回避性パーソナリティ障害での仕事での困難と対策

アイコン 2016.11.28 回避性パーソナリティ障害
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回避性パーソナリティ障害では、人との関わりや社会的場面に恐怖や苦痛がともない、そのような機会を避けてしまうようになります。

避ける行動パターンが定着すると、休職をくり返したり、仕事を辞めてしまったりすることもあります。

学生期から発症することも多いため就職活動でも影響を及ぼし、定職につけなかったり、ごく限られた職種にしか選択肢が無くなったり、将来の可能性がとても狭くなりがちです。

回避性パーソナリティ障害の方が仕事を選び行う上では、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。ここでは、回避性パーソナリティ障害(回避性人格障害)の方の仕事での困難さをみていき、その対策を考えていきたいと思います。

 

1.回避性パーソナリティ障害が仕事の選択に与える影響

回避性パーソナリティ障害の方は、仕事を選択する段階から回避的になっていることが多いです。

回避性パーソナリティ障害の方は、他人からの批判や否定、拒絶などに大きな恐怖を抱えています。また、恥をかくことや失敗への恐怖も、通常のレベルを越えています。

根底には強烈な自己否定感があり、自分が他人より劣っていて社会的価値が無いという意識もあります。ですから精神状態が不安定で、人からの言葉で簡単に傷つけられてしまいます。

そのため、もっとも社会的評価にさらされやすい仕事の場は、強い恐怖と精神的な苦痛がともないます。その負担や傷つきから自分を守るため、とても狭い条件で仕事を選んでしまいがちです。

例えば、

このような条件下で選ぶとなると、職種がとても限られます。そのため、本当は正社員で働きたいと思っていても、パートやアルバイトでしか働けないということもあります。

こうして社会的スキルが積めないため、年齢が上がるにつれてますます職業の幅が狭くなり、ある程度の年齢になっても生活に十分な収入が得られます。その結果として結婚が困難となり、親元からの自立も難しくなってしまうという方もいらっしゃいます。

その劣等感や焦りがますます状態を悪化させ、無職や引きこもり状態につながっていく場合もあります。かと言って、回避性パーソナリティ障害を抱えたまま、それなりの責任ある仕事をしようとすると、それはそれで様々な問題がおこる可能性が出てきます。

このように回避性パーソナリティ障害は、仕事の選択の段階で影響を及ぼしています。

 

2.回避性パーソナリティ障害を抱えて仕事をする難しさ

会社内・外での人間関係、人前に出なくてはならない機会などで問題が生じます。その結果として、アルコールに依存しがちになってしまう方も少なくありません。

もし、回避性パーソナリティ障害を抱えたまま仕事をすると、どのような問題があるのでしょうか。具体的にみていきましょう。

①対人関係が難しい

仕事をする上では、ごく限られた職種を除き、対人関係がとても重要です。職場の仲間との協力、取引先やお客さんとのやり取りなどがあります。

しかし、人との接触を避けたがる回避性パーソナリティ障害の方は、そのような場面で精神的な負担が強くかかりやすく、恐怖や苦痛に追われて避けてしまいがちです。

仕事上で重要な対人接触を避ければ、職場での立場が悪くなったり、仕事に支障が出たりするようになり、ますます仕事の場が苦痛になってしまう悪循環が生まれます。

②プレゼンや会議での困難

回避性パーソナリティ障害の方は、自己表現も苦手です。自分に自信がなく、人からの批判、恥や失敗を強く恐れるため、思い切って自分の意見を話すことが困難です。

そのため、できる限りそのような場を避けようとしたり、消極的なことしか言えなかったりで、自分に自信をつける機会も逃し、よけいに苦手意識が高まってしまいます。

③電話対応が苦手

電話対応が必要な職業は多いですが、回避性パーソナリティ障害の方は、多くの場合これが苦手です。

電話は、相手の姿や表情が見えないので、直接話す以上に自分がどう思われているかが気になるものです。少しでも沈黙があると、「怒らしたのではないか」「自分の言い方がまずかったのではないか」のような不安がわいてきたりもします。

