統合失調症の再発を防ぐための家族の接し方のポイント

アイコン 2015.3.14 統合失調症

統合失調症は100人に1人の方がかかってしまう病気です。以前は一生病院で暮らすような方もいらっしゃいましたが、現在は治療も進んで社会生活をおくれるようになってきています。

統合失調症は、家族の接し方がとても大切になる病気です。家族がうまく接すると、症状の安定につながります。

また症状が悪化してしまった時には、統合失調症の患者さんは自分の状態を正しく判断できなくなります。家族が病院と協力して、治療につなげていく必要がでてくることもあります。

それでは、家族はどのように支えていけばよいのでしょうか?

ここでは、統合失調症の患者さんを支える家族に対して、再発を防ぐためにどのようなことができるのかを考えていきましょう。

 

1.統合失調症に対する偏見をなくそう

治療を継続していれば普通に生活していくことができます。

統合失調症は、かつては精神分裂病という名前でよばれていました。今でも、年配の方を中心に「怖い」イメージがつきまとっています。統合失調症の患者さんが事件を起こすと、マスコミはこぞって報道。その結果としてますます偏見が強まるばかりです。

ですが統合失調症の患者さんは、治療を継続していれば普通に生活していくことができます。事件を起こす人も確かにいますが、普通の人が事件を起こす確率よりもむしろ低いといわれています。

まずは統合失調症に対する偏見をなくすことからはじめてください。統合失調症の患者さんにとって、「周りの人に辛さを理解してもらえない」ことが一番大きなストレスになります。

薬がしっかり効いて症状がなくなる方もいらっしゃいます。幻聴は続いているものの、本人も幻聴とわかるようになっていて付き合って生活できている方もいらっしゃいます。統合失調症という病気は、しっかりと治療をしていれば、自分を失うようなことはなく普通に生活していくことができます。

 

2.統合失調症患者さんへの家族の接し方の基本

妄想は否定せずに、患者さんの世界をうけとめましょう。客観的な情報を治療者に伝えましょう。

まずは統合失調症という病気に関して、理解を深めてください。本人の苦しみを体験できるわけではありませんが、少なくともどんな症状があり、どう苦しいのかを理解していれば、患者さんのストレスを減らすことはできます。

治療を始めるにあたって、本人の苦しみに対する周りの共感と、患者さんが安心することができる雰囲気作りは欠かせません。

統合失調症の主な症状である幻聴や幻覚は、被害妄想という形で表面化することがあります。言われてもいない悪口が聞こえ、周りの人が自分を馬鹿にしているように見えます。このため、対人関係がうまくいかなくなってしまいます。

周りにとっては妄想としか思えなくても、本人はそれを事実と認識しています。否定されると信用できなくなり、さらに病状を悪化させてしまいかねません。家族や周りの人は、明らかな妄想だと感じても否定せず、できる限り本人のペースに合わせて受け流す術を身につけましょう。

統合失調症の患者さんは、周りからの助けを必要としています。ですがその一方で、自分以外の誰も信用できないという矛盾した心理状態にあります。ですから、患者さんの望む距離を大切に接してください。

また、事実なのか妄想なのかが判断がつきにくいこともあります。ですから、時には医師に客観的な情報を伝えられるようにしてください。統合失調症の治療には、家族を含めた周りの協力が欠かせません。

 

3.統合失調症の病状経過による家族の接し方

統合失調症は幻覚や妄想に支配されてしまうと、自分の状態を正しく理解することができません。ときには家族が病院と協力して、治療につなげていく必要があります。

統合失調症の患者さんに対して周りの人間はどのように接し、支えていくのがよいかは時期によって異なってきます。統合失調症の病期に分けて、家族の接し方をみていきましょう。

統合失調症の症状の病期に関しては、「統合失調症はどういう経過をたどるの?統合失調症の症状経過と予後」をお読みください。

 

3-1.前兆期

緊張感や過敏さが見られます。疑わしかったら、身体を心配して病院への受診をすすめてください。

前兆期は、いろいろなことに敏感になって緊張感がみられます。ですが、ストレスがかかっているせいかと思って見過ごされがちです。ただのストレスとも思えない異質な感じを受けたら、病院への受診をすすめてください。

精神科や心療内科への受診はとても抵抗があります。特に他人からすすめられると、心理的に反発する感情がでてきてしまいます。身体の症状を心配して病院をすすめるのが一番スムーズにいきます。

