普通の酔いと悪酔いの違いとは?単純酩酊と異常酩酊

アイコン 2016.10.28 その他のアルコールの問題
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お酒を飲んでいるときに普段と違う行動をしてしまったり、心にもないことを言ってしまって後悔してしまったことってありませんか?

お酒を飲むと抑制がはずれて、本来の自分では考えられないことをしてしまうこともあります。その状態を、酩酊状態といいます。

お酒の量が増えるにつれてアルコール血中濃度が高くなっていき、少しずつ酔っていくのを単純酩酊といいます。いわゆる、普通の酔い方です。

それに対して、人格が変わってしまったかのように暴れてしまう複雑酩酊、幻覚や妄想などに伴って激しく興奮してしまうような病的酩酊といった異常酩酊がみられることがあります。いわゆる、悪酔いになります。

ここでは、お酒の酔い方の違いについて詳しくお伝えしていきます。

 

1.普通の酔い方とは?単純酩酊のステップ

まずは大脳皮質の活動が低下し、感情や本能をつかさどる大脳辺縁系が優位になります。酩酊期になると小脳失調し、構音障害やふらつきがみられます。泥酔期になると海馬機能が低下し、記憶がなくなります。昏睡期になると、生命維持に必要な脳幹の機能も低下してしまいます。

お酒を飲むと酔っぱらっていく…いわゆる普通の酔い方を単純酩酊といいます。アルコール血中濃度が高まるにつれて、酔いのステップが少しずつ進んでいきます。

酔いのステップは、およそ6つ(爽快期・ほろ酔い期・酩酊初期・酩酊期・泥酔期・昏睡期)に分けられます。

血中アルコール濃度:0.02〜0.04%

その名の通り、爽やかな気分の状態です。楽しく陽気になり始めます。皮膚が赤くなる方もいます。判断力は少し鈍りますが、全く問題はない状況です。

血中アルコール濃度:0.05〜0.10%

いわゆる「ほろ酔い」の状態です。やや理性が失われ、饒舌になりがちです。体温が上がり、脈拍が早くなります。ちょうど良い酔い方と言われており、ここから先は健康上好ましくありません。

血中アルコール濃度:0.11〜0.15%

気が大きくなりがちです。声が大きくなり、まわりで飲んでいる方が「そろそろやめておいた方が」と言い始める時期です。

血中アルコール濃度:0.16〜0.30%

「飲み過ぎた」と思って外に出れば千鳥足…という状態です。何度も同じことをしゃべりがちで、まともに会話が成り立たないこともあります。身体的には吐き気を伴うこともあります。

血中アルコール濃度:0.31〜0.40%

まともに立つことができず、何を言っているのか分からない状態です。いわゆる「ベロンベロン」な状態であり、床で寝てしまうこともあります。自身でも何をしゃべっているのか意識できる状態ではなく、言葉を口に出した瞬間に忘れてしまうこともあります。

血中アルコール濃度:0.40%〜

ゆり動かしても起きないほどに酩酊しています。意識はまるでなく、大小便が垂れ流しになり、呼吸は深くゆっくりとしたものになります。場合によっては死亡にも繋がります。

 

酔いのステップがすすむにつれれて、少しずつ脳の機能が低下していきます。

爽快期~酩酊初期では、網様体賦活系とよばれる覚醒に関係する神経活動が低下します。これによって、いわゆる理性をつかさどる大脳皮質が低下し、感情や本能をつかさどる大脳辺縁系の活動が活発になります。

酩酊期では小脳の機能が低下し、協調運動がうまくできなくなります。ふらついたり、ろれつが回らなくなったりするのは、小脳機能の低下が原因です。

泥酔期になると、海馬の機能が低下してしまい記憶がなくなります。昏睡期になると、生命を維持する脳幹の機能が低下して、場合によっては呼吸中枢も機能しなくなってしまいます。

ご存知の通り、お酒の強さには個人差があります。年齢や体格も含めて、酔いの進み方は人それぞれになります。詳しく知りたい方は、「お酒の適正飲酒とは?アルコールへの強さの4つのタイプ」をお読みください。

 

2.酒乱とよばれる複雑酩酊とは?