苦手なものは緊張が高まり、よけいに上手く話せなくなって、恐怖感が増していってしまいます。

④責任を負うことが難しい

回避性パーソナリティ障害の方は、自分に自信が無く、他者からの評価を強く気にするので、自己責任での決断が非常に困難です。

そのため責任を負わなければならない立場になると、精神的に追いつめられてしまいがちです。そしてそのような責任を、回避しがちになってしまいます。その結果として、職場での対人関係が悪化してしまいます。

⑤アルコールなどに依存しやすい

仕事をしていると、本来自分が避けてしまいたい場面にも、無理に向かわなければいけないことが増えます。それは社会人皆に共通のことではありますが、回避性パーソナリティ障害を抱えていると、その際の精神的負担や不安が非常に強いため、それをまぎらわそうとしてアルコールなどに依存しやすくなります。

お酒を飲むことで苦痛や不安をまぎらわしていると、それ無しでは仕事ができなくなります。自分は回避性パーソナリティ障害だという自覚が無いまま、お酒の力でごまかし何とか仕事をしているという方もいます。

アルコールはたしかに、一時的に苦痛や不安を感じにくくしてくれます。しかし、根本的な問題が解決していない状態なので、量がどんどん増えてしまう恐れがあります。

 

3.回避性パーソナリティを抱えて仕事をするための対策

専門家と相談しながら、少しずつ不安と立ち向かっていくことが治療(克服)のステップになります。社会生活(会社・アルバイト・デイケアなど)の中で、少しずつステップアップしていきましょう。

回避性パーソナリティ障害によって様々な困難がともない、仕事が難しくなってしまう状況をどのように克服していけばいいのでしょうか。

状態によっては無理に仕事をすることがすすめられない場合もありますが、回避性パーソナリティ障害では、苦手なことを避け続けるばかりだと余計に苦手意識や劣等感が増し、不安がひどくなってしまうことがあります。

不安は逃げれば逃げるほど、大きくなる傾向があります。自分の無理のない範囲で、仕事場を苦手の練習の場ととらえ、少しずつ克服していくことが回避性パーソナリティ障害の軽減にもつながります。

ただ、やみくもに1人で頑張ればいいというものではなく、いくつかの対策が必要です。

①専門家(医療機関)にかかる

回避性パーソナリティ障害は単なる性格の問題ではないので、まずは専門家に相談することが大切です。精神科の医療機関で相談していくことが、もっとも標準的な治療を行っていくことができます。

症状の程度によってはカウンセリングなどでじっくりと心理療法を併用したほうが良い場合もあるため、医師と相談しながら治療をすすめてください。

そして主治医と相談して現状を整理し、不安のコントロール方法を学び、必要なときは適切な薬を処方してもらいながら治療と仕事にのぞむことが大切です。

②アルコールなどに依存しないように心がける

不安が強いと、ついアルコールに頼ってしまいたくなります。ですがアルコールで不安を逃すほど、お酒無しではいられなくなります。

精神科で処方される薬は、アルコールとの飲み合わせが禁止されているものが多いので、アルコールは控えるように心がけましょう。もちろん、違法薬物は絶対にいけませんし、タバコもできる限り減らすよう努力をしましょう。

また、不安が強いからといって、病院で処方された薬の量を勝手に増やすことも絶対に避けましょう。薬の量を増やしたいときは、必ず主治医に相談をしてください。

③職場での相談を検討する

上司や同僚に理解をしめしてくれそうな人がいれば、相談をしてみるのも1つの方法です。

自分には苦手な作業があることを伝え、無理のない範囲に調整してもらえるようなら、安心感も生まれます。産業医のいる職場なら、そちらに相談してみる方法もあります。

ただ、病気の状態や程度、職場環境によって、どのように伝えたらいいかは違います。主治医から意見書を書いてもらう方法もありますので、先に主治医と相談してみましょう。

④負担のかかり過ぎない仕事から始める

不安や苦手な場面は、ハードルの低いところから順番に克服していく方がいいです。自分が回避したくなる場面をリストアップし、不安度の低いところから順番に行っていきます。回避性パーソナリティ障害の克服には、小さな成功体験を積み重ね、少しずつ自信をつけていくことが大切です。

