回避性パーソナリティ障害の恋愛が怖い心理と克服の方法

アイコン 2016.10.30 回避性パーソナリティ障害
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回避性パーソナリティ障害の方は、本当は積極的に人や社会と関わりたいという望みがあるのですが、恥をかくことを非常に恐れてしまって、人前や社交の場を極端に避けてしまいます。

ですから回避性パーソナリティ障害の方は、新しい人間関係に異常なほど臆病になってしまいます。普通の友人関係に対してすらなかなか踏み出せないので、異性間の恋愛はますますハードルが高くなってしまいます。

異性と恋愛をして結婚し、家庭を築いていくことが絶対的に正しい人生というわけではありません。ですが、本当はこうした幸せな家庭を築きたいという望みがあるにも関わらず、それを避けてしまうのは、生きていく上での「障害」となってしまいます。

ここでは、回避性パーソナリティ障害(回避性人格障害)の方の恋愛について、心理状態を踏まえて考えていきたいと思います。異性との恋愛におけるおこりやすい問題点や克服の方法などについて、ご紹介していきます。

 

1.回避性パーソナリティ障害の特徴と診断基準

まず始めに、回避性パーソナリティ障害の特徴と診断基準を簡単にご紹介します。

詳しく知りたい方は、「回避性パーソナリティ障害(回避性人格障害)をチェック!」をお読みください。

<DSM-5による回避性パーソナリティ障害の診断基準>

以下のうち4つ以上の特徴が成人早期までに始まり、日常の広い範囲にわたって目立つようになる。

 

2.回避性パーソナリティ障害の方が恋愛に臆病になってしまう原因

回避性パーソナリティ障害の方は様々なことに自信がなく、対人過敏になっています。相手の言葉をそのまま受け止められず、自分の現実を知るのが怖いために、自分と向き合えなくなっています。

回避性パーソナリティ障害の方が、なぜそこまで人間関係に臆病になるか、周囲から見ていると理解できない部分もあるかもしれません。

まず始めに、異常なほど人間関係に臆病になってしまう心理について触れてみたいと思います。

 

①極端で範囲の広い自信の無さ

人が何かに臆病になるときは、たいていは自分に自信が無いときです。それはとくに障害がなくても同じで、人間としてはある程度自然な感情でしょう。

恋愛に関して考えてみると、普段は積極的でも恋愛に対してだけ臆病…という方は、多いと思います。「もしも自分にもっと自信が持てたら積極的にアプローチできるのに。」「容姿のいい人やコミュニケーション能力の高い人が羨ましい。」そう感じることもありますよね。

回避性パーソナリティ障害の方も、基本的には自信の無さが恋愛に踏み出せない大きな原因です。

しかし、この障害がない人に比べ、「恥をかきたくない」「拒絶されたくない」という気持ちがとても強いため、一般の人が感じる恋愛への臆病さとはレベルの違う恐怖が生まれてしまいます。

そこには、「自分のすべてに自信が持てない」という、範囲が広く深い自己不全感が影響しています。

例えば、自分の容姿に自信が持てないとしても、話術や優しさをアピールポイントにすることはできます。個性的な容姿であることを逆手に取り、面白さを武器にしようとする人もいます。また、とくに女性で深刻な容姿のコンプレックスがある場合は、メイクでのカバーや美容治療を検討するかもしれません。

誰しも自信の無い部分やコンプレックスは抱えていますが、それを補う自分の長所を知ったり、具体的にコンプレックスを改善しようとする方法を探したり、何らかの方法でコンプレックスと上手く付き合って日々をおくり、対人関係を築いていきます。

それに、容姿を例にとれば、人の好みはそれぞれで、「誰かに拒絶されたとしても他の人は好感を持つかもしれない」「恋愛においての価値が容姿ばかりにあるわけではない」という健全な感覚がある人は、そのコンプレックスが特別な支障にはなりません。

しかし回避性パーソナリティ障害の人の場合、自分のすべてに自信が持てないのです。容姿や能力などに対する具体的なコンプレックスだけではなく、「自分の存在そのものに価値がない」「何の長所もないつまらない人間」だと感じてしまいます。

また、他者から受け入れられるということに絶対的な価値を置いてしまう傾向が強いため、拒絶や否定をされてしまうと、ますます自己不全感が深まってしまいます。それが怖いので、拒絶される可能性の多い恋愛関係に対しては特別恐怖を感じ、踏み出していくことができなくなってしまいます。

 

