摂食障害での過食嘔吐の心理面からみた原因

アイコン 2016.3.23 神経性大食症(過食症)

大量のものを食べて吐き出す過食嘔吐の症状は、拒食症でも過食症でも多くの人に見られます。

しかし過食嘔吐に至ってしまう心理は様々です。過食嘔吐の症状だけをつかまえて、「ダイエットのリバウンド」「行き過ぎた痩せ願望のせい」などと決めつけてしまうと、摂食障害の実態がわからなくなってしまいます。

過食嘔吐はどのような心理からおこっているのでしょうか?
そしてそこから、具体的にどのような原因で過食嘔吐が起こっていくのでしょうか?

このことを知ることで、治療の方向性や対応も異なってきます。ここでは、過食嘔吐の心理面から原因をみていきたいと思います。

 

1.過食嘔吐の原因となる心理とは?

低い自己肯定感にも関わらず他人から見られる自己を意識してしまう、過剰な自己愛が根底に隠れています。

過食嘔吐は、従来は「痩せることへの願望・肥満恐怖・ボディイメージの障害」という3つの特徴を満たす病気と考えていました。最近ではこのような特徴を認める方は少なく、さまざまな方がいらっしゃいます。

過食嘔吐の根底には、自分に自信を持てないのにも関わらず、「他人から見られる自分」を強く意識してしまいます。このような過敏な自己愛が隠されているといわれています。本当の自分と作り上げた自分の間の苦しみは、過食することで麻痺します。しかしながら太ることへの恐怖から、嘔吐してしまうのです。

その結果として、さまざまな形で過食嘔吐に発展していきます。過食嘔吐の心理面から見て整理してみると、以下の6つの原因があげられます。

  1. 痩せたい願望と食欲のせめぎ合い
  2. 過食欲求と過食への恐怖心のせめぎ合い
  3. 安易な人まね
  4. 吐くことが目的の過食
  5. 自傷行為
  6. 嗜癖行為

 

2.過食嘔吐の心理的原因①-痩せたい願望と食欲のせめぎ合い

極端な心理要素がある人が、食事制限をきっかけにして過食嘔吐に発展することがあります。

これは摂食障害を発症していない人にも、比較的理解しやすい心理です。とくに若くて食欲旺盛な年頃に無理なダイエットにより食事制限をすると、必ずどこかで食欲が爆発します。通常ならただのリバウンドで済みます。

しかしながら自分を追い込むような苦しい心理要素を持っている人は、「このままだと太ってしまう」という強迫観念に追われて吐いたり、下剤を乱用するようになったり、どうせ吐くならとヤケクソのように過食をしたりして、状態がエスカレートしてしまいます。

このような方は、以下のような心理になっています。

ダイエット中に食べ過ぎたからといって過食嘔吐へ発展する人の場合、自尊心の低さ、歪んだ価値基準、完全主義、自分に厳しすぎるなど、どこかに極端な心理要素が隠れている可能性があります。その苦しい心理要素に気付き、とらわれた考えをゆるめるアプローチをしていくことが必要です。

 

3.過食嘔吐の心理的原因②-過食欲求と過食への恐怖心のせめぎ合い

ストレスや感情を溜め込みやすく、自分を追いつめがちな傾向がある人が、過食の欲求が強まってコントロールが効かなくなることがあります。

食事制限をきっかけにした過食嘔吐とは反対に、先に過食の欲求がおこり、食べ続けてしまう恐怖や過食への罪悪感から嘔吐が始まるケースもあります。

この場合は、もともと過食欲求を引きおこした原因と、過食をしたら吐かずにはおられない心理両面にアプローチをする必要があります。

このような方は、以下のような傾向があります。

先に過食の欲求がおこり、その恐怖や罪悪感で過食嘔吐に発展する人の場合、もともとストレスや感情を溜め込みやすく、自分を追いつめがちな傾向がある人が多いです。

過食や過食嘔吐自体の行為に対しても、「こんなことをしている自分は最低だ」などと自分を責め、誰にも相談できずによけい苦しみを増加させてしまうことがあります。1人で抱え込まず病院に相談してください。

 

4.過食嘔吐の心理的原因③-安易な人まね

過食嘔吐を気軽に考えてしまい、太らないための手段として始まることがあります。

ダイエットブームの過熱にともなって、過食嘔吐を「手軽なダイエット法」として紹介する無責任なネット情報や、「太りたくなければ吐けばいい」などという友人からのアドバイスに影響され、安易な気持ちで過食嘔吐を始める人がいます。