前兆期の方は睡眠が乱れていることも多いです。「最近ちゃんと寝れてる?」と声をかけてください。日本人は、眠れていないことを美徳と考える民族ですので、正直に答えてくれることが多いです。「最近疲れもたまっているように見えるし、睡眠のことを精神科に相談しにいってみれば?」と声をかけてみていただければと思います。

 

3-2.急性期

治療をしっかりとうけられるようにサポートしてください。

発症から間もない急性期においては、患者さんの多くが妄想や幻覚、幻聴といった症状に襲われ、心が落ち着かず混乱しています。些細なことでも感情が揺れ、周りに対して過敏になっているので、この時期に病気について複雑な話をすることは控えましょう。

考えをうまく整理できないために会話が成り立たないこともあるかと思いますが、できるだけ否定的な言葉をかけずに受け流してください。

急性期では薬の治療を行うことが一番大切です。統合失調症の悪化の原因の多くは、薬の飲み忘れや自己中断によるものです。お薬がしっかりと飲めているかを確認してください。

幻覚や妄想があまりにひどい時は、それに行動までが左右されてしまうことがあります。その場合は家族が入院施設のある病院に相談し、主治医と対策を検討してください。何らかの口実をつけて本人を病院に連れていければ、本人の意志と関係なく医療保護入院によって治療ができることがあります。

万が一、家族に危害が及ぶ可能性があれば、警察に連絡してください。患者さんが自分を傷つけたり他人を傷つけたりする可能性がある場合、入院につながることがあります。

 

3-3.休息期

エネルギーの充電期間です。

急性期が過ぎると、興奮状態にあることが多かった患者さんの表情や行動も穏やかになり、思考もまとまりを取り戻していきます。ですがエネルギーを使いきってしまうので、思うように気力が出ず、常にダルさや眠気を感じるようになります。

また、急性期に多く見られる幻覚や妄想といった症状はおさまってきます。現実を見ることができるようになるのですが、このことがかえってストレスになることもあります。

いくら寝ても寝足りない過眠傾向などが現れるため、周りからすれば怠惰にしか見えないこともあります。しかしこの時期では、本人のペースに合わせてゆっくりと休息することが大切です。かなり長期間にわたることもあるこの時期には、近くの人間が病気と症状を理解し暖かくサポートしてあげること、そして何より辛抱が不可欠です。

 

3-4.回復期

少しずつ病状が回復していくので、焦らずにリハビリを進めていきます。よくなったからといって、薬をやめていないか注意してください。

その後、徐々に病状が回復してゆく「回復期」が来ます。少しずつエネルギーが戻ってきて、活動が広がっていく時期です。病気にかかる以前の社会生活に少しずつ近づき、意欲も取り戻してゆきます。

しかしこの時期には、病状の回復に伴って現実を見る余裕が出てくるために、失ったものが見えてきます。行動力もでてくるので危険な時期です。

ですから、けっして「焦らせない」ということが大切です。家族としては、よくなってきたらすぐに元の生活に戻ってほしいという気持ちになるかと思います。ですが統合失調症は、経過の中で少しずつエネルギーが低下してしまう病気です。本人のできるところを少しずつ見つけていくことが大切です。

この時期に治療の上でご協力いただきたいのが、服薬がちゃんとできているかの確認です。統合失調症の薬は、よくなっても続けていかなければいけません。再発の一番のリスクは服薬の中断です。ですから、よくなってきたからといって服薬を中断しないように、家族の方は注意してください。

 

3-5.安定期

社会の中での役割を大切にしていきましょう。

不安定な回復期を乗り越えると、長く安定した時期がやってきます。本来の日常生活を取り戻し、人によっては社会復帰も果たします。ですが、統合失調症の症状がおさまって精神的に安定したとしても、再発のリスクを抱えたまま生活は続いていきますので、治療は継続していくことが必要です。

まずは日常の生活をきちんとこなすことからです。生活リズムをきっちりと維持しながら、家事などにやりがいを見出して日々を送ることができれば、それも「働く」ということです。人の役に立って認めてもらうことで、自信や安心を感じます。家族や周りの方は、感謝をしっかりと伝えるようにしてください。

家庭生活で問題がなければ、少しずつ社会生活につなげていきます。患者さんのできることを大事にしながら、デイケア、作業所、就労移行支援施設、障害者雇用、アルバイト、一般雇用などにつなげていきます。