職場での理解が得られる環境なら、負担の軽い業務にまわしてもらったりできるかもしれません。それができない場合は、自分でできそうなところはやり、どうしても辛い場面では主治医と相談の上、薬を上手に使ったりして乗り越えていきましょう。

病状によっては、アルバイトから始めた方がいい場合もあります。障害手帳を取得している方なら、障害者雇用という手もあります。さらに重症の方は、デイケアや作業所からのスタートが向いていることもあります。

負担のかかり過ぎない範囲で、少しずつ、できることの幅を広げていきましょう。

⑤無理はし過ぎない

回避していた場面に少しずつ挑戦するのがいいとはいえ、実際にやってみると、どうしようもなく不安が高まってしまうこともあります。あまりに苦痛なとき、逃げられる状況なら一旦トイレなどに回避して、落ち着くのを待ちましょう。

頓服薬を利用するか、不安が大きくなったときの呼吸法などを学んでおくと、役に立ちます。

挑戦は、やってみたということ自体に意味があります。それが達成できなくても、その時の自分には難しかったというだけです。その場合は少しハードルを下げ、くり返し行っていきましょう。

 

4.回避性パーソナリティ障害の休養と職場での配慮

うつ状態になってしまったら休養が必要です。回避性パーソナリティ障害という本人の特性を理解しながら、基本的には普通に接していただくことが、一番の配慮になります。

回避性パーソナリティ障害で仕事を行う上では、通常の人よりストレスがかかります。克服のために挑戦も必要とはいえ、うつ状態になって辛いときは休養することも大切です。

うつ状態になると、ますます考え方が悲観的になってしまいます。集中力も落ちて、仕事での失敗が増えてしまうこともあります。仕事が上手くできなくなったことでよけいに苦手意識が高まり、回避性パーソナリティ障害の悪化につながってしまう場合もあります。

回避性パーソナリティ障害では、不安のある場面を回避してしまう行動パターンを、少しずつ変えていく必要がありますが、うつ状態になったら無理は禁物です。主治医と相談の上、休養を検討していきましょう。

 

 

それでは、もし職場に回避性パーソナリティ障害の方がいた場合はどのような配慮が望ましいのでしょうか。

一番大切なのは、偏見の目を無くしていただくことです。精神疾患は経験のない方には理解しにくいですが、基本的には体の病気や障害と同じです。

足や手が不自由だったり体に弱い部分があったりすると、できる仕事に制限があります。これと同じように、回避性パーソナリティ障害の方は人と接することや自己表現の場が難しい内面の障害を抱えています。また、人からの批判や否定の言葉にとても敏感です。

目に見えないだけに誤解も生まれやすいですが、周囲に優しく受け入れてもらえる安心感があると、できる仕事が増え、治療の助けにもなります。

特別なことをする必要はありません。ただ、苦手なことがあると理解し、批判や否定の言葉をかけないようにしてあげてください。

 

まとめ

回避性パーソナリティ障害では、仕事の選択の幅が狭くなり、勤め始めても、様々な面で困難があります。

自己否定感が強く、人からの批判や否定に敏感で、対人や自己表現の場を避けてしまい、その行動パターンが定着すると、休職や退職につながってしまうこともあります。

病状によっては仕事の継続が困難なときもありますが、可能な場合は仕事を苦手の練習ととらえ、治療をしながら回避していた場面に少しずつ挑戦し、自信をつけていくのが望ましいです。

対策としては、

主治医と相談の上、不安のコントロール法を学び、薬も上手に活用しながら、苦手を少しずつ克服していきましょう。