一回食べたものを吐き出すことは、体にとっては大きな負担です。また、過食や嘔吐は脳にインプットされやすく、簡単にエスカレートしてそこから抜け出せなくなる人が多数います。一時的に体重が落ちても、じきに代謝や循環が悪くなってむくんだり、様々な不調に悩まされたりして後悔する結果になります。

このような方は、以下のような傾向があります。

過食嘔吐を気軽に考えすぎている人は、その先に待っているマイナス面をしっかり認識する必要があります。その行為によっておこる合併症、どれだけの金銭と時間を費やしているかなど、正しい情報を得て冷静に振り返ってみましょう。

続ける期間が長引くほど、後で抜け出すのが大変になります。自分自身の意志では止められない段階になっている場合は、病院に相談してください。

 

5.過食嘔吐の心理的原因④-吐くことが目的の過食

拒食症の方が、吐くことを目的に過食をすることもあります。

拒食症の人に多いですが、吐くことが目的で過食をしているケースです。

大量に食べれば嘔吐反射がおこるので、普通に食べた量を吐き出すよりも簡単に吐けるという動機で始まりますが、じきに過食嘔吐の行為自体が、自分の心理的な苦しみをカバーするようになって依存が増していきます。

この場合は、そもそもなぜ吐かなければいられないのか、拒食の心理そのものにアプローチする必要があります。

このような方は、以下のような傾向があります。

拒食の心理はとても複雑で幅広く、過食嘔吐の行為も徹底して激しい場合が多いので、病院での治療が必要です。

家族内や周囲だけで対処しようとすると体重減少がドンドンと進み、死に至ることもある病気です。事態が悪化することがあるので、拒食症を専門に診られる心療内科や精神科、患者会や家族会などに相談して、つながりを持ちましょう。

 

6.過食嘔吐の心理的原因⑤-自傷行為

自傷行為のひとつとして、過食嘔吐をすることがあります。

体型へのこだわりや過食への恐怖などとは関係なく、始めから自分を痛めつける自傷行為として始まる過食嘔吐もあります。

役割としてはリストカットと同じで、体の痛みによって心の苦しさをカバーしたり、行き場の無い感情をその行為にぶつけたり、激しい行為で生きている実感を得ようとしたりという側面があります。

リストカットと合併したり、過食と同時に飲酒もしたりすることもあります。

このような方は、以下のような心理になっています。

自傷行為がある場合は、他の精神疾患が併発している可能性も高くなります。摂食障害にはお薬の効果はあまり期待できませんが、他の疾患があって衝動性が強い場合は、お薬によって少し落ち着きを取り戻すことがあります。

 

7.過食嘔吐の心理的原因⑥-嗜癖行為

過食嘔吐の感覚がクセになってしまって、やめられなくなることがあります。

食べ過ぎたときに吐いてしまったことがきっかけで、その行為に快感を覚えてクセになってしまう場合もあります。もともと自制のききにくい人に多いですが、やはり心理的な問題を抱えていたり、無意識のストレスがかかっていたりするときに陥りやすい傾向があります。

過食嘔吐だけでなく、アルコール、ギャンブル、買い物、異性などへののめり込みがあることもあります。依存体質を自覚して過食嘔吐の弊害を知り、自らの心理状態と上手く折り合う方法を探していく必要があります。

依存の本質はコントロールの喪失です。コントロールを失ってしまうと社会生活でのデメリットが重なり、その結果として依存自体を認められない心理状況になっていきます。そうなる前に、「クセ」が自分で抑えられない方は病院で相談しましょう。

このような方は、以下のような傾向があります。

 

まとめ

摂食障害における心理面からみたときの過食嘔吐の原因について、大まかにまとめました。過食嘔吐が始まるきっかけ、関わっている可能性のある要素は様々で、複雑な要素が絡みあっていることもあります。

過食嘔吐はかなりの負担をともなう行為のはずですが、慢性的になるとその苦痛が自覚できず、問題意識もうすれてしまう恐ろしさがあります。自分自身では心理状態になんの問題もないと考えていても、過食嘔吐が続いているようなら、何か顧みなくてはいけない心理要素が隠れているはずです。

「過食嘔吐は単なるクセで、いつかは治まる」と放置して、10年20年と引きずって状態を悪化させてしまう人もめずらしくありません。そのような症状がでてきたら、心になにかの問題がおこっているサインです。そのままにせずに自分の心理状態に目を向け、やめることができない時には専門の医療機関に相談をしましょう。