日常で何らかの役割を担ったり、日課を持つということは統合失調症の安定を目指す上でとても大切です。毎日自分のやるべきことをこなしているという感覚を得ることは、精神の安定にもつながっていくのです。

このようにして安定してきたら、生活の関わりの中で改善していく方法があります。生活臨床という考え方を次に紹介していきたいと思います。

 

4.家族の感情は本人へのストレスになる

統合失調症では、家族が感情的になることがストレスになってしまいます。本人を受容して接していきましょう。

統合失調症は、長きにわたって治療が必要な病気です。一緒に生活する家族の方は、患者さん本人の体調に振り回されてしまうことも度々でしょう。その中で、感情的になってしまうことは責められることではありません。

ですが家族が感情的になればなるほど、患者さん本人のストレスが増してしまいます。その結果、病状が悪化してさらに家族には負担となってしまいます。

家族の「感情表出(expresed emotion:EE)」と統合失調症への影響は、広く研究されています。「感情表出が高い(High EE)」とは、家族が患者さんに対して批判的であったり、過干渉などと過保護であったりする場合のことをいいます。

HEEの家族では、統合失調症の再発率を上げてしまうことが分かっています。再発を繰り返すにつれて、統合失調症の患者さんの社会的な機能は落ちてしまいます。さらにHEEが強まるという悪循環になってしまいます。

家族が統合失調症という病気を理解して受容できることができれば、患者さんへの接し方も変わってきます。ストレスが軽減して統合失調症の再発も減っていきます。

次に統合失調症の生活の中でできる治療についてお伝えしていきます。しかしながら感情的に接するのではなく、患者さんの特性を理解して上手く付き合っていくヒントにしてください。

 

5.統合失調症の生活の中でできる改善(生活臨床)

物事を伝える時は、「具体的に・断定的に・タイムリーに・余計なことを省き・大事なことはくりかえす」ように意識しましょう。距離感は、本人がのぞむようにしてください。

統合失調症の患者さんの日常的な行動の特徴を発見し、それに応じて生活の中に治療を組み込んでいく方法があります。

これは「生活臨床」と呼ばれる日本独自の治療法で、1960年代から群馬大学を中心に研究されてきました。近年、社会での自立を大切にしていく流れの中で、再注目されています。

統合失調症の患者さんに共通する特徴が4つあります。

注意いただきたいのですが、社会生活がしっかりとおくれている方は、普通の方と何ら変わらない方も多いです。程度にも個人差はありますので、あくまで「傾向」として考えてください。

また、何らかの壁にぶち当たったときにとる行動にも2つのタイプが認められています。後先を考えず突き進むタイプと、失敗を恐れ受身になってしまうタイプです。どちらのタイプかによって、注意の方向性は異なります。

突進型の人はもう少しペースを緩め、ときには立ち止まることも必要であることを理解しましょう。受身型の人には、周りの人ができるだけ具体的な指示を与えてあげる必要があります。

統合失調症の人と接するとき、何かを伝えたいときに、共通して意識してほしいことがあります。

まず伝え方について意識するポイントは5つあります。

  1. 具体的に
  2. 断定的に
  3. タイムリーに
  4. 余計な部分は削ぎ落とす
  5. 大事なことは繰り返す

伝えたい内容をできるだけはっきりさせ、適切な時期に曖昧な言葉は使わずに伝えてください。

次に患者さんへの接し方についてですが、周囲の物事に対し敏感になっていることへの配慮が大切です。本人の言動に対して必要以上に干渉してはいけません。患者さんが望む距離感を大切にしてあげてください。また、本人の良い部分を素直に認めてあげることも大切です。

このように周囲の意識が少し変わるだけで、本人の生活の中でのストレスは軽減されて本来の力を取り戻していきます。地道に継続していくことである程度の症状には動じなくなり、安定した心理状態で生活を送れるようになっていきます。

 

まとめ

まずは、偏見をなくしてください。統合失調症は、治療を継続していれば普通に生活していくことができます。

接し方の基本としては、妄想は否定せずに、患者さんの世界をうけとめましょう。そして客観的な情報を治療者に伝えましょう。

前兆期では、緊張感や過敏さが見られます。疑わしかったら、身体を心配して病院への受診をすすめてください。

家族の接し方としては、感情的に接することは統合失調症の悪化につながります。受容できるようにしましょう。

物事を伝える時は、「具体的に・断定的に・タイムリーに・余計なことを省き・大事なことはくりかえす」ように意識しましょう。距離感は、本人がのぞむようにしてください。