②もろく傷つきやすい精神状態

回避性パーソナリティ障害の方は、極端な自信の無さに加え、他者の言葉に簡単に傷つけられてしまうもろい精神状態にあります。

自信の無さを抱えていながら積極的に対人交流を行える方というのは、他者からの言葉や拒絶に鈍感で傷いたとしても、素早く立ち直れる心を持っていたりします。

しかし、回避性パーソナリティ障害の方の心はもろく敏感で、ささいな言葉から必要以上に強い拒絶や否定の意志を受け取り、深く傷ついてしまう傾向にあります。このことが、よけい臆病さを増すことにつながっています。

心の感受性は、ある程度元々の性格があります。生まれながらに繊細な人や敏感な人が、回避性パーソナリティ障害を発症しやすいとも言われます。その性格素因に加え、親から否定ばかりされたり、反対に一切批判されない甘やかされた環境で育ったリ、イジメや強い自己否定をされる経験をしたりすると、他者の言葉に極端に敏感で傷つきやすい精神状態におちいり、回避性パーソナリティ障害を発症してしまう可能性が高くなります。

回避性パーソナリティ障害の方はそのような性格素因や成育環境を持っていることが多く、もろい傷つきやすさを抱えているため、自分の心を守ろうとして対人関係を避けるようになります。

とくに深い関わりが必要で傷つく場面も多い恋愛関係には、ひどく臆病になってしまうことになります。

 

③自分の現実を知るのが怖い

自信の無い部分を抱えながら対人関係を進めていくためには、自分の現実をある程度知る必要があります。

例えば最初の容姿の例をとると、本来容姿の基準は人それぞれでそれに優劣はつけられませんが、世間的には少なからず評価というものがついてまわります。

とくに恋愛においては、容姿や能力、コミュニケーション力など、評価の対象になるものが多く、「モテる」「モテない」という区別がついてしまいがちです。

いくら自分が多くの人にモテたいと願っても、残念ながらそれが叶わないこともありますが、そういう現実を知り、自分を客観視することは大切な成長過程でもあります。自分が抱く理想の自己像と周囲からの評価のギャップを知り、他にある自分の長所を伸ばそうとしたり、他人の評価に振り回されない自己肯定感を育てたりする方へとつなげることができます。

しかし、誰しも「自分はモテない」と知ることは、あまり気持ちのいいことではありません。積極的な行動をすればするほど、周囲から見た自分を客観視することとなり、嬉しくない事実を知ってしまう可能性が増えます。

回避性パーソナリティ障害の方は、それを知ったときのダメージが、一般のレベルよりもずっと深く大きくなってしまう心理状態にあります。

そのため、現実の自分を客観視しなければいけないような場面や対人を回避してしまうことになります。回避は、とても傷つきやすい自分の心を守るための、1つの防衛機制(手段)なのです。

また、回避性パーソナリティ障害の方は、自分で抱いている自己イメージが、現実よりもずっと高い水準に置かれています。

「自分なんてつまらない人間だ」という卑屈さは、実際には他者から評価されるような優れた存在でありたいという気持ちの裏返しです。自分に課した目標が高すぎるため、それと比較した現実の自分が何もかも劣っているように思えてしまいます。

そういう理想と現実のギャップと向き合うのが非常に怖いため、回避という選択をしてしまうようになります。

 

④誉め言葉が素直に受け取れない心境

回避性パーソナリティ障害の方の場合、自らが恋愛の機会を避けるだけでなく、好意を持たれたときにも相手を避けてしまうという現象がおこります。

なぜ、そのようなことになるのでしょうか。そこにはやはり、理想の現実と現実の自分とのギャップによる自信の無さと、傷つきやすさの問題が隠れています。

例えば、相手が自分を好きだと言ってくれたとしても、「本当の自分を知られたら嫌われてしまう」「自分はつまらない人間だから、すぐに飽きられてしまう」「他にいい人がいれば、すぐに乗りかえられてしまう」のような考えが浮かび、それが怖くて関係を深めることができません。

また、ある程度の年齢になっている場合、肉体関係を持つのをひどく恐れる傾向があります。それも自信の無さの表れで、相手に裸を見せるのが怖いという心理が先に働いてしまいます。

回避性パーソナリティ障害の方は、極端に自信が無いといっても心の底から自分を否定しているわけではなく、「本当は自分をアピールしたい」「それなりに評価をされるべき要素を持っているはず」という、自負心も持ち合わせています。しかし、他人から失望されたり否定されたりすることには耐えがたい恐怖があり、「どうせ自分なんか…」と先に自分をおとしめることで、他人から正当に評価されることを避けようとします。

