うつ病での休職が不安な方に伝えたいこと

アイコン 2016.4.12 うつ病
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仕事をされている方は、日頃からさまざまなストレスにさらされているかと思います。仕事の内容的なこともあれば、人間関係もあるでしょう。

そんなストレスをやり過ごしながら、日々の仕事に励んでいるかと思います。当然落ち込むこともあれば、不安になることもあります。しかしながら落ち込みや不安が一線を超えると、業務効率も落ちてしまって悪循環が始まってしまいます。

そんな悪循環が続いてしまった時は、休職して治療に専念した方がよいことがあります。とはいっても、お給料のこと、生活のこと、これからの仕事のことなどが心配になってしまうかと思います。

ここでは、うつ病で休職することに不安な方に対して、どういう時に休職をした方がよいのかをお伝えしたいと思います。そして休職の実際をお伝えして、少しでも安心して治療に専念していただくことにつながれば幸いです。

 

1.悪循環しているときは主治医に休職を相談しよう

責任感や不安から悪循環している時は、主治医に休職した方がよいか相談してみてください。

「少しぐらい調子が悪くても、仕事に穴をあけるわけにはいかない」

そんな思いで日々仕事に取り組まれている方も多いと思います。うつ病を患わってしまう方は真面目な方が多いので、無理しがちになってしまいます。

「いちど休んでしまったら、仕事をやめさせられるかもしれない」

そのように不安になっている方もいるでしょう。調子がいい時はポジティブにもなれますが、調子が悪いとネガティブにしか考えられなくなってしまいます。

どちらのケースも、ある一線を超えてしまうと悪循環が始まってしまいます。

このような状態になってしまうと、会社を休んで治療に専念した方がよいことが多いです。無理に仕事にいっても、本来のあなたのパフォーマンスを発揮できません。仕事に抜けがあると、周囲からの評価が下がってしまいます。

このように悪循環に陥ってしまっている方は、冷静に周りを見る余裕がなくなってしまっています。主治医に休職をするべきかどうか相談しましょう。治療をしながらも改善がない場合、しっかりと休んで治療をした方がよいです。

 

2.うつ病で休職することの4つの不安

お金・仕事・個人情報・復職の4つの不安を抱えることが多いです。退職を考えている方は早まらずに、休職して調子がよくなってから考えてください。

私は精神科医として診察で患者さんに接することもあれば、産業医として会社で面談させていただくこともあります。うつ病の方が休職するときには、大きく4つの不安を抱える方が多いです。

このような不安を抱えるのは当然のことです。ここでは、休職するときの不安についてお答えしていきたいと思います。

自分を責めてしまう方や逃げてしまう方には多いのですが、こんな不安を抱えるくらいならば退職した方がよいと考えてしまう方もいらっしゃいます。しかしながら退職はいつでもできます。調子が悪いときは、重要な決断は行わないようにしましょう。

 

3.うつ病での休職の不安①-お金は大丈夫?

有給消化→(病気休暇)→傷病手当金→障害年金という流れです。

休職するのに先立つのがお金の心配です。お金がなければ、生活もままならなくなります。病気になって休職をすることを想定せずに人生設計をしているので、ローンの支払いが残っている方もいらっしゃるでしょう。

休職してしまうと全くお金をもらえなくなるのではないかと思っている方も多いですが、そんなことはありません。会社を休職した時のお金についてご説明していきたいと思います。

会社を休職するときのお金の規定は、それぞれの会社の就業規則によって異なっています。このため、会社の人事課や総務課の方などに確認してみましょう。全体的な流れとしては以下のようになっています。

有給消化→(病気休暇)→傷病手当金→障害年金

多くの会社では、まずは有給消化という形になります。有給消化ですと100%給料が支給されるからです。会社によっては、復職した時に備えて有給は少し残しておくこともあります。

有給を使いきると、会社によっては病気休暇があります。これは法律で定められている制度ではなく、それぞれの会社の就業規則で定めている制度になります。会社によって金額も異なりますが、多くの会社で80~100%の給与が支給されます。

病気休暇がある企業では期間を満了した後、病気休暇がない企業では有給消化をした後、企業からは給料が支払われなくなります。ノーワークノーペイなのです。そのかわりに、健康保険組合から傷病手当金が支給されます。