いわゆる悪酔いといわれていて、人が変わったように粗暴になります。記憶は部分的ですが、保たれています。

みなさんのまわりで、お酒を飲むと人が変わるといった方もいらっしゃるかと思います。ご本人が自覚していることもあるでしょう。いわゆる「酒乱」といわれるように、お酒を飲むと人が変わったように粗暴になって、興奮してしまうことがあります。

これは異常酩酊のひとつで、複雑酩酊とよばれています。

お酒に酔っていくと、激しい感情がわき起こってきて、抑えきれずに周囲の出来事に対して過剰に反応してしまいます。「悪い酔い方」で片付けられる範疇を大きく逸脱しており、普段大人しい人でも人格が変わったように攻撃的になる場合もあります。

このように激しい興奮が現れますが、時間経過と共に落ち着いていきます。著しい感情の変化は自身のコンプレックスに根ざしているとも言われており、それが増幅された形で外に出てしまうともいわれています。

しかしながら意識は保たれており、周囲への認識は保たれています。酔っている時点で、自分がどこで何をしているかを認識できていて、行動に一応のまとまりはあります。妄想や幻覚をみるといったようなことはありません。しかし感情のブレ幅によっては犯罪に走ったり、ときには自殺に至ることもあり、危険な状態になります。

酔いがさめてから本人にきくと、部分的に忘れているところもありますが記憶は残っています。このような、いわゆる酒乱を複雑酩酊といいます。

 

3.明らかに異常な病的酩酊とは?

意識障害が急激に生じ、幻覚や妄想をともなう激しい興奮が認められます。もともと脳に器質疾患がある方に多いです。

お酒の異常な酔い方のひとつとして、意識障害が急激に進み、幻覚や妄想などに左右されて興奮してしまうことがあります。このような異常酩酊を病的酩酊といいます。

本人は意識障害があるため、自分がどこで何をしているかという見当識がありません。幻覚や妄想に襲われて、それに左右されて興奮してしまいます。その結果として、周囲には理解できない突飛な行動に及んでしまいます。

本人は酔いからさめると普通に戻るのですが、病的酩酊中のことは全く覚えていなくて記憶障害が残ります。お酒の量が多すぎてなるというわけでもなく、飲酒量に関係なく突然に生じます。複雑酩酊とは、その酔い方の質が全く異なります。このように病的酩酊では、以下のような特徴があります。

  1. 飲酒量に左右されない。
  2. 周囲や自身の感情に左右されない。
  3. 意識がない

病的酩酊は、飲酒していないときには現れない攻撃性や暴力性が突然に表面化します。大量に飲酒したときだけでなく、少量の飲酒でも発症しうるものです。意識障害が顕著に表れ、幻覚や妄想、健忘などが認められます。

このような病的酩酊は、脳の器質的な異常がある人に多いことが分かっています。その他、アルコール依存症などと併合して起こることも多いです。

その対処法として一番確実なのは、なんと言っても「断酒」です。日常的にアルコールを摂取している場合、断酒にはかなりの根気が必要になります。ですが、特に病的酩酊の傾向がある場合、「飲まないこと」が大事です。

 

4.飲酒と責任能力について

 

「お酒を飲んでいて記憶がありませんでした…」という言い逃れは、いろいろなところで使われます。日常生活でも、お酒を口実にしていることはたくさん見受けますし、ときには犯罪につながるようなこともあります。

 

お酒を飲んでいて記憶がないというのは、

このどちらかになります。べろんべろんに潰れているか、周りから見ても明らかに病的な興奮をしている状態でなければ、まったく記憶がないということはありません。本人が記憶がないといっても、たいていは部分的な記憶があります。

ですから、なにかをやらかした後にお酒のせいにする方も少なくありませんが、たいていは意識がある中でのことです。ですから、責任はまぬがれません。

日本の法律において責任能力という言葉があります。犯罪などを犯したときに、善悪を正しく判断できる状態にあったのかをもとに、責任能力の有無が問われます。責任能力があれば罪に問われますが、なければ罪に問うのは難しくなります。

もし誰かに殴られたとしても、「被害者からすれば殴られた痛みは同じもの。相手が酔っていようが酔っていなかろうとちゃんと罰を与えて欲しい」と思うのが人情かと思います。しかし責任能力については、この考え方は当てはまりません。正しく善悪を判断できる状態にあったかが重要になります。

では、単純酩酊・複雑酩酊・病的酩酊のそれぞれのケースにおいて、もし誰かに危害を加えて訴えられた場合はどうなるのでしょうか?

このように判断されることが多いです。単純酩酊での犯罪では、責任能力は免れません。それに対して複雑酩酊では断片的に記憶障害もみられるため、責任能力は限定されることがあります。病的酩酊では意識障害が認められるため、責任能力はなしとなります。

ただし複雑酩酊や病的酩酊の場合でも、もともと異常酩酊があることを認識していたか、飲酒の分量や時間、食事、普段の言動や行動……その他様々な要素が加味され、責任能力はケースバイケースで処理されることになります。

 

まとめ

複雑酩酊→激しい悪酔いだが、おぼろげながら意識はあり
病的酩酊→わずかでも出現し、意識障害あり

責任能力に関しては、以下のように判断されることが多いです。