それは昔、親から高い理想を押しつけられ、あるがままの自分には失望され続けた成育環境とつながっているとも言われます。反対にあるがままの自分ではなく、過大評価された自分ばかりをほめられて育った場合にも、他人からの失望や批判に容易に傷ついてしまうということがおこりやすくなります。

また、親の傾向が社会的評価や他人からの評価を重視するように偏っていると、子どももその影響を受けやすくなるとも言われています。

いずれにせよ、常にほめられている状態でないと安心できず、相手から失望されたり否定されたりすることには耐えがたい苦痛がともないます。

そのため、好意を寄せられれば嬉しい一方で、期待外れとがっかりされたり、離れていってしまわれたりするのが怖くなり、結局は関係を深められないままで終わってしまうことが多くなります。

そのようにして、せっかく相手から好意を持って踏み込んでくれたとしても、結局は親しくなることができず、恋愛の機会を逃してしまうことになります。

 

⑤本来の自分自身と向き合えない心情

恋愛はどのような方にとっても本来、とても難しいものです。

付き合いが浅いうちは楽しい方が先に立ちますが、だんだんお互いの嫌な部分が見えてきます。自分の思うようにいかなかったり、嫉妬心や劣等感が刺激されたり、苦しい思いもたくさんしなければいけません。

けれど、それによって自分自身と向き合うことができ、成長もできます。1人では感じられない様々な喜びを知ることができます。

結局、恋愛も友人関係も、それを通して本当に向き合っているのは自分自身です。とくに恋愛はもっとも強い感情が刺激され、思わぬ自分が引き出されてくることもめずらしくありません。

回避性パーソナリティ障害の方が本当に恐れているのは、相手からの反応そのものというより、それによって見えてくるあるがままの自分、そして、あるがままの自分が他人からは受け入れてもらえない可能性もあるという現実です。

「あるがままの自分は他人から受け入れてもらえない」「他人から受け入れてもらえなければ生きている価値はない」そのような苦しい取り決めが心の中に根付いてしまっていて、必要以上に対人関係や他者からの評価を恐れてしまうことになります。

 

3.回避性パーソナリティ障害の方の恋愛に向けての克服方法

まずは自分の性格の特性を理解し、治療環境を整えましょう。そして少しずつ、行動から考え方を変えるようにしていくことで焦らず治療していきましょう。

回避性パーソナリティ障害の方の場合、回避することで社会経験や対人スキルが積めず、なおさら劣等感が増していく悪循環におちいってしまいがちです。

恋愛も、自分には経験が無いということがさらにコンプレックスを深くし、異性との接触がますます恐怖に感じてしまうようになります。

かといって、わいてくる恐怖心というのは通常の状態では想像もつかないほどなので、一般論で「傷つくことから逃げていたら成長できない」「恋愛の失敗なんて誰にでもあるものだから」のように、無理やり積極性を求めることは望ましくありません。

では、どのようにして、その状態を克服すればいいのでしょうか。

 

①自分の特性を理解し、治療環境を整える

まず、何かの行動に移ろうとする前に、自分の特性を理解しておく必要があります。何事も、自分が理解しないままで克服することはできません。

可能であれば、回避性パーソナリティ障害のことに詳しい主治医や心理士さんと相談しながら、適切な治療環境を整えておくことが望ましいです。

パーソナリティ障害そのものを薬だけで完全に治療することはできませんが、日々の生活でのストレスで生じたうつ状態や不眠には薬が有効な場合があります。

うつ状態や不眠や不安が強いときは、まずは状態を落ち着けることが必要です。考え方や行動パターンを変えていくには、大きなエネルギーが必要です。余裕がない段階では柔軟に考えることもできませんし、ストレスになって悪循環を増してしまうこともあります。

回避性パーソナリティ障害を改善していくのは、心身の状態が落ちついてからです。回避していた行動に少しずつチャレンジしていき、行動から思考を変えていきます。その場合も、抗うつ剤や安定剤をサポートに使うことがあります。不安をやわらげてくれる薬があると思えることで行動に踏み出しやすくなり、その自信が次の行動を後押しするいい循環が生まれます。

もしも行動が思い通りの結果にならなかった場合にも、専門家のアドバイスによって、自分を追いこまずに治療をすすめていきます。そして回避性パーソナリティ障害の方は、家族や友人にもなかなか心が開きづらいので、相談ができる場ができるのは何よりの安心感につながります。

 