傷病手当金は、病気によって仕事が出来なくなってしまった方に認められるお金で、金額としてはおよそ60%ほどとなります。傷病手当金は、1.5年間支給されます。被保険者の期間が1年未満(≒入社1年未満)では、在職している期間のみ支給されます。つまり退職したらもらえなくなってしまいます。

傷病手当金の支給期間が1.5年というのは、障害年金と関係があります。1.5年にわたって療養していても改善が認められない場合、病気が固定されて障害となったと考えます。症状の生活への影響の大きさに応じて、医師の判断で障害年金の申請をします。

おおよその目安は以下のようになります。

詳しくは、「病気で会社を休んだ時にもらえる「傷病手当金」のポイント」を読みください。

 

4.うつ病での休職の不安②-仕事を残しても大丈夫?

自分がいなくても組織は何とか回ります。周囲の方も、休むときに仕事の心配をされるような方には同情的なことが多いです。引継ぎだけでもしたいという方は、会社に相談してみましょう。

うつ病になる方は真面目な方が多いので、仕事で大きなストレスにさらされてもなお仕事に対する責任感をもっている方が多いです。

「引継ぎをしなくては休めない」
「自分がいなくなったら周りの人に迷惑がかかる」

と思われている方も多いです。確かに、自分の仕事を周りで分担することになるのは事実です。うまく人が補充されればよいですが、他から人をひっぱってくる余裕がないことが多いです。

ですが考えてみてください。支え合って仕事をしていくのが組織なのです。「周囲に迷惑がかかるのでは?」と気を病む方は、これまでも仕事に真面目に取り組まれていた方です。そんな方が調子を崩されているとしたら、周囲の方も心配します。むしろしっかり休んでほしいと思っている方が多いのです。

あなたが同僚の立場だったらどう思われますか?普段から真面目に仕事をしていて調子が悪くなっている方をみたら、何とかしてあげたいと思うはずです。少なくとも、仕方がないと割り切れると思います。少し悲しいところもありますが、自分がいなくても組織はなんとか回るものなのです。

とくに休みがちになってしまっているケースでは、上司としても責任のある仕事を任せられなくなってしまいます。しっかりと休んでもらった方が、オペレーションもスムーズになります。

病院で書いてもらった「休職を要する」という診断を会社に提出すると、会社側としては理由は問わずに直ちに休職させないと安全配慮義務に反してしまいます。仕事の引継ぎだけでもと思われるかもしれませんが、仮に出勤している途中に駅のホームで誰かにぶつかって転落事故死したとしても、自殺したのかわからなくなってしまいます。

どうしても引継ぎだけはしたいと希望された場合は、会社にそのことを伝えてみてください。無理は決してせずに、出来る範囲だけで行いましょう。

引継ぎや診断書のことなど詳しく知りたい方は、「精神科・心療内科での診断書の実情とは?」をお読みください。

 

5.うつ病での休職の不安③-個人情報は大丈夫?

必要最小限に情報が伝わるように配慮していきます。病名や病状などは、現場レベルには伝わることはありません。

休職を考えるに当たっては、自分が心の病気だということが周りに知れ渡ってしまうのではないかと心配される方も多いです。個人情報に関しては、その取扱いは非常に慎重に行います。必要最小限にしか情報はいかないように配慮します。

私が産業医として面接させていただくときには、会社に伝える情報は最後に面談者と調整するようにしています。会社に知られたくないことは伝えません。会社が受け取った情報も、人事や総務の担当者など、必要最小限となります。

現場レベルには情報は伝わりません。上司に対しても休職するという事実が伝わるのみで、病名や病状などは伝わりません。同僚や部下などに対しても同様になります。

ですが一緒に仕事をしている方は、あなたのことをよく知っています。調子が悪くなっていても無理しているのも知っています。休職したら、うすうす勘付いてしまうことは避けられません。

うつ病という病気は広く世間に知られるようになっています。しかしながら依然、うつ病などの心の病に対しての偏見は少なくありません。

「うつ病は気持ちの持ちようだ」「根性が足りないだけだ」などという精神論で片づけてしまう方もいらっしゃいます。後ほど述べますが、心の病に対して否定的に捉えてしまう方はゼロではありません。そこは割り切るより他ありません。

休職によってしっかりと治療して、復職してからしっかりと仕事をこなすことで、少しずつ信頼関係を回復していきましょう。

 

6.うつ病での休職の不安④-職場に戻れるの?

