態が不安定になってしまいがちです。

パーソナリティ障害は、あくまで「そのパーソナリティの特質を生かしつつ、極端な部分を改善する」ことが目標です。派手な行動や外見も、周囲に支障がおよばない範囲なら制限する必要はありませんし、極端な部分も、一気に改善するのは困難です。

治療には長い時間がかかり、演技性パーソナリティ障害の人にとって、自分の感情と向き合うことはとても苦しく大変な作業でもあります。周囲が焦って無理な制限をしないように心がけておきましょう。

 

まとめ

演技性パーソナリティ障害の治療、周囲の方の接し方や対応のポイントをご紹介しました。

治療としては、現実におこっている問題の整理と、不安定な自己や周囲との信頼関係の築き方を育て、外見や性的魅力以外での自己肯定や内面の充実をはかり、自分の性質と生活や周囲との折り合いがつけられることを目標にした心理療法が中心です。

薬物療法はその補助として、苦しい心身の状態を緩和させ、落ち着いて問題の整理や心理療法にのぞむために行います。治療には通常時間がかかりますが、希望を捨てず、地道な積み重ねをしていくことが大切です。

周囲の方の接し方のポイントは、

演技性パーソナリティ障害の方との接し方では、相手の言動自体を否定せず、かといって踏み込まず自分のペースを保つ、外見以外の部分を重視するようにする、というのがポイントになります。

何か伝える必要があるときは、否定的な言葉を使わず提案をするということを意識すると、話が通じやすくなります。

治療中の場合、その改善には時間がかかりますが、周囲の人は自分を保って焦らず、見守ってあげてください。何か気になることがある際には、専門の病院・主治医に相談しましょう。