②最初からハードルの高い挑戦をしない

恋愛を望む場合でも、社会経験や対人スキルがほとんどないままでは、自信の培いようがありません。克服のためには、ハードルの低いものから、実生活での必要性が高いものからが基本です。

まずは職場の人間関係の中で行動の範囲を広げたり、身近な家族や友人とのコミュニケーションを深める努力をしたり、自分が挑戦しやすいことから行う方がよいです。

異性と接触する場合も、初めから恋愛関係を意識するのではなく、仕事仲間や友人としての信頼関係を築くことに意識を向けていると、ハードルを少し下げることができます。

ハードルを小さくして少しずつ超えていくことで、達成感を大切にしながら行動を変えていきます。

 

③無理に頑張り過ぎない

回避性パーソナリティ障害の方は、真面目な努力家も多いです。自分の障害や恐怖心を克服しようとして、無理をしてしまう場合があります。

治療の上では回避していた行動に少しずつ慣れていくようにしていきますが、それは薬などの治療である程度状態が落ちついてからのことです。

とくに恋愛は、生活のための仕事と違い、とり急いでチャレンジしなければいけないものではありません。自分の回復具合に合わせ、無理のないようにしましょう。

「好きな人ができた」「好意を持ってくれた人がいた」など、恋愛の機会が訪れ、自分にも踏み出したい気持ちがあるのに怖くてできないという場合は、専門家と相談しながらそのときにできる一番いい方法を探していく方が安心です。

 

④恋愛に過大な期待をしない

ある程度障害の状態が回復している場合、恋愛が1つのいいきっかけになることもあります。相手といい関係を築いていく中で成長し、障害の回復や生活のプラスとなってくれる可能性もあります。

けれど、自分の苦しみを支えてくれる存在を得るために恋愛を求めるとしたら、あまりいい結果にはなりません。

いい恋愛関係を育てるためには、相手に理解や支えを求める前に、自分自身が自分の障害を理解し、付き合う方法を模索する必要があります。

自分の障害を相手に理解してもらおうとすれば、自分の方も相手の心境を思いやり、理解する努力をしていかなければいけません。

障害がある人も無い人も、みんな何かの悩みを抱えて日々の生活をおくっています。

自分の都合ばかりに合わせてくれるわけではないし、常に理解し優しく接してくれるわけではないことは頭に置いておく方がよいでしょう。

 

⑤他人目線から自分目線に変える努力をする

回避性パーソナリティ障害の方は、恋愛関係において、相手にどう見られているかということがとても気になってしまいがちです。

それが障害の症状でもありますが、長年の思考のクセにより、染みついてしまった習慣でもあります。

そうなってしまっている自分に気が付いたら、「自分は相手をどう見ているか、どう感じているか」ということに、意識を向けるようにしてみてください。

どれだけ好きな相手であっても、自分の機嫌や心理状態により、相手の態度に腹が立ったリうっとうしく感じたりすることもあります。かといって、その相手が嫌なわけではなく、基本の愛情には変わりありません。

回避性パーソナリティ障害の方は、常に100点の評価をされる自分になろうと頑張ってしまいがちですが、本来それは不可能です。様々な不満や欠点が目につくときもあるのが人間関係の自然なのですが、自分内部に「それではダメ」という苦しい取り決めがあり、相手の一挙一動に怯えてしまいがちです。

苦しい取り決めをすぐに外すことはできませんが、いつも相手目線になっているのを自分目線に変えることを意識することで、少しずつ改善はできます。

自分自身の感情を振り返ったとき、自分も相手を100点で評価はしていないと気づくはずです。ですが、それでも自分は相手のことが好きだという実感が持てるようになると、相手の評価を気にし過ぎる傾向がゆるみ、基本にある愛情を大切にした信頼関係が築いていきやすくなります。

 

まとめ

恋愛が怖い回避性パーソナリティ障害の方の、恐れる心理的な原因と克服の方法についてご紹介しました。

同じ障害であっても心理や背景には個人差があるので、すべての人に共通して当てはまるわけではありませんが、理想の自分と現実の自分のギャップからおこる極端な自信の無さ、もろく容易に人の言葉に傷ついてしまう心、他人からの評価に依存しやすい傾向などの問題は、多くの方が抱えています。

恐怖心を抱えながら恋愛関係を築くのは難しいですが、適切な治療環境が整い、特性の自己理解や回復が進めば、恋愛は可能な状態になり得ます。

などが、克服のポイントになりますが、こちらも個人の状態や環境によって異なります。1人で無理をせず、専門家のアドバイスも求めながら、少しずつ進んでください。