段階的に負荷をあげながら職場復帰していきます。うつ病の方に対しては、周囲が温かく迎え入れてくれることがほとんどです。

いちど会社を休んでしまったら、もう戻ってこれないのではないかと心配される方もいらっしゃいます。まずは、仕事に戻っていく時にはどのような流れを理解しましょう。

休職中はゆっくりと休養していただきたいので、会社からの連絡は必要最小限になります。主治医から復職可能の診断書が提出される見込みとなってから、復職の手続きが始まっていきます。

復職に当たっては、産業医面談を行うことがほとんどです。産業医が面談し、仕事を行っていけるレベルかどうかを判断します。これがクリアになれば、通勤訓練や残業制限などを含めた復職プログラムを行っていきます。

このように進めていくのがオーソドックスな流れですが、会社によっては産業医がいないところもあれば、復職プログラムが整っていないところもあります。復職が近くなったら会社に確認してみてください。

復職について詳しく知りたい方は、「職場復帰の支援の流れ」をお読みください。

 

もっとも心配されるのが、職場の人間関係だと思います。「周りの方が自分を受け入れてくれるのか」ということです。「腫れ物に触るように扱われるのではないか」「よそよそしくされるのではないか」と心配になるのも無理はありません。

私もいろいろな復職者の支援を行っていきましたが、うつ病から復職される方に対しては温かく迎え入れてくれることがほとんどです。うつ病の方は、真面目で責任感がある方が多いのです。そのような方が復職するときには、周囲も思いやってくれます。

ですから、過度に心配しなくても大丈夫です。最初は緊張したけれども、同僚や上司がかわりなく接してくれるということがほとんどです。中には気を遣いすぎてしまう方もいますが、時間がたつにつれて変わりなく接してくれるようになっていきます。

 

7.休職することの現実的なデメリット

現実的なデメリットもありますが、休職したことで気づける部分もあります。少しずつ自分の価値観をゆっくりと整理して、将来に向けて前向きに歩んでください。

休職することで、現実的にデメリットがないわけではありません。どのようなデメリットがあるのかを整理したいと思います。

収入が減ってしまうことはさけられません。収入としては6割ほどになってしまうので、貯金を切り崩して生活される方もいらっしゃいます。うつ病になって仕事が出来なくなるとは、誰も想定していないと思います。ローンの支払い、子供の学費など、苦しくなる部分も出てきてしまいます。

休職をすることで、仕事をしているという自分の役割がなくなってしまうことに苦しみを感じる方もいらっしゃいます。ですが、いまはゆっくりと休むのが仕事です。割り切って休養することを受け入れてください。

休職されている方がよくいわれるのが、近所や職場の同僚の目が合って外出できないということです。ですがうつ病の治療過程では、外出することも重要です。運動は回復を支えてくれますし、外出することで生活リズムを整えることも大切です。主治医と相談しながら、現実的な折り合いをつけていきましょう。

休んでいる間は会社の情報も入ってきません。長く仕事をしていた方は、それが不安になる方もいらっしゃいます。一方で、職場から連絡がきて調子が崩れてしまう方もいらっしゃいます。しかしながら治療のためには、仕事のことは考えない方がよいです。復職の段階で隔世の感が出てしまうかもしれませんが、少しずつ慣れていきます。

休職をしてしまうと、その期間はキャリアとしてみてもらえないので昇進や昇給も遅れてしまいます。それは仕方のないことかもしれませんが、仕事で少しずつ出世していくキャリアをイメージしていた方にとっては、非常に大きな苦悩になります。

ですがその一方で、休職して見えてくる部分もあります。仕事や家族、自分のプライベートのことなどをゆっくりと見渡せる時間なのです。休職した人にしか見えない世界は、決してマイナスばかりではありません。

自分の価値観をゆっくりと整理して、将来に向けて前向きに歩んでいく必要があります。休職した方のサポートで一番大切なのは、この点だと私は考えています。ここから目をそらすと、再休職してしまうことが多いように感じています。主治医と少しずつ相談していってくださいね。

 

まとめ

責任感や不安から悪循環している時は、主治医に休職した方がよいか相談してみてください。

お金・仕事・個人情報・復職の4つの不安を抱えることが多いです。退職を考えている方は早まらずに、休職して調子がよくなってから考えてください。

現実的なデメリットもありますが、休職したことで気づける部分もあります。少しずつ自分の価値観をゆっくりと整理して、将来に向けて前向きに歩んでください。